※この作品はR-18です。

海軍パロシリーズ   作:夢枕 七変化

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俺のナミside

 ガキの頃の記憶が1部明らかに欠落している。それを埋められそうな女に若い頃会ったが、海兵と名乗ったあの女には未だ逢えていない。

 煙のように消えて、幻のように掴めない。そんな日々の中でおつるちゃんとセンゴクの野郎が大切にしてるという噂の海兵が現れた。幼い少女だと聞いて、少し揶揄ってやろうと思ったが、影も形も見せては貰えず、逢いたいと言ったら隠し方が尋常では無くなる始末。

 これ迄の自分の行いを鑑みれば、その行動は訝しく思う程の事は無い。寧ろ、その子供が大切なら当然だろう。

 だが、隠されれば気になるもので……ヴェルゴに調べさせた女の特徴は、何とあの日俺の目の前から忽然と消えたそれを幼くしたような姿であると知る。そうなれば、妹か下手したら娘や孫である可能性を考慮したのは当然だろう。

 あれ程探しても見つからなかった存在が、突然手の届きそうな所に現れた事に戸惑うなと言うのが無理な話。漸く見付けた、俺の手からも逃げ果せたあの女に繋がる可能性だ。

 家族であるなら、それを元に捕らえるのは容易いと考えた俺は早速その女の家族や出身地を調べ出す。だが……調べてわかったのは戦災孤児であった事、更には家族との血の繋がりが無い事だった。

 それでも、海兵になっているのだから、あの時の女が言った言葉に偽りは無かった可能性があるな。そう気を取り直して調べれば、故郷が海賊に支配され奴隷として過ごしていたと知る。

 そうして集まった情報に絶望感を抱きつつも、会いたいと、会って話しをと思うのだが……。おつるさんもセンゴクの野郎も、ここまで頑なに会う事を許さねェとはな。

 笑いが込み上げてくる。さて、どうしてやろうか。

 そんな事を考えながら、いつものように窓からおつるさんの部屋に入ったその時、慌てて誰かを追い出すおつるさんと、微かに見えた珍しい色の髪。特徴的なそれは報告にあったものと相違ない。

 部屋には柑橘系の香りが残っていて、成程と1人頷くもおつるさんが珍しく追い返そうとせずに引き留めるから、確信を抱いた。アレが……海軍の至宝であり幻の作家〝宝玉〟なのだろうと。

 

 「お待ち!ドフラミンゴ!!」

 「いつもは早く出てけと言うのに……妙な事もあったもんだ。すぐに出て行くから安心しろって。……なァ、おつるさん?」

 

 ニタァ……と笑いかけてから、部屋を送り出された人影の向かった先に視線を向ければ、その方向にはセンゴクの部屋があると気付き、他は除外して真っ直ぐにそこへ向かうと決めた。正確には執務室だが、この場合同じ事だろう。

 戦う力を持たない存在が、戦う力を持つ人物の庇護を受けている場合、迷わずにその相手の元へ向かうのは道理。1人で何処かに隠れるより、守って貰う方が万が一の時も救出されやすいのも理由にあげられる。

 視線を戻した時、おつるさんの執務机には俺の文字と良く似た文字が書かれた書類がある事に気付く。……俺の文字より少しばかり丸っこいが、基礎は近いな。

 何故か懐かしい気持ちになってその書類を見ていたが、今はセンゴクの元に向かっただろう女を求めて駆け出した。背後から呼び止める声が谺響したが、聞いてやる義理はねェ……!!

 開いていたドアを素通りして入室すれば、嫌そうな態度で俺を睨みつけるセンゴクに、その態度を咎める代わりに笑ってやる。それにより青筋をたてるセンゴクが、妙に愉快な気持ちにさせれくれるのは、ロシーの件にこいつが深く関わっていると言う現実が有るからだろう。

 それは同時に、センゴクとて同じ事だろうがな。俺が、ロシーを殺した事で責め立てたい所を耐えるしかない鬱憤は如何程だろうか。

 ……まァ、正確には殺しちゃいねェが、これだけの期間行方不明ならば死んだと思うのが当然だろう。残る可能性としちゃ、ローと共に生きていて、その姿を変えたって所だろうか。

 

 「よォ……そろそろ会わせてくれても良いんじゃねェか?センゴクさんよ」

 「海の屑共に会わせては、穢れてしまう。会わせるつもりは無い!帰れ!だいたい何故貴様は勝手に、海軍本部を出入りしているんだ!」

 「おつるさんに逢いに来たら、漸くおつるさんが部屋から追い出す瞬間に遭遇出来てなァ……逃げた方角を考えればここだろうと当たりを付けて来た」

 

 ロシーが報告を受けた通りの傷を負ったのならば、助かったとは思いにくい。これでせめて、ローが行方不明でなければヴェルゴが確実に殺したと思えるんだが……。

 あの時の女が二人を明らかに庇っていた上に、保護されたと俺に偽の情報を掴ませた事が現状色々な意味で俺に不安感を募らせる要因となっている。ロシーは、あの女が言うように本当に俺を裏切っていなかったのだろうか。

 だから、信じていた兄の仲間に殺されかけた事で絶望し、現在も身を潜めているのだとしたら……?

 ……いや、無いな。あの女の言葉を、全て鵜呑みには出来ねェ。

 その証拠に、あの女は俺の前から消え失せた。俺だけのモノにしてやろうと思っていたのに……。

 机に乗り、それでも軽口でその神経を逆撫でして遊んでいたら、丸められたコートが目に止まった。その膨らみに見聞色の覇気を向ければ、何かいるのは分かる。

 それはつまり、そうしなければ居る事を認識出来ない程に上手く隠れていたとも言える。この部屋で他に人が隠れている所もなさそうだと判断すれば、そのコートに手を伸ばしたのは当然だ。

 これが隠された宝だと言うのが、分からないと思う方がおかしい。双方分かりきっているからこそ、言い訳が苦しいとはわかっているが、こんなにも隠したがるなら手に入れて損はねェ。

 そう考えた俺が糸で隠れている存在を操れば、現れたのはあの時の女を少し幼くしたような少女。やはり血縁者かとその身体を抱き締めれば、あの女と同じ香りがした。

 

 「離しなさい!私に触らないで!」

 「……想像していたより、良い女だ」

 

 怯えて声も出せないかと思っていたのに、気丈にも睨み付けてきたそれに唆られる。……あの時の女と、嫌になる程に良く似てやがるな。

 声も、香りも、気の強さも。……何よりもその誇り高き眼差しが……本人かと言いたくなる程に、そっくりだ。

 顎に手を這わせて、その肌の感触を確かめればそれさえも記憶のままだ。そっと重ねた唇は、あの頃と違い経験不足が伝わって来るから、恐らくこれは別じ……っ!?

 その瞬間、思い出した。俺の失われていた記憶。

 喪われていた期間の記憶の中で、俺を……いや、俺達を慈しむ女は、そうか……あの時の女も、俺の師匠であり姉であり初恋の女も、ここに居るのも……全てが。わかっちまえば、弾かれたように唇を離してその顔を覗き込んだのも当然。

 

 「……お前、ナミか」

 「え?」

 「成程、そういう事か。益々、手放せねェ」

 

 無防備に、意味を理解出来ずに見上げてくるナミに俺は脳内で色々と整理する。そうだな、ナミは未来に行けば行く程に出逢う私は過去の私と言っていた。

 このナミは、俺の事を何も知らない。俺を助けたナミの過去だ。

 ここで俺が手にすれば、恐らく未来は変わり俺を助けない未来が待っている。そうする事で〝宝玉〟の書いていた、家族を自らの手で殺す俺が生まれるのだろう。

 ならば俺が遠慮する必要はねェな。このナミは、俺のナミだ。

 何があろうとも〝ルフィ〟にも〝シャンクス〟にも、渡しはしねェ。あの時決めていたんだ。

 次に触れたならもう手放す事はしねェと、そして、必ず俺の手で幸せにしてみせると。あの頃の俺は守られるしか出来ない無力なガキだったから手放したが、今はもう違う。

 力も、地位も、権力も、金もある。そんな俺がやっと取り戻せたんだ。

 これは俺のナミ。俺のナミになる前のナミでも、この際それはどうでもいい。

 時が違ってもナミはナミだ。あの頃の事を知らないと言うなら、それもまた好都合。

 今はまだ〝シャンクス〟も〝ルフィ〟もナミの男じゃねェ。今ならば、ナミの全てを俺のものに出来る。

 そう考えて居たからか、センゴクを振り切るのは容易かった。今、この時、俺は確実に無敵だったと言えるだろう。

 

 「離して!」

 「今俺が離せば落ちるんじゃねェか?」

 

 俺を知らないからか、抵抗する生意気なナミ。まだ幼さの残るナミは、俺に対して随分と好戦的だ。

 ……いや、ロシー達を庇った時も俺には好戦的だったか。だとするなら、ナミを手に入れてから少し検証してみる必要はありそうだな。

 

 「どうぞお気になさらず!王下七武海闇のカリスマ、ドレスローザ国王のドンキホーテ・ドフラミンゴさん。……それとも〝別な名前〟でお呼びしましょうか?」

 

 何故、そんなにも俺を知っていて、大切な所は知らねェんだよと内心で憤る。そんな俺に、困ったような顔をするナミを見据えて言い切った。

 

 「ナミは、俺のものだ」

 「……初対面ですが?それより、私に気安く触らないで」

 「相変わらず……気の強い女だ」

 

 とりあえず寝ていろと、俺はナミに覇気を叩き付ける。若い頃の俺のそれには余裕で耐えたナミが、今は簡単に意識を手放したのを見て少しばかり溜飲が下がった。

 自らの城へと帰り、自室にナミを抱いたまま入れば途中でその姿を見た面々が驚きの表情を見せる。あの頃よりも幼いからこそ、ナミ本人だとは誰も思わないだろう。

 正義のマントを身に付けている幼いナミを細心の注意を払いながら、そっと新台へと寝かせれば騒がしくなるファミリー。それ等にナミの胸元にあった退職願を託して結婚の意志を告げてやれば、上を下への大騒ぎとなる。

 その騒ぎが区切りとなった頃、見計らったかのようにラオGが言う。まるで孫に語りかけるかのようなそれは、何処か慈愛に満ちてさえいるように思わされる程だ。

 

 「若が本気で婚姻を考えて下さるとは思いませんでした」

 「俺は不老不死となる予定だからこそ、跡継ぎなんざ不用だと思っていたが……ナミが相手なら話は別だ。妻として、子供(ガキ)を作らせてやれば逃げ出せなくなる」

 「若……それ程、その女子(おなご)が欲しいのですか?それ程周りを固めずとも、若が望めば誰でも喜んでその身を捧げるかと思いますが」

 

 ラオGの言葉に笑いそうになる。いや、寧ろ笑えたらどれ程良かっただろう。

 俺はいつも、与えて貰えないモノを追い求めている。本当に求めたモノは、いつも……どれ程足掻いても失っちまう。

 

 「……そんな女なら、求めてねェだろうな。昔からコイツだけは、俺の思うようにならねェんだよ。それよりラオG、それを早く届けて話を進めろ」

 「御意(はい)」

 

 去って行く背を見送れば、起きるタイミングを見逃して困ってるらしいナミが居て、だが……寝たフリしてるならその唇を堪能する位許されるだろうかとそれを見詰める。そっと頬に触れると、それだけで愛しさが込み上げてくるのは、過去の事が有るからだけだろうか。

 過去に俺を育てたのも、救ったのも、絶望に叩き落としたのも、消え失せたのも、全てこのナミじゃない。わかっていて……それでもこれがあのナミになるのだと分かる。

 お人好しで、頑固で、甘ったるくて、なのに強い。……結局俺は、どんな道を選んだナミであっても、愛しちまうんだろうな。

 俺はあの時に、俺の女はナミと決めちまった。それは、俺を覚えてるかとか、そんな事些細な問題にしちまう位なんだろう。

 ……俺の中でナミはどんな存在なんだろうか。その魂が同じなら見目でさえどうでもいいとさえ思わされちまう位、全てが愛しい。

 困ってますって空気を出すナミが、俺の知らない幼さを称えていて……それが妙に嬉しい。もっと、俺の知らないナミを見せてみろ。

 そう思って重ねた唇。それにより抗おうとしているのか、必死で俺の肩を押すナミは、恐ろしく非力だ。

 こんなにも非力なのに、これ程に細くか弱いのに、あれ程必死で俺達を守っていたのか。俺を愛していた訳でもなかったナミが。

 その時、ナミがその手に覇気を纏い肩を殴って来た。それは流石に少しばかり痛みを与えて来たから、少しだけ身体を離してやる。

 

 「な、に……すんのよ!」

 

 その言葉に多少驚く。無垢だとは思ったが、キスも知らねェのか。

 

 「解らねェのか?俺は今ナミに口付けを「んな事は分かってるわ!」」

 「なら聞くなよ。……それで、いつから起きてた?」

 

 確認の為に問い掛けたそれに僅かに唇を尖るせるから、それに笑いそうになる。視線を窓に向けて不愉快そうにする様子から、窓から逃げれば良かったとでも考えているのだろう事が分かっちまう。

 まだまだ、あの頃のナミには遠く及ばねェな。弱く、荒削りで、拙い。

 だが、逃がす気はねェ。ナミは、俺のものだ。

 無駄に抗うそれを軽く力を込めた腕で抑え込めば、次第に抵抗が弱まる。そうして答えたナミのそれに、成程恋愛関連は乳幼児並の判断能力しか無いのかと理解した。

 

 「結婚したい相手が居て、でも相手にその気がないから妊娠させるつもりだって所からよ。……本当に好きな相手なら、ちゃんと向き合ってみたら?」

 

 向き合ったら俺を見るのかと胡乱な視線を向けた俺に、ナミは気付かない。そのまま続けたられた言葉に、俺は息を飲まされた。

 

 「顔も悪くないし、身長も高くて、身分もある。海賊だってのを差し引いても真剣に想いを伝えれば、分かってもらえるかもしれないでしょ」

 

 ずっと、嫌われてるのだと思っていた。あの時も幼い子供だからと言う理由で守っていただけで、大人になった俺は論外なのだろうと。

 だが……ナミは顔は悪くないと言った。俺の背景(バックグラウンド)を知った上で、相手がわかってくれる可能性と言うのを示唆して来る。

 こんなにも、鈍くて、残酷で、優しい女を俺は他に知らない。何も知らないだろうナミに、縋るように力を込める。

 

 「ちょっ……ドフラミンゴ、苦し……」

 「そう……だよな……」

 

 甘く優しいナミが、理由も無く俺を嫌う筈が無い。俺が記憶を取り戻さないままにナミに酷い事をして、嫌われて、その後に過去の俺と遭遇したのだと考えれば、辻褄は合う。

 将来……自らを害すると知っていても、子供だからと甘やかし、導き、強くして……生きられるようにしてくれたのだろう。その優しさに溺れて、俺は俺になったんだ。

 それに、あれだけ大人だったナミでさえ鈍かったんだ。過去のナミが、普通の女みたいな反応をする筈が無かったよな。

 

 「ナミは、鈍いんだった。忘れていた」

 「鈍くないから、苦しいから!ついでに痛いから!離して!」

 

 その反応が、返答が鈍いと言ってんだよ……。そう思いつつ、俺は気を引き締めてナミに言葉を伝える。

 

 「ナミ……」

 「なによっ!」

 「愛してる。俺と結婚しろ」

 「ほぇ?」

 

 放心したような、呆然としたような顔が向けられる。……なァ、告白されてその顔は驚きだよ。

 それも、俺にだぞ。その辺の有象無象じゃなく、ドレスローザの国王からの告白に、その反応はねェだろう。

 大体なんだよ、その返事は。〝ほぇ?〟って何語なんだよ?

 そう思って見ていたら、ナミは何かを納得したように頷いた。漸く意味が通じたかと俺が笑みを浮かべた直後、ナミはキリッとした表情を俺に向ける。

 

 「断るわ」

 「おい、待てよ。ナミが言ったんだろ。顔も悪くないし、身長も高くて、身分もある。海賊だってのを差し引いても真剣に想いを伝えれば、分かって貰えるかもしれないって。それなのに、その返事か」

 

 俺の言葉にナミは当然のように頷く。そして、呆れを隠しもせずに言葉を紡ぐが、それは俺にとって衝撃以外の何物でもない。

 

 「私を海軍との繋にって考えでしょ。それドフラミンゴ側にしか利が無いじゃない」

 「利!?お前は俺の告白を利益換算で考えてたのか?……フッフッフッフッフッ!なら話は早ェ……俺ならナミにどんな贅沢でもさせてやれるし、強敵からも守ってやれるぜ」

 「贅沢……?私は、それよりも自由が欲しいわ。もう少ししたら、海軍も退役して……1人で自由に旅をするつもりなの。邪魔しないで」

 

 言葉を言い終えるのと同時に、俺からプイッと顔を背けるナミは可愛いが憎らしい。手足切り落として飼い殺すぞと内心で凄むが、自由を奪える訳も傷付けられるわけも無いのは自分が1番よくわかってる。

 だからこそ笑うしかない。そっと身体を解放してやれば、ナミは不思議そうに俺を見上げるから、優しく種明かしだ。

 旅に出たいと言うなら、叶えさせてやる。俺なら、金の心配も、命の危険も無くその願い叶えてやれるからな。

 

 「安心しろ。もう退役の話は進んでいる」

 「え?」

 「お前が持っていた辞表を、先程ラオGに持って行かせたからな」

 

 俺の言葉に泣きそうな顔で掴みかかるナミに、素直に口を割りはしないだろうと言うのも理解出来て、危機感と実感を持たせる為に押し倒した。そのまま首筋に跡を残して、ナミに言葉を向ける。

 俺の目的はひとつだけ。海軍から離れられないって言うなら、もう取り消してやるつもりはねェから、大人しく俺の妻になれ。

 俺の言葉を受けてナミは唇を噛むと、少し考える時間が欲しいと言った。俺はそれに頷き、軽く頭を撫でてから笑いかける。

 

 「良い返事を期待してる」

 

 ナミが望むなら何でも叶えてやる。待てと言うなら、既に何十年も待ったんだ、もう少し位……待ってやるさ。

 部屋を出ると同時に、ナミの過去を全て探れと傍に控えていたファミリーに命じたのは当然。俺は、狙った宝は逃さない。

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