その日も特に代わり映えの無い日だと私は思っていた。だって……朝はいつも通りにシャンクスに抱き締められていたし、少し肌寒かったからと布団から出るのを嫌がり体温の高いシャンクスに甘えるように擦り寄って、2度寝をしようとしたのもいつもの事だったから。
そこで目覚めてしまったらしいシャンクスに唇を奪われる所までが、いつもの朝と変わっては居なかったと言うのも勿論ある。そうなれば、その先が何か変わるなんて普通思うはずも無い。
「ふっ……ぁ……シャンク、ス……」
「なんだってナミは、こんなにもすべてが甘いんだろうな?」
そう言ってシャンクスが首を傾げて見せるのを、私は荒い呼吸を抑えきれずにシャンクスを見つめて……それから、羞恥心を隠す為と逃げて行った温もりの代わりを求めて、布団の中に潜り込んで丸くなる。それ見て、シャンクスが笑う。
変わらない日常の風景の中で、私はぬくぬくと守られている。何か返さなければと思うのに、どうしたって私は弱くて……邪魔にならない事だけで精一杯なのだ。
そうしているとノックの音が聞こえて、ドアが開かれる。それから呆れたような声が聞こえてくるのだ。
「……今日も寒がりな猫は布団の中か。お頭、甘やかすな」
「俺が悪戯したから、拗ねてんのさ」
「……次にその言い訳したら、冬島の海域で1緒に寝る事を今後は、断固阻止するからそのつもりでいろよ」
「ベック!?」
「……何をしたのかは、だいたい想像がつく。後で少しナミには俺からも話をしておく」
「お手柔らかに頼む」
2人のそんな会話を聞いて目だけ布団から出してベックを見ると、そっと頭を撫でられる。その表情は困ったようになっていて、それに少し癒された。
甘えるように目を閉じて撫でられていたら、シャンクスが何故か文句を言い出したけど、そこは聞こえないふりをする。そんな時にルーがシャンクスを呼びに来て、いつものように朝食の為にシャンクスは部屋を出て行く。
シャンクスの気配が無くなるのと同時に、ベックが冷静な声で話しかけてくる。私はベックに視線を向けて、その問い掛けに少しばかり首を傾げた。
「……ナミは、お頭をどう思ってるんだ?」
「シャンクスは、シャンクスだし、師匠だと思ってるわよ?少し、子供っぽい所があって、可愛いと思う事もあるけど……本質はそうじゃないでしょ?」
シャンクスはただ、明るくて楽しい人では決して無い。彼は優しく温かいが……それだけで海賊を何年も続けられる筈はないのだ。
穏やかに優しく微笑むけど、時にゾッとする程に残酷に微笑む事も知っているし、時には冷酷な判断を下す事もある。そんな所だって彼の1部であり、嫌う理由にはなり得ない。
明るい姿や冷徹な姿のどれかが演技とかではなくて、すべてが本質で、すべてがありのままのシャンクスと言う人の姿なのだと言う事も分かってるつもり。私が船長と認めた、ただ1人の人物。
「人間観察力的な意味では、問題ないんだよな……」
ベックが疲れたように言って、私を手招くからベッドから這い出てベックに抱き着く。……本当に暖かい。
雪の積もる冬島で、筋肉質な人達に抱き着く事の何がおかしいと言うのか。筋肉質な人は体温が高いから、本当に暖かいのだ。
だからスポーツをやる人程暑がりさんが多くて、運動を嫌う人間程寒がりが多いのだ。私はと言うと……こんな寒い日は炬燵に蜜柑で、執筆か読書をさせて貰いたい所な訳です。
「なら、聞き方を変えるか。……ナミは毎朝の接吻に対してどう思ってる?不快か?それとも恥ずかしいだけか?」
ベックの言葉に私の体はビクリと揺れる。なんで、毎朝キスされてる事知ってるの!?
そうは思うけど、そんなの聞くだけ無駄なのは分かりきってる。だって相手はベックなのだから。
「……わ、たしは……不快には、思ってないのよ。でも、訳が分からないの。苦しいし、意味わかんないし、恥ずかしいし、でも……拒めないのよ」
小さく言葉を紡ぎ出す私に、ベックは優しく背中を撫でてくれる。それから妙に優しい声が降ってくる。
聞き分けのない子供に言い聞かせるようなそれは、けれども労りや思いやりに溢れている。だから……私はベックに抱きつく腕に、少しだけ力が強くなるのを抑えられない。
「……ナミは、いつも大人顔負けの知識と共に俺達と過ごしてきた上に、考え方もただの我儘な子供じゃなかった。……基礎的な所が甘いが、それでも民間人の大人と近い判断基準で行動をして来ている」
私、ベックにそんなふうに見えてたんだ。ちゃんと、評価されてたんだと思えば、なんだか気恥しいような嬉しいような複雑な気持ちになる。
甘いと言われる事には慣れてるけど、民間人の大人と言われて、初めて納得できた気がする。そりゃ、海賊から見たら甘いわよねと思って、同時に……少しだけ困ってしまう。
直し方が分からない部分だから。長年かけて作られた日本人としての、経験や知識による甘さを指摘されているのだもの。
「だから、俺達も見た目が幼いと言う事さえ無ければ……いや、それがあってなお、大人として、仲間として扱う事に躊躇いは無かった。ナミは若いから、幼いから妹や娘のように扱ってる奴も多くいるが、基本的に大人として対応していた」
そこまで言ったベックが言葉を止めて、深く息を吐き出した。それに自嘲的なものを感じ取ってしまえば、どうしたのかと顔をあげる他ない。
「……それでも、本当はまだ子供だったんだよな。生きる事に必死で早く成長するしか無かっただけで。……ナミの恋愛に関するところは、他が先に成長した分成長が止まってるだけだったんだな」
そう言って困ったように笑うベックは、私の額に唇を落とすと愛しげにその瞳を細めて、そっと私を引き剥がすと部屋を出て行く。その背中を向けた状態で、お頭には性急に事を進めないよう伝えておく、と言って去って行く。
だから私はその背中を無言で見送ってから、どうしたら良かったのだろうかと少し考えて……多分、この動揺や葛藤もベックには筒抜けなんだろうなと思う。それから気持ちを切り替えて、身支度を整え部屋を出て行く。
皆と共に食事を終えて、いつものようにシャンクスに修行をつけてもらって……ベックにダメ出しをされる。それをヤソップがハラハラした様子で見ていて、幼い頃の私を知らない人達が少し羨ましそうな視線を向けて来るのを受け入れて笑う。
彼等から見れば見知らぬ小娘が幹部に可愛がられているのだから、気持ちのいい話では無いだろうに。向けられるその視線に、羨望は含まれていても悪意が無いのだから質の高さを伺えると言うものだ。
それにその人達が私を幹部の1人として扱って来るのは、他の幹部が私を贔屓し過ぎて誤解が生まれてるのが原因だと、嫌という程理解してる。誤解を解かないと……。
私は単なる居候と言うか、見習いみたいなものなんだから。そう決意して気合いを入れる。
皆と共に島の中にある岩穴の中へ向かい、特に大きな理由もなく宴を始めるシャンクスに呆れつつも、私とベックが仕方ないかと顔を見合わせた。それを見たシャンクスが当然のように、その両腕を伸ばして私とベックの肩を抱くから私もベックもされるがままになる。
どちらにも傍にいろと言うように、離すものかと言うように抱かれた肩。それが、まるで弱い私でも仲間だと認めてくれているようで嬉しくなる。
ベックもまた、シャンクスには基本的に逆らわないから、いつも私を含めてこういった形で収まってしまう。それにより私まで、まるで幹部のように扱われているのだと遅れて気付く。
それからシャンクスに飲み比べを提案されて、ベックからは私の酒の許容量を知りたいから存分にやれと言われてしまえば、断る理由も無くシャンクスとの1騎打ちとなる。そうなれば仕方ないので、同じ酒を同じペースで呑んで行くしかない。
ただ繰り返される酒を呑むと言う行為の中で、シャンクスの呑むペースが落ち始めると私もそれに合わせてペースを落とす。それから更に少しするとシャンクスが体をぐらつかせたので咄嗟に支えれば、シャンクスはまだ飲めると言いながら寝てしまった。
支える形で近付いた私をシャンクスが離さないから、ベックに助けを求めて微笑みを向けて見ると頭をボリボリとかきながら、毛布を持って近付いてきてくれた。どうやら助けて貰える雰囲気じゃ無いわね。
「ナミの限界値が分からなかったが、とりあえずそのままお頭とここで寝てくれ」
「えー……」
「そうなったお頭からナミを引きはがすのは難しい。悪いな」
そう言われてしまえば確かにその通りでもあり、助けて貰えない事は分かってもいたので、小さく頷く。するとベックは笑顔でシャンクスを壁に寄り掛からせて、私をシャンクスの上に乗せてくる。
まるで軽い荷物のように移動させられた私は、なんだろうとベックに視線を向けたけど、ベックは私を包むように毛布をかけるだけで答えてはくれない。
「お頭から落ちると岩の上になるから、体が冷える。落ちないように、いい子に寝ていろよ」
「シャンクスは天然のベッド?」
「そういう事だ」
クスリと笑ったベックは私の頭を撫でて、狸が狼に変わる前に寝ちまえと囁かれるから、よく分からないままに私はシャンクスの胸を枕に眠る事にした。その寝顔に、私は1言声をかけると瞼に軽くキスをしてから眠りに落ちる。
「お休み、シャンクス」
翌朝誰かが洞穴に近付く気配で目覚めると、何故か背筋が凍るような冷たさを感じてしまった。それにより咄嗟にシャンクスに抱き着く腕に力を入れると、シャンクスが不思議そうな声を出して私の頭を撫でてくれた。
その直後、シャンクスが纏う気配が剣呑なものに変わり、私を隠すように毛布を頭までしっかりとかけるから、大人しくされるがままになる。その直後、会話が聞こえて来た。
「……戦闘の意思はない。確認したき事と、伝言があってきた」
「なんだ、それは……?」
「未来への希望とは、コレか?」
シャンクスはその瞬間大喜びでルフィと言って笑ったので、どうやら手配書を見たらしいと分かる。でも、それよりも、その相手が問題で……私は勝手に震える体を持て余して、その震えがシャンクスに気付かれないようにそっと体を離そうとした。
けれどもシャンクスはそれを許さずに、当然のように片腕で私を抱き締めたまま空いている手でどうやら手配書を受け取ったらしい。祝いだと、酒だと騒ぐシャンクスにルーが2日酔いはどうしたと声をかけるが、シャンクスは向かい酒だと阿呆な事を言う。
それにより少しだけ気が抜けて、体の震えが収まるけど、その宴会が始まっても解放してくれないシャンクスに少し困る。視界がシャンクスの胸だけだから、多分これでも冷静でいられているのだと分かってはいるのに……。
なんだか、落ち着かないのだ。抱きしめられている事が、何とも言えない心持ちになる。
その時冷水でも浴びせられたかのような気持ちに切り替えさせられたのは、鷹の目の声が聞こえたから。体が、心が、1気に縮こまるのを感じる。
「……その抱いてるものはなんだ?」
「気にするな。そんで、伝言ってのはなんだ?」
鷹の目の声にシャンクスが軽い調子で答えて、その直後に鷹の目が何かを見せたらしくシャンクスの動きが止まった。それから少しの間を置いて、2人は会話を始める。
その伝言とは私が頼んだもので、どうやら私の写真を見せられたらしいと知る。けれどもその後約束に無かった真実を語り始める鷹の目に、コラ待てと本気で思う。
約束では〝蜜柑農家で平穏無事に暮らしていた〟とだけ伝えて貰う事になっていた。なのに、鷹の目はあろう事か〝そう伝えてくれと頼まれたが真実は〟と言って私と会った経緯なども語りだしたのだ。
それを聞いたシャンクスは納得した様子で聞いているし、どうやら他の幹部達も納得のご様子だ。酒場で私が歌い、それにより客を集めた事を話出した鷹の目は、私の瞳が彼岸を見ていた事を口にする。
そして……天気の話でもするような気軽さで、シャンクスに問い掛ける。それを私は黙って聞いていた。
「ナミと赤髪が知古であるのは理解しているが、どういった関係性だ?」
「……何故そんな事を聞く?」
「ふむ、まァ良いか。……あの日、嫌がるナミを無理に犯したのだがな、その時赤髪とそこの副船長を何度か呼んだもので気になった」
「鷹の目……てめェ……」
シャンクスが殺気立ったのがわかり、宥める事も怯える事も出来ないで、強くその体に抱き着く。そこで妙に冷静な鷹の目の声が、シャンクスに追い打ちをかける。
「主の女では無かろう。殺気立つ権利はあるまい」
「……なんだと?」
「ナミはあの時、まだ初物だった故な」
その瞬間、これまでに感じた事の無いレベルの覇気と殺気がシャンクスから溢れ出した。向けている相手は明らかに私じゃないのに、呼吸さえ辛くなるようなそれに1瞬意識が揺らぎ気が付けばベックの腕に私は移動させられていて……。
「見なくていい。大丈夫だ……。今回は、守ってやる」
その言葉にビクリと肩を揺らせば、優しく背中を撫でてくれる。穏やかな声で、私に言葉を落としながら、けれども顔を見れば恐ろしい程に真剣な表情で真っ直ぐに前を見据えていた。
「助けに行けなくて、悪かったな」
「……っ!んな、のっ!」
涙が溢れる。そんなの、不可能なのは分かりきってて、助けに来られる筈なかったのに、それなのに謝らせてしまった事への罪悪感と、謝ってくれた事への嬉しさがごちゃ混ぜになってしまう。
「約束したのに助けに行けなかったのは、俺達の落ち度だ。……珍しく助けを求めてくれたのに、約束を守れなくて悪かった」
感情の起伏を抑えられないなんてものではなくて、感情の制御が全くできない。恐怖と絶望と幸福と安堵が全て混ぜこまれたようなそれに、涙腺は簡単に崩壊してしまい治る気配を見せない。
「……泣き方まで、子供らしくないな。ナミ、大丈夫だ。お頭がお前を傷付ける事はねェし、俺も全力で守ってやる」
「ど……して?」
分からない。どうして皆、私にこんなにも優しくしてくれるのか。
私の価値なんて、何も無い。ナミちゃんの持って生まれた才能である美貌と海図や地図を描く能力と、天候を読む力だけはあるけど……これらは全て私のものではなくて、ナミちゃんのものだから〝私〟本人には、なんにも価値なんて無いのに……。
「……ナミは、俺から見れば可愛い妹分だ。兄貴が妹を可愛がる事に、何の不思議がある」
言いながら目尻に唇を落とすベックに、擽ったいと言いながらそれを受け入れると苦笑されてしまう。その温もりに、私は甘やかされている。
「本当に、無防備だな……。お頭の気持ちが、分からなくもない」
「……どういう事?」
「ナミはそのままでいい。さて、そろそろ終わるか」
そう言ったベックはヤソップに視線を向けると、それだけでヤソップが2人の間に銃弾を打ち込む事でその動きを止める。動きを止めた2人が揃って振り向くと、泣き腫らした顔の私と視線が絡む。
「「ナミ!?」」
シャンクスは泣いている事に、鷹の目は私の存在自体に驚きの声を発して、結果2人の声は重なる。それを見て、思ったより冷静な自分に気付く。
怖かったのに、声を聞いただけでつらかったのに、今は大分落ち着いている。初めて出逢った時のように、普通に会話したり出来るかと問われたら、難しいかも知れないけど……。
「……これ以上やったら、この島が無くなるから、もう辞めて」
測量、やり直さなきゃ……。そんな事を思いながら口を開けば2人は互いを軽く睨み合う。
それからシャンクスが近付いてきて、それに私が抱きつけば鷹の目が小さく何かを呟いた気がしたけど、聞き取れなかった。その直後にベックが鷹の目に近付き何かを少し会話してから、鷹の目の頬を思いっ切り1発殴り付けた。
何が起きたのかと見れば、ベックが笑う。驚く程に爽やかなそれ。
「……お頭、やるべきはコレだけで良かったんじゃねェのか?」
「……いいとこ取りかよ。俺の激闘はなんだったんだ」
「無駄だな」
「なんで鷹の目も避けねェんだよ!?」
シャンクスの言葉に鷹の目は血を吐き捨ててから、わかりやすく溜息を落とす。
「……〝兄貴として強姦魔を許せぬ〟と言われては、甘んじて受けるしか無かろう。俺としてもナミの事は、遊びで終わらすつもりは無いのでな」
「………………は?」
私から妙な声が出た。現実感の無いその言葉は、本気で意味がわからない。
「巫山戯んなよ鷹の目、ナミは俺の女だ!」
「手も出してなかったというのにか?」
「五月蝿ェな!大切すぎて……可愛すぎて手が出せねェんだよ!」
シャンクスの言葉に私は目を見開く。だって、今……シャンクス、何を……。
思わずシャンクスのマントを引っ張ると、シャンクスが私に視線を向けて来た。その表情は明らかに照れていて、それが少し可愛いと思ったけどそうじゃなくて……。
「シャンクス……私の事……?」
都合のいい夢でも見てるのではなかろうかと、そんな事を思う。違うのならば、幻聴とかでは無いのかと思いながらも、それでも期待する気持ちを抑えられずに確認の為に口にした言葉に合わせて、シャンクスの顔が驚愕に塗り変わる。
「…………まさか、ナミ、気付いてなかったのか!?」
「だって、私は……弟子だし。妹とか、娘みたいな感覚かと」
「それはベックから見たナミだろうが!俺は、本気でも無い8歳の子供に手を出して遊ぶような奴だと思われてたのか!?」
……ちょっと激しいご挨拶だったのかと思ってました。だって、シャンクスだし。
「……あれは、別れの挨拶。シャンクス風かと」
「んな馬鹿な……。再会した時のは、なら、再会の挨拶か?」
そう信じてたし、朝のも朝の挨拶だと思ってたから素直に頷けば、シャンクスが項垂れた。……なんか、ごめんなさい。
そんな私とシャンクスを見ていた鷹の目が馬鹿馬鹿しいと言って立ち上がり、私に向けて何かを投げて寄こした。それをシャンクスの腕の中で手だけ出して受け取ると、小さく先日の詫びだと言われる。
「反省も後悔もして無いが、詫びる気持ちはある。それならば使うだろう。俺は帰る」
「……ミホークさん、今夜は荒れるから、どうしてもじゃないなら通り過ぎるのを待った方が「お人好しだな、ナミは」」
そう言って鷹の目は微かな笑みを浮かべて、大仰なマントを翻して立ち去っていった。それを無言で見送る事しか、出来なかったけれど。
とりあえず受け取ったものを胸にしまってから、シャンクスに視線を戻すとシャンクスにニッコリと笑われてしまった。……何故かしら、嫌な予感がするのよね。
「俺のあの勢いのキスが挨拶だって言うなら、遠慮はいらなかったか?なァ……ナミ?」
「シャンクス?あの、落ち着いて……ね?」
「じっくり、話し合おうか」
シャンクスの妙に優しい声と微笑みに寒気に似たものが走るのに、それを皆も見てるのに、笑ってるばかりで助けてくれない。思わずベックに視線を向けると、何故か頷かれた。
それからシャンクスに船まで強制連行され、双方の誤解が溶ける頃には……私の喉は呼吸をするだけで精一杯になっていた事だけ、ここに記しておきたいと思う。