※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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正月イベント21(side)

 目覚めた時、隣にあるべき体温が無い事に気付く。何処に行きやがったんだ……?と思い、即座に見聞色の覇気を使った俺は、ナミが甲板にいるのを確認してホッと息を吐き出した。

 自覚は皆無のようだが、ナミは本当に良い女だ。その為に多くの海賊から狙われている。

 なのに無防備にも1人でフラフラしてやがるから……と、内心で言ってみても、ただ俺がいつ奪われるかと不安なだけだ。手の届かない所に行かせたくないのは、俺のEGOISM(エゴイズム)でしかない。

 マントのようにコートを羽織るのは、船長達の真似なのか何なのか……今ではもう、自分でもよく分からない。そう思いながらも羽織ったコートから、ナミの香りがふわりと漂えばコートの裾に補修がされてるのに気付く。

 銃弾が掠めた時に裂けたそれを、内側からあて布して直してくれたらしい。よく見れば、ボタンも取れかけていたのが直っている。

 

 「ボタンなんぞ使いもしないのにな……」

 

 膝にでも乗せて直していたのだろう。もしくは抱きしめるようにして……そうでなくてどうして匂いが移るというのか。

 そんな事を考えながらナミの元へ向かえば、海から顔を出した太陽が見える。眩しくないのか、それとも寒さのあまりにそれを暖と勘違いしているのだろうか。真っ直ぐに太陽を見詰めるその姿が、妙に儚くて余計に不安を掻き立てられる。

 

 「あけましておめでとう。今年も1年、平和でありますように」

 「ナミ」

 

 名を呼べば明るく笑って振り向くその姿。それに頬を緩めたのは多分当然の事だろう。

 何せ振り向くのとほぼ同時に、俺に向かって駆けて来るのだから。けれどもそれをそっと抱き留めれば、身体は随分冷たくなっていたし、震えてもいる。

 

 「寒かった……」

 「そうみたいだな。ほら、これ着とけ」

 

 俺のコートを着せちまえば、ヒールをはいてるのに引き摺りそうになるその姿。こんな時、まだガキなんだよなと思い出させられるが……庇護してやるだけではもう、満足は出来ない。

 1度でもその甘露を味わえば、知らなかった頃には戻れやしない。ナミは、俺の最愛の女だ。

 

 「ありがとう」

 「ナミがこの格好してると〝俺のモン〟って感じがするから、嬉しい」

 「ばぁか……」

 

 そんな事を言って笑うナミは、だが震えがまだ止まってはいない。寒さだけならこのコートで補える筈だと分かるから、何か変に考え込んで見えない敵に怯えているのだとわかる。

 だから俺は、その震えが落ち着くまでは離さないと心に誓い、ナミの身体を抱きしめていた。甘えるように擦り寄るナミの身体が、次第に震えを減らして行くのを感じた直後、愚かにも俺に作った笑顔を向けるナミに溜息が落ちる。

 ……虐めない為にも、部屋に連れ帰って少しナミを休ませてやるか。多分、俺を怒らせたいんじゃなくて、俺を安心させようとかそんな阿呆な事を考えたんだろうからな。

 そう思い部屋に連れ帰ればナミは素直に着いてきたにも関わらず、何か面白いものでも見つけたかのように小さく笑いだしたので首を傾げる。俺に部屋に連れ戻されて、その先を期待して笑ってる……とかじゃねェよな、ナミだもんよ。

 俺の視線に気づいたらしいナミが、ふっとその瞳を細めて唇を動かす。それを読めば、お仕置だ!!と抱き締めたのは当然の事だ。

 なァにが〝ナイショ〟だ。俺に隠し事なんざ百年早ェ!!

 そのまま少しじゃれ合っていれば、ナミの震えは完全に止まる。もう、ナミの心も泣いてねェな。

 

 「もう、寒くないか」

 「うん、ありがとう」

 

 晴れやかで穏やかなその笑顔に、俺はいつも救われる。汚いもんばっかり見て来た俺には、ナミは時折眩し過ぎて……閉じ込めたくなっちまう。

 そんな事をしたら、枯れちまうとわかってるから……だから、今だけは、少し痛いかも知れねェけど、このままで居させてくれ。言葉にせずに祈るように思いつつ、俺はナミの身体を強く抱き締めていた。

 それから少しすると表が騒がしくなったので、仕方ないなと〝船長〟をやる為にナミを解放する。そんな俺にナミは優しく微笑むから、このまま部屋にこもりたいような気持ちになっちまう。

 ……まァ、宴が待ってんのにそんな事はしねェけどよ。軽くナミの頭を撫でてから表へ出れば、慌ただしく準備を整えてるのが見えてつい口を出す。

 

 「体動かせるスペースは作っとけよ」

 「あー?なんかやんのか?」

 「おう!正月らしい事やりたくてな、ナミに聞いといたんだよ。そしたら懐かしい遊びを提案されたんでな」

 

 昔、まだ見習いだった頃にオデンさんが皆に教えた事でやる事になったテニスのような遊び。ラケットではなく、木の板で打ち合い……本気になって、船に穴開けて船長が叱られてたのが何だか懐かしい。

 そんな事を思っていたら、ナミが皆に道具の名前と遊び方を説明し始めた。本来ならば二日になってからやるべきらしいが、何か遊びを取り入れないと酔った野郎共が何しでかすか分からないから、適度な発散として提案されたものである。

 

 「羽根突きには二種類の遊び方があるけど、今回は何人かで遊べる追羽根をやって貰う予定よ。2人が向かい合ってこの板、羽子板と呼ばれる木製の道具でこの羽根を打ち合うの。打ちそこなった場合には顔に墨を付ける罰が与えられるから、負けないように頑張って」

 「ついでに言えば、勝った奴だけが飯にありつけるから、食いたきゃ勝てよ」

 

 俺の言葉に不平等なくじ引きで全員が強制参加させられる事になると、コックと幹部を除いたメンバーが順番に戦い始めた。羽根がついてる為に弱く打てば風に煽られるし、強く打てば板が割れかねねェ。

 適度な力で相手のミスを誘うしかないこの遊びは、案外好意的に受け入れられた様子だ。クルーの半数が顔に墨をつけられた所で、飯の用意を含めた宴の準備が整ったので、俺はジョッキを手にして笑う。

 

 「あけましておめでとう!今年も楽しく、大騒ぎしながら航海するぞ!!野郎共!!乾杯だァ!!」

 

 俺の言葉に応えたクルーは皆で乾杯して、勝った奴らはそのまま飯に、負けた奴らは次の対戦のクジを引いている。こうする事で、飯が全て1気に消える事を防いでいるが……今二回戦をしてる奴らが終わると今食ってる奴らに与えられた飯を食う権利の時間が終わり、再び戦う事になる予定だ。

 そうしないと、飯に最後までありつけない奴が出て来ちまうからな。一応飯食ってない奴が食う為の時間も後で用意してあるが、宴開始から2時間程何も食えないのはキツかろう。

 

 「シャンクスはやらなくて良かったの?羽根突き」

 「これの意味考えろよ。これはクルーがやる事に意味があんだろ」

 「確かにね」

 

 この遊びは1年の厄をはね、子供の健康と成長を願うという意味がある。つまり、親分がやらずに子分達がやってくれなければ意味は無いのだ。

 勿論、いい感じに酔ってから参加するかも知れねェけどな。そんな事を思っていたら、ナミがなんか食ってるのに気付く。

 

 「なんだ、それ?」

 「栗金団よ。私、今年は真面目に稼ぐつもりだもの」

 「……まァ、止めねェけど、程々にな」

 

 黄金に例えて金運を呼ぶ縁起物である為、ナミの言い分は間違ってねェが……それ、無駄に甘いだろ。そう思って見ていたら、少し摘んで差し出してくるナミの無邪気さに負けて、俺も口にしてみる。

 

 「あ、思ったほど甘くねェ」

 「素材が甘いから、砂糖を入れないでって頼んどいたのよ。お酒だけでも糖質摂りすぎになるんだから、その辺は調整しないとね」

 「ありがとな。あ、ナミ。これも食っとけ」

 

 甘くないから良いだろうと差し出した筑前煮を見て、ナミは固まる。それから少し頬を染めて俺を睨むけど、なんだと言うのか。

 俺も食ったが、味も悪くはなかった。……なんか、嫌いな物が入っていたのだろうか?

 

 「……意味、わかってて?」

 「へ?」

 「あ、知らないなら良いのよ」

 

 そう言ってホッとした様子で食い始めたナミに、俺が首を傾げていたらベックが俺の肩を叩いた。なんなんだ?

 

 「お頭、里芋を多目に入れてたから知ってるのかと思ったが、知らなかったのか」

 「だから、なんだよ」

 「穴にちなんで将来の見通しがきくとされるのが〝蓮根〟だ。そして、小芋を沢山つける事から子孫繁栄の縁起物とされるのが〝里芋〟だぜ?……その他、土の中で根を張る根菜を用い、末永い幸せを祈願する意味がある」

 「…………成程、ナミが赤くなったのはそのせいか。だがな、俺はデキてもデキなくてもどっちでもいい。どっちにも利点と問題があるからな」

 

 ただ、ナミがいるならそれだけでいい。そう思って笑った時、ヤソップに腕を引かれてどこかへ行こうとしてるナミを見付けて、引き止めるようにして奪い返す。

 そんな俺に対して、ナミは驚いた顔はしても抵抗しない。だが、俺のクルーはその様子に意地でもナミを奪おうと襲いかかってくるから、俺はナミを抱いて逃げ回る事になっちまった。

 そうして俺は、大切な人達に囲まれながら、Happy new year!!と言葉を紡ぐ。愛しい女を他の誰にも触れさせない為に強く抱き締めている。

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