※この作品はR-18です。

海軍パロシリーズ   作:夢枕 七変化

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猫の日イベント(side)

 初めに遭遇したサイクロンは、いつものようにナミのおかげで躱す事に成功した。だが、その後に逃げた先でまたサイクロンが接近してるとナミが言い出して、そのふたつの間に当たる角度で逃げたものの、後方で合体したサイクロンに追いかけられちまう。

 そこで今度は海坂まで発生しちまい、上手く逃げられなくなった所で真正面からサイクロンが襲って来て、ナミは戦士のような顔で海と空に対峙し、指示を飛ばし続けてくれた。それによりなんとかサイクロンの連続攻撃を乗り越えたが、それには三日不眠不休となったナミの尽力が功を奏している。

 ただ寝ていないだけでも疲労困憊になって当然の期間であるのに、その間ずっと神経を張っていたのは周知の事実。その上指揮を執り、指示を飛ばして、大声を出し続けていたのだから休ませてやりたい。

 

 「ナミ、少し寝て来い」

 「うん」

 

 珍しく素直に頷くナミだが、少しだけ不安そうに俺を見るのが気になって仕方ない。なんだと言うのか。

 だが、俺も今はやる事が山のようにあるからとナミから視線を外す。そうしなければ、家族を困らせちまう事を知っているから。

 

 「サッチ!なんか、消化に優しい物をナミに食わせてくれ。マルコ!怪我人や病人はどうだ?」

 「おう!親父、すぐ用意するぜ!ナミ、とりあえず1緒に来いよ」

 「今報告書纏めてるから、持って来るよぃ。怪我人も病人も後遺症の残るようなのはいねェから、安心してくれていいよぃ」

 

 それぞれの返事を受けて俺は視線を動かす。視界の端でウロチョロしてる息子から順に声をかけて、指示を飛ばして行く。

 

 「ハルタ!モビーに問題が起きてないか調べて来い。エース!寝るなら部屋に行け、甲板は今から掃除だ」

 「はーい!!」

 「んー……寝てねェ、よ……?」

 

 明らかに寝ていた癖してエースは強がるが、俺の言葉で起きたのは起きたらしい。ハルタは少し間延びした声で返事をしたが、それもまた無事な証拠だ。

 

 「イゾウ!報告を聞こう。ジョズ!掃除を任せるぞ。ビスタ!備品のチェックを頼む」

 

 俺の言葉にそれぞれが反応して動き出せば、エースはサッチに伴われて歩くナミの後について行く。雛鳥かお前はと皆が笑うのを聞きつつ次々とやる事を終えて行けば、食事を終えたナミが戻って来た。

 何故ここに戻るのか。部屋にしかベッドは無いと言うのに、どうやって休むつもりなのかと溜息が出そうになる。

 

 「休めと言っただろう」

 「うん。そうおもったんだけど、報告があるのよ。ビスタがね、インクと食料足りないって言うの。だからね、島、寄らないと」

 「……フォッサ、この近辺の地図と海図、あるだけ持って来い」

 

 意外とナミと気が合うのか、フォッサはナミと話してる事が多い。ついでに無防備なナミを守ってくれている事も気付いている為に、妬く事もできやしねェ。

 そんな事を思っていたら、俺の足元に座って眠っちまうナミに気付く。……俺が居ないと眠れないのか。

 

 「仕方ねェな」

 

 そっとナミを抱き上げて、膝の上で寝かせてやれば膝の上で丸くなって寝ちまう。こりゃ猫だな……と笑った時、近くから複数の笑い声が聞こえて来た。

 

 「そんな事思ってないクセに」

 「顔が溶けてるわよ、オヤジさま?」

 「あら、ナミちゃん寝顔が無防備」

 

 ナース達の囀りに、俺は勝てる気配がない。その上ナミが膝にいては敵前逃亡さえ許されないのだから、困ったものである。

 そう思った時、甘えたような舌っ足らずな声が聞こえて来る。耳をすませば、それはナミが俺を寝言で呼んでるらしいとわかるが……。

 

 「ん~……にゅーげーと……」

 「ん?」

 「……すき……」

 「そうか。俺は愛してるのにな」

 

 寝惚けてるナミに張り合えば、突如として黙る家族達。それからナミに注がれる微笑ましそうな眼差しが、いつまでも元海兵だからと壁があると思ってる方がおかしいのだと教えてくれる。

 それから海図や地図を元にして近くの島へ行くように指示を出せば、到着までは寝かせてやれるかと数時間で到着しちまいそうな所にある島を思う。確か、あの島は猫の多い所だったな。

 その後島に到着すると同時に、港に集まっている猫を見付けたナミが買出しに行くと言う名目で飛び出して行き、猫に突進したのを見れば誰もが笑うのも当然だろう。買い物じゃなくて、狙いは猫だろうがと笑ったのは、つまり俺だけじゃねェって事だな。

 

 「仲間に逢えた喜びで暴走してるねぃ」

 「猫と喋る時は、にゃんにゃんにゃんって言うのかな?」

 「ナミは人間だから、流石に猫とは意思疎通できないと思うが?」

 

 上からマルコ、ハルタ、ビスタである。ビスタの言い分が客観的には一番真っ当に聞こえるが、正直マルコの発言に内心では同意しちまった。

 そこに首を傾げつつ参戦したのがエースだ。ナミの弟を長くやってるエースの言葉は、影響力もそれなりにある。

 

 「でもよ、ナミってニュースクーと意思疎通してるよな。なんか、仲良いし。なら、猫とも会話しておかしくない気がする」

 「……猫を引き連れて帰ると不味いから、迎えに行くか?」

 

 僅かな沈黙の後、イゾウの発したその言葉で船番を除いた家族が、買出し組まで共にナミ捜索を開始する事になった。だが……息子達がいくら探しても見つからないと言われれば、俺も腰をあげるしかない。

 うちにはステファンもいるから、猫は不味いだろう。ステファンが猫を襲うとは言いきれないが、可能ならばリスクは背負いたくないのが本音だ。

 

 「ナミ!どこだ?」

 

 その結果俺は見聞色の覇気を用いてナミを探し、近くにいる筈の辺りで声を出すが返事はない。流石に、おかしい。

 酒場の建ち並ぶ界隈に入って少しすると、ふわりと感じたのはナミの香り。優しい蜜柑の香りが、ナミの存在を知らせてくる。

 

 「どこだ?……近くにいるのはわかるんだが……」

 「にゃー……」

 「猫……?」

 

 俺の呼び掛けに応えたのは猫だった。それでも視線を向ければその毛色の為か、思い浮かぶのは可愛い恋人の事。

 蜜柑の香りがする所まで似ている。長い尻尾が不安そうに揺れるから、何だか本気でナミに思えて来た。

 

 「似てるな。……おいで」

 

 自分でも驚く程に優しい声が出ていた。そうして手を出せば、普通なら逃げると思われた猫が駆け寄り擦り寄る。

 ゴロゴロと甘えてくるそれは、本当にナミを思わせる。つい先程まで膝にいて、それが猫のようだと思っていたのも理由だろうが。

 少なくとも、本物が見つかるまでは手離したくないような気がして抱きあげれば、見詰めてくるつぶらな瞳。それが何だか良く知ってるものと重なり……。

 瞳の色が、同じ。近くにいると伝えて来る見聞色の覇気。

 そんな、馬鹿な。だが……もしや?

 

 「あれ?ナミ?」

 「にゃ!」

 

 猫が俺の問い掛けに頷くと同時に光り、人の形に変わる。悪魔の実のそれならば光らないだろうから、能力を使われて解除されたのだろうと推察できた。

 まったく困った……耳?尻尾?

 その姿は人の形に戻った筈なのに、生えているのは猫のものだ。これは、俺の願望が具現化したとかでは無いよな?

 目の前でナミは自分にある余計な筈の物に触れて、首を傾げる。その仕草が可愛くて、隠す為に部屋に連れ帰り閉じ込めちまいたくなるのは必然だろう。

 

 「わかってくれてありがとう。気付いて名前呼んで貰わないと戻れなかったみたいなのよ」

 「……そうか」

 

 頭が上手く働かない。礼を告げながら微笑むナミに、俺は魅入られている。

 そのまま少しだけ不安そうに俺を見上げる眼差しが、その尻尾の動きが、俺から語彙力と拒否権を奪う。へにょっと落ちた耳が、妙に可愛い。

 

 「この耳とかも暫くあるみたいだから、その間この島に停泊して貰える?安全の為に」

 「……わかった」

 

 このまま島を離れて、この耳と尻尾が永遠に取れなくなったら……俺は何をするか自分で自分を制御出来る自信が無い。首輪をつけて、部屋に閉じ込める自信がある。

 それくらいには似合っているし、可愛い。どうしてこう、ナミは次から次へと問題を起こしてしまうのか。

 似合の首輪を探すべきか。それとセットで使える、鎖ではない紐を用意しないとな。

 

 「ありがとう!」

 

 向けられた笑顔と言葉でハッと我に返る。危なかった、ナミに何するか自分でも分からない。

 そう思っている俺の目の前で、ピクピクと動く耳が触ってと誘ってる気がして、無意識で伸ばした手がナミの頭を撫でる。頭を撫でるついでに触れた耳は柔らかく、抵抗もしないナミはそれどころか気持ちよさそうに眼を閉じちまう。

 もう、駄目だ。連れ帰ろう。

 どこにも行けないように抱きあげれば、ナミは尻尾をご機嫌に揺らしながら、俺に甘える。その瞬間、連れ帰ればやり殺すと気付いて足を止めた。

 

 「ニューゲート?」

 「何があったのか、飯でも食いながら話してくれねェか?」

 「良いけど……この辺り、安いお店無いわよ?」

 

 ナミの言葉に少し考える。高い店に入れば、ナミが支払いしちまうよな。

 俺の行動に理解のあるナミだから、それに甘えても許されるだろう。だが、それは最悪他の候補が全滅した時にしたい。

 

 「……酒場にしとくか」

 「無理に外食しなくても、モビーに戻るなら、サッチが作ってくれると思うけど?」

 「……デートしようと誘ってたつもりなんだがな?」

 

 そう言った瞬間、真っ赤になったナミは浜辺で魚でも釣る?なんて言って視線を逸らす。それにより、近くの森で適当に何か狩れば良いかと歩き出せば、ジビエ料理はあんまり自信ないのよね……なんて謙虚な事を言い出した。

 できない事を探す方が難しいようなナミだと言うのに、何を言っているのか。そう思った時、ナミが突然俺の腕をすり抜けて駆け出した。

 何処へ……と思ったら、怪我をしている子猫を拾って来た。それに対して、ステファンもいるから飼えないぞと言おうとして、辞める。

 その様子から、飼いたい訳では無さそうだと気付いたから。どうやら、手当をしてやりたいだけらしい。

 

 「後で、マルコに診せてみるか。獣の治療もマルコならできる筈だぜ?」

 「いいの?」

 「俺も流石に、子猫に妬く程には堕ちてはいねェつもりだ」

 

 笑う俺にナミは嬉しそうな顔をする。宝石を強請るでも、地位や権力を求めるでもないナミは、いつもただ手の届く範囲の幸福を願う。

 ならば、それが不可能では無い限り、叶えてやりたいと思うのは当然の事だと思っている。その上歳若い恋人にならば、誰だって甘くはなるだろう。

 そんな時聞こえて来たのは、今日が猫の日と言うこの地域でのイベントだと言うもの。今のナミには似合の、良い日だと思う。

 今日が猫の日だと言うのなら、俺は俺の猫を甘やかしたい。俺だけの猫を独占したいと願って、何が可笑しいだろう?

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