ナザリック地下大墳墓。
DMMORPG、YGGDRASILにてトップレベルに登り詰めた。それ程までに熱中したプレイヤー達が作りあげた10階層にも及ぶ。迷宮とも宮殿とも言える居城。
41人いらっしゃった仕えるべき御方も今は唯1人を残すのみ。それでも仕える方がいる限り。懸命に尽くすのが彼らに作られたNPCの在り方だ。
◇
墳墓、10階層ある内の第2階層。石畳の通路を1人の人物が歩いている。白いドレスを身に纏った女性であり、腰から生えた背中を覆う程の大きさを誇る翼に額から伸びている角が飾りではなく、文字通り彼女から生えているものだとよく見れば分かり、それが彼女が人間ではない事を知らせている。
この場には、他にも警護兵らしきスケルトン――骨の戦士達の姿もあるが、彼らは彼女とすれ違う度に跪き、頭を深く下げ彼女の姿が見えなくなるまでそうしている所を見ても彼女の墳墓での立場が相当なものである事が伺える。
それもそのはず、その人物こそ実質NPCのトップにして、大墳墓において間違いなくナンバー2とも言える人物。
守護者統括アルベドであるのだから。
彼女がこの階層を訪れるのは何も初めてではない。それは、彼女をよく見かけるこの階層勤務のモンスター達も証言出来る事であった。
時刻は決まって深夜帯。一体何をしに来ているのかさっぱり分からない。が、それを無意味に詮索する事は許されようがない。彼女と自分達では絶対的に超えられない壁がある。存在意義ともあるいは誕生経緯とも言える沢山の理由。
一番は自分達はいくら死んでも代えが聞く存在であるのに対して彼女はただ一人の存在という事であろう。至高の御方が自ら手間暇かけて創造した存在であるのだ。立場などしれている。
故に彼らは彼女がどうしてここに来ているのかも、そして何をしているかも知りようがない。
アルベドが向かうはこの階層――ここを含めた複数の階層の責任者の住居であった。どこまでも続く石造りの通路。何の面白みもなく、殺風景な風景が続く。本来であれば、侵入者迎撃用のトラップがあちらこちらに仕掛けられているが、それが起動する様子は見られない。彼女の為に一時的に解除しているのか、あるいは彼女自身がトラップ作動を防ぐ何かしらの対策をしているのかは一見しただけでは判断のしようがない。
また、侵入者を迎え撃つというコンセプトの元制作されているこの手の通路は当然の如く複雑に絡み合った迷路となっており、彼女の目的地と言うのは次の階層に進むために重大なポイントでもある為に無論と言うべきか簡単に辿り着けるように出来ているはずがない。
そればかりではない。その迷宮は一定時間ごとにランダムに通路が入れ替わるようになっており、さらにそのパターンも4桁にいく程にバリエーションがあり、回数を積めば良いというものでもないのだ。
それでもなおこの墳墓の管理を任されている彼女には関係ない話のようであり、彼女は迷う素振りを一切見せずに歩き続ける。
やがて、彼女の目的地たる一室に辿り着く。
「お待ちしておりました。アルベド様」
メイドのように出迎えるのはこの部屋の主のシモベにして妾を兼任している者達。
「ええ、シャルティアは?」
余計なやり取りをするつもりはない彼女は簡潔に要件だけを伝え、その事を既に似たようなやり取りを何十回と繰り返している為に承知している
「はい、主は既に奥でお待ちになっています」
言うや否や従者達は両開きの扉、2つある取っ手を掴み開く。
「アルベド様」
アルベドに進むことを促し、そして彼女もそれに従う。
通されたのは屍蝋玄室。漂うは媚薬とも間違いそうに甘ったるい匂い。部屋の中央にはひときわ大きなベッドが置かれており、そこに一人の少女――尋ね人であり、この一帯の支配者、墳墓でも指折りの実力者である階層守護者、そのトップであるシャルティア・ブラッドフォールンがくつろぐように腰かけており、やすりを手に自らの爪を研いでいる。
外見年齢こそ14,15歳であるが吸血鬼である為に実年齢は間違いなくその10倍以上であり、銀髪に赤い瞳。先にアルベドの対応をしたブライドと同じかそれ以上に白い肌を持つ少女であった。身に付けているのは血を連想させる色合いのボールガウンであり、ひと目見た印象としては「怪しき家のご令嬢」と言った所か。
その姿を認識した途端。アルベドは自身の体が熱くなるのを――日頃は爆発しないように抑えているものが一気に溢れだしそうになるのを感じて、早足に彼女の元へと向かう。
「おや、アル――」
まるで自分以外の全てに興味がなさそうであり、その為に来客に気付くのが遅れた彼女がそれ以上言葉を口にする事は出来なかった。
それよりも先にアルベドが彼女の顔を手で押さえ、その唇に自らの唇を押し当てたからだ。彼女達にはかなりの体格差があるために、自然と襲ったアルベドは下を向く形となり、そして襲われたシャルティアは彼女によって、強制的に顔を天上へと向けられている。
重なった唇。アルベドは初めこそシャルティアの唇に吸い付いていたが、やがて自身の舌を彼女の口へと入れようと侵入を試みて、シャルティアの方も特に抵抗する様子は見せずに受け入れる。そして、彼女達――人外である為に舌一つとっても、蛇程に長い彼女の舌は2人の口内で暴れ回り互いの喉を通り越し気道に食道をなめ上げる。
ぐちゅぐちゅと音が部屋に響き、互いの口がぶつかりあい、時折中で暴れている舌が見え隠れする。大量の唾液が溢れ、重力に従って引っ張られるそれらはシャルティアの顔を汚し、更にドレスも汚す。
その光景に部屋に待機していたブライドたちは見とれる。主であり、奉仕する相手である恐ろしくも美しい少女に墳墓をまとめる絶世の美女。
彼女達の絡みはどんな官能小説よりも淫らで美しいものであった。
やがてアルベドの気が済んだのか顔が離れ、2人の間には唾液で出来た糸がひいている。それ程までに彼女達は互いの唾液を飲み合ったという事でもある。
「――はあ、はあ」
「――ベド、いきなりキスとは……主、随分溜まっていんすね?」
ディープキスと呼ぶことすら出来ないであろう深すぎるキスプレイに未だ思考がまとまっていない様子のアルベドにシャルティアは律義にも遮られた言葉を続けて挑発してみせ、口に手を当てほほ笑む仕草をする等余裕を見せつける。
「うるさい。黙りなさい」ようやく正気を取り戻したらしき彼女は負けじと言葉を返して続ける。「私だって好んで貴女を抱いている訳ではないわ。その辺りは理解してもらいたいものね」
「ふ~ん。そう言う事を言うでありんすか~」シャルティアの顔に嗜虐の色が浮かび、すかさず彼女の胸に手を当てる。「その割に、ここはぐっしょり濡れているみたいでありんすが?」
「く、それは」
事実アルベドの乳首からは愛液が溢れており、それが美しいドレスを見事に汚している。
「さ、さっさとやるわよ。時間も限られている事ですしね」
「そうでありんすね。主とやるのはワラワの数少ない楽しみでありんすからね♪」
そう言って、彼女達は互いにドレスを脱ぎ合う。脱がす過程を楽しむよりは、より沢山の時間を相手と肌を重ねて過ごしたいらしい。
そうして、再び唇が触れ合い。同時に互いの乳首を弄び始める。
「あ、そうだ」口が離れたタイミングでシャルティアは何かを思い出したように待機していたブライド達に言葉をかける。「主らも好きにして良いんでありんすよ――ただし」そこで、彼女の目が見開かれ、殺意がブライド達へと投げられ、向けられた従者達は心臓が冷えたのを感じる。
「私達の邪魔はするなよ?」
言う事は全て言ったと再びシャルティアはアルベドとキスを始める。
そしてその言葉に従いブライドたちも己の服を脱ぎ去りそれぞれに始める。傍にいた者とキスをする者。傍にいた者の股に頭を埋める者。自ら宥めに入る者と好き勝手に動き出す。だが、問題はない。主がそうするように促したのであるから。
本来、
この場にいる者達しか知らない夜の情事。それも、現墳墓の支配者にして、唯一残ったプレイヤーであるアインズ・ウール・ゴウンに想いを寄せ、正妃争いに明け暮れていた2人が夜な夜な相瀬を繰り返しては肌を重ねる関係であると誰が予想できようか。
無論こうなったにもそれなりの理由があるのだ。
意外にもこの関係を持ち掛けたのはアルベドのほうであった。
アルベド、彼女は創造主によって性に関しては積極的であった。更に彼女の種族はサキュバス。性を絞り取る存在である存在である為にその性欲は恐らく人間の数百倍にも及ぶものだったに違いない。
そんな彼女は叶うのであれば、自分達の支配者である41人全員(性別だとかは彼女にとって些事でしかない)に自らの体を捧げたかった。
しかし、それも叶わず残すは御一人のみ。いつでも襲っても構わないとその時を待ちわびたが一向にその時は来なかった。その間にも不味い事態が進んでしまう。
彼女自身が己の性欲を持て余してしまうようになってしまったのだ。初めの内は自身で宥めたりもしたが、それも直ぐに限界が来てしまう。ならば、誰か他の者と考えた所で彼女は様々な葛藤に襲われた。
まず、彼女自身そういった経験が全くなく、必然相手もいなかった。
では、外の人間を捕まえて相手させるか? という考えは真っ先に捨てた。偉大なる御方々に創られた身がそこらの者達と釣り合うはずがない。
次に同じく墳墓所属の者達――NPC達の誰かに頼むという選択肢も除外されてしまった。それは、創造主達の意向に逆らうかもしれないと思っての事であった。
自分に、現在愛し合っている少女等は創造主にそうあれと創られたのであるから。こうあるのはむしろ親孝行とも言えよう。
しかし、他の者達がそうであるという確証はない。例えば、階層守護者に双子のダークエルフ等がいるが、彼女達は幼い。その為に創造主もまた彼女達を我が子のように可愛がっていたのであり、そんな幼い子をこんな事に巻き込むことは躊躇われた。
他にも成人した男性の守護者等もいたが、いずれも各創造主の彼らへと求めている意向とどう考えても合わない為に断念したのだ。
結局消去法でシャルティアを選択した訳である。彼女であれば「同性」故に、万が一アインズに抱かれる時が来ても「生娘」と言う事に出来るし、男性と女性では感じる所に違いがあるといっても全くの未経験よりはましであろうと、何より自身の性欲をこれで発散出来れば日中の仕事に集中できると。
そして、話を持ち掛けられたシャルティアにとっても悪い話ではなかった。彼女は創造主の意向により性に奔放とも言える感性の持ち主であった。「同性愛」「死体愛好」等の性癖を持つゆえに骨だけの身であるアインズに抱かれるのも無論心待ちにしているが、それ以上に墳墓には魅力的な女性が多い。彼女が特に気に入っているのは「死体」であり、「同性」であるユリ・アルファという人物である。
かと言って、必ずしも相手が死体である必要もなく可愛かったり、美しかったりすれば抱けるのだ。
アルベドの事は正妃争いのライバルと言う事もあり快く思っている部分は少ないが、その体は別である。女性としてあれ程見事な肉体美を誇る女というのもそうはいない。そんな相手が自分とやりたいと言うのだ。断る理由がない。
他にも彼女には狙いがあった。それはアルベドと体を重ねて、そして彼女を性的に屈服させてやろうとさえ思っている。そうしてゆくゆくは自身の性奴隷等も悪くないかもとその申し出を受けたのである。
◇
ブライド達が淫らに絡み合い楽しんでいるその中央のベッドで彼女達は抱きあう。
「アルベドは胸が大きいでありんすね~」
そう言いながらシャルティアは彼女の胸を揉みしだく。その顔はうっとりとした羨望の色が浮かんでいる。
「――んっ!! まな板にはどうしようもない部分よね?」
シャルティアの絶妙な手業に昇天しそうな意識を何とか繋ぎ止めながらアルベドはそう返し、自身も彼女の乳首を指先でいじり返す。この少女は創造主の趣味で、絶望的なまでに凹凸がない体であり、髪型に衣装を整えれば容易に少年と間違えてしまう容姿でもあるのだ。
「――あぁ! 五月蠅いでありんす! このでか乳がぁ!」
「あらあら、まな板であっても感じるのね?」
互いに罵倒しあい、彼女達は互いの胸に乳首をもみしだいて、指で摘みたおす。互いに荒い息をあげながら、目があえば唇を重ね、体を揺らす。
「ふう……ふう…………やるわね」
「はあ、はあ、そっちこそ」
互いに体力の限界が近づき、少し休憩を挟む。同性愛者ゆえか、己の身体的コンプレックス故かシャルティアはアルベドの胸に頭を預け、あわよくばと長い舌をだして舐めている。
が、休憩もすぐに終わり次のプレイに移行する。互いの性器へと己の右手を伸ばして、指をつっこむ。勿論、互いに罵倒を投げ掛ける事も忘れない。
「とんだビッチよね貴女? あまりにも使いすぎでガバガバじゃない」
「ふん! 主こそ初めは小指でも痛がっていたのに、もう3本入っているでありんすよ」
余りの快感に互いに後ろにのけ反り、とっさに左手マットについて体を支える。相手の指で自分が倒れる等断じて認められない。
「ほら…………はぁ、早くいきなさいよ」
「そ…………! っちこそ」
そのまま互いの手を早める。指の抜き差し速度を上げたり、あるいは途中で指を曲げ引っ掻いてやったり、一秒でも早く相手を果てさせる為に力を尽くす。
(く、アルベド…………)
押し寄せる快感。それを塗り替える程の興奮に欲望を楽しんでいる中、そう考える。この雌は本当に恐ろしいと。
この関係が始まった当初はそれこそ自分の独壇場であった。好きに彼女の体を、その唇を、その胸を、その肌を、その穴を心行くまで楽しみ蹂躙したものであるが、徐々に彼女は技を覚えてゆき、最近は自分が絶頂させられる事もしょっちゅうだ。今やっているこの戦いだって恐らく同時に絶頂を迎える。つまりは引き分けだ。
そして彼女の予想通り2人は限界を迎えた。
「「ああああああああ!」」
互いに盛大にしおをふきあい、エビのように体をのけ反らせてベッドに倒――
――れたのはアルベドのみであった。
「まだ終わらないでありんすよ」
「え?」
ぐったりとした彼女になけなしの力を振り絞ってシャルティアは覆いかぶさり、彼女の股へと己の股を押し付ける。
「シャルティア、貴方、何を!」
「主は黙っていんす。私が気持ちよくしてあげんしょう」
抵抗しようとするアルベドの腹を両手で押さえつけて彼女は腰を振り出す。互いの貝がぶつかる。
「――-~~~!!!!」
「感じているようでありんす。気持ち良いものでありんしょう!?」
そのまま互いの性器をぶつけ、時になぞり、こすりなでる。貝合わせと呼ばれるそれこそシャルティアが長年の経験で得た絶対の必殺技であった。これで落とせなかった女はいない。彼女は腰を振り続けながらアルベドに言葉攻めを浴びせる。
「ほおぉら、ア~ル~べ~ド。早くいきなんし♪」
「あん! ん! ああ! んわあ!」
最早まともに喋ることも出来ずに、それでも喘ぎ声を聞かれるのは嫌なのか必死に口を抑えようとするも。そんなもの、彼女の更なる興奮を高めるだけであった。
「なら、これでどうでありんす?」
「んんn!! …………」
シャルティアは体を前に倒して、アルベドへと全身を密着させる。そして、腰を振りながらも彼女の双丘を指を、舌を使い責める。叶うのであれば、キスもしたかったが、体格差故に出来なかった。
性器と同時に行う3点攻撃。襲い来る快感は3倍。いかに墳墓守護の要であり、硬い戦士であるアルベドであっても耐えられるものではない。その顔はだらしなく崩れ、両手もシャルティアの背へと回されており、まるで彼女を受けいれているようであり、そのまま密着した2人はまるで1つの生き物のように痙攣を続ける。
「ああああああああ!」
そして彼女は果てた。ベッドへと手足は投げ出され、未だに体はぴくぴくと動いている。そんなライバルの様を見て、満足したようにシャルティアは体を起こす。
「ふんふ~ん♪ アルベド、主さえ良ければ私の愛人にしてあげんす。勿論その時はアインズ様を諦めてもらいんすけど! あっはっはっは!」
そう高らかに勝利宣言するように嘲笑しながら、一休みする為に離れようとした彼女の腕に不意に誰かの手が掴まる。
「!!!」
まさか、もうこいつは動けないはずであると視線を向けるシャルティア。
「シャルティア……」
「な」
そしてやはりというか、シャルティアを捉えたのはアルベドであった。彼女の瞳には今なお闘志がやどっている。
「私だけ、気持ちよくしてもらって悪いわ。貴方にもお返ししてあげる❤」
「いや、私は……」
その言葉を待たずしてアルベドはシャルティアを引きずり込む。自らの胸に抱く。
「ほぉら、貴女は私の胸が好きなんでしょ?」
「むぐぐぐぐ!」
言葉では否定しようにもその顔は緩み切っており、彼女がいかに胸に執着しているかが伺える。
こうして延長戦が始まった訳であるが、完璧にシャルティアの性技をものにしたアルベドが彼女を何度も、何度も何度も絶頂させたのは言うまでもない。
◇
それから5時間後。アルベドは自らのドレスを着ながら、ベッドで横になるシャルティアへと視線を向ける。彼女はすっかり果てたようであり、愛液に唾液、それも互いのものが大量に塗られた体で力なく倒れている。その事に満足して、一瞬周りへと目を向ければブライド達も既にひと段落したのか、急いで服を着ていたり、部屋の掃除を始めていたりする。
唯でさえ甘ったるい匂いで充満していたというのに、今夜の事で更にその匂いが酷くなっている。
「ふう、これで今日も一日仕事に集中できるわ」もう一度シャルティアを見る。「礼を言うわシャルティア❤」
最後にと彼女はシャルティアへと近き、その首に手を添えて口づけを行い。微笑んで言う。
「私も案外、貴女との時間が楽しいみたい。貴女さえ良ければ、いつでも私のペットにしてあげるわ」
その言葉を最後に彼女は立ち上がり、部屋を後にする。
大墳墓では支配者の預かり知らぬ所で、NPC達は生きているのである。それは彼の想定しない方向へとも安易に転がってしまう。
さながらサイコロのように。
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