田舎のしおいちゃんと深夜の廃校舎でセックスして別れる話 作:大河原大河
日差しが強い。干からびてしまいそうだ。
道端には蝉の死骸が転がっている。
今年も夏がやってきた。
僕は長めの休暇をもらって、山奥の集落を訪れていた。よく言えば落ち着いた、悪く言えば何もない、周りに広がるのはひたすらに緑の風景。数少ない住人の大半は農業を生業としており、そして老けている。同い年どころか、若者といえる年齢の人を見たことがない。そんな村を。
人生の夏休みを終えた僕は、通信制の学校を卒業して適当な仕事に就いた。生きるためには自分でお金を稼ぐ必要があったから、どうにかやっていけるようになったのは良いことだと思う。僕は生きる場所をなんとか確保して、そうして夏を待っている。夏になる度、この村に向かう。
しおいちゃんを待つ為に。
たまに町では不可解な死亡事故が発生し、その件数は年々増えている。加えて食料が少なくなっている気はするが、やはりそれは気のせいで片付けられる程度の問題だ。だから、それは戦いが激化している証拠にはならないだろう。いずれにしたって、彼女が出したに違いない結果は劇的に展開を変えるほどの効果などなかったということなのだろう。
そうじゃなかったとしても、それは僕が知ることではない。
僕は何も知らずに、愛する人を待っている。
待つことしかできない。
彼女が何かと戦っていることを僕は知っている
(が、知らない振りをしている)。
彼女が戦争と呼ばれるものに加担していることを知っている
(が、知らない振りをしている)。
人ではない何かを殺していることを知っている
(が、知らない振りをしている)。
しかし、僕はそういった彼女の姿を知らない
(ことに決めた)。
僕が知っているのは、僕と一緒に過ごしているときの彼女だけ。僕は僕の知らない彼女を知ろうとは思わない。
だって知ってしまったら────
湧き上がる死への渇望を抑えきれなくなってしまう。
何もかもから目を背けたつもりになって、死にたい気持ちを抑え込んで、僕は今年もこの場所でしおいちゃんを待っている。会えるはずもない人との再会を願うつもりになって、性懲りもなく、職務を全うするようにこの村に足を運ぶ。
なんて空っぽなのだろう。
目的は達成されることがない。休憩もなく、ゴールもない、死ぬまで生きるだけの空虚な生だ。最低な人間にはお似合いの生涯だ。
僕の選択が正しかったかは分からないけれど、これが僕の結末だ。
しおいちゃん。
また会おう、しおいちゃん。
小さな僕の呟きは、夏の空に溶けて消えていった。
<了>