ナミの故郷を支配していたアーロンって奴が率いる海賊団を壊滅させた。その流れでジンベエ親分にそれを引渡して、ナミを攫うように連れ出して来たんだ。
それから体だけ手に入れて、でも、恋人になれない日々を送っていた。そのせいでナミを、酷く傷付けていた事に俺は気付いていなかったんだ。
自分ばかりが傷ついているつもりになって、いじめていた。その為にナミが俺から少しずつ距離を取ろうとして、それが許せなくてまた虐めるのを繰り返すような日々を過ごして……。
それが変わったのは、ナミの為にあるようなイベントのあの日。漸く俺が間違いを認めた事で想いが伝わり、恋人って呼ばれるものになった。
それでも何か詫びをしたいと言った俺に、ナミは気にしないでと笑うから、兄達に相談してみた。その時に、この島なら夜景が綺麗なBARがあると教えてくれたのはビスタだったかな。
ビスタやイゾウが勧めるそういったものや場所に、ハズレはねェと分かってる。サッチやハルタなら少し疑うけど、ビスタは本当にいつも真面目で優しいから信用できる。
だからこそ俺は珍しくちゃんと服を着てナミを呑みに誘った訳で……。今俺の横でグラスを傾けてる酒豪に、親父と張り合えそうだななんて少し思う。
どうして突然?なんて聞いてくるナミに、お詫びだと言いにくくて別な言葉を口にする。てか、ナミ酒強過ぎるだろ。
「夜景が綺麗だと聞いたんだ。ナミ、喜ぶかと思って……」
「エース……ありがとう」
「おぅ……」
気恥ずかしくて酒を1気に流し込むように呑めば、ナミがメニュー表を眺めている姿があった。どうやら次の酒を選んでいたらしく、平然とアルコール度数の高い物を眺めているが、同じページにノンアルの表記もあって面白い店だなと思う。
「私の書いた作品に〝白雪姫〟って言うのがあるのは知ってる?」
知ってる。読んだ事ねェけど。
そう思って頷く。流石に童話は読まねェよ。
「それがどうかしたのか?」
その時赤いカクテルがナミの前に差し出されて、ナミはそれに唇をつける。唇が湿るのを見ただけで、誘われているような錯覚をしてしまう。
その唇が俺を誘うように動く。だが紡がれるのは童話の話で、俺はそれをただ聞いている。
「騙されて毒の林檎を食べさせられたお姫様は、王子様からの優しいキスで息を吹き返すんだけど……まぁ、実際には有り得ないわよね」
少しの間を置いて、グラスに残っていた酒を飲み干してナミは言う。夢見るように、その瞳を細めながら。
「好きな人からのキスで目覚めるとか、憧れるわ」
「キスで毎朝起こしてやろうか?」
「……お願いしちゃおうかな」
少女のように頬を染めて言われたそれに、俺は気管に酒を入れちまって噎せる。嘘だろ……!?
見れば酔っているのか、楽しそうに笑っているナミがいて、本当に珍しいなと思う。……お前も酔う事があるのか。
その直後風にあたると言って立ち上がったナミが、転んで頭を打てば流石に焦りその体を抱き起こす。1度帰ってマルコに診せるべきか?
もうアレだ、困った時のマルコ頼みだ。その時ナミが縋るように俺に手を伸ばして、揺れる瞳で俺を見詰めてきた。
「かなら、ず……むかえに、きて……」
そうして意識を失ったナミに、俺は必死で声をかける。そんな俺の肩を叩いたのはBARの従業員で、部屋と医者を手配したと言われた俺は即座にそれに従いナミを抱いて立ち上がった。
部屋にあるベッドにナミを寝かせると、医者が即座に診察を初めて従業員と頷き合うから何かあるらしいと分かる。……なんだ?
不安から苛立ち始める俺に、2人はこの部屋をご自由にお使いくださいと、何かあればお呼びくださいと言う。その言葉だけで逃がしてなるものかと退路を断てば、怯えを隠さずに言葉が紡がれる。
この島では数ヶ月に1度、突然記憶を失う人が現れると言うから、まさかとナミに視線を向ける。そんな俺に2人は恐らくそれだと思いますと言うから、どうしたら治るのかと詰め寄っちまう。
だが声を揃えて、人によって違うと言われてしまい俺は頭を抱えちまう。そんな俺の様子に、お食事も含めて滞在期間は無料にさせて頂きますと言われては、コイツらが悪い訳でもない為にどうにも出来ねェなと思い直して頷く。
「わかった。暫くの間、世話になる」
視線をナミに向けて、記憶がねェって、どの位無いんだろうと考えれば不安になる。俺に対応出来るレベルなのか?
その時ナミがその瞳を開いて、医者達が逃げるように姿を消すのと同時にゆっくりと体を起こしたナミが不思議そうに辺りを見てから、俺に視線を向けた。そして不安そうに、怯えた様子で俺に声を掛けてくる。
「あの、ここは?
「あー……自分の名前はわかるか?」
「ナミ、ですわ」
「良かった……じゃァ俺の事は分からねェって事で良いか?」
「……はい、あの?」
こんなに不安そうな、怯えた顔初めて見る。初対面の時でさえそんな顔はされなかったぞ。
てか、初対面で俺の財布盗んだもんな。その次は俺を蹴り飛ばして、踏み付けてきたんだったか。
どうしたら良いだろうか。こんなに大人しくて気弱な姿知らねェぞ。
「ナミ、ここはさっきまで俺と呑んでた店の入ってるホテルだ。ナミが倒れたから、運んで来た」
「私、そうですわ!確かに……お酒を頂いておりましてよ。美味しかったですわ」
そこは、覚えてんのかよ。そう思いながらも、無邪気に笑うナミの手を取り、俺はその指先にキスをする。
「ナミ、思い出してくれよ。俺は、どうしたらいい?」
「えっと、あの……」
「俺を、呼んでくれ。ずっとナミだけを想って来たんだ。頼むよ……」
「私……貴方様の名を存じません」
その言葉に何かが切れた音が聞こえて、気が付いたらナミをベッドに押し倒していた。怯えて泣きそうな顔で俺を見ているナミが、だが俺の顔を見てその表情を困ったような笑みに変えた。
「……泣かないで下さいませ。私は、どうやら貴方様に泣かれるのが苦手なようですわ」
「ナミ……!」
服を剥ぎ取るように脱がせれば、嫌がるナミに抵抗すんなよと心から思う。壊しちまいそうだと、その細い体に初めて恐怖を抱く。
いつも強さを見せるから、弱さを隠すから……弱さしか見えない今のナミは傷付けて壊しちまいそうで怖くなる。いつも、どれだけ甘やかされて、守られてきたのかを痛感させられる。
身体中に跡を遺して、ナミの体がそれによりビクビクと反応するのを見て、反応は同じなのにと思えば悲しくなる。どうして、その優しさはそのままで、声も、反応も同じなのに、俺を……呼んでくれねェんだろう。
「いやぁぁぁ!お辞め下さいませ!私、もうイヤ!」
「ナミ、名前呼べば、終わらせてやる。だから、俺を呼べよ……ナミ」
俺の事が分からないと分かっていて、こんな事を言う俺は酷い奴なのかも知れないと思いながらも、身体中に跡を残す。そして、涙を流すナミの顔に欲情して、そっとその唇に自らのそれを重ねた時……反応が途中から変わった。
何も知らないウブな反応だったそれが、途中から俺を誘うようなものに変わり、そして……僅かに離れた唇の隙間で、ナミが言う。小さく、囁くように。
「エース……ここで、辞められるの?」
「ナミ!?」
「初心な
「バカ言うなよ!俺は、ナミなら何でも良いんだ。ナミがウブなら俺の色に染めてやる。経験豊富なら、俺の色に染め直してやる!」
俺の言葉にナミはクスリと笑うと、エースらしいわねと穏やかな笑みを浮かべた。それはいつもの様に、俺を愛していると伝えてくる眼差しでもある。
「エース、ただいま」
「お帰り、ナミ。……俺、名前呼ばれたら辞めるって言ったけどよ、やっぱり欲しい」
「そう言うと思ってたわ。ねぇ、エース」
ナミが優しく笑いかけながら俺を呼ぶ。それに首を傾げれば、ナミは俺の頬に触れて少しだけ目元を赤く染めた。
「エース……私ね、きっと……何度忘れても、何度でもエースに恋をするわ。だからお願い、何度でも迎えに来てね」
「ナミ、お前可愛すぎだろ。なんだよそれ」
俺の息子さんはナミの発言と表情で、何もしてないのに爆発寸前だ。あァ、もう……俺はいつになればナミに勝てるんだろう。
「ナミ……殺さねェように気を付けるから付き合え」
「ちょっと待って!何その不吉な宣言!!」
「……手加減も優しくも、出来そうにねェ」
「や、無理無理無理!!そんな、なんでそんなんなってんのぉー!?」
ナミの悲鳴のような声を聞きながら、どんなナミでも好きだけど、愛しいけど、やっぱり俺はこのナミが好きだなと思う。愛しいナミを俺は全力で抱き潰そうと決めて、抵抗の弱くなったその体に手を伸ばした。
ナミは恥ずかしいのか顔を真っ赤に染めて、潤んだ瞳で俺を見るけど、その瞳には俺への愛情が見て取れる。優しいナミのその瞳に、溺れちまってる。
「愛してる、ナミ」
「エース……わ、たし、も……」
顔どころか全身赤くなったナミが可愛くて、俺のバズーカを押し当てると微かに怯えた顔をするナミに、いつもこれがしっかり入ってるんだから大丈夫だと囁く。それにナミはこんな凶悪なの入ってる訳が無いと、微かに声を震わせるから何もしてないのに発射しそうな勢いにまで高められる。
悪夢のような時間は、もう終わりだ。後は、2人の幸せな時間だけが待っている。