目が覚めたら世界規模で強制ハーレムルートだった。 作:赤いUFO
登場するキャラは原作より年齢が多少前後する可能性があります。
「気合いで治せませんか?」
「無理です」
「今度大事なタイトルマッチが、ですね……」
「残念ですが」
「………………ダメですか?」
「ダメです!!」
しつこく確認してくる患者に業を煮やし、強い口調で否定する。
それに患者の男はこのヤブがと舌打ちするが、医師は敢えて聞こえてないフリをした。
「とにかく! 検査その他諸々を終えたら細胞硬化症の治療のためにコールドスリープに入ってもらいますからね!」
バンッと机を叩いて医師は決定を告げた。
「クソッ! あのヤブ医者! 簡単に言いやがって! こっちがランキング1位になるのにどれだけ苦労したと思ってんだ!」
入院着に着替えた男性は苛立ちを隠そうともせずに屋上の柵を蹴りつけた。
「数年も寝てられるかってんだ! どうにかならねぇのかよ」
屋上に座りだすと反対側から男女の言い合う声が聞こえてきた。
「もういいっ!」
痴話喧嘩か泣き顔のまま屋上を降りてく女性。
相手だった男性は屋上の地面に拳を叩きつける。
「どうしろってんだよ!」
「追っかけなくていいのか? 彼女さん、泣いてたぞ」
その姿が気になったことと男女の会話から気になる単語があったため、話しかける。
白衣を着た男性は放って置いてくれと言わんばかりに俯いていた。
「細胞硬化症なんだってな。アンタ……」
続く言葉に白衣の男性は顔を上げた。
「俺もだ」
手を差し出すと白衣の男性はその手を取った。
「俺、朝比奈徹雄。アンタは?」
「水原、怜人、です……」
それから2人は互いのことを話し始める。
最初は敬語だった怜人も徹雄が同い年と知ると自然とタメ口になった。
「じゃあ、徹雄はプロのボクサーなんだ」
「これからウェルター級の王者に挑むところだったんだけどな。この病気のせいで白紙だよ」
忌々しげに吐き捨てるが徹雄はすぐに笑みを作った。
「ま、病気が治ったらすぐに復帰して、また
軽くシャドーボクシングをする徹雄に怜人は強いんだな、と笑った。
「それよりも、ホントに彼女さん、放っておいていいのか?」
「細胞硬化症が治るのに5年もかかるかもしれないって言うんだ。無責任に待っててくれなんて言えないよ」
「でも、それでも待っててくれたら、一生頭があがんねぇだろ?」
子供のように笑う徹雄に怜人は何も言えなかった。
そのまま歩きだす徹雄。
「じゃ、先に寝てっから。びょーきが治ったらまた会おうぜ、怜人」
「うん。また」
そう言って互いに手を振って別れた。
「伯父さん、ごめん。こんな大事な時期に……」
「そんなことは気にするな。お前は病気を治すことだけ考えていればいい。もっとも、コールドスリープに入ったらすぐだろうけどな、お前にとっては」
徹雄は伯父であり、所属するジムの会長である彼に曖昧な笑みを向けた。
両親を亡くしてから引き取り、育て、ボクシングという生き甲斐を教えてくれた伯父に今回の件で迷惑をかけるのは周りから傍若無人と思われている徹雄にしても心苦しかった。
しかし伯父はそんな徹雄の心境を吹き飛ばす。
「お前は、うちの看板ボクサーだ。数年寝ていたくらいじゃあ、降ろさせんさ。目が覚めたら覚悟しておけ! ビシビシきたえてやるからな!」
「はい!!」
それから看護師に呼ばれて冷凍カプセルの中に入る。
(こんな病気、さっさと治して、ゼッテェ返り咲いてやっからな)
その決意が思わぬ形で叶わぬことを彼はこのとき、夢にも思わなかった。
朝比奈徹雄が数年ぶりに目を覚ますと冷凍カプセルの中ではなく、ベッドの上だった。
(ホントに寝てすぐだよ)
病気が治った安堵など何もない。
徹雄が起き上がるより早く、見知らぬ女から声をかけられた。
「おはようございます、朝比奈様」
「えーと……おはようございます……?」
気のない返事を返しながら徹雄は女をまじまじと見た。
年齢はおそらく十代後半ほど。水色のやや外跳ねしたショートカットの髪に赤い瞳。内心を見せない笑みでこちらを見ており、広げた扇子には治療完了などと書かれている。
とりあえず1番、気になっていることを尋ねる。
「今は、何年っすか?」
「今は西暦2045年。朝比奈様がコールドスリープに入って5年が経過してますね」
(やっぱ、そんなにかかっちまったか)
覚悟していたとはいえ、直接聞くとそれなりにショックだった。それから女に指示されるままにシャワーを浴びて身体検査を受けた。
診てくれている女性医師がやたらと熱っぽい視線を向けているのが気になったが、若そうな医師なため、男の鍛えられた筋肉が珍しかったのかもしれないと考えた。
それより今は検査の結果で頭がいっぱいだ。
検査の結果。朝比奈徹雄の細胞硬化症は完全に完治しているとのこと。
ガッツポーズを取る徹雄はすぐに伯父へと連絡を取ろうとした。
しかし、先程の女がまた現れ、今度は外の見えない車に乗せられた。
すると女が自己紹介を始めた。
「申し遅れました。私、朝比奈様の担当官を務める更識楯無と申します。これから朝比奈様の身の回りの世話を任されておりますのでよろしくお願いします」
訳のわからない説明に徹雄は首を傾げた。
「担当官? 俺の病気、もう治ったんだろ? さっさと家に帰りたいんだけど」
相手が年下と思しき女であることと連れ回されている苛立ちから口調が少しずつ荒っぽく戻っていく。
しかし、楯無は動じた様子もなく、話を続けた。
「まずは現在。この世界の状況を説明させてもらいます」
楯無の口から語られたのは徹雄にとって信じられないものだった。
徹雄がコールドスリープに入って1年後、新種のウィルスに侵され、世界の人口は半減。食料生産や科学技術の維持すら難しい状況なこと。
未だに治療法が確立されておらず、世界は衰退の一途を辿っていること。
「なにを、バカなことを……冗談にしちゃあ、質が……」
「残念ながら事実です」
痛ましそうに閉じた扇子を口元に当て、目を閉じる楯無。
その事実が信じられなかった徹雄は、左右に居るボディガードを押し退け、車の中から飛び出した。
「朝比奈様っ!?」
楯無の呼び止める声を無視してそのまま走り去る。
幸いと言うべきか、徹雄が走ってるその場所には見覚えがあった。
(ずいぶん廃れてるけどこの道! 俺が、うちのジムの人間がロードワークでいつも走ってる道だ!)
橋を渡り、少ししたところに徹雄が所属するジムがある筈だ。
コールドスリープで鈍った肉体にむち打ち、ひたすらに徹雄の感覚でついこの間まで走っていた道を突き進む。
(それにしても……)
走りながら行き交う人々を見ていると皆、フード付きの外套で顔と体を隠している。まるで難民だ。
しかし、その光景にも違和感があった。
(なにか……何かが足りないような……)
思えば、目が覚めてからこれまでに人口が半減したとしても、自分以外の居るべき存在が確認出来ない。
目的のジムに着くと、鍵のかかってないドアを全力で開く。
「伯父さん! ダン! カズ! トシ! 俺だ! 徹雄だ!! 病気を治して帰ってきたぞ! 居るんだろ!」
中には吊るされたままのサンドバッグを始め、トレーニングに使う道具が放り出されたまま放置されていた。
どこ行ったんだと焦る徹雄に、ジムの二階から降りてくる足音が聞こえた。
「伯父さん! なんだ居るんじゃ────」
安心したのも束の間。降りてきたのは見知らぬ、三十代の女性だった。
その女性は徹雄を見ると一瞬驚いた様子だった。
「男……」
「誰だ、アンタは……なんでここに……」
問い詰めようとしたが、相手は急に盛った動物のように表情が急変し、徹雄の腕を掴んできた。
「男っ!! 本物のっ!?」
「なっ!?」
その変化に驚いて拳を握ってしまったがプロのボクサーとしての理性でなんとか振るうのを押し止める。
しかし、先程の、左右に居たボディガードの女が、徹雄に詰め寄ってきた女を取り押さえた。
「流石元プロボクサー。目的地を予想できなかったら見失うところでしたわ」
冗談目かした口調で話す楯無。
堪えきれずに徹雄は叫んだ。
「なんだよ……なんなんだよこの世界は!? なん────」
「男性がいないのか、ですか?」
楯無の言葉に徹雄は勢いが止まる。
「先程説明したウィルス。それにはある特徴がありました。それは、男性しか感染しないこと。それを例外は、当時、細胞硬化症でコールドスリープに入っていた男性のみが免疫を獲得していたこと。つまり、朝比奈様を含めて6人だけが、この世界で人としての種を残しうる貴重な資源ということです」
楯無は徹雄に跪づく。
「どうか人類を救うために、残された女性たちと子作りしていただきたいのです」
こうして、朝比奈徹雄の強制ハーレムが始まった。
エロは次回から。でもぶっちゃけ何も考えてない。
楯無が最初に出てきたのは作者が好きなのと立場が噛み合いやすそうだったから。
口調が原作と違うのは初対面で猫被ってるだけです。