※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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この作品は各キャラのラスト固定です。
この作品には、序章があります。


大きな子供(子拾)side

 親父が許可を出した事で、モビーは変な島に錨を下ろした。にも関わらず親父は俺を含めた〝息子〟全員に待機を命じて、ナース達だけ甲板に連れ出すと明らかに変な様子を見せながら去って行くナミを黙って見送る。

 

 「親父!」

 「心配すんな。大丈夫だ」

 「何処がだよ!俺にも分かる位にはナミがおかしかったじゃねェか!」

 「その言葉、言ってて悲しくならねェか?」

 

 呆れたような憐れむような視線を向けながら、親父は問いかけてくる。その上で俺は悲しいぞエースなんて呟かれたけどよ……。

 そう言うのに気付けるタイプじゃねェ事は俺が自分で1番よく分かってるから、どうにもならねェと思うんだよなァ。そんな事よりもナミが心配で、甲板をウロウロする俺をフォッサが殴って来た。

 だけどよ……降りてねェだけ褒めて欲しい位だ。あァ畜生!親父からの命令でなけりゃすぐに追い掛けるのに!

 苛立つ俺にイゾウが樽に入った海水をぶっ掛けてきて、大人しく待ってろと言いながら煙管を手にした。それからふと視線を上げたイゾウは、楽しげに唇を歪ませるとその視線を親父に向ける。

 

 「親父」

 「あァ」

 

 2人は分かってると言いたげに島を眺めて、楽しげな様子を見せるから見聞色の覇気で様子を見守ってるのだと分かる。でも俺……見聞色の覇気、苦手なんだよな……。

 ナミには〝覇王色の覇気使えて他が使えないとか有り得ないから!使えるようになりなさい!〟とか言われてしごかれた事を思い出す。防御と逃げに特化してる兎にとやかく言われたくねェよとぶつくさ言ってたら、怒り狂ったナミにボコボコにされたが。

 本当は強いのだと言う事を文字通りその身に教えこまれたのは、つい先日の事だ。まァ当然その日の夜は泣くまでいじめ倒したが、その結果、翌朝には兄貴達に俺は結局またボコボコにされたんだから相子だろと思う。

 そんな事を考えていたらナミが帰って来て、それにホッと息を吐き出しつつ喜んで出迎えようとした俺をするりと躱す。そうしてナミは、信じられない速度で親父の元へかけて行く。

 そして、縋るように親父に言った。サッパリ状況が掴めねェ。

 

 「お願い、この子育てさせて!」

 「帰れば……そう言うだろうと思ってたが、その前にそのお包みの中身見せてみろ」

 「どうして?」

 「ナミの最愛の相手が、誰か知りてェからに決まってるだろ!」

 

 そう言って親父がグララララララと笑うと、ナミは何かに気が付いた様子で抱いているモノをギュッと抱き締めて、顔を真っ赤に染めた。そして……言う。

 

 「や、見せたくない」

 「親父の姿だったら楽しいのによぃ」

 

 そんなナミにマルコが突然声をかければ、ナミはべーとマルコに舌を出してから残念でしたー!なんて言ってるのが見える。なんだろうな、兄貴達にはナミが時々妙に幼いんだよ。

 それも確かに可愛いけど、俺にはそんな姿見せねェ癖にと思えば不愉快になる。そんな訳で苛ついてた俺はナミに近付いて抱いてるそれをひょいっと奪うと、包んでいた布が落ちていった。

 それと同時に盛大に泣き出したそいつの姿がその場で披露されると、その瞬間ナミは茹で上がり、俺は硬直し、家族が揃って爆笑した。頭に双葉を生やした小さな俺が、そこに居たからだ。

 

 「エース!返して!そんな抱き方したら嫌がって当然でしょ!?」

 「お?おぅ……」

 

 直後に正気に返ったナミが俺を叱りながら子供に手を伸ばすから、その勢いに押されるようにして返す。そうして小さな俺を俺から奪い返したナミがあやせば、1瞬で泣き止むそれに、また爆笑が起きる。

 そして、それを見ていたサッチが俺の肩を叩いた。それもニヤニヤしながら。

 

 「小さくてもエースだなァ?ナミちゃんじゃなきゃ嫌だとさ!」

 「五月蝿ェぞ、サッチ……」

 「お?やるか?」

 

 サッチが楽しそうに笑うのを、俺は舌打ち1つで終わらせる。コレでサッチも恐ろしく強ェんだよ!

 身内に攻撃をするのが苦手な優しい兄貴に、そんな所がナミと似通ってるからかそれとも他に理由があるのかはよく分からねェけど、良く2人でいる所を見てる。だからその……妬いてたりした訳だが、あの子供は俺の姿をしてる。

 親父が言うには、最愛の相手の姿だって言うから……俺は少しじゃねェ不安に苛まれていた事を痛感する。どうしても不安を煽るのは、ナミは俺の自慢の兄貴達と仲良くといつも仲良く楽しそうにしてるのが理由だ。

 マルコともいつも1緒にいて、顔突合せて難しい話してるし、ハルタの悪戯を困った顔で許してる。イゾウには着せ替え人形にされて半泣きになっても怒らねェから、その……不安だったんだよなァ。

 それを1瞬で吹き飛ばす子供の姿に、顔がニヤける。その時親父の声が降って来た。

 

 「エース、何があっても子供に怪我させたりするなよ」

 「なんでそんな……」

 「あの子供とナミは繋がってる。子供が怪我すれば、ナミもだ。……それに、ナミは子供を恐らくは全力で守ろうとするぞ」

 

 親父にそう言われて少し考える。でも、言われてみればその通りだ。

 今回繋がってるからとか関係無く、ナミは全力で子供を守ろうとするだろう。そう言う弱者とか見捨てられねェ奴だってのは、よく分かってる。

 

 「親父、なんで俺にだけ説明するんだ?ナミには良いのか?」

 

 ナミは当事者だろ。と言うか俺に言うよりナミに言うべきだろ。

 

 「ナミは俺が、最愛の相手が誰なのか知りてェと言った瞬間に全て理解したからな」

 「なんで、分かるんだよ」

 「……それこそ、反応で分かる。ナミは賢いから話が楽で助かる」

 

 なんだ?

 そうなると……俺が馬鹿だとでも言いてェのかよ!?

 怒る俺を親父は笑って、久々に挑んでくるか?と笑いかける。ナミに言われるままに治療を受けた甲斐があって、親父は病気から開放された為にあの頃より強くなってやがる。

 

 「……勝てねェよ」

 「挑む事も怖ェか?」

 「ナミが……」

 「ん?」

 「親父が傷付いても、俺が傷付いても、悲しむ」

 

 俺の言葉に親父は笑って、俺の頭に手を置いてから優しく笑った。それは幼い頃にナミが、俺達に向けてくれていた眼差しと何処か似ている。

 

 「成長したもんだ。俺ァ嬉しいぜ、エース!……だが、俺に傷を付けられる筈はねェから好きな時に挑んで来い」

 「言ってろ!次は絶対ェ膝つかせてやるからな!」

 

 叫んでから言い逃げるようにその場を去れば、親父の笑い声が追いかけて来たが、俺は足を止める事が出来なかった。夕方になってナミの様子を見に行くと、眠ってる子供を抱いてナミは小さく子守唄を歌っている。

 その姿が優しくて、歌声が綺麗で……。でもずっとそうしていたならと考えたら、自然と言葉が口をついて出る。

 

 「……なァ、疲れねェのか?」

 「本当の子供と違って、ミルクもおしめも必要無いから、随分楽よ。すぐに歩いたりしたがるから、子守唄聞かせて眠ってもらったけど」

 「歩けるのか?」

 「ハイハイの方がまだ早いけど、歩けるわよ」

 

 その時ナミが歌うのを辞めたからか、子供が目を覚ましてナミに甘え始める。ナミはそんな子供を優しく抱いて、その額にキスをする。

 お袋も、俺をこんな風に愛してくれたのだろうか。

 そう考えた直後、鋭い視線を感じて視線を向ければ子供が俺を睨み付けていて……俺のナミに大切にされてる癖に、俺に歯向かうとはいい度胸だと睨み返す。その瞬間、誰かに海水をかけられて俺だけが吹っ飛ぶ。

 

 「だァから、モビーを燃やしちゃダメだって言ってるじゃんか!それに、その子供を燃やそうとするんじゃ無い!ナミちゃんまで火傷するじゃん」

 「ハルタ……てめェ……」

 「物覚えの悪いエースが悪いんだよ」

 

 そんな俺とハルタを見てガキがニンマリと笑い、ナミは呆然とした顔で俺とハルタを見比べている。……ナミ、その腕に抱いてる凶悪な面したガキを見ろ!可愛くねェから!

 そんな俺の気持ちには欠片も気付く事無く、ナミはその後も子供を可愛がり続けた。その日の夜、ナミが眠った子供を眺めている所に後ろから抱きつけば、俺を見て優しく笑ってくれる。

 

 「ここにも大きな子供がいるわね」

 「ナミに愛して貰えるなら、子供でも良いかもな」

 「子供は、こんな事しちゃダメよ」

 

 下着の中に入れた手を抓りながら言われるから、なら、大人でいるとその耳元で囁けばナミは小さく狡いんだからと言って顔を背ける。だが、それは首を俺に晒してるって事だからとその首に吸い付いたその瞬間、子供が盛大に泣き出した。

 それと同時にナミは俺の腕からするりと逃げ出して子供の方に移動し、あやし始める。……俺のナミなのに、盗られた。

 でも子供に怪我させたりするとナミが怪我するからと耐える。時々我慢出来なくて、子供がいても気にせずにナミに甘えてみていたら、兄貴達から殴られた。

 

 「子供は1人で充分だよぃ!ナミの負担増やすな!」

 「でも、俺のナミなんだぜ?」

 「エースの子だろぃ。支えてやるか手伝うならまだしも、子供に返って邪魔するなと言ってんだよぃ」

 「俺の子じゃねェよ!」

 「……ナミは、エースとの子のつもりでいるが、それなら他に〝父親〟をやれそうな奴に任せるか?」

 「いやだ!ナミは俺のだ!」

 「我儘な奴だよぃ」

 

 呆れたように言って俺を本気で殴った後、マルコがナミの側に行って子供をあやし始める。それにナミが少しホッとした顔で笑うから、その様子に少しだけ反省した。

 そういやナミは、子供が泣くから夜もそんなに眠れてねェんだよなと、今更気付いたのも大きい。それからは邪魔する事は極力耐えて、別れの日を迎えた。

 俺はやっとナミが帰ってくると浮かれていて、ナミが落ち込んでると気付けなかった。実際別れのその瞬間に、中々涙を見せないナミが震えながら別れて、その後に無言で涙を流し続けるのを見るまでは……本当に浮かれていたんだ。

 

 「ナミ」

 

 ごめん、何も気付けなくて。あんなに愛してたんだから、つらいよな。

 

 「ナミ……」

 

 繰り返し呼べばナミは振り向き、そして、無理して笑った。子供と別れる時にそうしていたように。

 あァナミの中で俺は何処かでまだ、守るべき相手のままなんだと思い知らされる。だから、甘えた顔を中々見せて貰えねェんだと。

 もう少し俺の心が大人になったら、ナミに俺の子を抱かせてやるから……もう少しだけ俺だけのナミでいてくれよと囁いてみれば、ナミは優しく笑って、頷いた。

 

 「私……幸せ者ね。ありがとう、エース」

 

 俺の言葉に出来なかったところまで理解して、包んでくれるナミに、俺の方こそありがとうだろうと思う。俺には器用に愛するなんて出来ねェけど、素直に想いをぶつける事は出来るから、今は大きな子供で我慢してくれと抱きしめる腕に力を込めた。

 後にこの島は、宝玉の書いた手記によりカップル達で溢れかえる有名な観光地になるのだが、それはまだ、誰も知らない小さなこぼれ話。




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