※この作品はR-18です。

海軍パロシリーズ   作:夢枕 七変化

19 / 57
バレンタインイベント(side)

 指先が冷えて、持っていた物を落とした事で俺は現実に意識を戻せた。そんな事が自分に起きるとは思わなかった俺は、恐ろしく動揺していると自覚する。

 掻き消えたナミの幻と、大切にしている武器を見て俺は意識が遠のきかけていた。……まさか、俺から逃げ出したのか?

 俺を愛していると微笑み、海軍を去る事に何も衒いや迷は無いように思えていたが……やはり、帰りたかったのか……?

 いや待て、そう言えば数日前に買い物に行きたいと言っていたなと思い出す。俺の縄張りでも無く、海軍に守られているでもなく、治安の悪さと商品の質の良さが有名なその島に行きたいと言ったナミに俺は駄目だと言った。

 それも1人で行きたいと言い張った為に、ナミをそのまま抱き潰して、その結果2日程寝込んだナミが珍しく不満そうな顔をしていたのは記憶に新しい。だとしたら、それか。

 逃げ出したのでなければ、迎えに行けばいい。だが、売られたりしていたらと思えば気が気ではない。

 自らの価値を知らないナミは、無邪気で無鉄砲だ。早く捕獲しねェと危険だ。

 甲板に飛び出して船を出せと言えば、即座に動き出す息子達。ただ、目的地の方角を伝える時につい、ミスをした。

 

 「親父!何処へ向かうんだい?」

 「ナミの所だ!」

 「「「何処だよ!?」」」

 

 それから親父を出し抜くとか凄ェなんて声が上がったが、凄いとか凄くねェとか、今してるのはそんな話じゃねェんだよ。思わず甲板に座り込んで動けなくなった俺に、イゾウがクスクスと笑った。

 

 「本当に親父は、ナミがいねェと昼も夜も明けないねェ……そんなに可愛いかい?」

 「悪い所を探す方が難しいような女だ。世界一の、いい女だと俺は思ってるぜ」

 「……本人にも、言ってやってるかい?」

 「言ってるが、信じねェんだよ。リップサービスは不要だとほざきやがる」

 

 俺の言葉にイゾウは手強いねェと言いながら笑い、その会話を聞いていた他の息子達からは同情のような視線を向けられた。そうして居るうちに到着した島で、息子達が探そうかと言ってくれたが、俺1人で充分だ。

 寧ろお前達だとそれこそ騙されそうだ。ナミの変装技術は、海兵だったからとかじゃ無さそうなんだよな……。

 見聞色の覇気で調べて、ナミの居る店の前まで行けば姿や歩き方、話し方や声まで変えて買い物している姿を見付ける。それにしても、あの豊満な胸をどうやって無くしたのか。

 胸のほぼない清楚なお嬢さんが店内から出て来て、俺を見て逃げようとした。待てコラ、逃がすか馬鹿者。

 

 「変装してるのにどうして分かるのよー!!」

 「匂いだな」

 

 見聞色の覇気を使えれば、変装の意味などほぼない。だが、それを教えてやるつもりはねェんだよ。

 困ったように自分の匂いを確かめているナミは、俺に甘えているのか反応が少し幼い。それが可愛いからと許してはマルコとイゾウが煩くなるのは目に見えているが、傷付けたくねェからな……さてどうやって反省を促すべきだろうか。

 そもそもだが、海軍に見付かれば、お前どうなるか分かってるか?

 それこそ鎖に繋がれて閉じ込められるだろうと、何故分からねェのか。子供をだしに人攫いに攫われて、天竜人にでも売り飛ばされたらどうするつもりだったのか。

 そう言っていくら叱ってみても馬の耳に念仏、何も聞いちゃいねェ。今ナミの頭の中は、買ってきた物に占拠されている様子だ。

 

 「ナミ、俺は怒ってるつもりなんだがな?」

 「ハンセイシテイマス。でもね、1人で買い物に行きたい時もあるのよ。私も1応女だもの」

 「ナミ……」

 「男がいたら買いにくい物もあるし、非戦闘員のナース達は巻き込めないわ」

 「ナミも非戦闘員の航海士だと自覚しろ」

 

 俺の言葉にナミは小さく、それでも逃げ足は普通よりはある方だからなんてごにょごにょと言っている。頭と逃げ足だけで大佐になったと自負しているだけの事はあり、確かに逃げ足は恐ろしいレベルだが……。

 

 「ナミ、反省するまで部屋から出るな。1時間に1度ナースを来させるから、その時にトイレだとか風呂だとかは必要なら行け。分かったな?」

 「ニューゲートのわからず屋」

 

 わからず屋はお前だと言ってデコピン食らわせてから、俺はフラフラと部屋を出る。何だか妙に疲れた。

 海軍系の島でこれをやられてたら、俺はナミを本気で縛り上げていた自信がある。困った子猫だと部屋の中で丸まって寝てるだろう姿を想像しつつ、船長としての業務に戻る。

 エースも漸く落ち着き、この船には家族が増えた。海兵になっていたナミを気にする事無く慕うエースは可愛いが、やらねェぞと何度言ったか分からねェ所だけが問題か。

 気持ちの整理がつかずに夜中になってから部屋に戻れば、俺のコートの中で丸くなっているナミを見付けて、本当に猫みたいな奴だなと思いながらその頭を撫でる。その瞬間に目覚めたナミは、俺を見上げてホッとしたような顔をする。

 

 「……嫌われたかと思ったわ」

 「嫌えたら、楽になれるのかもな。そう思うくらいには、愛しく思ってる。……頼むから、1人で動くな」

 「それは無理よ。私はね、ニューゲートの事は愛してるし、信じてるけど……この船の全員を信頼してる訳じゃないの」

 

 過去にあった事を鑑みれば、ナミの言い分は最もだろう。だが、それでも俺は……。

 

 「せめて、店の前で待つってのでどうだ?」

 「……しょーがないなぁ。お店に入らないなら、誰かと行くのも考えるわ」

 「偉そうに……こうしてくれる!」

 

 言いながら擽ってやればナミは笑い転げて、辞めてーと言う。やり過ぎるとそのまま喰いたくなるから、今日はこの辺にしておくか。

 

 「反省したか?」

 「もう、反省しましたので、擽らないでください」

 

 息も絶え絶えな様子で言うナミに、許してやろうと言って俺はナミを抱き締める。明らかに小人にしか思えねェナミを潰さねェように気を付けながら共に眠り、ナミの謹慎はその日だけで終了した。

 翌日からは、ナミが普通に仕事をしたりして過ごしているのを見ていた。変わらねェ日常が本当に愛しくなる。

 少し違うとするならば、空いた時間に読書ではなくサッチの元へ通っている所だろうが、どうせ新しいレシピとかそんな所だろう。そんな感じで誰かの所へ入り浸るのは珍しくもないから、それは構わねェんだが……。

 そこに何故かエースがついてまわってるのは気になっている。諦めろエース、ナミは俺のだ。

 そう思っていたのが伝わったのか、エースが甲板に座っていた俺の元へ来て騒ぎ出した。だがな、いくら騒ごうともナミは手放さねェぞ。

 

 「親父!体格的に無理があるだろ!ナミを解放しろって!」

 「ナミは俺の女だ。何度言えば覚えるんだ。このアホンダラ!それにな、ナミの方から誘ってくるんだから俺に言われても困る」

 「なっ……!嘘だ!無理だろどう考えても!」

 「二人共大声で何の話してるの!?」

 

 顔を真っ赤に染めたナミが会話に入って来て、俺へと詰め寄るエースを拳1つで沈めてから俺に駆け寄って来た。なんだと視線を向けた直後、クリマタクトで電撃を放たれた俺は怒れるナミに今夜は触らないでと言われちまう。

 まァ……ナミはウブだからな。そう思って笑えばナミは俺を見て唇の動きだけで、ばーかと言ってくる。

 そんな訳で共に寝なかった翌朝、ナミが消えた。またか!?と飛び起きたが、どうやら船内には居るらしい。

 仕方なく起きて迎えに行けば、サッチと2人で鍋を掻き回している姿を見付けた。その鍋からは、何とも甘い匂いが立ち込めている。

 

 「この位でどうかな?」

 「いや、もう少し足しておかねェと途中でダマになる」

 「分かった。……ごめんね、付き合わせて」

 「原材料全て揃えて来てくれたんだから、気にしなくて良いって。それにこれなら分け隔てなく、全員が楽しめるだろ」

 「……助かったわ。船大工の皆にも無理言っちゃったわね。呆れてないかな」

 「寧ろ喜んでたから、気にしなくていいと思うぜ。……なァ、親父」

 「へ?」

 

 サッチは俺の存在に気付いていたらしく、当然のように話を振ってくる。そして、それにより俺の存在に気付いたナミが俺を見て、少し慌てた様子を見せた。

 

 「やだ!起こしちゃった!?ごめんなさい」

 「……何してたんだ?」

 「今日、バレンタインだから、その準備してたの」

 

 そう言って笑うナミは、本当に可愛い。だが、バレンタイン?

 ……ああ、チョコのイベントか。思い出せばナミの行動も理解出来て、ふと笑みが浮かぶ。

 そんな俺を見て、ポーっとした表情になったナミは、俺から視線を離せなくなっている。なので視線でサッチに貰っていくぞと言ってナミを連れ戻せば、続きはやっとくと言ってサッチが笑った。

 どうやらサッチの中では、ナミは可愛い妹枠の様子だ。それに少しホッとした時点で俺も、まだまだだと思わされる。

 

 「ニューゲート、あのね、今作ってたので皆の分は準備出来たから、その……」

 

 言いにくそうに言葉を続けるナミに、俺は首を傾げる。どうしたと言うのか。

 

 「今日、私に少し時間作って欲しいの。……駄目、かな?忙しいかな?皆とも過ごさないとだし、難しかっ「ナミを優先しても、誰も怒らねェから気にするな。バレンタインのイベントが落ち着いたら、2人で過ごそう」」

 

 不安そうなナミの言葉を遮ってやれば、ナミは嬉しそうに笑って頷いた。そして、ありがとうと言うが……俺は何もしてねェだろうと思えば、ついグララララと笑っちまう。

 

 「ニューゲート?」

 

 不思議そうな顔をするナミに、息子に妬くような男で悪いなと思いながら部屋に戻る為に歩く。寧ろイベントが始まるまでの時間も全て、ナミの為にあると言っても良いだろう。

 

 「俺のチョコは何処にあるんだ?」

 「部屋にあるけど……?」

 「なら、部屋で食うか」

 

 俺の言葉にイベントとか食事の前に食べるの?と不思議そうに首を傾げるが、本当に無垢だなお前。……この場合、チョコはお前だろう。

 ベッドに落として服を脱がせれば驚きつつも抵抗しないナミに、無防備にも程があるなと思う。だから俺は最もらしい事を口にして、ナミを1日俺の傍に居させると決める。

 

 「チョコを、食わせて貰うぞ」

 「チョコなら、あっ……!」

 

 手や顔についているチョコを舐めてやれば、漸くその意味に気付いたらしくナミは1瞬で全身を赤くして見せる。だが……食われる事に異論はねェだろ、ナミ。

 

 「可愛いチョコだな、大切にじっくり味わってやろう」

 「ニューゲートの、ばか。朝から、そんな……」

 「嫌か?」

 

 俺の問い掛けに、嫌なんて言う筈がない事を知っていて、俺は羞恥に震えるナミを見詰める。果物をチョコでコーティングしてある物もあると聞いているから、ナミもその部類だろうなとこんな時に思う。

 安心しろナミ、お前から求められるまでは……チョコとして扱ってやるからと残酷に囁いて、そっとその体に唇を這わせれば、ナミからは喘ぎの隙間に抗議される。だが、今日はバレンタインだからな、チョコは大切に舐めるように食うのも良いだろう?

 Happy Valentine……羞恥に震えつつも惚れた弱味かなんなのか、抵抗出来ない女を男は嬉しそうに腕に抱く。歳の差のある恋愛は、いつだって歳上の方が不安なものだからと、甘える男に女は結局勝てはしない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。