潜水艦は余りにも長い事潜らせておくと色々と良くないので、定期的に浮上させる必要がある。通常の潜水艦だと風呂等を使うとガスが充満したり、酸素不足になるリスクがある他、異様に熱くなるのだ。
そうならないようこのポーラータング号は調整してあるが、やはりベポと女達の体調を考えれば定期的に浮上させる必要がある。そして、浮上させればそのタイミングでナミが新聞を手に入れてくれるので、読み逃さないで済むのが本当に助かる所だ。
通常過去の新聞は処分されちまうが、ナミに渡してない時はそれを纏めて鞄に入れていてくれてるらしい。ニュースクーにここまでして貰えてる奴は、そう多くないだろう。
今も早速ナミの元へニュースクーが向かったのが分かり、ナミの部屋に新聞を取りに行く。するとそこでは箱を受取り、ニュースクーに菓子を手渡すナミがいた。
よく見れば新聞も受け取っているが、それに視線を向ける事無く箱に意識を向けているのを見れば多少不快にもなる。なんだ、その箱は。
差出人の名前が見えた時、勝てるかよと思い、その場に崩れ落ちそうになる。シスコンも過ぎれば精神疾患だと、コイツは分かっているのか。
机の他に座れるのがベッドしかないのでベッドに腰を下ろして溜息を吐き出せば、口の中に甘い物が押し込まれた。今度はどうしたと視線を向ければ困ったような、気遣うような顔をしたナミがいて……心配かけたらしいと分かる。
だがその直後に特別よなんて言われると、阿呆めと本気で思う。その為に少し嫌味な返答をしたが、ナミは少し得意気にそうでしょーなんて言い出すのだから、愛は盲目と言う単語を思い出すのも仕方ないだろう。
その盲目的な愛は俺に向けるべきであり、家族に向けるべきとは思えないのが現実だが。まァ、そこはナミが相手では、言うだけ無駄だろう。
俺は新聞を手にして、ナミから差し出された飲み物を1口飲んでから部屋を出る。色々と思う所はあるが、今日は辞めておいた方が良いだろう。
その翌日食糧補給の為に立ち寄った島で、エステ用オイルなる物を見付けて、これでいいかと手を伸ばそうとしたら種類が豊富だと気付く。これは……慎重に選ぶ必要があるな。
そう思って幾つか確認して、ナミの好みそうな香りの物から選ぶ。後はと少し考えて髪留めを購入して帰れば日が傾いていたが、特に何か変わった事も無くその日は無事に終了した。
それから数日後、先日買ったものをどんなタイミングで渡すべきかと考えていたら、ホワイトデー当日なのもあり、ナミがクルーに捕まっているのが見える。初めに捕まっていた相手は、ナミの他には唯一の女であるイッカクだった。
その為にナミは、お返し用意してないわなんて慌てて居た。それはまァ、微笑ましいから許そう。
その先だ、問題は。ベポも良い。
クマの形をしたクッキーを渡して、ナミはそれに対してありがとうなんて笑っているだけだったから。そして、コラさんだ。
コラさんはシンプルなペン立てを渡していて、程々にして欲しいんだがな……なんて言っている。シャチはマシュマロを、ペンギンはコースターを渡していた。
飲み物の汗で書類がダメにならないと喜ぶナミは、無邪気にペンギンに抱き着こうとしたのでそれの襟首を掴んで阻止すれば、ウエッと情けない声がナミから聞こえた。それから恨みがましい視線を向けられたが、お前が悪い。
俺以外に抱き着くな。お前は俺の女だろうと、言葉には出来ずに思う。
その後も次々と何かを渡され続け、その度に笑顔でお礼を言うナミに何とも言えない気持ちになる。相手はクルーで、先日の礼だろうと分かっているのに……だ。
いやもう、なんとも言えないなんてもんじゃねェ。散れ、お前ら。
無駄にナミに近付くな。ナミも笑顔を振りまくな!
思うだけで言えない分、苛立ちが加速度的に増えていき、感情が爆発しそうになった時ナミが笑顔を向けて来た。嬉しそうに声を掛けてくるナミの腕を掴んだのは、無意識の行動だったが止まれそうも無い。
「ロー、見て!可愛いお菓子沢山貰っ……「来い」」
言葉を遮って俺の部屋に連れ込めば、漸く静かになる。俺の女なんだよ、ナミは!
「ロー、どうしたの?」
不安そうにしているナミを見て少し落ち着きを取り戻した俺は、冷静に、端的に、言葉を伝える。用件のみを。
「ナミ、脱げ」
「へ?」
「服を脱げ」
「…………嗚呼、うん、診察か何かね。了解キャプテン」
そう言ってからナミは恥らう様子もなく脱いで行く。その間に準備を調えておけば、下着姿になったナミが首を傾げた。
「全て脱げ。そして、恥じらえ」
「え?診察じゃないの?お医者様モードの時は、ローってそういう事しないから、その……」
……どうやら、恥ずかしいとは思っていたらしい。ナミのその言葉と、ほんのりと赤く色付いた頬とで、苛立ちが消滅する。
凄いなお前。思わずそう言いそうになるが、首を傾げられるのは分かっているので言葉を飲み込む。
「早く脱げ」
俺の言葉になんなのよーとか言いつつもナミは従うから、その体を眺める。とりあえず、不調は無さそうだな。
脱いだナミを台に俯せに寝かせて、髪を纏めて用意しておいた髪留めで纏めてやってからその背にオイルを垂らす。それにビクリと反応するので、1瞬悪戯してやろうかと思ったが、それはまた今度で良いだろう。
掌でオイルを伸ばしつつ、凝っている所を探る。初心者に多いミスだが、硬けりゃ凝ってるは間違いだ。
筋肉が緊張していたり固まっているから、凝ってる奴は硬いと認識されがちだ。だが、女性は筋肉量が少なく脂肪を付けやすい体質である場合が多いので、脂肪により柔らかいが故に凝ってないなんて言う阿呆もいる。
……筋を痛めているという事も無さそうだが、肩甲骨の辺りが少し凝り始めてるな。元々が柔らかい筋肉だから、気付きにくいが。
このマッサージとは、押せばいい、刺激すれば良い、というものでもない。だから下手に触ると、後から余計に痛くなるなんてケースもあるんだ。
姿勢が良いからか、肩よりも背中や首が凝ってるな……。そして、腰は大丈夫か。
「ロー、何してるの?」
「バレンタインにもてなされたからな。その礼だ。大人しくしてろ」
「すっごく気持ちぃ……寝そう……」
「寝ていい。……全身マッサージしておいてやる」
「ん……。ありがとう……」
触れられていても眠れるくらい、俺を信頼してくれているのだとわかれば、気分は1気に浮上する。ナミが眠ってからもマッサージしてやり、暫くオイルをそのままにして保湿してやれば、大分楽になるだろう。
少しして目覚めたナミはなんかベタベタするとか言うから、シャワー浴びて来いと言ってオイルを流させる。その間に後片付けをしていたら、風呂場から声が聞こえてきた。
「え、何この髪飾り可愛い!どうやってまとめてあるの!?やだ、ほどきたくない」
「やり方後で教えてやるから、解け」
風呂場に向かって叫べば、ナミが中からはーいと間延びした返事を寄越した。出て来たナミは相変わらず髪から雫を落としていて、それを手招きして対応してやってから、纏めたやり方を教えてやる。
その途中でナミが体をピクリと震わせたから、頭皮で感じたかと気付き、タオルしか身に付けていないナミの素肌に手を伸ばす。それに小さく震えながら声を押し殺すから、とりあえずこのまま二人の時間に入ってもいいだろうと笑う。
元々吸い付くような肌で体も柔らかいが、今は凝りも無くなりいつもよりも更にしっとりとした肌が俺を誘う。この状態にしたのは俺だからな。
唯一自分の身を隠す布を必死で押さえつつ、声を押し殺すナミの項にキスを落とす。そうしつつ弱い所を刺激してやれば、その身を小さく震わせる。
熱くなる体にと突然のそれに戸惑いと期待を織り交ぜた視線が向けられては、俺に抑え等効く筈も無い。
「ナミ、歌え……」
「ロー……ぁ……っ!」
歌がこの場合何を示すのか、ここ迄来れば分からない筈も無い。それを分かっていて、拒むように口をつぐみ快楽に震える女に、男は人の悪い笑みを浮かべる。
ホワイトデーがバレンタインのお礼の日ならば、手は出さないで欲しいなんぞと荒い呼吸の合間で告げる女に、男は恍惚の笑みを浮かべた。その後女は強制的に歌わされ続けたようだが、それもある意味幸せな恋人の時間なのかも知れない。