絵の女性と生身の女性、どちらがいいか? 〜現代のピカソが三次元に恋をするまで〜 作:チャンドラ=グプタ
「しょうがない。桜に関しては貧乳……Cカップという設定にしよう」
「それじゃ私よりもおっき……じゃない。分かりました。そうしましょう」
結局、ヒロイン2である伊藤桜の胸のサイズはCカップにすることで落ち着いた。
それより今、由衣夏なんて言おうとしたんだ? まぁ、いいか。
「それじゃ最後に、三人目のヒロインの設定を見てくれ」
メインヒロイン3:伊藤麻衣子 中学三年生
テニス部に所属しており、運動神経抜群。肌は日に焼けている。胸はGカップ。
兄に対し、定期的に抱きついたり、一緒にお風呂に入ったり、果てはヌードデッサンするように持ちかけてくるほどのブラコン。兄も麻衣子の誘惑を断ることができず、よくヌードデッサンを行なっている。
得意なものはテニス。嫌いなものは野菜。
俺はヒロイン3の設定を見て、驚愕した。
「ひ、陽毬さんこれって……」
「いいだろう? 君の妹を基に設定を練ったんだ」
確かに明梨の特徴がふんだんに盛り込まれている。
唯一違うのは嫌いなものが野菜ということくらいだ。
ちなみにあいつが嫌いなのは銀杏である。匂いが受け付けないらしい。
「えー! 湊さんの妹さんってGカップなんですか?」
「ああ、そうだ。すごいだろう。私よりも大きいんだぞ」
なぜか陽毬が大きな胸を張り、得意げに語り出した。
すると、黙々と作業していた澪と桃子はこちらの方に素早く顔を向け、いきなり立ち上がった。
「う、嘘でしょ! 湊くん! 中学三年生で、そんなの……ありえないよ!」
「さ、さすがに冗談ですよね? 先輩?」
二人はものすごい勢いで明梨の胸の大きさについて、問い詰めてきた。
どうして二人ともそんなに真剣なのだろうか。
「本当だよ。ね? ピカソくん」
「え、えぇ……まぁ……」
俺が頷くと、二人の顔は見る見るうちに真っ青になった。
「そ、そんなバカな……」
「というか先輩はどうして妹さんの胸の大きさを知っているんですか! 見たんですか! 聞いたんですか! 言わせたんですか!」
見猿聞か猿言わ猿……じゃない、実際は明梨から聞いたわけだが、流石に本当のことは言えない。
「なんというか……ちょっとした出来事で知ってしまったんだよ」
「なるほど。巧みに妹さんの弱みを握り、無理やりカップ数を言わせた先輩は得意げに妹さんの胸の大きさを陽毬さんに教えたわけなんですね。そうなんですね。外道ですね」
違うわい。
それにしても桃子のやつ怒りすぎだろう。
どうして、俺が明梨の胸の大きさを教えることになったのかというのは、例のスケッチブックを見られたからなのだが、それを伝えれば澪と桃子に俺が自分の妹に対してもヌードデッサンをしているということがバレることになる。
それはなんとか避けたいところである。
「ち、違うから……」
「まぁ、二人とも落ち着くんだ。実はピカソくんの妹さんが通っている学校に私の知り合いがいてな。色々と聞かせてもらったんだ。胸の大きさも知り合いに聞かせてもらったんだよ」
また陽毬の知り合いか。この人、本当顔広いよな。だから明梨がテニス部であることを知っているのか。
しかし、陽毬は地味に俺に対して助け舟を出してくれた。
「それより、どうして俺の妹をモデルにしたヒロインを出そうと思ったんですか?」
「それはもちろん、実在のモデルが近くにいる方が君も描きやすいと思ったからだ。実際そうだろう?」
「ぐ……」
た、確かにそうである。
しかも、ヌードデッサンに関して、明梨にモデルになってもらった回数は今までのヌードデッサンのモデルの中でダントツで多い。
すると、由衣夏が俺の耳元でこんなことを訊いてきた。
「湊さん……い、妹さんと一緒にお風呂に入ったりしてるんですか?」
耳元で甘ったるいアニメ声を囁かれ、思わずゾクゾクっとした。
「し、してないよ、そんなこと……」
まぁ、嘘だけどな。
「そうですか。すみません。ちょっと気になって……」
気になるのか。俺が明梨と一緒にお風呂に入っているのどうかが。
その後、ヒロインの容姿に関する設定などを決める作業を行った。
ヒロインの容姿に関してはみんなで意見を出し合いながら決めていった。
「とりあえず、みんな今日の打ち合わせはこれくらいにしよう。澪さんとピカソくんには三人のラフ画をお願いしたい。出来次第、メールで送るか、私に直接見せてくれ。」
「分かりました」
「ねぇ、湊くん。私、誰を描いたらいいかな?」
「そうだな……それじゃ、ヒロイン1の優香を描いてもらってもいいか? 俺は桜と麻衣子を担当する」
「うん、分かった。湊くんの方が担当するヒロインの人数多いけど大丈夫?」
「ああ、なんとかなると思う」
「そっか。お互い頑張ろうね!」
「ああ」
こうして、お互いの仕事内容が決まり、俺は家に帰ることにした。
まっすぐ家に帰宅すると、明梨が料理をしていた。
「あ! お兄ちゃんおかえり!」
「ただいま」
一度、自分の部屋に向かう。
鞄を置き、部屋着に着替え、リビングに戻った。
すでにテーブルの上には美味しそうな料理が並べられている。
「お兄ちゃん、ご飯食べよう」
「そうだな」
二人で夕食を食べることにした。明梨が作ってくれた料理はシチューにポテトサラダ、梨という献立であった。
シチューは一口食べると、濃厚な味がしていてとても美味しい。
「お兄ちゃん、今日は帰り遅かったね。部活?」
「うーん、まぁ。部活といえば部活……いや、部活ではないな」
「なにそれ」
明梨は不思議そうな表情で微笑んだ。俺はそんな明梨をじっと見つめた。
これからゲームの絵を描く以上、いろんなシチュエーション、ポーズの絵を描かなければならないだろう。
「なぁ、明梨。悪いんだけど今日さ、デッサンに付き合ってくれないか?」
「うん、いいよ!」
明梨は嬉しそうな表情でデッサンのモデルを担当することを許諾した。
「ちなみに今日はヌードデッサンじゃないからな」
「え?」
心底驚いたような表情を見せる明梨。
「実はな、これからゲームの絵を描かなきゃいけなくなってな。その為に練習したいっていうか……とりあえず制服姿の明梨を描きたいんだけどいいか?」
「ゲームの絵を描く……お兄ちゃんが?」
「ああ」
「どうしてまたそんなことに?」
「まぁ、色々あってな。知り合いのゲーム作りを手伝うことになったんだ。ゲームの絵を描く以上、ヌードの絵だけじゃなくて、色んな絵を描く必要がある」
明梨に言った後に気づいたが、そもそもヌードの絵がゲームに必要になるのだろうか。
いや、多分ないな。
「うん、分かった。お兄ちゃんの為だから私も一肌脱ぐよ! いや、今日は脱がないのか」
上手いこと言いやがるなこいつ。
ご飯を食べ終わった後、俺は一人でお風呂に入った。お風呂から上がった後はデッサン用の画材を準備して待っていることにした。
まぁ、画材といってもスケッチブックと鉛筆くらいであるが。
陽毬に求められたのは、あくまでラフ画のみである。
俺がイメージしているヒロインのデザインと陽毬がイメージしているデザインと乖離していないか確認するための作業だ。
一応、自分が描いたラフ画を基にデジタルの絵を描いてみようとは考えているのだが。
すると、扉から『コンコン』とノックの音が聞こえた。
「入ってもいいぞ」
明梨が制服姿で入ってきた。いつも見慣れている制服姿だが、なぜかやけにスカートの丈が短い気がする。
日に焼けた程よい肉の付いた脚がとても艶めかしく見える。
明梨はちょこんと無言のままベッドの上に座った。
「そのままじっとしていてくれ。まずは一枚描く」
「うん。分かった」
俺は明梨を観察しながらデッサンを行うことにした。
まずはアタリを取り、そこから顔の輪郭、体の細部へと移る。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「制服似合うと思う?」
「ああ、似合うんじゃないか」
黙々と作業を行う俺に対し、明梨はたわいもない質問をしてきた。
「ヌード姿と制服姿、どっちが好き」
そう聞かれた俺はピタッと筆を止めた。
「ヌード姿だな」
こればかりは否定することができない。
「じゃあさ……これ終わったらヌードデッサンもしよう!」
こいつ、そんなにヌードデッサンのモデルをしたかったのか。しょうがないやつだ。
「ああ、分かった」
明梨の要望を叶えてやるため、俺は作業のスピードを早めることにした。
とっとと、制服姿の明梨を描き、ヌードデッサンすることにしよう。