この人頭良過ぎて私には、書けない……!!
初めから愛してた(特別作品)ベン・ベックマン
保護されて、私の部屋を用意されて、でも寝る時にはシャンクスが私を迎えに来たり、拉致したり、部屋に乱入して来たりしているから私の部屋はほぼ執務室みたいな状態になっている。その証拠に昼間はベックと2人で本や資料を読み漁ったり、会議したりする事が殆どで……気が付くと私の部屋はベックの煙草の臭いになっていた。
それに最初に気付いたのはシャンクスで、不愉快そうに私をシャンクスの部屋に連れ込んだシャンクスと共にその日も眠る事になった。シャンクスはベックを大好きなのに、どうしてそんな反応なのかなと首を傾げたら、シャンクスに困ったように笑われてしまった。
「ナミは、こういう事だけ幼いな」
「なに?」
「……経験が無いわけでも無いってのに、不思議な奴だよ」
「シャンクス?」
「良いから、寝ろ。いつまでも起きてると襲うぞ」
「……シャンクス、私自分の部屋で寝たいわ。1人で」
私の言葉にシャンクスは言葉を返さず、何故か苛立たし気に舌打ちすると私の唇を食らい尽さんばかりに貪ってくる。それが嫌だと、怖いと思って抵抗したら苦しそうなシャンクスの視線が私を貫いた。
それにより息を飲んだ私を見て、シャンクスは何故か泣きそうな顔で私の首に跡を残して来た。その痛みにビクリと体は反応するけど、同時に鷹の目やドフラミンゴのそれを思い出して指先が冷たくなるのが自分で分かった。
「や……だ!いやっ!止めて、助けて!シャンクス、ベック!助け……」
混乱した私の様子にシャンクスはそれ以上何もせず、ただ私を強く抱き締めると耳元で悪かったと言ってからあやす様に背中を撫でてくれる。小刻みに体を震わせる私に、シャンクスは何もしねェから、今は眠れと言って私が眠るまでただ優しく抱き締めていてくれた。
翌朝になり、意識が浮上するとシャンクスの姿が無かった。代わりに近くに腰掛けていたのはベックで、どうしたのかとその姿に視線を向けると起きたのかなんて言いながら頭を撫でられる。
昔から変わらない子供扱いに、何故か胸が少し痛んだ気がした。そんな私の様子に、ベックは黙って、それから優しい声で問い掛けてくる。
「……お頭の事は、受け入れられねェか?」
「どういう、意味?」
「……昨夜、お頭に襲われかけただろう」
ベックの言葉に心臓を掴まれたような衝撃を受けて、声を喪う私にベックは小さく成程なと言うと、私をその腕の中に隠すようにして抱き締めてくれた。それが何を意味しているのかは知らないけど、その温もりにホッとしてる自分がいて、なのに何故か勝手に溢れ出す涙を止める事が出来ない。
「……ナミ、俺は、怖くないか?」
「今は、怖くないわ」
「どんな時怖い?」
「ミスした時とか、期日までに仕事が片付かなかった時とか、体調悪いの隠してる時とか……」
いくつかベックが怖い時を挙げ連ねていたら、ベックが私の頭にチョップして来てそれが痛くて言葉が止まる。涙も1瞬止まったけど、なんで突然?
そう思ってベックを見上げたら、ベックがあァ成程なんて言いながら私の目元に指先を這わせて、そっと指で拭ってくれた。それから、私をベッドに押し倒して甘く囁くような声を出す。
「怖くなったら言え。無理に耐えるなよ」
そう言ってベックは昨夜シャンクスがつけた跡に重ねるように私の首筋に唇で触れると、チクリとした痛みを残した。それに私の体は大袈裟な程に反応するから、それが浅ましく思えて胸が苦しくなる。
「……怖いか?」
「怖くは、無いの。自分が浅ましく、思えて……」
「ナミは、綺麗だ。それは誇って良い」
ベックはそう言って優しく笑いかけてくれるから、その笑顔に思わず見惚れる。そうしている間にベックは私の服を器用に脱がせて、繊細なガラス細工でも扱うように、丁寧に優しく私の素肌に触れて来る。
「ぁ……っ!」
自分の声が勝手にこぼれ落ちた事で、泣きたくなる。どうして、誰にでも反応するのだろう。
それにしても、どうしてベックは今こんな事してるんだろう。私を抱きたいとか、そんなんじゃない気がするんだけど……。
「ベック、どうして?」
「……ナミは、冷静だな。だいたい理解したから、もういい。悪かったな」
やはりベックは何か調べていただけらしい。そう思って体を起こすと、脱がされた服を着ていく。
そんな私にベックが、困ったような声で問い掛けてくる。でも、顔を見る勇気は持てそうもない。
……勇気?
なんで、ベックの顔を見るのに勇気が必要なの?
「本気で抱こうとされなけりゃ、怖く無いらしいな。それとも、俺を男として見てないのか?」
「……ベックは男の人でしょ。ちゃんと分かってるわ」
「なら、お頭には怯えるのに、何故俺は平気なんだろうな?」
「私は……!」
咄嗟に顔を上げて、言葉を口にしようとした私は、どうしてかなと思う。シャンクスもベックも私は大好きで、でも1緒のベッドに連れ込まれて嫌だと思ったのはシャンクスで……。前は安心できたし、最初のうちは気にならなかったのに……どうして、今は……?
何が変わったんだろう。そう思ってベックに視線を戻した時、唐突に理解した。
顔が爆発する勢いで赤くなる。私、まさか、ベックの事が!?
そんな、なんでそんな1番可能性の無い相手を!?
「ごめんなさい、私なんか、おかしい。少し休んでくるわ」
「待てナミ」
突然掴まれた腕を、私は振り払えない。ベックの温もりを、振り払うなんて選択肢持ち合わせてない!
掴まれたその勢いのままに引き寄せられれば、その腕の中に閉じ込められる。全身が心臓になったみたいに脈打つ。
いつもみたいに落ち着かない。心臓が、口から飛び出しそうで、思わず唇に手を持って行くとベックが心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「熱があるな。続け様だったから、体調に変調を来たしたか。悪かったな。すぐに部屋に運ぶから少し眼を閉じていろ」
そう言いながら私を抱き上げる力強い腕に、何でかな、泣きたくなるのは。自覚した瞬間に、妹か娘としてしか見てくれないという現実を突き付けられて、苦しさに喘ぐ。
「ベック、お願い……1人に、して」
「ナミ……?」
「私、混乱してる」
私の体が震えているのに気づいた様子で、ベックは少し考えるような様子を見せてから、そっと私を部屋に運び込んだ。ベッドに私を下ろしたベックは、ドアに無言で向かうから1人にしてくれるのだろうとそっと眼を閉じる。
でも、ガチャリと音が聞こえた他は、音がしない。それは出て行ったにしてはおかしいと瞳を開けた時、ベックが大股で私の元に歩み寄って来た。
「ベック?」
「ナミ、俺が好きか」
「なっ……!」
質問のような言葉を使っていても、ベックの語尾にクエスチョンマークは存在しない。確信を持っているベックのそれに、私は泣きそうになる。
どうして、いつも全てバレてしまうのかな。答えたってベックは私を女として見る筈もないのに、どうして……そんな事を聞くのよ!
どうにも出来ないようなやるせない想いが、涙となって溢れ出る。ぼたぼたと落ちるそれを、拭う事さえ私には出来ない。
「ナミ……俺は、ナミを愛している。ナミは、どう思っている?」
「え?」
「ナミを女として、愛している。相手がお頭だからと身を引いていたが、ナミの心が俺にあるなら、遠慮するつもりはねェよ」
「ベック、ホント、に?私の片想いじゃ……?」
ベックは私の涙を指で拭いながら、優しく笑う。その笑顔は見覚えが沢山あって……そこでまさかと思う。
「私、ベックの事が好きよ。シャンクスの事も好きだけど、ずっと違いが分からなかったけど、シャンクスに抱きしめられて寝るのが最近嫌で……それで、ベックとシャンクスに向けるそれの違いに、さっき気付いたの」
ベックは私の言葉を黙って聞いてくれる。拭われてる筈の涙が、ベックの指の上を通過するように流れて落ちる。
ベックは私を急かす事無く、静かに言葉を待ってくれるから私もゆっくり言葉を紡ぎだして行く。ベックは、私に……優しい。
「でも、私は他の人に……何度も……それに対して録に抵抗出来なくて……だから私には本当は誰かを好きになるとかそんな権利……」
「ナミは俺を呼んだだろう。助けに行けなかった俺の責任だ。気にしなくていい。もう、誰にも害させたりはしねェから、このまま抱かせろ」
「ベック!?」
突然何を言ってるのかと思って見れば、ベックの気配と表情が本気だと私に告げていて、無意識で私はそれに頷いていた。そんな私にベックはいつもの様子で言う。
「ナミが望んだ相手なら、ナミが幸せになれるなら、誰が相手でも祝福すると決めていた。だが、1つだけ譲れねェ事もある」
「ベック?」
「俺以下の男に、ナミを託すつもりはねェ。将来でもいい、俺と同等かそれ以上になれる相手にしか渡さねェと……決めていた」
そう言ってから、いつから恋愛にこの感情が変わったかは知らねェが……と前置きして、ベックは言う。まるで天気の話をするかのような気軽さで。
「初めて会ったあの日、俺を俺としてナミが認識したその瞳に、俺は囚われた。コロコロと表情を変えて、大人な意見を口にして、行動に移す。頑固で融通が効かなくて、心配ばかりかけて……善良すぎるその脆い心に触れた時から、俺はナミを幸せにすると誓っていた」
「ベック……」
「ナミを、愛している。……余り、優しくはできないかも知れねェが、そこは許せよ」
途中お小言としか、思えないような言葉もあったけど、でも、ベックの想いは伝わったし、何が言いたいのかも分かるから、私は自らの意思でベックの首に腕を回す。ベックが望んでくれるなら、例えそれが同情でも捌け口でも私は構わない。
「優しくしないで、いいから……」
「…………ナミは余程、俺に壊されたいと見えるな。余り煽ってくれるな、抑え込んでいた色々な物が原因で、ナミを壊しそうで怖いんだよ。俺も、人間の男だからな」
そう言いながらベックは私のベッドに、私を抑え込むように沈めてくる。それに私が笑いかければ、いい女になり過ぎるなよと言ってから、唇を降らせてくる。
触れ合った唇が優しくて、それでいて官能的で……こうなって初めて、そう言えばベックにKissされるの初めてだわと気付く。1度Kissしたら歯止めが効かなくなると分かっていたのだと囁いたベックに、私は笑う。
今が昼間以前に朝だとか、色々問題もある筈なのに、私は何も考える事ができなかった。シャンクスが私とベックのそれを受けて数日寝込むなんてこの時は知らなかったし、そんなシャンクスを看病しようとした私を何故かクルー総出で止められた他は、特に大きな変化は起きる事も無い。
ベックと共に過ごす穏やかな日々が始まり、それでいて情熱的で官能的なベックとの日々が続いて行く。恋なんて知らないままに生きてきたし、これからも知る事は無いと思えるのは、私は初めからベックを愛していたらしいと知ったから。
「……俺はナミだけは傷付けねェし、自分でも恐ろしくなる程に大切に想ってる」
「ねえ、ベックはいつから私を……?」
私の問い掛けにベックは優しく笑って、その瞳に紛れもない熱を滾らせながら言葉を口にした。
「初めから愛してた」
ベックの言葉に私は何も考えられずに飛び付いて、そして自らその頬にKissをする。それを受けてベックは私の頭を優しく撫でながら、煙草を海に投げ捨てると頭を撫でていた手を後頭部に移動させて、あまり多くは語らないその唇の代わりにその感情を伝えてくれる情熱的な口付けをして来る。
このまま呼吸が止まっても構わないと思える程に、私は幸せで……何があろうとも全てから護ってくれるだろう腕の中で、私もこの人の心を守りたいと思わされる。強くて優しくて、頑固で頑なで、それでいて脆さをも器用に隠して溜め込んでるような人だから。
愛してる……心から、誰よりも。互いの合わさる唇が、それを確かに伝え合っていると実感できる。
これもまた、何かが少しズレていたら有り得たかも知れない、ひとつの未来の形。感情を抑えて、隠す事ばかりが得意になってしまった賢すぎる2人の、これは小さな幸福へ向かう物語。
最初で最後のつもりで書きましたが、多くのご要望を受け、他シリーズも含めベックマン作品を書く事に致しました。時折追加されるかと思いますので、宜しくお願い致します。