※この作品はR-18です。

助けIFシリーズ   作:夢枕 七変化

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ピアスホール

 ノジコから貰ったイヤリングとシャンクスから貰ったイヤリング、そして、ネックレスを眺めて……身に付けていたいけど壊したら嫌だななんて思う。当然、落としたくも無いし。

 とりあえずネックレスだけいつものそれに加える形で身に付けるけど、イヤリングはどうにもならない。イヤリングだから落とすならピアス……って言っても、穴が無いのよね……。

 ……よし、ピアスホールを開けて貰おう!そう思って私はベックの元へと向かった。

 

 「ベックー!」

 「どうした?」

 「ベックにお願いがあるの!」

 

 私が近付くと煙草を口元から離して、その火を消してくれるのはもう無意識なんだろうか。抱き着いた私を軽々と受け止めて、優しく頭を撫でてくれながら珍しいななんて言う。

 

 「あのね、ピアスホール開けて欲しいの」

 「……船医に言え。と、普通なら言う所だが、良いぞ。それくらいなら」

 「ありがとう!」

 「……お頭に言うんじゃなくて良かったのか?」

 

 ベックの言葉に、私は辺りを確認してから返事をする。いや、だってほら、ね?

 

 「シャンクスが嫌がらなかったら、シャンクスのピアスホールも開けて欲しいのよ。その、イヤリングだと落としそうで……」

 「あァ……成程な。だがお頭を傷付けられないお前は俺を頼った訳か」

 「うん、ベックなら優しいから、痛くしないかなって思ったし……」

 

 その瞬間ベックが妙に色気のある顔で私を抱き締めて、私の耳にその指先で触れて来る。なんだろうと思った時フッと笑ったベックが口を開いた。

 

 「痛くはしねェさ。ナミから誘われたんだ、優しくしてやる」

 「待てコラ!何の話だ!?」

 

 焦りと怒りを隠さずに姿を見せたシャンクスに、どうしたの?と首を傾げたらベックが言う。

 

 「ナミを傷物にする話だが……どうかしたか?」

 「ベック、お前、傷物って……!」

 「シャンクス?ベック?どうしたの?」

 

 意味が分からなくて首を傾げたら、ベックが耐えられないとばかりに私を解放して頭を撫でながら笑い出した。いかにも大爆笑なベックに、珍しいわねと眺めていたら、シャンクスが何かに気付いた様子でベックに掴みかかる。

 

 「俺で遊ぶなって何度言えば覚えるんだよ!?」

 「クッ……!お頭、待て、笑いが止まらねェ……クハッ」

 「ベック……てめェ……!」

 

 ……とりあえず、2人は今日も仲良しです。まる。

 そんな訳で2人が楽しそうにしてるので、私はその様子を上から眺めて爆笑してるヤソップに手を振って見る。それに手を振り返しながら、ヤソップは楽しげに言う。

 

 「お頭ー!余裕少しは持てよ!ナミが浮気とかする筈ねェんだから!」

 「だー!優しいから痛くしないとか、誘われたから優しくするとか言ってたら、普通になんだと思うだろうが!!」

 「普通ならな。だけどよ、相手はナミだぜお頭。疑うだけ時間の無駄だろ」

 

 そうして船内が笑いの渦に包まれ、その後ベックにわざと勘違いさせて遊んだだけだから気にするなと言われたけど……何を勘違いさせたの?

 その時シャンクスに背後から抱き締められて、温かいななんて思ってそのまま私からも擦り寄ればシャンクスの機嫌が治ったので、とりあえず良かったと思う。その時視界の端でベックがそのまま動くなと指示しながら、ピアッサーを持って近付いてきたので、大人しくする事にした。

 

 「シャンクス、あのね」

 「ん?」

 

 その瞬間ベックがシャンクスを背後から抑え込み耳に氷を当てればシャンクスが何しやがると叫び、その直後ガッシャンと穴を開けた。でも、冷やす時間短くない?

 それ、冷やした意味ある?

 

 「……っ!痛てェな!何すんだよ!?」

 「耳に穴を開けたんだが、分からないのか。鈍いなお頭」

 「説明が足りねェよ!」

 「痛いのが嫌なら冷たいのを我慢してください。よろしいですね、お頭」

 「気色悪ィ喋り方すんなって、うわっ冷て!」

 

 そんな楽しげな様子の中でも、シャンクスは私を離さないから手持ちの消毒液をガーゼに染み込ませて、そっと血の流れてるそれに押し当てる。それに対してシャンクスは身悶えるけど、シャンクスが感染症とかになるのも嫌だし……私が頼んだ事だし。

 

 「ぐはっ!ナミまで!」

 「ほら、耳が腐ると困るから」

 「腐るとか言うな!化膿って言え!」

 「同じ事じゃない」

 

 私達のやり取りを見聞きしていたルーが、お頭ーと呼んだと思うと、イヤリング回収しとくぞなんて言って、私とシャンクスのそれを回収して行く。シャンクスはそれに待てお前ら、俺にしっかり説明しやがれと騒ぐけど……まぁ、いつも説明なしで色々やらかすシャンクスにそれを怒る権利は無いわよね。

 最低でも10年は共に過ごして来た仲間だからか、こんな光景は実は珍しくもない。でも、本当に仲良しよね。

 

 「ナミ、お前その微笑ましそうに俺を見るの辞めないか?俺の方が倍生きてるって分かってるか?」

 「大丈夫、年齢と人生経験ってイコールじゃ無いから」

 「どういう意味だそれ!?」

 

 シャンクスが騒いだタイミングでもう片方も耳にも穴を開けられて、シャンクスはそれにまたもや文句を言うけど……シャンクスって結構痛みに強いのかな。先に開けられた方って、冷やした時間足りないから結構痛い筈なんだけど。

 

 「ナミ」

 「なぁに?」

 

 ベックに呼ばれて視線を向けると、ベックが優しく頭を撫でてくれた。ベックの中で、私は幼いままなのだろうとこんな時に思う。

 

 「冷やすから大人しくしてろよ」

 「はぁい」

 「ベック、俺にもそれくらい優しくてもいいんじゃねェの?俺、船長なんだぜ?なァ、ベック聞いてるかァ?」

 

 シャンクスの言葉にベックは何かを囁き、それから普段と同じで頼むとシャンクスに言わせた。……ねぇ、何を言ったの?

 ベックの指が耳に触れると、緊張してるのもあってビクリと体が揺れる。それを見ていたシャンクスが、確かに先に言わないと不味いななんて言う。

 

 「ナミは敏感だからな。……ナミ、じっとしてろよ」

 「うん。……ベック、痛く……しないでね」

 「善処する」

 「だからなんで、いちいち言い方が卑猥なんだよお前ら」

 

 耳に氷が当てられてそれにビクッと震えると、シャンクスが私の顔を見て強く抱き締めてきた。それにどうしたのかと思っていたら、唸るようにその顔他に見せんななんて言う。

 ……でも、怖いんだもん。拷問受ける方が、まだ怖くないわ。

 相手が敵だと思えばこそ、強気に出られるし声だって反応だって全力で抑えられるけど……大切な人に演技なんて出来ないもの。……痛いの怖い。

 特に耳元でガッシャンって言うのが分かってたら、身も竦むというのもので……。怖いよー!

 

 「ナミ、お前本当に可愛いな」

 「シャンクス、怯えてる彼女を可愛いとか、それ単なる変態発言だと思うけど!?」

 「ナミ……感覚はあるか?」

 

 言われて初めて触れられてると気付いて、感覚無いみたいと答えるとベックが頷いた。当然その為にはベックの方を向いてる訳で、シャンクスは不愉快そうにしている。

 

 「ナミ、痛かったら言えよ」

 「んっ!」

 「……本当に、お前らわざとじゃねェの?その会話」

 

 シャンクスの言葉の直後にガシャンと音がなり、そっと金具が離れて行く。その直後にベックがガーゼ等で治療してくれて、少しそのままにしておけよなんて言われるから、素直に頷いた。

 

 「俺はわざとに決まってるだろ」

 「ベック、お前……」

 「お頭の反応が楽し過ぎるのが悪ィ」

 「……の、野郎!」

 「ほら、ナミが怯えた顔するのを隠してやれ」

 「うがァァ!」

 

 シャンクスがベックに遊ばれてるわ。ベックって、シャンクスで遊ぶの好きよね。

 そんな事を考えてボーッとしていたから、ベックの指が耳に触れた瞬間小さく声が出てしまい……赤くなるのが自分でわかった。そんな私にシャンクスはコラと言うけど、仕方ないじゃない!

 

 「……そう言う声は、俺にだけ聞かせろ」

 「し、仕方ないじゃない。甲板なんだし……」

 「ナミ、優しくしてやるから抵抗せずに大人しくしてろ」

 

 ベックの言葉にはいと返事をしたら、シャンクスがベックに覚えとけよなんて唸る。何がどうしたと言うのか。

 両耳にピアスホールを開けてもらった私とシャンクスは、明日にはピアス付けていいぞなんて言われた。なのでそれにお礼を言ったら、シャンクスがなんだって突然こんな事にと聞いてきたけど……あれ?

 

 「まさか、本当に誰も何も説明してなかったの?」

 「何時もやられてるんだから、たまにはやり返してもいいだろ。……お頭、説明されないと困るもんだろ?」

 「お前ら、俺をガキ扱いすんな!」

 

 本当に、ここの人達は暖かい。そう思って笑えば、皆も笑ってくれた。

 その時ルーがほらよって言いながらイヤリングをピアスに直したそれを渡してくれて、それによりシャンクスも理解したらしい。返されたピアスを手に優しく笑うとシャンクスは皆にありがとうと言うから、皆もまたそれに笑う。

 

 「俺とお揃いで付けたかったんだな、ナミは」

 「うん。落としたく無かったの。我儘で、ごめんね」

 「本当に可愛い奴だよ、お前は」

 

 そう言ってシャンクスが皆がいるのに当然のようにキスして来るから、真っ赤になって抵抗したけど辞めては貰えない。シャンクスは皆に遊ばれてるのでは無くて、本当は遊ばれてくれてるのだと知っている。

 シャンクスは強いから、優しい。そして、優しいから、脆い。

 私は残酷な顔で笑うシャンクスも、意地の悪いシャンクスも知っていて、それでもどうしたってどんな姿のシャンクスも愛しいと思う。僅かに離れた唇の隙間で、そっと囁く。

 

 「シャンクス、続きは2人の時にして……恥ずかしいからお願い」

 「なら、2人になるか」

 

 そう言って抱き上げるシャンクスを誰も止めないから、私は多分、明日まで誰にも会えないだろうと覚悟する。まさかその直後にサイクロンが襲って来て、私がシャンクスを蹴り飛ばしてとりあえず近くにあったシャンクスのコートを羽織って表に飛び出すなんて事は、誰にも想像は出来ていなかった。

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