エースが食料庫に摘み食いをしに行き、俺が見つけた時には手遅れだった。食い荒らされたそれにお前は巨大ネズミかと叱り飛ばし、ナミは補給出来そうな島を航海士達と話し合いを繰り返す事を余儀なくされちまう。
そうかと思えば今度は書類にも不備が見付かり、俺もナミもバタバタを寝る暇もなく仕事を続ける。机に向かいカリカリと言うより既にガリゴリという勢いで書類と向き合っていれば、サッチが作ったと言う軽食をハルタが運んで来てくれた。
「2人とも、凄い顔になってるよ?そろそろ寝たら?もう2日は寝てないと思うけど」
「あと、少しなんだよぃ」
「大丈夫よ、大丈夫……まだ、やれるわ……。そこの山が終われば、区切りになるの……」
「……あれなら後数時間で終わりそうだねぃ」
ソファの前に積まれた書類を見て口元を緩めれば、ナミもまた微笑んでくれた。俺1人の頃なら、後3日はかかっただろうと思えば本当に得難い存在だと痛感させられる。
俺とナミの言葉に頷いた筈のハルタから、何故かジョズが呼ばれて、俺とナミを風呂場に連行する。そのまま揃って浴槽に落とされてしまえば、俺は力が抜けて沈みそうになっちまう。
「マルコ!?」
慌てたナミの声を聞きながら、その素肌に張り付いた衣服に気付き、喉が鳴る。支えてくれているナミの首筋にそっと吸い付くと、ナミが困ったような顔で俺を見て……囁くように言った。
「二人きりの時に、して」
疲れがピークだったのは間違いない。そして俺はジョズを視線だけで追い出すと、その場でナミを組み敷いた。
2人きりだと言って俺が強制的に始めたそれの後半で、逆上せたナミと疲労から意識を遠のかせた俺。そんな俺達を見付けたナース達が悲鳴を上げて救出してくれたのは、それから間もなくの事だったらしい。
その騒ぎにより、エースがナミと俺の寝てる部屋に乱入して来て、俺を責め立てていた。その時……低い声がナミから聞こえて来て、俺はそんな声を聞いた記憶が無くて思わず顔を凝視してしまう。
「……そもそも、エースが原因じゃない!!マルコは普段理性が服着て歩いてるようなものなのに、あんな風になる迄疲れさせた原因は、エースなのよ!?マルコを責めないで!」
「ナミ、だがよぃ、俺が襲ったんだし……」
思わず声に出した俺にナミは視線を向けると、優しくその瞳を細めてくれる。それにより、ナミが俺には怒っていないらしいと気付く。
「マルコ……」
「ナミ……」
思わず互いに手を伸ばし合い、その手を握り合わせたその瞬間、イゾウがエースと俺の頭を殴り、にこやかな微笑みを浮かべた。そして、言う。
「馬鹿ップルは取り敢えず黙ろうか。ね?」
「「はい」」
俺とナミが声を揃えるとエースがそれを笑い、イゾウの笑顔のお説教が始まる。その声を聞かせたくなくてナミの耳を両手で塞ぎ、その額にキスをしていたらいつの間にかエースへの説教が終わっていた。
「……マルコ、エース、諸悪の根源はエースだが、マルコは模範を示す立場だ。それを踏まえて2人に恐ろしい罰を与えてやろうかね」
俺とエースが息を飲むと、今日は1日俺とナミは大人しく寝る事と、その分の書類仕事はエースがやる事、そして明日は1日ナミが自由行動を取れるようにする事が命じられた。俺にはご褒美にしかならなさそうなそれに首を傾げると、イゾウはにんまりと笑ってからナミに言う。
「ナミは、1人で買物に行きたいって言ってたね?明日は1人で好きな所へ買物に行くといいさね」
「本当に!?」
「あァ……誰にも邪魔はさせないよ」
その言葉に大喜びするナミはイゾウの腕を掴んでありがとうと花のように笑った。それを見て、確かに俺にも辛い罰だと苦笑すした時、エースがダメだ認めないと叫びイゾウの手で部屋から連れ出されて行く。
それを見送ってから、俺はナミを抱き締めて、その日1日、ゆっくりと惰眠を貪らせて貰った。その翌日、ナミは本当に姿を消してしまい、船縁から見える筈も無いナミを想う。
追いかけて行けば、恐らく気づいたナミに悲しまれるだろうからとついて行かずに、書類仕事をしていたんだが……捗らない。仕方なく甲板で隊員達の組手の相手をしてやりながら、ナミの帰りを待つ事にした。
「……ダメだ、隊長は心ここに在らずだから勝てるとか言ったの誰だよ」
「普通は心ここに在らずなら勝てるだろ。普段より容赦ねェぞ!?」
「そりゃそうだよ。普段は相手に合わせて指導する為に考えて組手してるのが、今は本能だけで戦ってんだからさ。……あ、この芋美味い」
「ハルタ隊長!!」
「まァ、頑張りなよ。大勢で挑むと多分もっと酷い事になるから、1人ずつがオススメだよ」
そんな会話がなされているのを右から左に聞き流しながら、俺はナミの帰りを待っていた。余談だが、この時ハルタはじゃがバターと言う簡単な料理?を食べていたらしい。
夕方になり帰って来たナミを抱き締めて、お帰りと言った。その時には何故か周りに体力切れでゾンビのようになっている弟達の姿があり、ナミにもう何処へも行かないでくださいと泣き出して困らせている。
甘ったれな弟達で困るなぃ。そう思って笑うと、ナミが俺を見て首を傾げる。
「マルコ、何したの?」
「組手をしてやってただけのつもりなんだがねぃ?」
「たまには体動かしたいわよね。うん!今度……私の相手もしてね」
それが組手を意味してるのはわかっているが、違うようにも取れるので辞めてくれと思う。そんな俺にナミは笑ってから、サッチのいる所へ大豆について話をしにかけて行った。
直後にモビーが動きを変えれば、どうやら食料調達に使えそうな島の情報をナミが持ち帰ったとわかる。そらに感謝しながら脳内で算盤を弾く俺は、守銭奴のようだなと少し思っちまった。
その日の夜は親父も含めての予算会議が行われて、エースによる深刻な食糧難。そして俺とナミにより、必要経費とは言え紙やインクの消耗が激し過ぎる件について話し合いが持たれた。
……サッチやイゾウも当然その場にいて、そろそろエースにお仕置が必要かと肩を揺らす。それについては、取り敢えずは宥める事に成功したが、この会議にハルタとエースの姿がない事が妙に不安に思えてならねェよぃ。
その翌日、責任取って猛獣狩に出掛けた筈のエースが、もう1つの食料調達を邪魔して居るとの報告からモビーへ連れ帰り説教するも効果は余り見られない。その時ナミが大豆の袋を持って姿を見せた。
そして問答無用でエースに大豆を投げ付けて、大豆を炒るのにエースに投げれば良いじゃないと恐ろしい笑顔で言うものだから、俺もそれに同意する。少し、お灸を据えてやってもそろそろ許されるだろう。
そして俺とナミの声が揃った。迷いなく大豆に覇気を纏わせ、2人揃ってエースに豆を投げつける。
「「鬼はー外!!福はー内!!」」
「ま、待てよ2人共!!イテッ!それ、俺を通過しないだろ!?覇気纏ってたら、それは既に俺を攻撃してるだけだろ!?」
「半分は覇気纏ってないわ。大丈夫よ!」
珍しく怒りを見せたナミに、エースが慌てた様子を見せる。エースは恐らく、逃げる手段をそうしながら模索しているのだろう。
「何言ってんだ!?全然大丈夫じゃねェよ!!」
「大豆を炒る為だ、逃げるなよぃ、エース……」
「うわぁぁぁ!!悪かった!ごめんなさーい!!」
エースの叫び声と、沸点を超えた俺とナミの怒りの豆まきが行われて、兄弟達と親父が笑う。それがいつの間にかエースに向けて投げる人数も増えて、本気で泣きそうな顔になったエースが親父の元へと泣きつきに行くまで、それは続けられた。
鬼は外福は内、そう言って豆を撒き散らし、太巻き食って笑い合う。これで健康長寿が約されるなら、最高の日と言えるだろうねぃ。