※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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バースデーイベント(side)

 プロポーズをしたいと願いつつ、どうしたら良いのかと頭を悩ませていた時、ハルタが言った。それは飲み物を提供してくれていたサッチさえもが、動きを止める程の衝撃を伴う。

 

 「ナミって、誕生日祝われた事無いらしいね」

 「「は?」」

 「ナミの育った環境考えてみなよ。当然と言えば当然じゃんか。その誕生日が、明後日だけどマルコどうするの?」

 「「明後日?」」

 「……まさか、二人共ナミの誕生日も知らなかったの?……最低!」

 

 この場合、俺は何と言うべきだったのか。とりあえず、誕生日を教えられた事に礼を言ってその場を立ち去ると、親父の元へ向かう。

 

 「親父ぃー……」

 「なんだマルコ、その情けねェ声は。……珍しいな」

 「……誕生日って、何してやるのが1般的なんだよぃ?」

 「そりゃ、相手の喜ぶ事だろうな」

 

 ナミの喜ぶ事?

 …………暫し硬直した俺に、親父が困った奴だと言うような顔で笑った。そして、何時だ?と聞いてくる。

 それに返事も出来ずに見上げると、ナミの誕生日は何時なんだと重ねて問われた。俺がほぼ無意識で返事をすると、その日の仕事が終わったら、2~3日休みにしてやると言われる。

 

 「だがよぃ親父、そんな事したら仕事が溜まっちまうだろうがよぃ」

 「……お前ェとナミに、皆頼り過ぎだ。適当に仕事振り分けて、しっかりやらせておくから気にするな」

 「親父……ありがとよぃ」

 

 笑えば親父が俺の頭を撫でて来るから、ガキ扱いすんなよぃと言ってみるが、振り払えない時点で俺に勝ち目はねェ。そうは言っても、休みだからってどうしたらいいものか。

 部屋に帰れば書類を見ながら首を傾げてるナミが居て、そろそろ寝ろと声をかける。そんな俺にナミは食料の減り方がおかしいと言い出したので咄嗟に1緒にそれを見れば、最近海王類を全く倒してないから備蓄が減り過ぎてるのだと判断出来た。

 なのでそれを説明すれば、捕ってない獲物を航海中の食料として計算に入れないのよ!捕れなかったら困るじゃない!と叱られちまった。確かに正論だが、それを得た場合今度は計算から外すと食料を腐らせそうでよぃと言い訳のように言葉を紡ぐ。

 それにナミはいくつかの案を出してくれて、それは確かに検討する価値があるなと納得した。その直後にナミが、それでも現状の食料事情を鑑みてか言葉を口にする。

 

 「なら、凪の帯(カームベルト)に向かう?」

 「ん?」

 「凪の帯に入らなくても近くまで行けば、何体か狩るくらい出来るでしょ。現状の食料事情を考えたら必要だし、少しは戦闘経験を新人さん達も積めるわ。何より、色々鬱憤溜まってる人達のガス抜きにもなるじゃない」

 「勇ましいねぃ……」

 

 だが肉だけで生きても行けねェからなと考えて、1度船をどこかに寄せるか親父と相談する事を約束してから、ナミを寝かせた。そうして迎えた翌日、サッチに呼び止められた俺は突然手渡された物に面食らう。

 

 「俺からのナミちゃんへのプレゼントな」

 「確かに、ナミの好きな事だねぃ」

 

 笑っちまうのは仕方ないだろう。温泉付きのホテル宿泊券だ。

 ここからなら俺が飛べば数時間でつける範囲にある島だ。……サッチはそんなにナミが可愛いか、そうか。

 1人で納得しつつ、有難くそれを受け取った。そんな俺にサッチは、ゆっくりして来いよなんて言うから、まさかと思う。

 

 「……俺の為かよぃ?」

 「……っ!……お、俺っちが、パイナップルを気遣うかってんだ!寝言は寝て言え!」

 

 ……そうか、俺の為か。ありがとうの言葉の代わりに、照れ隠しも兼ねて、誰がパイナップルだと言って蹴り飛ばせば、それを見ていたイゾウが相変わらず仲良しだなと笑う。

 そんな日々を過ごして、親父と食料について話し合いを行い、植物も少し育てるかなんて笑う親父にナミの他に誰が世話するんだと呆れて言えば、グラララララと楽しげに笑われちまう。それからはいつもと同じように時を過ごし、翌朝当日を迎えちまった。

 俺からのプレゼントは何もねェなんて訳にはいかないと分かっていながら、何も思い付かないんだから弱っちまうよなぃ。仕事の区切りがついて、少し隊の奴らに組手でもと思い甲板に出ると歌声が聞こえて来た。

 優しい歌声は淀み無く響き、楽しそうなそれに惹かれて足を向ければ途中で足を止めているクルーに笑っちまう。それにより俺に気付いた面々が道を譲るように開けるので、ナミの元へ向かう。

 その時丁度歌も終わったようで、俺は背後からそっとその小さな体を抱き締める。頭1個分では足りないくらい小さなその体が、その瞬間に甘えるように力を抜いたのでそれが少し嬉しい。

 

 「帰りたくなったか?」

 「何処に?」

 

 きょとんとした幼い顔で俺を見上げるその瞳に宿る色に、偽りの色は混ざっていない。決して良い始まり方では無かった筈なのに、信頼を滲ませるその瞳に映る自分を見たくなくて、そっと唇を重ねる。

 遊びのような小さなキスで終える予定だったそれは、触れた瞬間勝手に深いものへと変わって行く。迎え入れようと開かれた唇に吸い寄せられるように奥へと差し込み、激しく吸い上げていた。

 それに息苦しそうにするから仕方なく唇を離せば、自然と見詰め合う形になる。その時ナミがクスリと笑いながら言葉を放った。

 

 「……ばかね……」

 「ん?」

 「私の帰る場所は、ここだけよ」

 

 その瞬間、俺は何も考えずナミを強く抱き締めていた。もう、色々考えずにただ、俺の全てをナミにやろうと思う。

 忠誠は親父に、親愛は家族に、ならナミには俺の愛の全てを……。俺が命をかける事に対して誰もが嘆くと言うのならば、俺に残っていた捧げられる最後のそれは、ナミのものだ。

 そんな俺の様子にビスタが遠くから声をかけて来る。どうやら見ていてウザイらしい。

 

 「お前達イチャつくなら、さっさと2人になってしまえ。親父から話は聞いてる」

 「悪かったよぃ。なら、行くかねぃ」

 「何処に?」

 

 首を傾げるナミの前で鳥に姿を変えれば、何も言わなくてもそのまま抱き着いてくれるから、そのままナミを連れて飛び立った。途中で見えた海岸に降り立つと、その近くで屋台が出ていてナミが懐かしそうにその瞳を眇める。

 なので適当に店々を冷やかしながら、果物の入った飲み物を購入して1口飲んでからナミに渡す。それを受け取り、ナミは恥ずかしそうにしながらも、ありがとうと言って飲み始めた。

 飲み物を持っていないもう片方の手は、俺が掴んで離さないのでナミは今自由になる手はないのに、気にした様子も見せない。途中で売ってた串物を買い1口齧ってからナミに差し出すと、飲み物と俺の手を見てから、覚悟を決めたとでも言う様子で串に食いつく。

 それを咀嚼してるのを見ながら、残りを食べてしまう。俺が1本食べ終わる頃になって、口の中の物を漸く飲み込んだナミが、次からは自分で食べるなんて無理な事を言い出す。

 

 「両手塞がってるだろぃ」

 「だって、は、恥ずかしい……!」

 「……可愛いから問題ねェよぃ」

 

 赤くなってるナミの可愛さは、凶悪の1言に尽きる。この可愛さじゃ、羽虫共に狙われるのもわかるねぃ。

 

 「意味わかんないから!」

 「可愛いは正義なんだろぃ?なら、ナミは正義だから、気にする必要はねェよぃ」

 

 そう言って喉の奥でくっと笑えば、真っ赤になったナミはそれ以上何も抵抗せずに、俺に餌付けされながら歩き続けた。そうして途中の店を眺めては楽しそうにしているので、それに癒されてはいるんだが……。

 ふと足を止めたナミが、店のショーケースに飾られている硝子細工で作られた小さな小鳥に、視線を完全に奪われているのを見る。その小鳥は鮮やかな青い色で、そんなに気に入ったなら買ってやるかと思い、店員に視線を向けて包むように言う。

 

 「マルコ?」

 「誕生日プレゼントだ」

 「……知ってたの?」

 

 どうしてとその瞳が問い掛けてくる。微かに揺れるそれに、怯えが混ざっているのがどうにも落ち着かない気分だねぃ。

 

 「ハルタから聞いてねぃ」

 「もうっ!誰にも言わないって言ってたのに……」

 「ナミ……誕生日ってのは、本人はどうでも良くても、周りから見たら大切な日だ」

 

 俺の言葉により、瞳を不安に揺らす恋人をそっと抱き寄せる。俺はそんなに、言葉巧みな方じゃねェんだがねぃ。

 

 「だから、愛しい恋人の産まれた日を俺にも祝わせろ。……産まれて、無事に生き抜いてくれて、ありがとよぃ」

 

 その瞬間泣き出したナミにそっと唇を重ねれば、微かに震えているのが分かる。自分を呪っているナミは、俺に触れられる事に戸惑いが残っているのだと分かっちまう。

 ……変な所、皆似てるよなぃ。まァ、何事も無く生きてきたなら海賊になんかならねェんだから当然か。

 その時店員が戻って来たのがわかり、仕方なく唇を離すと勘定を渡して品物をナミに手渡す。それを胸に抱いて笑うナミを連れてホテルに行けば、即座に温泉付きの単語に反応して去って行くその姿につい笑っちまう。

 本当に、風呂が好きだねぃ。そう思いナミが風呂に行っているその間、少し休んでいたらいつの間にか戻ってきたナミが俺の頭を撫でていた。

 

 「お帰り」

 「ん、ただいま。なんか、ありがとう」

 「ここの宿泊は、サッチからナミへの誕生日プレゼントだよぃ。まァ、俺からは濃密な時間をプレゼントしてやるから安心してろぃ」

 

 俺の言葉に驚いたり赤くなったりと忙しいナミは、ホテルの試供品であろうバスローブ姿なのだから、堪らない。何を着てても色気のあるナミに、しっかり己を刻んで離れられなくしないと不安だなんて……そんな事を言ったら笑われちまうかねぃ?

 Happy Birthday ナミ。これから数日、2人だけでのんびり過ごそうと男は女を抱き締めた。

 それに女は涙の浮かぶ瞳で嬉しそうに頷くと、そっと抱き締め返し……2人の影が離れる事は無かった。ただ、暫く互いを抱きしめて動かない影がその後どうしたのかは、当人達だけが知っていればいい事だろう。

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