01 (エロなし)
桜庭悠二はカフェでコーヒーを注文すると席につき、スマートフォンを取り出して操作を始める。
パスワードを入力してロックを解除。するとメイン画面に入れた覚えがないアプリを見つけた。
《ラブ・ハンター》
何だ、これは?悠二は訝しむ。彼にはこのアプリをインストールした記憶がなかった。このスマホ、先程落としてしまい、交番に相談したところ落とし物として届けられていたのだ。自分の手もとから離れて一時間も経過していなかったはずだが……
いかにも怪しいアプリ。しかし、悠二の内にある好奇心が警戒心に勝った。彼はそれをタップしてアプリを起動させた。
『これから初期設定を始めます。設定はゲーム開始後でも変更できます。最初に名前を登録してください』
そんな文言が表示され、初期設定入力のためのテキストページにカーソルが点滅している。
悠二は暫く考える。プレイヤー名に実名を使うのは不味いと思い、《ディック》と登録する。咄嗟に思いついたのは好きな作家の名前だった。
プレイヤー名を入力して決定をタップすると画面が切り替わる。
『あなたの好みを登録します。これから出てくる画像に点数を付けてください。
目安は次の通りです。
SSR(スペシャルスーパーレア) 91点以上:超大好き
UR(ウルトラレア) 81~90点:大好き
SR(スーパーレア)71~80点:好き
R(レア)61~70点:まあまあ好き
N(ノーマル)51~60点:どちらかといえば好き
C(コモン) 41~50点:どちらでもない
NR(ノーレア)1~40点:嫌い
以上となります』
それから画像が表示された。これといった特徴のない平凡な容姿の、二〇代前半の女性だ。
好きでも嫌いでもない。平凡な容姿で個性も感じられず食指も動かない。
悠二は50点にした。そうすると次の画像が現れる。多様な容姿のタイプ、年齢層の女性たちが表現される。このようにして悠二の好みのタイプを判断して登録を行っているのだろう。
そうして悠二がランク付けを終えたことで終了画面に辿り着いた。
『モンスター表示のレア度を決めてください。デフォルトはレア(61点)以上です』
悠二はデフォルト設定のまま進めようと思った。
『初期設定は終了しました。それではゲームをお楽しみください』
画面が切り替わって、地図が現れた。よく見れば悠二の現在地のようだった。街へ出て何かを探さないといけないのか?
インフォメーションに従い、プレイヤー情報を確認する。
レベル:0
名前:ディック
年齢:27歳
経験:0匹
籠:5つ
愛の矢:6本(ビギナー特典に神の愛が一本あります)
所持モンスター:0匹
悠二が胡乱げに画面を見ていると突然スマホが振動した。バイブが発動したのだ。
『モンスターを発見しました』
「っ!?」
いきなりか! 悠二が驚くのも無理はないだろう。何せ、彼はまだカフェの席から立ち上がってさえいないのだから。
画面の地図が実画像へと切り替わる。モンスターは表示されていない。ただ悠二の前にある机が映るだけだ。しかし矢印が左方を示している。世界的に有名なゲームアプリのようなシステムなのかと悠二は思いつつ、悠二は矢印に従ってスマホを動かす。
すると悠二の横にいた女性の姿が映った。机に置かれたノートへ熱心に書き込んでいる。集中しているようで悠二が自分にスマホを向けたことに気づいていない。彼女の輪郭が輝き、頭上には下三角のマークがついている。その三角の上にはSSRと表示されていた。スペシャルスーパーレアということか。
まさか最初からSSRが出てくるとは……悠二は自分の強運に驚いた。しかし、モンスターとは彼女のことなのか……?
『モンスターを捕獲するために愛の矢を放ってください。命中すると捕獲できます』
『ディックさんはビギナー特典として神の愛(ラブ・キッス)を一度だけ使用することができます。使用しますか?』
神の愛(ラブ・キッス)は捕獲率が通常の矢よりも格段に高くなるという。
悠二はこのゲームは女性をモンスターと見立てて愛の矢で捕獲する趣向なのだろう。そしてこの特典の神の愛は他の愛の矢と異なる豪奢なデザインの矢だった。
はいといいえの二択が現れた。悠二は少し考えてはいと選択した。愛の矢で捕えるというこのゲームシステムではモンスターが逃げる可能性があるのではないか。もしそうならばSSRは捕まえる確実性をより高めたいと思ったのだ。
それにしても捕まえたらどうなるのだろうか。無音で画像を保存してくれるのだろうか?
悠二はインフォメーションに従い、愛の矢のアイコンを隣席の女性へ向けて指を滑らせる。
するとCGの愛の矢が女性に命中して彼女がピンクに輝きハートが舞い散るエフェクトが出現した。そして画面に『捕獲が成功しました』の表示が現れた。さらに画面には『SSR捕獲ボーナスで籠が一つ贈られました』と表示された。
『左下のモンスターアイコンをタップするとメニューが出ます』
メッセージが出たので、悠二はとりあえずタップしてみる。メニュー画面が出たので、色々操作していると情報が出てきた。
レア度:SSR 96点
氏名:湊友希那
年齢:17歳
経験:0匹、0回
レベル:0
交際経験:0人
キス経験:無し
性交経験:無し
被捕獲経験:1回、被捕獲中
対象:異性
嗜好:ノーマル
好感度:無関心 (27)
身長:155cm
体重:44Kg
3サイズ:B83/W57/H83
バストカップ:C
作り込みの緻密さ悠二は感心する。ステータスの内容もエロさを感じる。さらに操作すると詳細な情報も開示され、住所や在籍する高校の名前も出ている。また彼女の人となりなどパーソナル情報を開示された。彼女は友人たちとRoseliaというバンドを組んでおり、友希那はそこのボーカルと作詞作曲担当だ。彼女が音楽の道を志したのは父親の影響があること、猫が大好き等々かなり細かな情報が公開されていた。これは虚構なのか真実なのか、わからなくなる。さらに説明画面が現れる。
『性的な満足を与えることで好感度が上がります。好感度が上がることでプレイヤーの支配力、命令への強制力が強まります。逆に好感度が下がるとプレイヤーの支配力と命令への強制力が低下します』
悠二はメニューをタップしてみると、命令のところでメッセージが出る。
通話
メッセージ
召喚
この三つの選択肢が出てくる。悠二は横にいる友希那を見る。相変わらず悠二のことは意識の外だ。
―――まあ、なんでもいいか。悠二は召喚を選択する。アプリの指示に従って彼女を召喚した。
すると机に置かれた友希那のスマホが振動する。木製の机の上に置かれたスマホのバイブによる音は、流石に友希那の意識も思考の海から引き揚げられた。
友希那はスマホを操作してメッセージを見る。
「ふああ……」
友希那は吐息を漏らし、微かに肩を震わせた。すると、隣にいた悠二に気づいたようで悠二のほうへ振り向いた。友希那の頬に朱が差した。向けられている視線は絡み付くようにねちっこい。
正面から友希那を見たのは初めてだがSSRと格付けされるに相応しい類稀なる美人だ。磁器人形(ビスクドール)のような顔立ち。銀灰色の長髪の優美な美女だ。悠二は彼女が年下だと知っていても魂魄を掴まれたような気分になった。
まずは自分から話を振ったほうが良いと判断した悠二は友希那に話しかける。
「召喚……連絡は届いたかな?」
「は、はい……。メッセージを見たら、URLにアクセスしないといけないと思って、そうしたら……」
「そうしたら?」
「あなたがここにいるとわかりました。……ごめんなさい。今まで気づけなくて」
「いや、気にすることはないよ」
悠二は今の友希那の言葉でメッセージには強制力があることを知った。ただメッセージを見ただけでURLにアクセスしないといけないとは思わないだろう。
もしや風俗嬢を呼ぶためのアプリかとも疑ったが、この一連の出来事からその疑いを捨てつつあった。それは友希那のクールさの中に清潔感と上品さが尚更風俗嬢や売春をしている者とは思えなかったのだ。
「あの、私は湊友希那といいます。あなたの名前は……?」
実名を明かすのはまだ不味いか、悠二はそう考えてプレイヤー名を名乗る。
「ディックという。今は何をやっていたんだ?」
「作詞です。私はRoselia(ロゼリア)というバンドでボーカルと作詞を担当しているんです。気分転換にカフェで構想をしていました」
「バンドをやっているのか。それは凄い」
彼女の美声ならばさぞや良い歌を歌うのだろうと悠二は思った。
「今から時間を作れないかな?」
「今日は二〇時までに帰れば大丈夫です」
友希那の返事を聞いて悠二は彼女をホテルまで連れることにした。
キャラクター紹介
湊友希那
第一のヒロイン。『BanG Dream!』に登場するキャラクター。
桜庭悠二
主人公。塩顔の爽やかイケメン。
SSR>URのような独自なレアリティは紛らわしいですか?
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紛らわしい(改善したほうがいい)
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紛らわしくない