※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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幼い女side

 カタカタと震える事さえしなくなったナミに、成程本当に強姦だったのかと目の前にいる男を睥睨する。俺を刺激しない為か何も語ろうとしないナミだが、これで案外その思考は読みやすい。

 そのまま話を聞けば鷹の目を伝書鳩代わりに使ったのはナミだと分かり、鷹の目が余程ナミを気に入った事が伝わる。そうでなければ、この男が動く筈もない。

 ……だからと言って、その行為を認める気にはなれないがな。怯えて呼吸さえ止まりそうな様子を見せるナミに、俺は今何をしてやれるだろう。

 

 「蜜柑農家で平穏無事に暮らしていたと伝えてくれと頼まれた……が、真実は……」

 

 そう言ってナミと会った時の事を語る鷹の目に、贖罪の色も後悔の念も感じない。その上で鷹の目は、酒でも呑まないかと言うような軽いノリで言う。

 

 「あの日、嫌がるナミを無理に犯したのだがな、その時赤髪とそこの副船長を何度か呼んだもので気になった」

 「鷹の目……てめェ……」

 

 その時ナミの腕の力が強まる。これが〝鷹の目を愛してるの、だから許して……〟とかなら恐らく泣いても許さず犯すだろう。

 だが、どちらかと言うなら〝私の事なんてどうでもいいから、喧嘩しないで〟だろう。ナミはそういう意味で阿呆だ。

 

 「主の女では無かろう。殺気立つ権利はあるまい」

 「……なんだと?」

 

 昔からナミは俺の女で、俺のクルーだよ。初めて俺が仲間になれと言った時から、それは決定事項だ。

 何言ってやがるとの言葉の代わりに、俺は鷹の目を睨み付ける。だが、鷹の目はそんな俺に気付かないのか、気付いていて無視したのかは不明だが……爆弾、いや、原爆を投下した。

 

 「ナミはあの時、まだ初物だった故な」

 

 こいつ、今すぐ葬ってやる……!!

 そう決意してナミを安全な場所へと投げ飛ばせば、難無く受け止める相棒。それを確認するよりも早く抜いた愛刀に、鷹の目はつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

 「腕が使えぬ主に負ける程衰えてはおらぬ。それにも関わらず剣で戦おうとはな」

 「もう、何も喋らなくていい。……永遠にな……!!」

 

 俺と鷹の目が全力でぶつかり合う衝撃で、島の形が変わるのが分かる。だが、そんなもの今はどうでもいい。

 どれ程怖かっただろうか。ナミが助けを求めるなんて、どれ程つらかったのだろう。

 今、始末してやる。ナミに害を与えるものなんざ、この世に存在する価値はねェ……!!

 剣が合わさる度に爆風が起きる。そして、近くの物が切り刻まれて行く。

 油断すればした方がそれと同じ事になるのは双方わかっていて、だからと言って止まる気はねェ。そうして互いに相手の首を落とそうとしたその時、銃弾が俺達の間に割って入った。

 振り向けば泣き腫らしたナミがいて、鷹の目もまた俺の仲間がいるこの場で邪魔が入ってまで戦う気は無かったのか動きを止めていた。そして、結果的に声が重なる。

 

 「「ナミ!?」」

 「……これ以上やったら、この島が無くなるから、もう辞めて」

 

 こいつを許せと言うのかと睨む俺と、隠していたのかと睨む鷹の目。だが、今はナミが優先だと鷹の目を放置してナミの元へ向かえば、当然のように抱き着いてきたのを受け止める。

 俺を宥める為、そして、自らが甘える為に抱き着く小さな身体。色々と無防備でありながら、優しさだけはその身体に収まりきらないらしく年中垂れ流すから、変なのが寄ってきちまう。

 どうしたら守れる。この弱くて強い女を、どうしたらこの腕に閉じ込めておけるんだ。

 

 「ナミは、赤髪に懸想していたのか」

 

 そんな言葉が聞こえて、それなら嬉しいんだがなと内心で答える。ナミの心は、俺にも未だ掴みきれない。

 これ程に愛を伝えても、何も返してくれないのは、想われてないと考えるのが本来妥当だ。少しずつ懐柔して、守りながら癒してやるつもりだが……。

 そう思っていたら、ベックが鷹の目を殴り飛ばした。恐らく全力だろうそれは、相当なダメージを与えた筈だが……何故鷹の目は避け無かったんだよ。

 

 「……お頭、やるべきはコレだけで良かったんじゃねェのか?」

 「……いいとこ取りかよ。俺の激闘はなんだったんだ」

 

 背筋が寒くなるような爽やかな笑みに、俺の顔は引き攣る。あの顔は、怒ってるな。

 

 「無駄だな」

 「なんで鷹の目も避けねェんだよ!?」

 

 殴ってもまだ、ベックの怒りは収まらないらしい。本当にナミの事になると、自制心と言うものが欠落する奴等だよな。

 こっそりとではあるが、言動によっては引き金を引けるようにヤソップが構えているのにも俺や鷹の目は気付いている。そして、腕の中で幼い顔をしているナミは欠片も気付いてねェ。

 

 「〝兄貴として強姦魔を許せぬ〟と言われては、甘んじて受けるしか無かろう。俺としてもナミの事は、遊びで終わらすつもりは無いのでな」

 

 鷹の目からの愛の告白に、ナミは頬を染めるでもなく、ただ本気で意味がわからないという顔をする。……どうやら本気で、恋愛的な所が壊死してるらしい。

 これは長丁場になるなと内心で思いながら、そっとナミを抱き締める腕に力を込めた。今はそれよりも先に言うべき事がある。

 

 「巫山戯んなよ鷹の目、ナミは俺の女だ!」

 「手も出してなかったというのにか?」

 「五月蝿ェな!大切すぎて……可愛すぎて手が出せねェんだよ!」

 

 その時、ナミが俺のコートを引っ張った。それにより、ん?と視線を向けると戸惑いの眼差しを向けられる。

 ……可愛い。なんだ、この可愛い生き物。

 

 「シャンクス……私の事……?」

 

 その言葉の意味する所が、僅かに分からなった。そして……壊死してると言うベックの声が脳裏で響き、まさか……とナミを凝視する。

 

 「…………まさか、ナミ、気付いてなかったのか!?」

 「だって、私は……弟子だし。妹とか、娘みたいな感覚かと」

 「それはベックから見たナミだろうが!俺は、本気でも無い8歳の子供に手を出して遊ぶような奴だと思われてたのか!?」

 

 俺の言葉に小さくなるナミ。まァ、ベックは怖すぎる兄だが、とりあえず今は兄の枠だろう。

 そして恐らく、ナミの選択によりそれはこの先変わらなくなっただろう。だから、これは牽制では無い。

 

 「……あれは、別れの挨拶。シャンクス風かと」

 「んな馬鹿な……。再会した時のは、なら、再会の挨拶か?」

 

 俺の問い掛けに頷くナミに、伝わってなかったからこんなだったと?と項垂れる。だが、それなら……もう、遠慮はいらねェよなァ?

 その時鷹の目が、馬鹿馬鹿しいと言いながらナミに何かを投げた。それを受け取ったナミに、鷹の目はいけしゃあしゃあと言葉を告げる。

 

 「反省も後悔もして無いが、詫びる気持ちはある。それならば使うだろう。俺は帰る」

 

 そんな鷹の目にお人好しの権化は、この島に1泊する事を勧める。……だがな、ナミ、それは辞めた方がいい。

 鷹の目にとって、今この場は鬼の巣窟だ。泊まろうものなら、生命は保証されないだろう。

 明日、俺のクルーか鷹の目のどちらかが冷たくなっているのは暗黙の了解だ。鷹の目ならば嵐も斬り捨てるだろうから、行かせてやれ。

 正直鷹の目が死ぬのは構わないが、俺はクルーを喪いたくねェ。それに……鷹の目が死ねば帰ったと言ってナミを誤魔化せるだろうが、逆ならナミは己を責めて泣き暮らす。

 そう思って鷹の目が去るのを見送ってから、ナミに笑いかける。ナミはビクリとその身体を震わせるが、もう待ては聞いてやらん。

 

 「俺のあの勢いのキスが挨拶だって言うなら、遠慮はいらなかったか?なァ……ナミ?」

 「シャンクス?あの、落ち着いて……ね?」

 「じっくり、話し合おうか」

 

 落ち着いてるから、この場で犯さなかったんだろうがと思いながら担ぎあげる。そんな俺にナミは暴れたりはしなかったが、妙に鼓動が早くて……それが俺の心を落ち着かせていた。

 部屋に入るとナミをベッドに降ろして、最大限優しく問い掛ける。その位の理性は俺にも残されていた。

 

 「……本気で、俺の気持ちに気付いてなかったのか?」

 

 俺をあしらってたとか、男が怖くなったとかじゃなくて、本気で?そう思って問い掛けた俺にナミは謝るから、ベックの言葉の意味を痛感する。……あの魚共、三枚におろしてやるべきだったな。

 今からでも遅くはないだろうか。ナミが気にするなら、俺達ではなく傘下にやらせてもいい。

 買出しのフリでもして、抑えが効かなさそうな数名を送り出して、俺はその間ナミをグズグズに甘やかすなんてのはどうだろうか。それならば始末しても誰の害にもなりはしない筈だ。

 八割本気で考えながら、それでもナミにそれが知られた時のリスクを鑑みて耐える。だが、次に何かあれば恐らく戦争になるだろう。

 

 「反応が鈍いとは思っていたんだが……挨拶だと思われてるとは思わなかった」

 「だって……私なんてシャンクスから見たら、子供なのは分かりきってるし……」

 

 確かにナミは、俺の娘だったとしてもおかしくない年齢だ。それでも……本当に子供だと思ってたら、こんなに苦しまなかった。

 もしも娘としか想っていなかったなら、手放した事を悔やまなかった。怒り狂っても、嘆く事は無かっただろう。

 こんなにも愛しい女に、それを伝えるのがこんなにも難しいとはな。望んでない相手はいくらでも寄ってくるのに、俺が望んだ相手は中々俺に振り向いてくれない。

 そんな事を思って見つめれば、ナミが戸惑いと困惑をその瞳にら宿して小首を傾げる。どうしたらいいの?って全身で訴えながら。

 

 「……その、幼い顔も可愛いんだがな?俺も罪悪感ってものが」

 

 未経験でも無いのに、どうしてこう、幼いんだよ!別れたあの日からそっちだけマジで成長してねェ!!

 そうは思うが、今更辞められそうにねェんだ。そう思って俺は、戸惑いと不安に瞳を揺らすナミの髪に触れる。

 そのまま頭皮に指を這わせれば、頭皮が性感帯だと知らなかったのか、ナミが戸惑った様子を見せるから背徳感に息を飲まされちまう。……こんな時、真面目に幼いんだよな、ナミの反応。

 

 「……戸惑ってるその様子が、背徳感を刺激するんだが……計算だったりするか?」

 「シャンクス?」

 「違うなら良い。瞳を閉じてろ」

 「ま、待って!あの、お風呂……入ってからじゃ、ダメ?」

 

 すぐに食うつもりだったのに、縋るように見詰められて俺は敗北を理解した。……クソっ!勝てるかよ!!

 衝動的に傷付けない為、俺は自分の髪を掻き毟る。性的な事が怖くなっていて、ある意味当然なんだから、ここは引くべきだよな。

 初体験が鷹の目で、しかも強姦だ。その後も恐らく似たような経験しかしてねェ。

 ここで退くくらい出来なくてどうする。思春期のガキでもあるまいし。

 

 「……ここまで待ったんだ。あと少しくらい待ってやるよ。早く帰って来いよ?」

 

 その言葉で解放すれば、少し強ばった顔で背を向けたナミに、深い溜息が落ちる。もう、手に入ったも同然だが……鷹の目と……他にも誰かに襲われてたのは間違いない。

 俺が鍛えたんだ。その辺の雑魚なら返り討ちに出来る。

 そうなれば相手は、実力者である可能性が高い。ならば……体格差もあったと見るべきだ。

 俺や鷹の目もこの海で生きる実力者の中では、随分と小柄な方だ。それでもナミは小人のように思える事があるのだから、ナミにはどれ程の苦痛だったか……。

 守ってやりたかった。助けを求めてくれたと言うなら、柄じゃねェのはわかってるが、物語の英雄のように、ヒロインのピンチには間に合って守ってやりたかったよ。

 己を呪い殺したいような気持ちになり、俺は頭を冷やす為に海へと飛び込む。流石に多少冷たかったが、お陰で頭も冷えた。

 ……俺の自責の念で、ナミを傷付ける訳にはいかねェからな。そう思って自嘲しつつ部屋に戻り、まだ風呂場から出てないナミに笑う。

 恐らくナミは混乱してるだろうな。それもどうでもいい事で。

 だからと思って脱衣所のドアを叩けば、妙な声が返ってきた。それに笑い転げる訳にもいかずに、それでも抑えられなかった笑いが笑みとなって表面に出ちまう。

 ドアを開ければ、泣きそうな顔で俺を見ている小動物がいた。さて……時間は十分にやっただろうから……塗り替えさせろナミ。

 精一杯優しくしてやる。性行為は怖い事でも、痛い事でも、恥ずかしい事でもないのだと教えてやりたい。

 可愛さの権化と化してるナミと少しばかり穏やかな時を過ごしてから、その身体を組み敷いた。その後、優しく抱いてやるつもりが、俺の方が甘やかされる事になるなんて……俺はわかっていなかったんだ。

 俺の怯えも、俺の弱さもわかっていて、ナミはそれを包むようにその小さな身体で俺を抱く。愛の言霊を紡ぎながら、俺を暖かく包み込むそれに、溺れたのは俺の方だった。

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