部下を助けてもらい、この船に残る事になり、唇を奪われて、エースを見かけた。そんな激動としか言えないその日の内に、私は白髭さんの部屋で生活する事に決まったらしい。
その為に現在当然のように部屋に案内されている。室内は白髭さんがいるから普通に思えるけど、異様に広い。
私の見張りも兼ねてるのはよく分かるし、お気に入りだった正義のコートはもう着られないだろうと言うのも分かる。それに対して不満は欠片だって無い……ただ、少し不安なだけ。
コートを脱いで畳んでいたら、白髭さんがベッドについては私用の物を用意するのも無駄だろうからと言って、他に必要な物はあるかと聞いてくる。確かにこの大きなベッドがあれば、私も1緒に使わせて貰う形になっても、問題は無さそうな気がするわね。
机はあるけど大き過ぎて使えそうにないから、私用の机が欲しい。後は本棚が足りない。
「机と本棚とペンとインクと紙が欲しいです」
「……衣類は、良いのか?」
問い掛けられてその存在を思い出す。でも、まぁ、スーツだし数日なら仕方ないと我慢も出来る。
今の状況を考えたら、生きていられるだけ感謝しないといけないのはよく分かるから、文句なんて無い。でも、1人で降りる以前に船を降りる許可を得ないと……かな。
「次に何処か人の居る島に着いたら、買い物させて下さい。それまではまぁ、何とかします。あ!古い布を数枚欲しいのと裁縫道具貸して貰えたら助かります」
下着は流石に変えが欲しいから、そうね。捨てる直前の布を貰えれば自分で作ればいいと思う。
他は……大丈夫、かな?うん。
「……ナースから古着貰ってやろうか?」
「嫌がると思いますよ。海兵になんて渡したくないって。だから、大丈夫です」
笑って答えれば、白髭さんに手招かれた。それに素直に従えば、無防備だなと笑われる。
だって……もし戦っても勝てないし、憧れの人だし、何より多分本当に私は白髭さんの事を好きで、信頼してるんだと思う。だから、無防備なのも当然。
「……警戒する必要が、ありますか?」
「あるだろうな」
そう言って笑った白髭さんは私を抱き寄せると唇を重ねる。それが嫌じゃなくて……情熱的で官能的なそれに体がぶるりと震える。
私の口内を堪能しつつ、白髭さんは器用に私の衣服を脱がせて行く。下着も含め簡単に脱がされた私は、当然のようにベッドに落される。
流石に体格差を考えると不安で、でも抵抗する気にはならなくて見上げれば困ったような顔で笑われてしまった。何か、変な顔してたかなと不安になる。
「お前ェ……他の男の前でンな顔見せるんじゃねェぞ」
どんな顔か分からなくて首を傾げると、仕方ねェ奴だと笑われる。そんな白髭さんの腕にそっと触れると、優しい声で名を呼ばれた。
「とりあえず今は、慣らすだけだ……。それだけで終わらせる為にも、余り煽ってくれるなよ?」
「白髭さん……?」
「あァ、忘れてたな。名を呼べナミ」
「……ニューゲートさん?」
「今は、それでいい」
そう言ったニューゲートさんは、私に艶やかな笑みを向けて来る。その顔を見ただけで全身が赤くなったのが自分で分かり、とりあえず顔を両手で覆って隠す。
だって……その年齢に見合わない色気が駄々漏れで、初心者な私には何もそれに対抗する手段が無い。色々な意味で、経験値が違い過ぎる。
そんな私に笑いを落としてそっと触れて来る。それは驚く程に繊細で優しい。
「あっ……まっ、て!少し……ひゃっ!」
「ナミ、お前ェ未経験か」
確認するように問い掛けてくるけど、ニューゲートさんの中では確信があるらしくて、真っ赤になってる私からの答えなんて求めて無いと分かる。混乱の中でニューゲートさんを見上げれば、楽しそうに笑われてしまう。
あられもない声が自分から発せられて、経験した事のないような快楽の波に飲まれて、縋るように何度もニューゲートさんの名を呼べば本当に可愛い奴だと跡を遺される。思考も体もドロドロに溶かされてから、ニューゲートさんが指を入れて来るけど、恐らく指だって下手したら普通の男のそれよりも大きい。
それに微かな不安を感じるけど……私だけ高められてる今、今後の事を考えたらそれに怯えてる場合じゃないのも分かる。だから入ってこようとしてる手とは逆の手に抱き着いて、その衝撃に耐える。
悲鳴のような声が自分からもれるけど、ニューゲートさんはそれを見ていい子だと言うばかりである。でも、私だけがこんなに乱されて……ニューゲートさんは何も……。
「……今は気にしなくて構わねェよ。だから、身を任せていればいい」
言葉にしなくても、何故かニューゲートさんは私の言いたい事を感じ取ってしまうから、私はそれに甘やかされる。甘やかな行為は、少しの苦しさはあるけど痛みを与えないように気を付けてくれてるから私はただ、翻弄されている。
どうして、ニューゲートさんは私をこんなにも優しく扱うのか。私は、ただの侵入者でしかないのに。
「ニューゲー……ト、もぅっ!」
「流れに身を任せておけ……」
目の前が白く染まり呼吸は乱れて、口から心臓が飛び出すような感覚に襲われる。そのまま痙攣する体をどうする事も出来ずに意識を失いそうになると、ニューゲートさんがそのまま休んでいろと霞む意識の向こうで言ってるのが何となく聞こえた気がした。
意識を取り戻すと、誰のか分からないけどシャツとズボンに着替えさせられていた。腰が、鈍く痛むから動くのはつらいけど、何とか動き出した時ドアが勢い良く開いて斧を持ったエースが飛び込んで来た。
それに視線を向ければエースの動きが止まり、ニューゲートさんを求めて視線を彷徨わせる。それから標的が居ない事を確認して斧を床に落とす。
すると、私にズカズカと歩み寄り両手で思いっ切り抱き締められてしまう。エースの思考が読めなくて、どうしたのかと慌ててしまう。
「エース、どうしたの?誰かに、虐められたの?」
「……ナミの中で、俺は何時までガキのままなんだよ」
私を抱き締めた状態でエースがそんな事を言うから、少し考える。……いや、大きくなったとは思ってるのよ?
でも、なんか、震えてるその体が泣くのを耐えて強がってた頃のエースと何も変わってない気がして……。だから、いつまでだろう?
「エースはずっと可愛い弟よ。大丈夫、虐める奴がいるなら守ってあげるから!」
さぁ相手を言えとエースに視線を向けたその時、深い溜息を落としたエースが私から少しだけ体を離して、顔を覗き込んでくる。その顔は妙に真剣で、どうしたのかと思う。
「白髭に、捕まってんのか?」
「……は?」
エースの言葉が理解出来なくて呆けたようにエースを見ていたら、エースの顔が鬼のように歪んで行く。いやいや、せっかくイケメン系の顔なんだから勿体無いからその顔辞めなさい。
「ナミは海兵になったんだろ?それなのに白髭の部屋で、その……首にも跡が……」
言いにくそうに言われたそれに私はビクリと体を揺らして、茹だっていくのを自覚する。そんな私を見て、エースは何故か驚いたような顔をする。
「……結果的には、捕まったけど。でも、合意だから」
「合意だって……年齢と体格差考えろよ!」
「分かってる!私の片想いよ!それでも……好きなんだもん……」
「待てナミ、聞き捨てならねェな。片想いの筈はねェぞ」
突然割って入ったのはニューゲートさんの声で、そんなニューゲートさんにエースが床に置いていた斧を引っ掴んで飛び掛る。それに慌てて手を伸ばすけど、腰に走る鈍痛がそれを邪魔して、声を出すしか出来ない。
「エース、辞めなさい!」
当然エースが敵う筈もなく、簡単に押さえ込まれたエースは、床で呻いている。けどニューゲートさんは、エースでは無く私に視線を向けて来る。
それに何故か体が緊張するので、何があったかなと思う。エースの無礼は姉の無礼とか?
「話は、多分初めから聞かせてもらったと思うが……安心しろ、片想いじゃねェ。俺も想ってる。……欲しくなったと、言っただろう。ナミ」
その声は優しくて、その瞳は甘くて……。私は言葉を上手く口に出せなくなる。
甘やかさないで、1人で立てなくなる。甘やかさないで、私は皆を守る立場に居るのだから。
「だって、私は侵入者で……部下の命を……」
「立派な上官として部下を守って戦い、最後まで庇いつつ教育していたのも見ていたが……俺は、お前ェも帰すという当然の選択をあえてさせなかっただけだ」
ニューゲートさんの言葉に、私は視線を逸らす事が出来なくなる。選択させなかったって、どうして……?
「噂を聞いたら気になって、姿を見たら欲しくなり、声を聞いた時俺の女だと決めた。それだけだ」
ニューゲートさんの言葉に私の思考は1瞬停止しかかり、待て待て有り得ない。いいように解釈すると、泣きを見るぞと自分に言い聞かせる。
だってさっきだってニューゲートさんは、何も良い思いなんてしてなくて、だから……。我慢させて……あれ、ならなんで私を手元に?
「……ナミ、愛してる。惚れてる。だから無理に入れたりしなかっただろうが。どうでもいいなら、今頃ナミは……俺に犯り殺されてるぜ」
「ニューゲートさん……」
「呼び捨てで良い。ナミは俺の女だ」
「っ!ニューゲートッ!」
思わず抱き着けば軽々と抱き締めて、優しく口付けてくる。それに甘い吐息をもらした時、下から声が聞こえた。
「白髭、やっぱりてめェだけは、ぶっ倒す!」
「やれるもんならやってみな。何時でも受けて立つぜ、愛しい息子よ」
「……ふっ、ざけんなァー!」
ニューゲートは私を抱いてひょいとそれを避けると、ナミまで巻き込むなよ息子と言って笑う。それに顔を真っ赤にしてエースは飛び掛かるから、何だかなぁと思う。
だって本当にニューゲートは楽しそうだし、本当に息子がじゃれて来てる感覚なんだろうって分かるから。……こんな愛情に包まれてたら、そりゃ棘も取れるわよねと微笑ましく思う。
エースの件が落ち着いたその日の夜に、ニューゲートにちゃんと抱かなかったから不安にさせたんだろうと言われて、ベッドに沈められた。それに小さく頷いて、私は自らニューゲートへと手を伸ばす。
「私を、ちゃんと抱いて」
「……壊したくねェし、傷付けたくもねェんだがな」
そう言いながらニューゲートは腫物に触れるように優しく私に触れると、待ったは無しだぞと言って弱い所だけを的確に責めてくる。慣れてるのかなと思って、同然よねと自嘲すればニューゲートが余裕そうだなと声を降らせてくる。
「ニューゲートの事、考えてたの。飽きるまででも良いから、傍に置いてね」
「……どうしてお前ェはそう、自信が無いんだ?何を言えば、俺に求められていると理解してくれるんだ?」
そう言ってニューゲートは私の中に入れる指の本数をさり気なく増やして、体を慣らしていく。気を逸らして、痛みを減らして、そうして私を大切にしてくれる。
「抱いてくれたら、多分、少しは自信持てるわ」
「時間をかけてやる位の余裕は、あったんだがな」
苦笑してから、ニューゲートは私の中で指を動かして……その為に苦しくなっても、私は辞めないでと繰り返した。こんなに優しい人を、待たせたくないと思ってしまったから。
ニューゲートが私の中に自身を挿入するに至ったのは、日付けが変わろうと言う頃で……それでも、優しくされていても耐えきれないような体格差がある。
埋めきれないそれに、呼吸さえままならず痛みが体を引き裂くのではないかと思わされる。そんな私を気遣って、ニューゲートは辞めるかと問い掛けてくるけど……。
「……つらいかも知らないけど、もう少し頑張って。私、ニューゲートが欲しい」
「男前過ぎて、困るな……」
息子達に囲まれて幸せだと言うニューゲートは、確かにそれ自体に嘘はないだろうと思う。でも、だからこそ……時折ふと切なそうに瞳が揺れるのを見逃せない。
幸福が壊れる事を、失う事を恐れて怯えるその瞳が、あまりにも綺麗だから……。少しでも長く、私の傍で生きていてくれるなら、他には何もいらない。
そうして美味しく頂かれてしまった後、暫くの期間動けなくなった事は、事故だと思う。それに……動けない私に対して、ニューゲートは優しかったから、構わないどころか幸せだなと私は心から思っていたりするのだ。