※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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猫の日イベント(side)

 自分の価値をナミは、本当に欠片も分かって無い。この稀有な能力を、どうしたら理解させられるのだろう。

 サイクロンを避けたと思ったら次々と現れて合体して追いかけて来るそれは、既に悪意しか感じない。自然現象と呼ぶには不自然だろう巫山戯るなと叫びたくなるくらい、サイクロンに狙われた俺達を救ったのは、自然現象のエキスパートとしか言えないような天才。

 

 「……四時の方角に戻って!!」

 「戻れ!?」

 「全方位にサイクロンがいるのよ!隙間を縫うのは無理があるわ!!それなら、その中で規模の小さなサイクロンに向かう方が良いわ」

 「船で後退できると思う方がおかしいだろう!」

 「後退じゃなくて、旋回してサイクロンに向かって突撃するのよ。正面からなら沈没しないけど、横波は転覆するから!」

 

 理屈はわかるが、それでも、船をバックさせるなんて通常は困難だ。だが、ナミが言うならやるしかない。

 ここで操舵手がその腕を見せられなければ、恥となるだろう。そう言う意味では、航海士は時に横暴だ。

 

 「このままだと、そう時間がたたない内に大きいのがふたつ合体するわ。……散ったり相殺してくれるのが希望なんだけど、これはなってみないと分からないのよ」

 

 その言葉により逃げ道が他にないと理解した俺達は船を旋回させ、サイクロンへと突入する。その後もナミの指示により船を動かし、見事に抜けきったのだから誇れるだろう。

 だがナミが風呂に入ってる間に食料不足が分かれば、近くの島は……との話になる。これでもそれなりに多くの島を知ってる俺は、地図を広げて少し考えてみた。

 すると思い出すのは幼かった自分の事。だとするなら、ナミは喜ぶんじゃねェかな。

 

 「確か、この辺りに人のいる島があった筈だ。変わってなけりゃ、猫の多い島だったと思う」

 「猫?」

 

 俺の言葉にベックが不思議そうな声を出す。これで案外、ベックは素直な生き物だ。

 まァ、素直で自由だから海賊をできるんだがな。どちらが欠けても、海賊として生きる事はできない。

 

 「猫を〝縁起物〟として大切にしてるらしい」

 「よく知ってたな」

 「昔来た時、知らずに追いかけ回して島の人達に叱られてな、船長に殴られたんだよ。堅気に迷惑かけんなって」

 「その頃とだと、変わってるかも知れないが……変わってなければ、ナミが喜びそうだな」

 

 どうやら考える事は同じらしい。そんな会話をベックとした後、俺達は船をその島に向ける。

 その後風呂から出て来たナミが、倉庫で悲鳴をあげるから即座に足を向けた。蹴破る勢いでドアを開ければ、床にペタンと座るナミの姿。

 

 「どうした!?」

 「インクがぁ~……」

 「あー……波でやられたな。ベックも落ち込みそうだよな、こりゃ」

 

 そうして俺達は、島に向かう目的が追加された。島が見えて来ると、遠くから測量してるらしいナミに溜息が出る。

 遠目に見てるだけで、測量してるとか……普通思うか?

 世の測量士に謝れ。そう言いたくなるのを抑えて、のんびり眺めていればその様子が変わる。

 

 「どうした?」

 「にゃんにゃんにゃん!」

 「は?……あァ、猫か。多いもんな。とりあえず買出しはルー達が行くだろうか「買物に、行ってきまーす!!」待てコラ!この、馬鹿猫!!」

 

 船を泊めるよりも早く、ナミと言う名の馬鹿猫は月歩で猫の元へ向かって行った。明らかに買物じゃない目的の為と分かる後姿に、けれども船を泊めてからの捜索だなと溜息が落ちる。

 それからバタバタとやる事を進めていれば、ナミが買い物をしたのも本当らしく大量の荷物が届いた。だと言うのに、本人が帰らない。

 ……まさか、猫に襲われてるとか言わねェだろうな。いくら猫属性でも、それは無い……よな?

 不安になった俺が船を飛び出せば、皆も何かのついでに探してくれると言うので任せた。……あ?

 見聞色の覇気を使えって?

 こんな精神状態で使えるか、ばーか!

 

 「ナミ!どこだ!?数匹なら猫飼っても良いから、出て来い!」

 

 こう言えば猫抱いて出て来るかと思ったのに、聞こえて来るのは猫の鳴き声だけ。そういや、出発前にナミもにゃんにゃんと鳴いてたな。

 何故、猫が居ると言わずに鳴いたのか。俺に鳴かされたいって事か?

 その時ふわりと感じたのはナミの香り。……だとするならば、クリマタクトで隠れているのだろうか?

 

 「どこだ?……近くにいるのはわかるんだが……」

 「にゃー……」

 「猫……?」

 

 鳴き声につられて視線を向ければ、ナミと良く似た色合いの猫がいた。あまりにも可愛いその姿に、頬が緩むのを抑えられない。

 

 「似てるな。……おいで」

 

 首輪もしてないから、野良なのだろう。そうは思うのに、つい手を差し出した俺に擦り寄る猫。

 可愛い。本気で可愛い。

 甘えてくる猫を抱き上げれば、何故かナミの香りがする。瞳の色もナミと同じで、頭を撫でた時とこの猫を撫でた時の感触が近い。

 ……まさか。そんな事が?

 

 「あれ?ナミ?」

 「にゃ!」

 

 勢いよく頷く猫は、そのまま光に包まれた。そうして光が消えると、ヒトガタに戻ったのは戻ったんだが……。

 呑気な俺の猫は目の前で、自分の頭とお尻についてるそれを触って確認してる。都合のいい事に、ズボンにちょうどいい形で穴が空いてるから、問題は起きていない。

 この世界の服は能力者に都合よく作られている。つまり、ナミのこの現象は能力者が関わっている事になるな。

 

 「わかってくれてありがとう。気付いて名前呼んで貰わないと戻れなかったみたいなのよ」

 「……そうか」

 

 もしナミが人の姿に戻れなくても、俺は連れ帰っていただろう。それくらい、猫の姿のナミも愛おしかった。

 おそらくナミが兎になったとしても、俺は同じように分かるだろう。どちらもナミに良く似合う生き物だ。

 

 「この耳とかも暫くあるみたいだから、その間この島に停泊して貰える?安全の為に」

 「……わかった」

 

 今夜は美味しく貪ってやろう。耳も尻尾も明らかに性感帯だからな。

 

 「ありがとう!」

 

 そうか……そんなに食われたいか。と、内心で頷いた時、ナミが俺の手を取って笑いかけて来る。

 それが本当に可愛くて、だがそうしたふとした仕草一つで年齢だけを考えたら娘でもおかしくないと気付かされちまった。だからつい頭を撫でて誤魔化してみれば、目を伏せて気持ちよさそうにするナミの姿。

 

 「……何処か、休める所にでも行くか。猫の姿で長く居たんなら、疲れただろ」

 「喫茶店でも入る?今の時間、まだ酒場開いてないから」

 

 酒場が開いてたらそっち行ってたのかと思いながらも、ナミが喜びそうな喫茶店は……と、無駄に見聞色の覇気を使って調べる。ベックにバレたら殴られる案件だが、気にしない。

 

 「……ナミ、猫喫茶ってのがあるみたいだぞ」

 「本当に!?行きたい!!」

 「よしよし、行こうな」

 「……なんか、今、ものすごく子供扱いされた気がする」

 「違うぞ。ナミは俺の……愛猫だ」

 

 言葉の直後に、尻尾を膨らませて怒るナミを腕に捕らえて歩き出す。ポカポカと殴ってくるその力の非力さに、少しばかり心配になる程には俺の心に余裕があった。

 そうして到着した喫茶店は、座布団に座る仕様な上に、猫が大量に居るのはまだ分かるが、テーブルや座布団まで全てが猫グッズで埋め尽くされている。そこに猫の耳と尻尾の生えたナミが座り、俺を手招く。

 ……成程、ここが楽園か。それとも夢か。

 

 「シャンクス?」

 「ナミが可愛くて、頭がおかしくなりそうだ」

 「何言ってんだか」

 

 そう言いつつ自分の分としてアイスティーを頼んだナミは、俺にはアイスコーヒーを頼んでくれたらしい。それも無糖。

 

 「頭冷やすにはちょうど良いでしょ?」

 

 クスクスと笑うナミに、勝てねェなと笑えばいつの間にかナミの周りに猫が寄ってきていた。流石は猫だなと思いながら、それを見ていたら飲み物を持ってきた店員が驚いたような顔をする。

 そして、人に懐かない子達なのにと言われれば、この猫耳とかがある効果だろうかと思う。けれども、大量に猫がナミに群がり、膝ばかりか胸にまで登れば何とも気に入らない。

 登られてるナミは、楽しそうに笑いながら落ちないように支えてやってる。……俺のナミなのに。

 

 「凄いわ。店内の雄猫が全部集まってる」

 「は?……まさか、全部、これ、雄猫か?」

 「ええ、普段は人に懐かない子も多いのに。本当に猫に好かれ「ナミから離れろ!」」

 

 最後まで聞いてる場合じゃねェ!なんでナミは、俺の目の前で別な雄抱いてんだよ!!

 猫達を追い払ってナミを抱き締めると、ナミが覇気を纏った拳で殴って来た。それを受け止めて尚、離さずにいれば睨み合いになっちまう。

 

 「何すんのよー!人が楽しんでるのにっ!!」

 「雌猫なら許すが、雄猫は許さねェ……」

 「え?だって、相手は……猫よ?」

 「今日のナミは俺の、愛猫だろ?」

 

 真っ赤になったナミのそれは怒りからか、それとも照れからか。俯いて俺に頭を預ける愛しい猫の頭を撫でながら、近付こうとする猫を牽制する。

 店員がそんな俺達に楽しそうに笑っていたが、その会話の中で今日が猫の日だと言うのがあればナミにそっと囁いておく。別に、ナミを虐めたい訳じゃねェからな。

 

 「猫グッズ、好きなの後で買ってやるから……いじけんな」

 「猫と戯れたい」

 「雌猫なら許そう」

 「もうっ!!」

 

 そう言いながらも、俺はナミの腰にある腕を離すつもりは無い。ナミも諦めたのか、その状態で雌猫を選んで抱いているのだから、平和な時間だろう。

 今日が猫の日だと言うのなら、俺は俺の猫を甘やかしたい。俺だけの猫を独占したいと願って、何が可笑しいだろう?

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