※この作品はR-18です。

海軍パロシリーズ   作:夢枕 七変化

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原作改変します。苦手、嫌いな方はこの先はお読みにならないでください。


望む未来

 敵とは言っても、ゴール・D・ロジャー(海賊王)はニューゲートにとってライバルのような存在だったのだろうかとニューゲートとエースの様子を眺めていて思う。まぁ、ニューゲートの場合、本当に憎い敵でもきっとその息子に罪は無いって言うだろうから、和やかとは決して言えないバタバタとジャレてる2人を見ながら当てにならないかなと思って笑ってしまう。

 そんな海賊王の船医だったクロッカスさんの居場所に、クジラに逢いたいと言って案内してみたら、意外とすんなりニューゲートは治療を受けてくれた。それにクロッカスさんも抵抗の素振りさえ無く治療してくれたのだ。

 そのお陰でニューゲートの病はもうほぼ完治に近い。後はニューゲートがお酒を控えてくれるともう少し早く治るんだけど……。

 それだけは期待できそうにないから、ここは味だけお酒ってのを早く開発しなくてはと、私は密かに使命感に燃えてたりする。試作品を作ったのに、ニューゲートに薦めたらそれは酒じゃないと笑われてしまった。

 ナースの皆様と協力してお酒を薬膳酒とすり替えたり色々してるけど、いつまでもは通じないのも分かってる。お正月はそれもあって、随分……その、虐められたし。

 そんな訳でお酒の開発に勤しむ私を、マルコが困ったような顔で眺めているのには気付いてる。……隊長格とニューゲートには、多分気付かれてる事は分かってるのよ。

 でも何かをしていないと、叫びだしそうなのを抑えているの。だって、明日にはエースが正式に隊長になるから。

 表向きはそれまでにニューゲートの為にお酒を作ろう計画を実行中に見えてると思う。でも、実際は少し違う。

 だってこのままだと、サッチが殺されてエースが追いかけて行って、そして、ニューゲートも含めて皆が死んでしまう。そんなのは……嫌だし認められない。

 

 「ナミ、どうしたの?最近おかしいよ」

 

 ハルタの声でハッとしてお酒を手にした状態で顔を上げると、親父と喧嘩でもした?なんて聞かれてしまう。それに対して返事をしようとしたのに、上手く声が出せない。

 ……喧嘩なら、まだ良かった。いいえ寧ろ、喧嘩してみたいわね。

 喧嘩なんて、1度もした事ないわ。いつも甘やかされてて、喧嘩になんてなる筈も無いのよ。

 そう思い苦笑する私に、ハルタは全くなんて呆れたように言う。でも、どうしたら失わずに済むか分からないんだもの仕方ないじゃない。

 

 「……その調子で親父にも隠してるんだ?それで親父はいつか話してくれるって気長に待ってて、ナミは言い出せなくて落ち込んで何かずっと作り続けて体調悪くしてるって所?」

 

 疑問符つけてるけど、明らかにこれはハルタの中で確定してる。だって、ハルタの瞳が笑ってない。

 喧嘩はしてないわよ。寧ろ毎晩のように可愛がられてて、体調が悪いとするなら体力不足だと思われるくらい……なんて、言えないから言葉に詰まる。

 

 「……ナミ〝今は俺しか居ない〟から、話してみなよ。話したら楽になるかもよ?」

 「私……好きな人が出来たの」

 「「「「え!?」」」」

 

 ハルタが俺しか居ないって所強調したから、まさかと思って言ってみたらヤッパリ隠れてたわね。隊長達に混ざってニューゲートが居るのを見ればどうにも笑いが抑えられなくて、引き付けを起こしたみたいに笑ってしまう。

 情けない顔してるニューゲートに、私は何度でもニューゲートを好きになるわなんて笑ってから立ち上がると、内心で話せなくてごめんなさいと呟く。実際、ニューゲートのそんな所が可愛くて私に勝ち目なんか無いのだ。

 悪魔の実図鑑をクーちゃんに頼んでいるので、次にクーちゃんが来たらそれを受け取って読もうと思ってる。それにより、解決策が何か浮かべば良いけれど。

 私はどうしたら、ニューゲートの大切な家族の命を守れるだろうか。どうしたら……ニューゲートの心を守れるだろうか。

 今の私に出来る事って、何だろう。海軍の伝を使えなくなった事に、私はこの時初めて不便さを感じた。

 そんな先の見えない不安の中で、エースは隊長となり私はヤミヤミの実の特徴を図鑑で確認していた。それから半月程経過したある日、ヤミヤミの実の色違いのような悪魔の実を私は街で偶然手に入れる事が出来た。

 やると知ればコッソリ参加し続けていたオークションの中に混ざっていたその悪魔の実は1億程度で、まぁ定価だけど何の実か分からないから少し高い位かもしれない。それでも、あの実は使えると判断したのだ。

 これが大きな分岐点だと、そう判断した私は食紅系の物を購入してヤミヤミの実と同じ色になるように、何の実なのかも分からないそれを見た目だけ変えて行く。そして、改造したそれを手にティーチが見張りから戻る時間を見計らって甲板に出た。

 多分目敏く見付けるだろう。そう分かるから、この行動を決意したんだもの。

 躊躇う事は、許されない。私はもう、1番大切なものを定めてしまった。

 世界よりも、ベルメールさんやノジコよりも、ニューゲートが大切なの。それが無くても、私はエースも可愛いし、サッチだって大切な家族だもの。

 

 「……ナミ、それ、どうしたんだ?」

 

 突然掛けられた声に、私は視線を向ける。もう、後戻りは出来ない。

 

 「この間の島でね、闇市があって……悪魔の実か変わった実か分からないからって事で安く出てたから念の為に買ったのよ」

 「ナミが、喰うのか?」

 「……まさか。私は戦闘員じゃ無いから、ニューゲートに相談しようと思ってて……でも、なんて言えばいいか分からなくて……」

 「……ずっと、落ち込んだ様子でいたのはそれか。親父が心配してたゼ?」

 

 気の良い明るい男。仲間と共に歌い、踊り、食べ物に舌鼓をうつ姿は好印象を周りに与える。

 よく居る海賊らしい海賊。白髭海賊団にいるからか、基本的に女子供に手を上げるような事もない。

 ……怨みはない。今はまだ。

 

 「この実を見せれば、解決なんだけど……闇市に出入りしてるのバレたら怖いなって」

 「……親父を筆頭に隊長達はナミに激甘だから、その不安は分かるな。ならよ、それ……俺にくれねェか?」

 「え?」

 

 不思議そうな顔をしてティーチを見れば、名案だとでも言わんばかりの顔でそんな事を言う。私は〝何も知らない〟のよ。

 決めたからには迷うな。演じきれ!

 

 「ナミが俺を嫌ってるのは知ってるが、こうして話したのも何かの縁だ!困ってるなら譲ってくれ」

 

 ティーチはこれを、ヤミヤミの実だと信じているのだろう。確か彼は2個の実を食べられるから、これ1つでは完全には未来を防ぐ事は出来ない。

 それでも……やれるだけの事はやりたいのよ。やらないでいて、後からあの時行動してたらと悔やむなんてそんな事は絶対嫌。

 だから、ゴメンね、ティーチ。嫌ってないの、ただ、貴方が私の大切な者を奪う〝可能性〟が怖いのよ。

 

 「嫌ってる訳じゃないのよ。ただ、怖いの」

 「……怖い?」

 「私も過去に色々あったから、その……似てるのよ、昔酷い目に合わせてくれたヤツとティーチの雰囲気。……怯えてゴメンね。エースの事、守ったりしてくれてるのに」

 「自分の隊長だからな」

 

 豪気に笑うティーチに私は偽物の実を差し出す。それに目を見張るティーチに、私の手は震えていないだろうか。

 

 「これからも、エースの事頼めるなら……あげるわ。私は戦闘員じゃ無いから、実際役立てられないし……怯えて不愉快な思い、させてるからそのお詫び」

 「金なら、払うゼ?」

 「いらないわ。ただ、何の実だったかは教えてね。能力自体には興味あるし、ニューゲートにもちゃんと家族の能力は伝えておきたいから」

 「なら、結果は親父の前で披露してやるよ!」

 

 そう言ってティーチはゼハハハハハハと笑い、私の目の前でそれを食べた。食べ終えて能力を使おうとでもしたのか、ティーチは突然顔色を変えて違う実だと!?と叫ぶ。

 悪魔の実は食べた瞬間に、それにより出来る事が分かるようになるのだと聞いた事がある。だからこそ図鑑で確認して、何の実だったのかを知る事が可能になるのだと。

 ……だとしたら気付かずに食べたルフィって、幼かったとはいえ奇跡の存在よね。まぁ、自分の腕が伸びてる事に気付かないで、歩いちゃう子だから仕方ないかもだけど。

 私はそんな事を考えながらそれを見て、震えそうになる自分を叱咤しつつ、大丈夫?腐ってたの!?なんて聞いてみる。私はなんて劣悪なのかしらね。

 

 「腐った普通の果物の方がマシだったゼ。これは……ヤミヤミの実じゃねェ!!」

 「ティーチ?」

 

 私は〝何も知らない〟のだから、ティーチは私を責められない。欲しいと言ったのはティーチで、私はこれを〝何の実か分からない〟と言ったのだから。

 ティーチは長年の計画がと言って崩れ落ちる。それを見て、酷い事をした自覚はあるけど、ゴメンね……私はサッチを失えない。

 サッチを失えば、皆がどれ程悲しむか、そして、その後にどんな悲劇が待っているかを知っているから、ドミノ倒しのように連鎖する悲劇を、私は受け入れられない。ごめんなさいと、何度も心中で謝りながらも後悔はないのよ。

 

 「なんだって、こんな事に……!」

 

 その刹那、ティーチはぶつける先の見付からない感情をその瞳に宿らせる。そして、その感情を持て余して私の首に手を伸ばした。

 私はそれを見て、そっと眼を伏せる。抵抗はしないわ。

 だって私は、まだ何もしてないティーチの夢と野望を壊した。そして、私はそれを後悔する事なく、皆が生きていてくれるならそれで良いと胸を張れるのだから。

 だから、それでティーチの気が済むなら構わないと……そう思っていたのに、爆音と共に風が吹き抜ける。何事かと思ったら、目の前に見慣れた白いコートがあって……。

 

 「ティーチ!今、何をしようとした!!」

 「お、やじ……」

 「俺の女を、殺そうとしたな」

 「……!それは!」

 

 怒りに震えるニューゲートの声が聞こえて、背を向けられていて表情は確認できないけど、何故か悲しんでるようにも見える。それに対してやはりニューゲートで見えないティーチが、焦った声で言い淀むのが聞こえている。

 

 「未遂だが、俺の到着が遅ければ、それは叶ってた。違うか?」

 「親父……だが!」

 「……悪魔の実を持て余してるって辺りから、聞いていた。お前ェが勝手に勘違いしたんだろうが!」

 

 それ、ほぼ最初からよねと思うのと同時に、ニューゲートの背に庇われて気が抜けたのか、私は自分の膝から力が抜けるのを感じた。今更、体が小刻みじゃなく震える。

 ニューゲートはティーチから視線を外すと、震える私を強く抱き締めて、囁くように言う。それは何処か哀願にも思えるような、悲哀に満ちたもので。

 

 「ナミも少しは、抵抗しろ。家族だからって、なんでも受け入れるんじゃねェ……」

 「ニューゲート……」

 「俺は、ナミを、喪うつもりはねェぞ」

 「ニューゲート……ごめんなさい。私は、ニューゲートを泣かせなくないのに……」

 

 震えるその腕が、心で泣いているのだと伝えてくるから、だから私はそっと両腕を伸ばしてニューゲートに抱き着く。触れた所から、想いが伝わればいいのに。

 どれだけ私がニューゲートを愛しているのか、ニューゲートを大切に想っているのか。それが、伝われば良い。

 

 「ニューゲート……心配かけて、ごめんなさい」

 「そんなに、謝るくらいなら後でキッチリ聞かせて貰おうか。とりあえず、部屋にいてくれ。……マルコ!」

 「連れて行くよぃ。ティーチの件は、親父が直接?」

 「あァ、しっかり話をしねェとならねェだろうからな」

 

 そんな言葉を交わしながら、私をマルコに預けるとニューゲートはティーチと向き合う。私はそれを見つめながら、マルコに促されて先に部屋へと帰る事になった。

 その後ティーチとニューゲートは話し合いをしたようで、ティーチは船を降りて自分の旅を開始した。そう、つまりティーチは生きている。

 だけどこうなればサッチが殺される事は無い。それにホッと胸を撫で下ろす暇も隙もなく、ニューゲートに甘く激しいお仕置きをされながら何故食紅使ってまで騙したのかを吐かされる事になったけど、それはまた、別なお話。

 未来は、私の知らない形で前に進もうとしている。本来あるべきでは無かった、誰も知らない未来へと……時は、ゆっくりと、けれど確実に刻まれ始めた。

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