俺の右手に令呪が宿った。余りの痛みに湿布を貼って一日を過ごしていたのだが、夜に貼り替えようと見たところ赤い令呪が宿っていたのだ。
聖杯戦争の参戦に必要なアイテム。これがなければ参戦できず、これがあることで命が狙われる。事前に辞退が出来るのだが、残念なことに親族に止められ今は空の旅の最中。
今回の聖杯戦争は極東で行われるようで、一応下見と参戦の意思を当該地域の教会に告げるための移動の最中だ。右手に包帯を巻いているので一般人にはケガとして見られるだろうが魔術師たちには令呪の発する独特の魔力波を捉えられるのであまり意味はない。まぁ、俺の歳になって右手の甲にこんな赤い模様を付けているのはアレなので俺の精神的に必要なのだが。
今回参戦する意思を告げている魔術師たちの情報は少ない。というのもまだサーヴァントが2騎しかされていないようで、あまり情報が入ってこないのだ。
手に持つバックの中には召喚予定の英霊の所縁のある聖遺物が入って入るものの、俺はこれを使う予定はない。そりゃあ命の係わる戦いに赴くのだ。死にたいわけではないが、それ以上に
コレを用意した親族を俺は信じることが出来ない。俺は所謂スペアで、ディアルト家の次男。
次期当主の兄の代わりで今回の戦いで勝ち残ったら一族の繁栄を願えと言われている。多分彼らは俺が生き残るとは思っていない。俺も思っていないし、それ以上に俺は魔術師としては平凡だ。英霊たちのスペックの差も聖杯戦争においては大事なのだが同時に英霊の主であるマスターのスペックも大事なのだ。
コネを使って極東に近代兵器である銃を持ち込んだものの、あまり使い慣れておらず大した脅威にはならないだろう。親族の狙いは身内に聖杯戦争に参戦した者が居るという箔だ。参戦した家としていない家では見られる目が違う。
ボンヤリと資料を見ながら作戦を考えていると飛行機が着陸態勢を取り始める。どうやら着いたようだ。
☆
教会に参戦の意思を告げ、これからの拠点となる屋敷に付いた。魔術師としてそれなりの家なので屋敷程度であれば用意する事は簡単だ。屋敷を見て回り召喚に良さそうな部屋を決める。
召喚は早くても遅くても変わらない。問題は自分と相性がいいかどうかだ。願うならばアサシンなのだが、アサシンにしても千差万別だ。暗殺者としての意味で召喚される者もいれば時の権力者を毒殺したことでアサシンになる英霊もいるらしい。
懐中時計を見るとまだ昼の12時だ。召喚の時間は極東で霊感的に相性のいい深夜の2時を考えている。まだ時間に余裕があるので下見をすべきだろうか。
壁に掛けたコートを取ると、屋敷を後にする。
此度の聖杯戦争の舞台であるこの街は結構栄えているようで街を行きかう人々が多い。休日のようでカップルや家族連れの人が多い。慣れない土地故にスマホに入れてある地図アプリを見ながら探索をする。隠れるのに良さそうな場所を重点的に見て回る。
英霊同士での決着を狙うのもいいが、直接的に敵マスターを狙うのもありだ。魔力を供給する側でのマスターを排除できれば単独行動のスキルを持っていないサーヴァントは数分でこの世から消え去る。俺の理想は敵マスターの排除だが、俺の拙い技術で狙撃が出来るだろうか。
狙撃出来そうなポイントと、魔術師が好みそうな建物をチェックする。ディアルト家のように屋敷を魔術師は好む。魔術は神秘的なモノで秘匿する必要があり、屋敷のような個人宅の方が都合が良いのだ。この街には結構な数の屋敷があり、歴史的な価値もある街なのだろうか。それを破壊するのは忍びないが、俺も命が掛かっているのだ。自分本位なわけではないが優先順位ってものがある。まずは自分の命。ソレが一位だ。
腹が減っていたので世界的に有名なチェーン店のハンバーガーをテイクアウトする。近くにあった公園のベンチに腰を下ろし食べる。少し味付けの濃さが違うものの、大部分は同じで特に嫌悪する事もなく食べ終えた。近くにあったゴミ箱に食べ終えた袋を捨てるとスマホの地図アプリを更新する。最近のアプリは凄く、書き込めることが出来るのだ。今日見てきた部分に赤字で隠れそうな場所や危険な場所を書き込んでいく。
書き終えると再び街を散策する事にした。
☆
時刻は既に深夜の2時。召喚の時間だ。極東では深夜の2時と言うのは丑三つ時と呼ばれるモノで霊が現れる時間らしい。英霊もまた死後の者たちで霊だ。召喚には持って来いの時間だろう。事前に持ってきた聖遺物は自室に放置してきた。俺と縁のあるサーヴァントで戦い抜こうと思う。
素には銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る
三叉路は循環せよ。
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
―――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝、三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
第0話を共通にしてその後に各サーヴァントごとに書こうと思います。現段階ではサーヴァントすら決めていないので断言はできませんが二、三体分のストーリは書きたいと思ってます。
あとこのプロローグは適当です。主人公の名前すら適当に決めたので深いツッコミとかは無しの方向でお願いします。