~?side~
「アザゼル、明日の会談に俺も出席しなければダメかい?」
「当然だ、ヴァーリ。お前は白龍皇だからな」
「……兵藤一誠と戦いたいものだ」
「……奴は相当強いからな。俺といるとき、全く隙なんてなかった。お前でも厳しいぞ」
「いいさ。それでこそ挑みがいがある。」
~兵藤一誠side~
朱乃とセックスしてから、俺は早朝からギャスパーの時間停止の修業をしていた。二十回に一度は成功するようになってきている。止める対象のボールではなく、俺の腕を停止させてしまいべそかいたりもするけど、仲間として上手く支えられているだろう。しかし……
「──さて、行くわよ」
ついにこの日が来た。今日は三大勢力の会談の日。会場は駒王学園の新校舎にある職員会議室。今日は休日で時間帯は深夜。すでに各陣営のトップたちは新校舎の休憩室で待機している。
この学園全体が強力な結界に囲まれ、誰もなかへ入れなくなっていた。もちろん、会談が終わるまで外には出られない。
結界の外には天使、堕天使、悪魔の軍勢が囲んでいる。
一触即発か。
ギャスパーは
「ギャスパー、携帯ゲーム機とお菓子あるからな。紙袋も寂しくなったら存分にかぶっていいよ」
「は、はいぃぃぃ!」
「イッセーくん、やっぱり面倒見いいよね」
「大切な後輩だしね」
さて、どこまでやれるか。
コンコン、リアスが会議室の扉をノックする。
「失礼します」
リアスが扉を開くと、そこには特別に用意された豪華絢爛そうなテーブル。それを囲むように見知った人たちが座っている。空気は静寂、全員真剣な面持ちである。アーシアが不安そうに俺の服の端をつかむので、安心させるよう俺は彼女の手を軽く握ってやる。
悪魔側はサーゼクスさまとセラフォルーさま。給仕係でグレイフィアさんがいる。
天使側、金色の羽のミカエルさんと知らない女天使さん。普通の天使はやはり白い羽か。
堕天使側、十二枚の黒い翼を生やしたアザゼルと──「
俺を視線に捉えたアザゼルは口の端を愉快そうにあげる。今日は浴衣ではなく凝った装飾の黒ローブか。
サーゼクスさまとセラフォルーさまも装飾が施された衣装に身を包んでいる。
「私の妹とその眷属だ」
サーゼクスさまが他の陣営のお偉いさんにリアスを紹介し、リアスも会釈する。
「先日のコカビエル襲撃で彼女たちが活躍してくれた」
「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」
ミカエルさんがリアスへ礼を言う。リアスは冷静に振る舞い、再度会釈する。
「悪かったな。俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」
……あまり悪びれてなさそうだな。その態度どうなの?
リアスも口元をひくつかせる。
「そこの席に座りなさい」
サーゼクスさまの指示を受け、グレイフィアさんが俺たちを壁側に設置された椅子に促してくれる。その席にはソーナ会長、その横に椿姫さんがすでに座っていた。
会長の隣にリアスが座ってその横に俺を座らせる。後は朱乃、木場、アーシア、ゼノヴィア、小猫ちゃんと続いて座る。それを確認してサーゼクスさまが言う。
「全員が揃ったところで、会談の前提条件をひとつ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」
……む?会長たちもご存じなのか?──と視線を送ると、特に驚いた様子もない。事前にリアスかセラフォルーさまから知らされたか?普段通りのグレイフィアさんも知っていたご様子。
「では、それを認知しているとして話を進める」
三大勢力の会談が始まった──。
会談は順調に進んでいる。
ミカエルさんやサーゼクスさまが発言し、アザゼルの一言で場が凍り付くという感じだ。総督さん……。
隣のリアスを見ると、どうも緊張していたので手を握る。それに気づくとリアスは苦笑して俺の手を握り返す。
(あらあら、部長とイッセーさまは会談中でもラブラブですわね)
朱乃は頬笑みながら小声でそう言う。
(イッセーの手から勇気をもらっているのよ。やっぱり、これが一番効果あるわね)
(それはよかった。リアス、愛してるよ)
(ええ、私も愛してるわ。イッセー)
会談は続いてリアスの出番となる。
「さて、リアス。そろそろ、先日の事件について話してもらおうかな」
「はい、ルシファーさま」
サーゼクスさまに促され、リアスと会長、朱乃と椿姫さんが立ち上がり、この間のコカビエル戦での一部始終を話し始めた。それに聞き入る三大勢力の面々。
リアスは冷静に淡々と自分が体験した事件の概要を話していた。その手は極度の緊張からか、やはり少しだけ震えていた。大丈夫だよ、リアス。自信を持って。
報告を受けた各陣営トップはため息を吐く者、顔をしかめる者、笑う者──と反応は個々に違った。
「──以上が、私、リアス・グレモリーとその眷属悪魔が関与した事件の報告です」
「私、ソーナ・シトリーも彼女の報告に偽りがないことを証言します」
「ご苦労、座ってくれたまえ」
──お疲れさま、リアス。
「ありがとう、リアスちゃん、ソーナちゃん☆」
セラフォルーさまもウインクをリアスと会長に送る。
「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
全員の視線がアザゼルに集中する。
アザゼルは不敵な笑みを浮かべて話し始めた。
「先日の事件は我が堕天使中枢組織『
ミカエルさんが嘆息しながら言う。
「説明としては最低の部類ですが──あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」
「ああ、俺は戦争に興味なんてない。コカビエルも俺のことをこきおろしていたと、そちらの報告でもあったじゃないか」
………まあ、確かに戦っている最中そんなことを言っていたが。戦争に消極的で、
今度はサーゼクスさまがアザゼルに訊く。
「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、どうしてここ数十年
「そう、いつまでたってもあなたは戦争をしかけてはこなかった。『
二人の意見を聞いてアザゼルは苦笑する。
「
「それはそうだ」
「そうですね」
「その通りね☆」
──ずいぶんとまあ………。
「チッ。神や先代ルシファーよりもマシかと思ったが、おまえらもおまえらで面倒くさい奴らだ。こそこそと研究するのもこれ以上性に合わねぇか。あー、わかったよ。──なら、和平を結ぼうぜ。もともとそのつもりもあったんだろう?天使も悪魔もよ?」
──おやおや、歴史的瞬間かな?
アザゼルの一言に驚いていたミカエルさんが微笑む。
「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかけるつもりでした。このままこれ以上三すくみの関係を続けていても、今の世界の害となる。天使の長である私が言うのも何ですが──戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」
「ハッ!あの堅物ミカエルさまが言うようになったね。あれほど神、神、神さまだったのにな」
「失ったものは大きい。けれど、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。人間たちを導くのが、我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番大事なことだと、私たちセラフのメンバーの意見も一致しています」
「おいおい、いまの発言は『堕ちる』ぜ?──と思ったが、『システム』はお前が受け継いだんだったな。いい世界になったもんだ。俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」
「我らも同じだ。魔王がなくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。──次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」
「そう、次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。そして、人間界にも影響を大きく及ぼし、世界は終わる。俺らは戦争をもう起こせない」
一転して真剣な面持ちとなるアザゼル。
「神がいない世界は間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃなかった。俺もおまえたちもいまこうやって元気に生きている。──神がいなくても世界は回るのさ」
その後、いろいろと話をしていった後──。
「──と、こんなところだろうか?」
サーゼクスさまの一言で、お偉い方々が大きく息を吐いていた。一通りの重要話は終わったか。
ミカエルさんが俺の方へ視線を向ける。
「さて、話し合いもだいぶ良い方向へ片付いてきましたし、そろそろ赤龍帝殿のお話を聞いてもよろしいかな」
………ふむ。
「アーシア。アーシアのことをミカエルさんに訊いてもいいかな?」
アーシアは驚いていたが微笑んで了承してくれた。
「………では。アーシアをどうして追放したか、今一度訊いても?」
「……それに関しては申し訳ないとしか言えません。……神が消滅したあと、加護と慈悲と奇跡を司る『システム』だけが残りました。この『システム』とは、簡単に説明すると、神がおこなっていた奇跡などを起こすためのもの。神は『システム』を作り、これを用いて地上に奇跡をもたらしていました。悪魔祓い、十字架などの聖具へもたらす効果、これらも『システム』の力です」
なるほど、つまり──。
「神がいなくなって、その『システム』に不都合が起こった……ということですね?」
ミカエルさんがうなずく。
「正直、『システム』を神以外が扱うのは困難を極めます。私を中心に『
コカビエルも似たようなことを言っていたな。
「そのため、『システム』に影響を及ぼす可能性のあるものを、教会に関するところから遠ざける必要があったのです。影響を及ぼすものの例としては、一部の神器──これはアーシア・アルジェントの持つ『
「アーシアの神器がダメなのは、悪魔や堕天使も回復できてしまうからですか?」
「はい、信徒のなかに『悪魔と堕天使を回復できる神器』を持つ者がいれば、周囲の信仰に影響が出ます。信者の信仰は我らが天界に住む者の源。そのため、『
「神の不在を知る者──ですね?」
ミカエルさんの言葉を遮って、ゼノヴィアが続けた。
ミカエルさんがそれを肯定し、アーシアとゼノヴィアに頭を下げた!アーシアとゼノヴィアもそれを受け入れた。今の暮らしが楽しいと。……やはり二人とも、とても優しい子だな。デュランダルはゼノヴィアに任せるということになった。
そのあと、アザゼルが部下だったドーナシークがアーシアを庇ったレイナーレたちごと命を奪おうとした辺りの話をした。アザゼルは今更謝っても後の祭りだろう、と俺にしかできないことでおまえたちを満足させようと思うと言う。レイナーレたちは今は俺たちと楽しく暮らしているが。朝には目覚めのキスされてたり。
「チュッ♡チュッ♡お目覚め?イッセーくん(さま)♡」ってな感じに。
「さて、そろそろ俺たち以外に、世界に影響及ぼしそうな奴らへ意見を訊こうか。無敵のドラゴンさまにな。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」
アザゼルの問いかけに白龍皇ヴァーリは笑む。
「俺は強い奴と戦えればいいさ」
……どうにも、トラブル起こしそうだな。
「じゃあ、赤龍帝、お前はどうだ?」
「……好いた女や大切な人たち、仲間と楽しくやれればいいさ。邪魔な奴はただ倒す。それだけだ」
「なるほど、確かにそりゃいいな。種の存続と繁栄。そのための子作り。和平を結べば戦争する必要もなくなるからな」
…ちなみにリアスやアーシアは顔を赤くしている。
サーゼクスさまは小さく笑っていたが。
──そんな時、周囲の時が停止する。