※この作品はR-18です。

phantom of the opera   作:木桜 春雨

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事件後から数年、怪人はは死んではいなかったという設定です。
19世紀のパリ設定ですが、細かい部分ははしょって下さい。

トリップヒロインは大人女性です。
怪人は一人ではないかもしれません。


彼は死んではいなかった、ナーディルの驚き

 オペラ座の地下で暮らす男、怪人と呼ばれた彼はプリマドンナのクリスティーヌ嬢に恋心を抱いていた、だが、彼女には幼なじみの子爵、ラウルという青年と恋仲だった。

 彼の恋は実るはずはない、私は当時、何度も忠告した、だが、彼は聞き入れようとはしなかった、そして、ようやく彼にもわかったのだ。

 

 私のアパートを訪れた彼の姿を見て彼の死を私は予感した、自分が死んだらオペラ座の地下に埋葬して欲しい、その時にはクリスティーヌも来てくれる筈だ。

 それは彼の遺言と思って、そうすると誓ったのだ。

 あの日、約束の場所に行き、死体を見つけると埋葬した、私、一人で。

 自国、ペルシャへ戻る気はなかった、王の最期の命令に背いた自分は反逆者だ、殺されても不思議はない、だから、このパリで暮らそうと思ったのだ、

 

 数年が過ぎた、不思議なもので最初の頃に感じていた不自由さも、それほどではなくなり、ペルシャの事を懐かしく思うことはあっても帰りたいと思う事はなくなった、それどころか新しく人生をやり直すのだと思えてきた、正直、人間とは不思議はものだ。

 ペルシャを出たとき、ある程度の財産は持ち出していたが、いずれ仕事を探さなければと焦っていた、そんな矢先だ、パリで知り合った一人が私立探偵はどうかと勧めてきた。

 正直、自分にそんな仕事ができるのかと思ったが、悩んでいてもどうしようもない、もし駄目ならまた別の仕事を探してみよう、そう思って始めた探偵業だが、いつの間にか三年が過ぎたていた。

 その間、改めて実感したのはパリは決して平穏な街ではないという事だ、だから、彼もここで暮らしていたのかもしれない、そんな事を思いながら日々を過ごしていたが、ある日、来客が訪れた。

 

 「まさか、君なのか」

 黒いマントに帽子、顔の右半分を隠す白い仮面、私の問いかけに相手は笑った、実際に声を出したわけではない、口元がわずかに緩んだような気がしたのだ。

 「久しぶりだな、ナーディル、忘れられたかと思っていたよ」

 正直、騙されたのだとわかり、瞬間は激しい怒りを感じた、だが、ほっとした安堵感も感じていた、なんてことだ。

 再会を喜ぶ自分がいた、裏切られたことも忘れて、呆れてしまう自分がいた。

 ペルシャにいた頃から彼は何度か私を欺いた事もあった、勿論、このパリでもだ。

 

 「君は死んだとばかり、ではあの死体は一体、誰なんだ」

 死体を埋葬したと思っていたのだ、それなのに、すると、金さえ出せばパリは何でも手に入ると、彼はあっさりと答えた。

 このとき、あのことを告白するべきかと悩んだ。

 「エリック、彼女のことだか」

 誰の事を言っているのか、わかっている筈だ、だが。

 来なかったのだろう、当然だと彼は呟いた。

 「夫が許す筈がない、あの時は私も少しはセンチメンタルになっていたのかもしれない」

 「そうなのか、いや、君が納得しているのなら」

 あれから三年が過ぎたのだ、心境の変化というのもあるのだろう、だが。

 「恨んでいないといえば嘘になる」

 その言葉にぞくりとした、怪人と呼ばれていた頃の彼の姿を思い出したからだ、あの頃の彼は恋に狂っていたといってもいい、だが、そんな心境を察したのかもしれない、突然、笑いだしたのだ、声を出して。

 「相変わらず心配性だな、君は」

 「エリック」

 「ところで、仕事を頼みたいんだ」

 探偵業をしているんだろう、調べて欲しいことがあるんだ、胸ポケットから取り出した一枚の紙、そこに書かれている人物の事を調べて欲しい。

 「エリック・ルイーズ、男性、君と同じ名前か」 

 決して珍しくはない、探せば大勢いるだろう、非凡な名前なのだエリックという名前はだから自分も、この名前を使っているのだと言われて、ああと頷いた。

 「しかし、何を調べるんだ」

 「全て、調べられることは全てだ、君は知らないのか、この男のこと」

 最近、売り出した作曲家だと言われて、そうなのかと驚いた。

 「この男は私と同じ、いや、それ以上だ」

 「何がだい」

 「醜いということだよ」

 どうして、何故と質問と疑問をぶつけるが、それを君に調べてもらいたいんだと仮面の男は言葉を続けた。

 「頼むよ、我が友人との」

 その口調は怪人と呼ばれていた頃の彼、そのままで私は頷くしかできなかった。  

 

 

 パリのオペラ座、ガルニエ宮殿でゲームが始まったらしい、生演奏、オペラ座の登場人物に扮した役者も参加という内容で、動画サイトでも紹介されている。

 告知されたにもかかわらず、初日に参加者があまりに少なかったのは無理もないだろう。 海外からの参加者も多く、期間限定では無理と判断したのか主催者側は期間延長をした。

 テレビもだが、これにいち早く飛びついたのかネットだ、それだけではない、本場の舞台に行けない人の為にゲームを作り出した、自身のキャラクターを作り、オペラ座だけでなくパリの街を散策するというものだ。

 仮想空間のゲームとなると専用のゴーグルやコントローラーが必要となるのだが、専用の道具一式がセットで売り出された。

 日本の消費税がアップという事もあり、海外のア○サイトから購入した彼女はゲームをプレイしようとした、ところが、不具合、性能の問題なのか、いきなりパソコンのモニターが真っ青になった。

 「こ、これは」

 まさかと思いながら再起動させようとしたが、ウンともスンとも、いや、起動音もしない、もしかしてパソコン自体が壊れてしまったのか。

 「ああっ、なんてこと、送料込みで三万円が」

 専用道具を返却、いやパソコンを修理すればいいのでは、いくらかかるのだろう、そんな事を考えると脱力してしまう、もう、今夜は寝よう、風呂に入る気力もない。

 そう思ってパジャマに着替えた、早く冬用のパジャマを買わなくては半袖だと少し寒いわと思いながらベッドに倒れ込んだ。

 (つ、疲れた)

 

 それからしばらくして、ピーッという音がした、パソコンの起動音だ、続いてモニターに文字が映し出された、だが、それはすぐに消え、町並み、人の姿が映し出された。

 同時にスピーカーから音が響く、人の声、足音、馬の嘶きだ、そして叫び声だ。

 

 「まだ、寝ているのかい、私の天使」

 頬に手を伸ばし、そっと撫でる、いつになったら眼が覚めるのかわからない、もしかしたら、このままかもしれないと言われて、一体どれくらいの月日がたったのか。

 自分の命は残り一日しかないというのに、あの日、劇場に行かなければ、こんなことにはならなかった、自分を庇った為に。

 「私は明日、ノートルダム寺院の広場で絞首刑だ、だが、おまえに贈り物をするよ、おまえが欲しがっていたものだ」

 男は初めて出会ったときのことを、自分の娘として育てると決めた時の事を思い出した。

 淫蕩な日々の中、自分の体験を小説にして、それを売っていたが、世間は認めはしなかった、恋愛や行為のことを赤裸々に文章にして本を出すなど恥知らずだと批判を受けたが、本は売れた、自分の小説は認められたのだと思った、だが、教会や警察から眼をつけられた。

 貴族も下層階級の人間も裸になれば同じだとは、破廉恥だ、欲望に溺れている。

 

 「名前だ、ずっと考えていたんだ、ジュスティーナ、どうだい」

 もしかしら彼女は笑うかもしれない、それ、小説のヒロインの名前でしょうと。

 「君は私のミューズだからね」

 女の口元がかすかに動いた気がした。

  

 

 

 

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