※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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甘やかな笑顔side

 俺としても頭じゃわかってるんだが、ナミが目の届く範囲から消えると不安になる。常に俺の傍に居させなければ、鷹の目のような実力者にまた奪われたり傷つけられるんじゃねェかって、そんな事を思っちまうんだ。

 そんな事、早々起きないとわかっていて、いる場所も船内なのだとわかっていても、何も告げずにどこかへ行けないように追い詰めてみる。そんな俺に恥ずかしそうに笑うが、それ以上の抵抗をしないナミに俺は甘やかされているのを自覚していた。

 今も俺が寝たフリしていれば、目覚めてから暫くモジモジして、そっと俺を起こさないようにベッドを抜け出した。それから優しく俺の頭を撫でて、ペンを手にして行先を書いてくれる。

 姿が風呂場に消えてから身体を起こすと、溜息が零れる。慌てると見聞色の覇気を使うのを忘れるのは俺の悪い癖だが、ナミは俺を甘やかし過ぎだ。

 自分の半分も生きてない筈の存在に、俺は甘やかされている。強がらなくていいと、傷付いてるならそれを隠さなくていいと笑うその姿に癒されているのは間違いない。

 元々安眠効果の高い存在だったが、女としても最高とか……俺を堕落させる為に存在してるとしか思えねェよ。可愛く鳴いて……俺を甘やかして、妖艶に微笑み……俺の理性を破壊するんだからたまらねェ。

 無論やり過ぎ注意だ。やり過ぎれば、ナミが死んじまうか俺が幹部に殺されるかだ。

 そういう意味では、クルーが1番信用ならない。ナミの為なら、奴らは船長たる俺を殺しかねねェんだからよ。

 深い溜息が落ちたのは、仲間達への呆れかそれとも信頼故か。どちらにしても、ナミがこの船に置ける逆鱗である事は疑いようのない事実。

 風呂から出たナミは無防備に何処かへ行こうとするから、自らの腕に捕らえる。無抵抗なそれを目の前に座らせて髪を拭いてやれば、不思議そうな顔をされるが……二度とこんな無防備な姿を他の男に見せるつもりは無い。

 今でもナミは、放置するとベックの所へ拭いてもらいに行こうとするのたから、本気でやめて欲しいと願う。だと言うのに、何も分かってない様子でおはようなんて言ってくるナミを、どう扱えと言うのか。

 

 「シャンクスもシャワー浴びる?」

 「1日に2度も3度も浴びねェよ。なんだってナミはそんなに浴びてんだ」

 「分かった。説明しましょう」

 

 呆れてるんだと伝えたくて言ったそれに反応して、キリッとした顔をして見せるナミに、俺は即座に制止をかける。放置したら、風呂の有用性を永久的に語られちまう。

 だが、制止した事でムーッて顔をするナミは本当に幼くて、それがまた嬉しい。ナミが幼い態度を見せる相手は、限られているからな。

 余り他の男の傍に行けなんて言いたくもないが、この手の話はベックか船医としていて欲しい。そんな事を思いながら返事をして、ナミの髪をセットして行く。

 今日はどんな髪型が良いだろうか。折角可愛く巻いてる髪なのだから、団子にして分からなくするよりはそのままの感じにした方が良いかもな。

 下ろしてるままにさせると邪魔だろうが、1部だけ纏めるのは無意味に近い。そこでポニーテールにしてみると、俺の希望とナミの行動のそれに対してどちらにしても良い物だと感じられた。

 俺を振り向いたナミは優しく笑っていて、俺はそんなナミの腰を抱いて部屋を出る。ナミはそのまま甲板へと仕事をしに行くから、俺はとりあえず朝食を貰いに向かった。

 朝食にはキムチ炒飯が出たが、朝食としては珍しいと思いコックを見れば俺のだけがそれだと気付く。何かあったかと考えた時、ナミが漬けたキムチなのだと言われて思考回路が停止した。

 

 「……は?」

 「白菜が大量に手に入った時に、ナミがお頭が喜びそうだからって作ってたんだよ。そろそろ漬かった頃だろうと思って出して見たら、少し早い感じだったから炒飯にしてみたってだけなんだが」

 「そうか。ありがとう。……それにしても、漬物ってイマドキの若者の通常スキルか?」

 

 俺の問い掛けにそんな訳あるかよと笑うクルーに、そうだよなって頷きながら食事を続けていれば、突然ナミの声が響いた。それによりそれぞれが口に詰め込めるだけの朝食を詰め込みながら表に飛び出せば、1瞬呆気に取られたような顔をしたナミが笑う。

 その笑顔にクルーは顔を見合せて笑うが、同時に自分達の口に物が詰まってたり、パンを咥えてたりするそれに噴き出しそうになる。何とも平和な事だ。

 皆が無言のまま動いていると、ナミとベックの声が妙に響く。仲良さげに話してるそれは、本当に兄妹か何かなのではないかと思わされる程だ。

 それから間もなくして嵐を抜けた俺達は、想定外の進路を進んだ影響で知らない島に到着した。そこを調べに行く奴らは、ナミが1人で歩いて平気そうかを見て来ると言っていて、全員何だかんだとナミに甘いのだと思い知らされる。

 当人は呑気なもので地図はまだ描けないならと、今通って来た所の海図描いてくると部屋に戻り、ルーが甲斐甲斐しくも果物と飲み物、それにサンドイッチを加えて持って行った。……そういや、ナミはまだ朝食食ってなかったもんな。

 その後報告を受けたりしてから、ナミは支度を整えて測量して来ると笑顔で船を降りるから、気を付けろよとそれを見送る。だがまさか、その直後にそれを後悔するなんて俺達は誰一人として想像もしていなかったのだ。

 暫くして森の1部が騒がしいと思って顔を上げた俺に、獣と戦ってんのかななんて声が聞こえて来て、それもあるかと納得し……そして、その後空を飛ぶ人影を見て全員同時に立ち上がった。見間違える筈もない。

 ナミが、空飛ぶ人間の腕の中でぐったりしているのだから。よく見てみれば、空飛ぶ人間は天夜叉で……。

 そうだ、ナミにこれ迄に手を出してるのはひとりじゃねェ……!!

 どうして確証を得て置かなかったのか。どうして、ナミが降りる前に他の人間が本当に居ないのかを見聞色の覇気で確認して置かなかったのか!と、自分に問い掛けても過去は変えられない。

 

 「総員!!臨戦態勢に入れ!!……俺達の〝至宝〟であり〝逆鱗〟に手を出した意味を、思い知らせるぞ!!俺達の宝を……取り戻せ!!」

 

 谺響するクルー達の鬨の声。総員、目指すはナミの奪還のみである。

 そうして船を迷い無くドレスローザへ向けて動かせば、その途中は荒れ狂うクルー達の中でひんやりとした食う気を醸し出すヤソップ、ルー、ベックに囲まれながらの作戦会議が始まる。その時、ヤソップが言った。

 

 「……ナミ、攫われる時にな、お頭と副船長を呼んだんだぜ」

 「聞こえたのか?」

 「見聞色の覇気があるからな。……助けてって、ナミが言ってた」

 

 ヤソップのそれにルーが問かければ、ヤソップは頷きながらそう付け加えた。それは俺とベックに油を注いだのと同じ事で、怒りも悲しみも憤りも、全てが1周回って冷静になったのを自覚する。

 冷静になり、だからこそ残虐な未来を望む自分がいる。国民が生き地獄に落ちれば、少しは己の過ちを理解出来るだろう。

 

 「……滅ぼしてやらないとな」

 「いや……今回はナミさえ救出出来ればいい」

 「ベック?」

 「滅ぼしてる間に、ナミを喪うリスクが高い。……体格差を考えろ。そして、ナミの性格を。早くしなけりゃ……壊れるか死ぬぞ」

 

 その言葉で女海賊が捕まった時の末路を思う。そんなもの、この世界じゃ決まりきっている。

 国民を嬲ったり、犯したり、奴隷へと堕としたりするのは……それ等が全て落ち着いてからにするべきだろう。そんな事よりも、生きているナミを無事に保護するのが優先だ。

 目を閉じなくても思い出せる程に、鮮明なナミ。甘やかに俺を包み、妖艶に俺を誘い、甘えたように笑うナミだが……それは、俺が相手だからだ。

 ナミが敵に、そんな態度を取る事は無いだろう。抵抗して、気丈にも立ち向かい……無理矢理……それでも屈する事なく、睨み付けるナミが見えるようだ。

 そうなれば、確かに危険だ。支配欲を刺激されるのは間違いない上に、ナミは感度が良い。

 ……早くしなけりゃ、狂う危険性も高いな。何があっても、ナミは自我を保つ限り屈しないだろうから、生きている内に助け出すのが重要課題だ。

 

 「早くしないと、ナミは自殺しかねねェよな。お頭に操立ててさ」

 

 そんな言葉に振り向けば、比較的ナミと仲の良いクルーが心配そうに呟いただけだと気付き、そしてそれは確かにと全員をハッとさせた。それにナミには、故郷と言う最大の弱点もある……。

 相手は〝悪のカリスマ〟だ。ナミを手に入れようと決めたなら、弱点をついて脅迫して……辱めて貶めるのは容易い事だろう。

 

 「ナミの故郷に、赤髪海賊団の電伝虫を送っておけ」

 

 それに幹部は笑って頷き、知らない奴らは首を傾げる。これは緊急時に、どれ程相手と離れていても俺達に助けを求められると同時に、途中にある海軍基地にそれが筒抜けになるシロモノだ。

 つまり、近くの海軍が助けに行かない場合は俺達が歴史に残るような暴れ方をする危険性が高いと言う話だ。だからこそ、海軍が〝赤髪海賊団に助けを求めた者達を助ける〟しか無くなるというもの。

 東の海で俺達が暴れればどうなるかを考えたら、確実な守りと言えるだろう。相手が誰であれ、そうなれば攻撃するなんて事は許されない。

 特に今回の相手は、単なる島民だ。民間人を見殺しにしたなんて事になれば世界政府の立場が危うくなる。

 こうして後方の憂いを断ち切り、俺達はナミを奪い返す為に動き出す。ナミも今、戦っている筈だと信じて。

 早まるなよと、ナミに祈るように願いながら俺達は突き進んで行く。俺達の傘下と呼べる海賊達を全て召集して、大頭の女を奪い返せとなったのは誰の指示だったのか。

 その過程でナミが宝玉であり、昔から赤髪の女神だったと知った傘下達の暴れっぷりは筆舌に尽くし難い。俺達自身の暴れっぷりについては、言うまでもないがな。

 

 「おいおい……人の国に突然押し入って……随分だな?」

 「人の女を奪ったんだ。この程度、覚悟の上だろ」

 「……今はもう、俺の女だ」

 

 突然現れた天夜叉との会話。それにより始まった戦いに、水を差すような阿呆は居ない。

 巻き込まれれば終わるのも、俺にも天夜叉にも余裕なんてものが存在しないのも、何よりもどちらも情け容赦無く本気である事まで皆が知っているのだから。そんな中で、煽る為か誇示する為か、ナミを可愛がってやったのだと、自ら求めて腰を振っていたのだと教えて来る天夜叉に……殺意しかわかない。

 それを否定する材料は無く、だが、ナミがそれをしたとしても俺だけを愛している事は疑いようもない事実。ナミは、そういう女だ。

 演じる事も、騙す事も、慣れきっている。その本質はただの、甘く優しい幼さを残す女でしかないと言うのに。

 だからこそ、心で泣くんだ。本当に甘えられる相手の他は涙を見せる事も出来ない不器用で幼い女だからこそ。

 ……さて、返して貰おうか。俺の、最愛の女を。

 甘やかな笑顔を取り戻そうと、俺達は軍隊よりも揃った動きで敵に向かう。後に嫁取り戦争と呼ばれる事となった四皇の1角と七武海の全面戦争は、こうして始まった。

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