蒸し暑い夜だった。
耳を澄ませれば、蚊の羽音が聞こえてきそうな夏の夜。空には三日月が昇り、姦しいほどの光で辺りを照らす。
そんな熱帯夜に戸を開けていれば、凡そ誰も訪ねてこない時間にも拘わらず、来客が一人。
寝たふりをしつつも薄っすらと瞼を開ければ、開かれた戸口から差し込んでくる月光により、特異な影絵が室内に描かれているのを目の当たりにした。
何の変哲もない女物の着物を纏った影。だが、頭部をよく見れば、普通の人間には生えてはおらぬ二本の角が額から生え伸びているではないか。
まさしく異形。
しかし、そんな彼を余所に、夜分遅くに訪れた者は草履を脱いで上がって来る。
やや荒れた息遣いが聞こえてきた。それには獲物を前にした獣を彷彿とさせる。
熱の籠った吐息が肌を撫でる距離まで近づいてきた者は、寝たふりの彼の眼前に顔を寄せ、血のように真っ赤な強膜の中央に「下肆」と刻まれた瞳を歪ませた。
「―――こんな夜中に戸を開けてなんかいたら、鬼に喰われるわよ」
すると、すでにこれから起こる事柄を想像し、寝間着の上からでも分かるほど雄々しく屹立した剛直が目に入る。
ニヤリ、と鋭く尖った犬歯を覗かせるように笑みを湛えた彼女は、何を考えたのか、横たわる彼の股座に顔を寄せた。
そのまま彼女は、獰猛な息遣いとは裏腹に、慈しむかのような優しい所作で彼の剛直を舐り始めた。
何もない質素な部屋の中、淫靡な水音だけがやけに澄んで響きわたる。
それと共に合いの手を入れるかの如く聞こえてくる、彼女の漏れるような甘い声が、これまた彼の情欲を煽り立てた。
「零余子さん」、と何気なく呼ぶ。
すると、泣き出しそうな声で呼んだ彼の剛直を舐るのを止めた鬼―――零余子が、満足気に妖しい笑みを浮かべる。
彼女は鬼だ。人喰いの化け物。
邂逅は一か月ほど前。ちょうど、今日のような寝苦しい夜のことだった。
余りに暑かったものだからと戸を開けたまま寝ていたら、血の臭いを漂わせる零余子が家に忍び込んできたのだ。
最初こそ、初めて目の当たりにする異形の化け物に命の終わりを悟った。
しかし、彼女からすれば赤子の手をひねるように命を捥ぎ取るのも容易い相手であり、ちょうど腹が満たされていたからだろう。食欲よりも嗜虐心が勝り、彼は零余子に
両親も早くに亡くし、村からも大分外れた辺鄙な土地に一人住んでいた彼は、人ではない化け物に貞操を奪われ―――盛りのついた猿のように彼女を求めてしまった。
見た目こそ妖の類であるが、細部に目を瞑ればほとんど人間の女性と言って過言ではない肉体。
命の危機を目の前にして―――否、命の危機を前にしたからこそ、彼の生殖本能は大いに刺激され、初めて触れる女の性に、彼の剛直はかつてないほどの猛りを見せた。
そのように己を必死に求めてくる愚かな人間を前にし、零余子は愛玩動物を相手にした時のような愛着を覚えたのだろうか。とにかく、その時の気分で喰いもせず殺しもせず、しばらく己の嗜虐心を満たす玩具として弄ぶことにした。
が、時が流れ二人の関係は、当初よりやや変わっている。
「んっ……ふっ……んん……!」
屹立する剛直に鋭い歯が当たらぬよう、舌で奉仕する零余子の姿は健気そのもの。
空いている手で己の疼く下半身を弄り、その快感で腰を左右に振る様もまた、彼の中の雄を勢いづける。
一層熱を持ち、硬く膨張する剛直に、零余子は一瞬目を見張った後、今度は脈打つ肉棒を頬張った。
そのまま口を窄めるように吸い付き、顔を前後へと動かす。
ここ最近は血生臭さも抜け、彼女自身の誘惑的な雌の香りが漂うようになった。髪を振り乱しながら一心不乱に剛直をしゃぶる零余子は、恍惚とした表情のまま、彼の肉棒を味わっている。
「んぅん……! ぷはぁ! はぁ……んっ……ちゅ……!」
息継ぎをする際、酷く湿った吐息が彼の股座を湿らせる。その度、零余子がすぅっと深く息を吸うものだから、彼は自身の体が臭っていないだろうかとその日の湯浴みを思い返す。
ほとんど性知識がなかった当初にしてみれば、排泄器官でしかない陰茎を舐めるなど到底考えられぬ行為であったが、今となっては毎夜の蜜月の時間を愉しむ行為の一つとして理解している。それ故に彼女に不快な想いをさせてはいないかと、男としての配慮が脳裏を過っていた。
だが、それも杞憂なようだ。
熱帯夜に侵されて汗ばむ彼の体の臭いも、今となっては彼女を興奮させる一つの要素に過ぎないらしい。
零余子の下半身から聞こえてくる水音も、はじめは慎ましやかだったが、今となっては誤魔化しがきかないほどに激しく粘ついた液体がかき混ぜられる音を響かせていた。
と、彼は徐に下半身を弄る零余子の手を取る。
ハッと舐るのをやめた零余子は、顔を赤らめつつも、素直に濡れた手を差し出す。
指と指の間には透明な橋が架かっていた。それを為すだけの淫靡な香りもまた、零余子の掌からは漂う。
それを味わうように、彼は零余子の指にしゃぶりつく。
甘いような、しょっぱいような、酸っぱいような―――しかし、舐めるのを止められない濃厚な味わいだった。
鋭く伸びた爪の間も丁寧に舐り、彼女の掌を覆っていた粘着質な液体を舐めとっていく。
その間、一旦動きを止めていた零余子は、切なそうな眼差しを彼に向けたまま、もう一方の手で心細くなる下半身を慰める。
紅玉のような眼に負けぬほどに朱が差す零余子の頬。
薄っすらと彼女も汗ばんできた頃、ようやく彼は零余子の手を堪能し終えた。しゃなりと華奢な指は少女そのものだ。そこへ彼女の蜜が纏わりついていたのを舐め取った訳であるから、彼の背徳感はすさまじいものである。
人と鬼の垣根を超え、口には出さぬものの一つの想いを抱く両者。
甘く切なそうな吐息を漏らした後、ヒュッと息を呑んで一拍。引かれ合う磁石のように、二人の唇は重なり合った。
「んっ……ふぅ……!!」
一心不乱に彼の舌に吸い付く零余子。一見すれば、その必死さは母の乳房を求める赤子に等しいものだ。
それだけ彼との口吸いは零余子にとって待ちかねていたものだった。
濃密に舌が絡み合う間、二人は己の肢体を覆い隠していた衣を脱ぎ捨てる。
唾液を交換する水気を含んだ音を奏でつつ、夏の暑さとは別の理由で火照った体をさらけ出す。
じっとりと汗ばんだ体……普通であれば触れ合うのも億劫になる。
だが、今この時だけは関係ない。
融け込むかのように絡み合う二人は、我慢ならないと言わんばかりにさらけ出した肉体を押し付け合う。
そうすれば、散々舐られた剛直と濡れそぼった秘裂が拙く戯れる。
そのもどかしさを味わうことで、とうとう首に腕を回すまでに至っていた二人は、熱烈な接吻を繰り広げるのであった。
最初は人肉を喰らった口だからと、触れることさえ躊躇われる彼女の口であったが、もう嫌悪感を覚えなくなってきているのは自身の感覚が麻痺しているからだろうか。
それほどまでに彼女との接吻は極上であった。
と、彼が一心不乱に零余子を求めている間、零余子もまた求める彼を受け入れていた。
鬼となり、己を受けて入れてくれる存在など皆無に等しい中、ここまで熱く求めてくれる相手は久しく居なかった。
それだけに、彼との情事の中で鬼となって薄れていた何かが呼び起こされる気がしたのだ。
胸の内で渦巻く、悶々と、しかしながら悪くない感覚。
それを抑えるには、否、発散するには彼とまぐわうより他になかった。
長い口付けを終えた二人は、少しの間互いをじっと見つめた後、何かを察したかのように布団の上で動き出す。
互いが互いの股座に顔を埋めるような体勢に移った。零余子が上だ。見上げれば、慎ましやかな茂みに覆い隠されつつも、淫靡で湿った香りを隠せない秘裂を望むことができる。
しばし見とれていれば、己の秘所を凝視される羞恥心に耐えられなくなった零余子が、再び彼の剛直に口をつけ始めた。
二人の唾液で濡れた唇で竿全体を撫でるように弄んだ後、鈴口から溢れ出る先走った精を、もったいないと言わんばかりに、今度は竿を口に含む。
そこからは再び彼女の尺八が演じられる。
まだ探り探りの所作であるが、都会のように遊べる店もなく、黙々と仕事をするしかないような辺鄙な田舎に住む彼にとっては、この上ない刺激だ。
負けじと零余子の秘裂を舐り始める。一瞬彼女の腰が浮かんだのを目の当たりにすれば、感じてくれたのだろうという満足感が胸に満ちていく。
しかし、まだこんなものではない。
彼女の奉仕に報いるくらい、自分も頑張らなくては。
そう意気込んだ彼は、一心不乱に彼女の秘裂を貪るように舐り回した。幾ら舐め取っても溢れ出る愛液を零さぬよう、舌全体を彼女の秘裂にあてがうように舌を動かしたのだ。
「ふぅ……ふぅ……!」
ざらついた舌が奇妙な生き物のように蠢く感覚に、零余子は彼の剛直を舐りながらも、押し寄せてくる快感の波にとろけそうな面持ちを浮かべていた。
もしも彼に見せていれば、彼のことだ、一層意気込んで自分を気持ちよくさせようと奮い立ってくれることだろう。
そんな想像が脳裏に過る程度に幸福感を覚える零余子は、次第になくなっていく己の余裕を察し、先ほどまでのお淑やかさとは裏腹の獰猛な動きで、彼の剛直をしゃぶり始めた。
艶めかしい水音とは一変、下品で節操のない音が、室内のみならず外にまで響きわたる。
それと共に高まっていく射精感を覚えた彼は、達しようとする頂きを目前とし、自分もまた彼女を共に連れて行こうと、可愛らしくそそり立っていた肉芽に吸い付いた。
「んっ……ひゃあ!!」
刹那、堪らず動きの止まった零余子の口から甘ったるい喘ぎ声が漏れ出た。
鬼とは思えぬ生娘の声。それが一層彼の情欲を煽り立てる。
刻一刻と濃さが増していく雌臭に失神しそうになりつつも、乱暴に零余子の肉芽を舌で転がす。
それまではまだ円運動する程度だった彼女の腰も、この時ばかりは鮮烈な快楽の雷に打たれたかの如く、ビクビクと上下に動いていた。
だが、逃がさないと言わんばかりに、彼は零余子の腰を手で押さえつけ、己の唇と彼女の秘裂との濃厚な接吻を続けさせようとする。
逃げられない。分かっていたことだが、いざ訪れた怒涛の攻勢を前に為されるがままとなる零余子は、余力を振り絞って彼の剛直を根本まで口に含んだ。
すると、ビクビクと脈打つ剛直がただならぬ熱を帯び始める。
と共に、すでに彼の雄臭に満ちていた己の口の中に、一層濃い精の臭いが流れ込んでくるのを感じ取った。
「んっ……んぅぅぅううぅぅううぅうぅうう……!!!」
互いが達したのは、その直後。
くぐもった絶叫を上げる零余子が、己の口腔に解き放たれた精に恍惚とした表情を浮かべる。そうして彼の猛りを受け止めた彼女もまた、彼の顔面を受け皿に、迸った愛液を垂れ流していた。
絶頂の余韻を堪能してから体を起こした二人は、ここしばらくのまぐわいの臭いが抜けぬ布団の上で、じっと見つめ合う。
初めに動いたのは零余子だった。口に含んだままの白濁液を自身の掌の上に吐きだす。
毎夜毎夜搾り取っているにも関わらず濃厚な白濁液は、彼女が気を利かせて採集して来た精の出る食べ物のおかげかもしれない。
そんなことを思いつつ掌に吐きだした白濁液を見せつけた零余子は、盃を煽るかの如く、高々と掲げた掌から零すようにして、再び口の中へと迎え入れた。
彼女の唾液も混じり、粘ついた体液を口へと導き入れるのは難しいものだ。
しかし、糸を引いて零れ落ちるそれを求めて細やかに顔を動かす零余子の所作が、この淫靡な時間とは相いれぬ健気さを醸し出し、一発精を解き放った彼の剛直を立ち直らせる。
万全の状態に戻る頃、荒々しい鼻息を迸らせる零余子は、わざとらしく喉を鳴らして迎え入れた精を呑み込んだ。
初見こそ正気を疑った行為であったが、今となれば分かる。愛する相手の全てを受け入れたいという気持ちは、人間も鬼も変わりはしないのだ。
愛する男の精を受け入れ、花のように柔らかな笑みを湛える零余子。
彼女の体を今一度眺める。額の角や目の色を除けば、ほとんど人間と言って差支えのない体。深窓の令嬢の如く白い肌に玉のような汗を滴らせ、控えめに実った仲違いの果実の先端には、ここまでの前戯で奮い立った桜色が、これでもかと主張している。
体を押し付ければ、一層主張を感じ取れる彼女の体を堪能した後、二人はようやく本番へと移った。
零余子を布団の上に寝かせ、股を開かせる。
散々弄び濡れそぼった秘裂からは、これから迎え入れる剛直を期待しているのか、手で顔を覆い隠している彼女とは裏腹に、ひっきりなしに開閉を繰り返しているではないか。
最早、どこに挿入するかもわからなかった時とは違う。
呼び寄せられるがまま、彼は己の剛直を彼女の秘裂に押し当て、そして肉壁を押し開くようにして最奥なる秘所へと踏み入った。
「はぁ……あぁ……!」
無理やり押し入られる感覚に悶える零余子は、手持ち無沙汰となっている手で自身の胸を慰める。
その間も前後運動を繰り返す彼の動きに合わせて、彼女の口からは耐えがたい快楽に弄ばれる生娘のような喘ぎ声が漏れ出す。
「んぁ! あぁ! ひゃあ!」
激しさが増せば、彼女の声音からは余裕がなくなり、
「ふぅ~~~……すぅ~~~……はぁ~~~……」
ゆっくりと、労わるような動きとなれば、こそばゆいようなもどかしいような感覚と共に流れ込んでくる微弱な悦をしゃぶり尽くすように神経を集中させる。
そこには鬼として―――延いては十二鬼月としての威厳はなく、ただただ夜伽に溺れる女の姿があった。
「イイっ……気持ちいい!」
余裕のない声で心に思っている言葉を吐きだす。
「もっと! 貴方が……欲しいっ!!」
乳房をこねくり回していた腕を差し伸べる零余子に、その手を掴んだ彼は、真摯な表情になってすぐさま彼女を抱き寄せる。
「あああっ!! 激しっ……あっ、ダメ!! こんなのすぐ……!!」
押し殺すような甘露な喘ぎ声が鼓膜を打つ度、彼の動きは苛烈さを増していく。
蠢動する零余子の肉壁を押し広げ、擦り付ける。下半身から全身がバラバラに引き裂かれそうな―――そうした錯覚をしてしまうほどの快楽に蝕まれる零余子は、喘ぎ声を上げ続けているが故に閉じることのままならない口から、牛の如く節操なく涎を垂らす。
「はぁ゛ッ! あぁっ!! っく、ぁぁぁぁああああああ!!!」
ここ一番の絶叫と共に体を跳ねさせる零余子。
そんな彼女の膣内が、受け入れている肉棒を余すところなくしゃぶり尽くす勢いで収縮するものだから、思わず彼も吐精してしまう。
そうして下半身にじんわりと広がる熱を感じ取ったのか、心ここに在らずといった面持ちの零余子は、自然と己の腰を彼の方へと押し付けた。
「はぁー……! はぁー……! はぁー……!」
大げさにも思える息遣いの零余子は、滝のような汗を流す額を拭った後、ようやく彼から腰を引き抜いた。
粘着質な体液が何度も打ち付けられることにより、白濁と化し、あまつさえ泡立った愛液は、数日は抜けないであろう淫靡な臭いを放っている。
すると間もなくして、ヒクついた秘裂からどろりと重湯のような白濁が溢れ出た。
それは重力に引かれ下へ下へと伝い、綺麗な菊門を覆い隠す。人間の頃の名残。排泄をしない鬼にとっては、屁にもならない場所であるが、そこを愛する男によって穢されるのは―――悪い気がしない。
妖艶な笑みを浮かべる零余子は、零れた白濁液を掬い、舐りつつ立ち上がった。
「良かった。貴方も気持ちよくなってくれて……」
額の角が触れるほど眼前に顔を寄せてくる零余子に、彼も思わず頬を紅潮させる。
「でも、今日はもう少し毛色を変えようと思って……」
そう言うや否や、零余子は後ろを向いた。
次の瞬間、彼女の体から鈍い音が聞こえ始める。骨が軋み、肉が裂けるかのような音は聞くに堪えないものであるが、それ以上に目の前で広がる幻想的な光景に、彼は目を離せなかった。
「……ど、どう?」
そこには一回り大きくなった零余子が立っていた。
少女然としていた姿から一変、髪も長くなり、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるという魅惑的な体。主張が控えめであった果実も、今は収穫する時期を取り逃した代物のようにたわわに実っているではないか。
巷では、女体というものは慎ましやかであるといいと聞くが、これを目の前にすれば世間の常識などどうでもよいと思える魅力を感じられる。
一回りも二回りも(諸々が)大きくなった零余子の姿に、彼の息子はかつてないほどにそそり立っていた。
小さい頃、御伽噺で女の妖に男が誑かされる話を聞き、そんな馬鹿なとは思っていたが、今となっては嫌というほど誑かされた男を理解できる。
まことに魅力的な体を目の当たりにすれば、妖や鬼など関係なしに、本能は反応してしまう。悲しいことに、それが男の性だ。
故に彼は、鬼の擬態能力を応用し成長した零余子に抱き着いた後、理性の
「あっ! やぁっ!」
立ったまま、片脚を持ち上げられて秘裂に挿入される零余子は、まだ慣れていない姿で自身の果実が節操なく暴れる様に頬を赤らめていた。
と、彼女の声を聞き本当に嫌がってはいないかと止まった彼に、彼女は満更でもない顔で「……続けて」と希う。
それがまた彼の情欲を煽り立て、普段よりも熱い絡みを演じた末、両者は三度目の絶頂に達した。
「ん……ふぅ……!」
大人な姿のままの彼女との接吻は、今後如何なる情婦を相手にしても物足りぬと感じてしまいそうな肉厚な味わいであった。
が、お楽しみはそれだけでは済まない。
「んふっ。こ、今度はこれでどう?」
予想以上に受けがよく、興が乗ってきた零余子は、今度は大人とは逆―――つまり子供の姿へと擬態した。
大人の時の山と見間違えるほどの立派な代物とは裏腹の、見事なまでの絶壁。平坦な体にあどけない顔と、一見これっぽっちもそそられない姿ではあるが、子供らしからぬ妖艶な笑みを浮かべる零余子の姿に、不思議と逸物は反応してしまう。
しかし、あと一歩というところで逸物は勃ち切らない。
流石に子供相手に欲情するのは如何なものか?
そうした理性が働く。
だが、
「別に本当の子供じゃないんだから……気持ち良ければいいでしょ。ね?」
「えい」とそれっぽく子供のような声を出した零余子は、仰向けに転がる彼の一物を優しく踏みつけた。
きめ細やかな足裏が、勃ち切らない逸物を心地よく刺激していく。
すると、乗り気ではなかった逸物がみるみるうちに弾力と熱を帯びていくではないか。
それに伴い零余子の踏みつけも興が乗っていき、少ない体重を活かしての遠慮ない踏みつけを繰り返す。
と、これまで生きてきた中で感じたことのない感覚に戸惑いつつも、未知の快感に彼は達してしまった。
「……結局感じてるのね。助平」
蔑むような声を紡ぐ口。
しかし、浮かべる表情は子供とは思えぬ妖艶な笑みであった。
その落差が、彼の胸で渦巻いていた背徳感を大いに刺激する。これは不味い、ハマってしまいそうだ。相手が鬼だからこそ許される情欲を胸にし、彼は腕で覆い隠してしまう矮躯の零余子を抱きしめる。
それからは子供の姿の彼女を愛撫で達させ、体力が尽きるまで彼女との夜伽を心行くまで楽しんだ。
子供の姿の零余子が、そそり立つ剛直を舐る。
大人の姿になれば、今度はたわわに実った果実で剛直を包み込んでくれもした。
そして最後には、いつもの姿に戻って互いの愛を確かめ合うように向かい合い、口吸いをしながら情欲の熱が収まらない秘所を擦りつけ合った。
「はぁ……はぁ……!」
体内で暴れる情欲の熱を吐きだすように、喘ぎ声と共に熱く甘い吐息を出す。
散々体を重ねて混ざり合った二人の体液が、鼻をつくような刺激臭を漂わせるものの、寧ろそれらは二人の情欲を煽るだけだ。
苛烈さと愛しさが入り乱れる中、一杯一杯であった快楽の波をせき止める堤防が決壊する。
花火のようにパァっと視界の中で明滅する光。それは幻覚でしかないが、そう錯覚するほどに、最後の絶頂は落雷のように強烈であった。
「っ、あぁぁああぁぁぁあぁぁあああ!!!」
体を海老のように反らし絶叫する零余子は、そのまま布団の上に倒れ込み、これまた雷に打たれたかのようにビクビクと痙攣する。
「お゛っ! おぉ! あぁ……はぁあ゛ぁ……!!」
涙を流すほどの快楽の余韻に浸る零余子は、女性が発してはならない獣のような声も漏らしていた。
だが、彼はそのような彼女に幻滅することもなく、寧ろここまで彼女の余裕をなくすほどに気持ち良くさせられたという満足感に浸っている。
そうしてドロドロに融け合った二人は、彼が動けなくなった頃にまぐわいを止め、激しく熱い時間とは一変した、しっとりとした時間を共にする。
くたくたになった彼に膝枕してあげる零余子は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、見上げてくる彼の顔を覗きこむ。
と、彼が不意に問いかける。
「本当に人喰い鬼なのか?」と。
ここで零余子は返答に困った。
確かに今までは己の食欲を満たすために大勢の人間を喰らってきたが、ここ最近はまったくといって腹が減らず、一口も人肉を口にしてはいない。
それもこれも、彼と初めての夜伽を過ごした後から、ふと思い出したかのように蘇ってくる食欲も、体を重ねた後は胸いっぱいに広がる多幸感でどうでもよくなっているからだ。
しばらくう~んと考えた後、思いついたかのようにいじらしい笑みを湛える零余子は一言。
「貴方を喰べてる」
八重歯のように鋭い犬歯を覗かせて笑う零余子。釣られて彼も笑みを零す。
図らずも