※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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イースターイベント(side)

 部屋で本を読んでいたらナミが伸びをした。どうやら、ずっと集中して描いていたそれが完成したらしい。

 海図を持って動き出したのを見て、どうやら干すらしいとそれを眺めていれば蜜柑の香りが強く香る。元々蜜柑の香りがするナミが、それを増すようなピアスをしているのだから当然だろう。

 そのまま空気の入れ替えに窓を開けたナミは首を傾げると、暫しその動きを止める。サイクロンとかであれば即座に言うだろう事を思えば、何があったのかと窓の外に視線を向けるのも当然だろう。

 その後ナミが唐突に動き出して、その勢いのまま外へと飛び出すから俺も慌てて後を追った。何かが起きているのは、間違いない。

 1人で解決しようとするなと言う言葉は、目の前に広がる霧により失われる。深過ぎる霧がナミの姿を隠し、だがナミからの蜜柑のそれが強まれば居場所は分かる。

 香りを頼りに腕を伸ばせば倒れ込んで来たその身体。苦しそうにしながらも声すら出さないそれに、長年の拷問に耐えた癖が見え隠れする。

 震えながら、けれども頼る事を良しとしないその精神が俺を拒むように動く。苦しそうにしながらも自力で動こうとするそれに、つい口調と声がが固くなる。

 

 「この程度、甘えには入らない」

 

 俺の言葉に反応して漸く俺を見たと思ったら、泣きそうな顔をしている。普段は強気な態度ばかり見せるのに、俺にはこんな可愛い反応を見せるのだから甘やかしたくもなるだろう。

 お前は捨て猫かと言いたくなるのを耐えたまま抱き上げて歩けば、ナミが重いでしょなんて言う。だが……これでも枠としては剣士に該当する男に何を言ってんだかな。

 それに……あの頃と同じような子供扱いは基本、もうされたくはねェ。今度こそ、俺が守ると決めているんだ。

 そっと診察室のベッドに寝かせて確認するが、別段変わった所は無い。念の為に近くの島に行き、この近辺特有の病が無いかを確認するかと船を進めるよう指示を出す。

 

 「今の所熱はねェな。寒気は?」

 「大丈夫よ。ローったら、過保護が過ぎるわ」

 「ナミにだけは言われたくねェ……」

 

 過保護うんぬんは、ナミにだけは言われたくない言葉第1位に該当する。寝なさいとか、食事しなさいも同等だがな。

 

 「ねぇ、ロー」

 「どうした、目眩でもするか?」

 「違いますー!」

 

 ぶぅっと膨れたナミに可愛いなと思って笑えば、少し気恥しそうにするから多分甘えてみたとか、拗ねてみたら怒られもしなかった事で冷静になったんだろう。まァ……本気で可愛かったから、怒る気にならなかったんだがな。

 

 「それで、どうした?」

 「私、イースターのイベントやりたいの」

 「イースター?」

 

 初めて聞く言葉だな。なんだそれは。

 どこの国のどんな風習だろうか。ナミの事だから何かのイベント何だろうが、全く分からねェ。

 

 「兎と卵のイベント。詳しくはWebで!」

 「〝うぇぶ〟ってなんだ?」

 「言い間違えたのよ。机に出版したくて書いたの置いてあるから、それを見てくれると助かるわ」

 

 俺はナミの言葉にハイハイと返事をしつつ、その頭を撫でる。遊びたいと言うなら、それを餌に休ませられるだろうと考えたからだ。

 だがナミの頭を撫でていると、不思議な感触に気付きそっと手を離す。なんだ、今の……もふもふとした感触は?

 余りにも気持ちよくて、ずっと撫でていたたかった。だがまずは確認する事が大切だろうと、断腸の思いで手を離したのだ。

 すると、その場所からピョコンと生えてきた長くもふもふしたもの。それを見れば、ゾオン系の悪魔の実を食ったのかと問いたくなり……有り得ないと首を振り、だが言葉は勝手に口から零れ落ちる。

 

 「頭の上にあるものは……目の錯覚か?」

 

 いや、触ったんだからそんな筈はないとわかっている。わかっているが言わせてくれ。

 そんな物がナミについたら、俺はこの先永遠にナミに勝てない。もふもふしてるものとナミのタッグだ等と、神よりも尊いと断言出来る。

 そんな事を考えている間に、ナミは鏡の前で自らの耳と尾てい骨にある尻尾を確認してフルフルとその愛らしい2ヶ所を震わせる。それから俺を、泣きそうな潤んだ瞳で見つめて……。

 

 「ロー……私……」

 「ナミ、大丈夫だ。最高に似合ってるぞ」

 「ロー!?あのね、いくらもふもふが好きでもここは医者としての意見を言うとか色々あるわよね!?」

 「ナミは可愛い。兎の耳と尻尾だな、詳しく調べてやるからこちらに来い」

 

 そう言って当然検査も行ったが、ついでに感度や反応も確認して、やはり美味しく食べて寝かしつけた後1人で真剣に調査する。生える前にはあった筈のナミの不調も、耳や尻尾が生えてからは無くなっていた。

 痛覚も含め、感覚がある様子から見てもナミのこれは神経が通り繋がっている。悪魔の実も食べちゃいねェ。

 そうなると、あの妙に濃い霧が何か関わっているのは間違いないだろう。他の書籍でも調べようと腰をあげた時、ドアをノックされ対応すればイッカクにも生えたとわかる。

 

 「ペンギン、近くの島に急いでくれ。風土病的な物か、この地域特有の現象である可能性が高い。安全確認の為に情報収集をするぞ」

 「キャプテンは、ナミの担当で忙しいですもんね」

 「悪い。俺が部屋から出るとナミが起きるからな」

 「アイアイ、キャプテン。……イッカクにはシャチを付き添わせてあります。買出しも必要ですか?」

 

 その言葉に頷き、ナミの求めていたイベントに関する情報を渡すと、準備が出来たら呼びますねと言って去って行った。ペンギンは本当に、よく使える男だ。

 どうして同じ幼馴染で、こうも違うのだろうか。まァ、根本的な所は似てるがな。

 どちらも俺の弟分でありながら、兄貴ぶりたがる。そして……分かりやすく俺を愛してると、そう伝えて来るんだ。

 その後俺もナミを抱いて眠り、朝を迎えた。朝食もナミが動けないと言うので、それに合わせてベッドで済ませれば解決だ。

 

 「キャプテン、準備が出来ましたんで……ナミをモフるのはまたにしてください」

 「わかったのか?」

 「はい。地域性のもので、この海域に発生する霧により動物の特徴が1時的に現れるそうです。数日で元に戻り、特に健康被害や後遺症は無いとの事でした」

 「良かったぁ……!ゾオン系の能力者になって泳げなくなったとかじゃないのね?」

 

 ホッとした様子で笑うナミに、ペンギンは可笑しそうに笑う。どうやらペンギンはナミの兄貴を気取ってるらしく、案外甘やかしてる。

 ナミもまた、ペンギンには随分と子供っぽい仕草を見せるから、無理に大人でいた反動なのかもなと思ってる。甘え方を知らないナミが不器用に甘える様子は、見ていて微笑ましい。

 

 「あァ、大丈夫だよ。さて、歩けるか?」

 「五月蝿い!歩けなかったら、ローに抱いて行って貰います!」

 「……キャプテンが喜ぶだけだから、まァ良いけど。イースタァっての、準備できたぞ」

 

 その言葉に兎はぴょんぴょんとベッドから飛び降りて、俺を誘う。早く行こうと。

 俺は兎に誘われるままに歩き、甲板へと向かって歩き出した。このまま異世界に迷い込んでも、この兎がいるなら構わないと半ば本気で考えながら。

 甲板へと到着すると可愛らしい兎の形を模した料理と、卵の料理が並んでいる。その上ではいと籠を渡されては、何事かと思わなくもない。

 

 「船内にイースターエッグが隠されてるよ!見つけた数だけ、ここにある食事を食べる事が可能なんだ!つまり、見つけられなかった人は……ご飯抜きだよ!!」

 

 ベポの言葉にザワつくクルーと、あらあらと楽しそうに笑うナミ。そうしてまだしゃがんだりするのが難しいナミを支えたりしながら、共に卵探しを始める。

 だが、尻尾や耳がピクピクと動き、ひょこひょこと移動するその姿に着いて歩く理由が、サポートと言うよりは牽制の意味が強まってしまう。兎は卵を1つ見付ける毎に嬉しそうに振り向き、笑う。

 それを見て良かったなと頭を撫でながらそれを拾ってやると、大切そうに籠に入れるのを繰り返していけば結構な数の卵が見付かった。それを手に戻れば、クルー達も見付けた卵を元にサンドイッチやらケーキやらへと交換したり、見付けた卵を食べたりして……食べてる?

 

 「ナミ、この卵……」

 「ゆで卵を食紅と酢が混ざった物に漬け込んで、それにお絵描きしてあるだけだから、酸味が余程ダメな人以外は美味しく食べられるわよ?」

 「殻があれば酢の酸味なんざ分からねェだろ」

 「ゆでた後なら味は殆ど染みないけど、割れ目が少しでもあれば染みちゃうし、生卵で漬け込むとちゃんと染み込んじゃうのよ。卵の殻は人間の目には隙間なんて見えないけど、マスクと同じように細かい隙間があっ「あァ、だいたいわかった。もういい、ありがとう。それより、食うか」」

 

 そう言って兎の形に作られたり、兎や卵を模したアイテムが添えられたメニューを眺める。ナミは卵サンドと言うのでそれを貰い、俺は楕円形に作られた所謂卵形のお握りと交換した。

 それを食べながらナミにジュースを、俺は緑茶を口にする。そんな時、まだエッグハントをしていたらしいコラさんが何かをひっくり返したと聞けば、落ち着いて食事もできやしねェと笑い合う。

 Happy Easter……。可愛い兎は最後のデザートと決めた男は、心配そうにクルーを見詰める兎の唇を軽く堪能してから助けに向かう。

 今宵兎が無事に眠りに着けたのかは、翌朝兎の瞳が赤かった事が何より雄弁に教えてくれているだろう。だが、詳細については……2人、いや、1人と1羽のみが知っていれば良い事だ。

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