マルコさんの背に乗せて貰い最初に向かったのは、チョッパーの住んでいるドラム王国。私が知る限りでは、そこにエースは現れた筈だから。
でも、雪国だと言う事で先に立ち寄った別な島で、買い物を簡単に済ませる事になった。大荷物になるとマルコさんが飛ぶのに不便そうだからと、最低限の装備を揃えた私にマルコさんは何故か不満そうにする。
「ナミ、それだけでいいのかよぃ?」
「荷物になると困るでしょ。冬物は嵩張るもの」
初めは敬語で話そうとしたけど、マルコさんがそれを許さずに結局はいつもの口調である。そんな私の返しにマルコさんは苦笑すると、軽く頭を撫でて来た。
共に行動するようになって数日。マルコさんはどうやら、私の頭を撫でるのが好きらしいと知った。
私の荷物はノジコ達が纏めてくれて、先にモビーに送って貰ってるのもあり、実際雪国対策のコートとか身に付けられる範囲で充分だと思う。なのに、マルコさんはそれを良しとしない。
なんで、いつも無駄に甘やかしてくるのかな?
胸が期待に震えそうになる。共に過ごすようになって、アーロンから解放されたのもあって……ただ優しいこの人に私は多分、惹かれ始めているから。
これ迄は恋愛なんて、そんな事にかまけていられなかったのに、どうしてと思うくらい自然に……。私は、マルコさんに惹かれている事を自覚している。
エースの姉だから、サッチさんの件を教えてくれたから……。そんな理由で優しくしてくれてるのだと、分かっているのに。
そんな事を思いながら共に行動し、いつもの様に酒場で食事と酒を済ませてから、上の部屋を借りる。通常の安めのホテル等に泊まるより更に安いからと私が提案したんだけど、壁が薄いので隣室から行為中の声が聞こえてくるのだけは頂けない。
「部屋2つ取ってもホテルの1室より安いんだから、そこまで節約しなくてもいいと思うけど?部屋別にしないと女も買えないでしょ。……まさか、白髭海賊団ってそんなに金欠なの?」
マルコさんは白髭のNo.2なのに!?どうして……?
はっ……!まさかルフィのような大食感でも居るのかな。
あ、エースが居るわ。白髭海賊団は人数も多いし、無駄な戦闘を好まないものね。
確かにそれだと、いくらあっても足りないのも分かる。だとしたら、どうしたら……。
よし、ならマルコさんだけここに泊まってもらって、私は野宿でも良いんだけど……慣れてるし。そう思ってそれを伝えようと口を開こうとした時、突然腕を掴まれて気付いた時には唇が重なっていた。
何事!?と思って、でも恋心を抱き始めてるからだけじゃ無くて、助けて貰ってお世話になって、エースの所に案内してくれると言う相手。それにより、驚きの中にあっても嬉しさを感じてしまった事で攻撃できずに受け入れていたら、そのままベッドに押し倒されてしまう。
……そもそも、マルコさんに攻撃なんて無駄よ。それよりも何よりも、好きな人を傷付ける可能性のある事なんてなんて出来る筈も無い。
「……ナミが欲しい」
掠れた声でそんな事を言われて、私はどう答えたら良かったのか。マルコさんに掴まれた腕が、熱い。
元々憧れていた人で、救ってくれた人で、優しくされて……。こんな風に言われて……どうやって声を出せばいいのか、なんと返せばいいのか分からない。
でも、何か言わなきゃ。早く、何かを……。
「……こんな部屋だものね。それに、ここに泊まろうと言ったのは、私だったわね」
そう、周りのそれにより高まるのは分からなくもない。そこに可愛い顔したスタイル抜群の女がいて、買うのと違って金もかからないんじゃ欲しくもなるかな。
そう考えたら、少し胸は痛んだけどこの場所で泊まり続けて今まで我慢してくれてたんだから、感謝しなきゃかもね。だけど私は既に……。
「でも私は、生娘じゃないわよ?」
「……それは、抱いていいって事かよぃ?」
「勘違いさせてたら悪いと思ったのと、何も知らないお嬢ちゃんをご希望なら、そういう雰囲気で対応するけど、どうしたらいいか聞いておきたくて」
あの時もお金貰ったんだから、今更よね。そう思うのに、何故か泣きたいような気持ちになる。
そんな私に、マルコさんは演じなくて良いから、抵抗するなよぃなんて言う。それに私は小さく頷いて、マルコさんに全て任せる事にした。
「……ナミは、綺麗だねぃ」
私の衣服を脱がせたマルコさんは、そう言って微かに笑う。それは少し切なそうで……。
だからこそ、居た堪れない。私には本来この身体を傷付ける権利なんて無いのに。
「跡は、消されましたから……本来なら傷だらけですよ」
「ナミ、口調が敬語に戻ってるよぃ」
「あら、つい……」
そう答えた直後に触れて来たその手に、ビクリと身体が揺れる。そんな私を気遣うように、何処か切なそうに見て来るから私はそっとその首に腕を伸ばす。
そうして首の後ろで腕を組むようにして抱き寄せれば、マルコさんが今度は震えた。罪悪感でもあるのかしら?
でも、私の片想いでも触れて欲しいと私は思ってしまったし、マルコさんが悲しそうな顔をするのは見たくないのよ。それにそもそも、こんな部屋で健康な男性に耐えろなんて言ってたような私が悪いのよ……多分。
「マルコ……何も、考えられなくして……」
今、抱かれる間だけで良いの。名を呼び捨てにさせて。
そんな事を思いながら耳元で囁けば、マルコさんはギラついた瞳で私を見据えて雄の顔になる。そして、低く声を発して言葉を落としてきた。
「煽るねぃ……。それなら、お望み通り……」
そこで言葉を1度切ってから、マルコさんは私の耳を甘噛みしてその途中で囁いてくる。熱の篭った声だと思ったら、胸がドクリと期待を込めて鳴ったのが分かった。
「可愛がってやるよぃ」
足の間に手を入れられ、弱い所を探るように動くそれに体は素直に反応する。それに対して声を抑えていたら、マルコさんの唇が私の唇を塞いだ。
その熱に思考が止まりかける。荒々しくも優しく動く舌に、縋りたくなる程。
今夜だけのそれでも構わない。そう思うくらいには、キス1つで絆されてしまう。
今、この瞬間だけはエースの事も、片想いである現実も1瞬でいいから、全て忘れたい。何もかも分からなくなって、ただその体温を感じられたら……それだけで私はもうこの先何も望まない。
僅かに離れた唇の隙間で、好きだと言いそうになり、そんな事を言ったら迷惑を掛けてしまうだろうと考えればそんな言葉は口に出せない。だから代わりに、別な言葉を口にする。
「……今夜は、お金なんていらないけど、中には出さないでね」
「少し、黙ってろ」
マルコさんはそう言うと再び唇を塞いで、私の弱い所を刺激してくる。声はマルコさんの唇により、出さないで済んでるけど……。
唇が離れた時、抑え損ねた声がもれるとマルコさんは笑った。嬉しそうに。
「挿れるよぃ」
「待って、ゴムを……」
そう言った私のそれを無視してマルコさんがゆっくりと私の中に挿って来て、私の反応を確認していると分かってその先は必死で声を抑えているのは、ある意味意地かも知れない。マルコさんの優しい視線を感じて、それが何とも言い難い程に胸を締め付けてくる。
そして、何度かゆっくりと抜き差しして確認していたその動きが落ち着いたと思ったら、突然マルコさんが悪い顔で笑うから、どうしたのかと思う。そんな私をマルコさんが優しく撫でて、それから突然動き出した。
それは何故か、私の弱い所だけを狙っていて、思わず制止するように声を出す。それと同時に、マルコさんの背に縋るように抱き着いていた。
「え!?や!待って……!そこ、だめ……ぇ……!」
「もう、良い所は確認済だよぃっ!ナミ……!」
「やァ……!あぁぁアぁっ!」
「何も、考えられなくしてやるから、抵抗するなぃ」
そんな言葉に私は何故か素直に従ってしまう。でも、声はもう出したくない。
そう思うのに、そうなると今度はマルコさんの動きに合わせて水音が響き、汗の流れるそれにさえ身体が反応し始める。互いの息遣いが間近に聞こえて、全身が心臓になったかのように脈打つ。
たまたま丁度いい所に、私がいたからだとは分かってる。でも、今だけはこの優しい腕の中で、何も考えずにいたい。
「ナミ……愛してる。声を、聞かせろっ!」
「ンンッ!」
声を出せば、伝えてはいけない言葉を音にしてしまいそうになるのよ……。捌け口としてでは無く、少しでもいいから想われたいと、そんな事を浅ましくも口にしてしまいそうで……。
抱いてる時の男の言葉を信じられる程、純粋では居られないから。その言葉に……期待して泣きそうになる自分が情けない。
想いが、溢れそうになる。私はそれを伝えない為に声を必死で抑え込むけど、それがマルコさんには気に入らないらしい。
「意地っ張りだねぃ……何処まで耐えられるか、見せて貰おうかねぃ!」
「やっ……!んー!」
それから何度イかされたのか分からない程になった頃、マルコさんの熱いものが中に放たれて私はそれに悲鳴をあげる。抗議しようと開いた唇からは、甘い喘ぎがもれるばかり。
酷いと、出さないでと言ったのにと必死で紡ぐ私に、けれどもマルコさんはピストン運動を辞めずにその後何度も奥に熱いモノを放って来る。それに首を振って嫌がる私に、マルコさんが呟くように言う。
「何も考えられなくは、なってねェない。大丈夫だ、何かあれば責任は取ってやるよぃ」
「やだ……こども、でき、ちゃ……う……!」
遊びでしかない、1晩だけの関係の女にそんな事したら困るのはマルコさんだろうと思うのに。私は、もしも宿ったらその子を見捨てるなんて出来ないから、だから辞めてと願っているのに……。
泣きそうになってマルコさんを見たら、絡んだ視線は何故か怒りに満ちている。どうして、こんな些細な願いを聞いてくれないどころか怒っているのか、理解できない。
「責任取るって、言ってるだろぃ!」
「いやぁぁぁ!」
それからどれ程そうして抱かれ続けたのか。声が枯れて動けなくなった私をマルコさんはそれでも抱き続け、完全に私の意識が途切れる迄それは続いた。
目覚めると綺麗に整えられた状態で寝かされていて、マルコさんは私を見て少し困ったように笑った。その姿が妙に色っぽくて、顔が自然と赤くなる。
「反応がウブだねぃ。腕に力は入るかよぃ?」
「ん、入るけど……?」
「なら、行くよぃ」
「待って、本当に子供できたらどうするのよ。薬くらい飲ませて」
腕にさえ力が入れば、マルコさんが飛ぶのだから問題は無いと判断したのは分かるから、少しだけ時間が欲しいと思う。そんな私を、マルコさんは何故か悲しそうに見てくる。
「……ナミは、俺が嫌いかよぃ?」
「…………感謝してるし、信頼してるわ。少なくとも嫌ってはいない」
「残酷な女だねぃ」
そう言われて私は意味が分からずに首を傾げる。それから薬を飲んだ私はマルコさんに掴まって、エースを追い掛ける旅に戻る事になった。
しかし、ドラム王国に到着するとそれは調度ティーチ達が国を滅ぼした瞬間だったようで……。この国の王族が、医者を全員連れて逃げ出している所だった。
そう、即ちティーチがいるのだ。今、私の目の前に。
「マルコさん……」
「下がってろぃ。守りながらじゃ流石に戦えねェよぃ」
「……守らなくて、いいわ。私、躱すのは得意なの」
クリマタクトを握り締めて、私はティーチとの戦いに参戦する。そうして私は、運命を変える戦いに望んで身を投じた。
これが如何なる罪だとしても、あの戦争を引き起こす事はさせたくなくて……。私は皆に……生きて欲しいと願ってしまったから。
こうして私は、私の知らない未来へ、波間を飛び越えて進み始めた。運命を変える事で、何かの罪を背負うのだとしても、構わないと言い切れるくらいには、大切な人達の未来を奪わせたくなかったのだ。
優しくも残酷な、幸せの青い鳥と共に。暖かな存在を守る為に、私は武器を強く握り締めた。