「冥界へ帰る?」
朝食が終わって自室でゆっくりしていた俺にリアスはうなずいた。俺の部屋にはオカルト研究部メンバー全員プラス黒歌が集合していた。
同居メンバーは皆、ラフな格好をしている。木場と小猫ちゃん、ギャスパーも先ほど俺の家に到着したばかりだ。二人とも普段着。小猫ちゃんのワンピース姿がかわいらしいね。これだけの人数がいても、俺の部屋には余裕のスペースがある。皆、高そうなソファーに座り込んでいた。ギャスパーだけ自前の段ボール箱に入り込んでいたけど……。服装は女物。普段もそれかい?だよね!女装少年だし。
「夏休みだし、故郷へ帰るの。毎年のことなのよ。そういうわけでもうすぐ皆で冥界に行くわ。長期旅行の準備しておいてちょうだいね」
「俺たちも行くの?」
「そうよ。イッセーは私の恋人だし、ほかの皆──黒歌は別だけどイッセーと小猫といたいでしょうし、あなたたちは私の眷属で下僕の悪魔なのだから、主に同伴は当然。一緒に私の故郷へ行くの。そういえばイッセーとアーシア、ゼノヴィアは初めてだったかしら?」
「は、はい!生きているのに冥府に行くなんて緊張します!し、死んだつもりで行きたいと思います!」
アーシア、まったく意味がわからないよ?
「うん。冥界──地獄には前々から興味があったんだ。でも、私は天国に行くため、主に仕えていたわけなのだけれど……。悪魔になった以上は天国に行けるはずもなく……。天罰として地獄に送った者たちと同じ世界に足を踏み入れるとは、皮肉を感じるよ。ふふふふ、地獄か。悪魔になった元信者にはお似合いだね」
……やれやれ。
「ゼノヴィア、気にしすぎることもないよ。もし何かあっても、そばにいる。ゼノヴィアが俺を愛してくれる限り俺もゼノヴィアを愛してるからさ」
「そ、そうか。──うれしいよ。大好きだ、イッセー♡愛している♡」
ゼノヴィアは蕩けた顔になっている。リアスたちは拗ねてるけど。
「……八月の二十日過ぎまで残りの夏休みをあちらで過ごします。こちらに帰ってくるのは八月の終わりになりそうね。修行やそれら諸々の行事を冥界でおこなうから、そのつもりで」
リアスはそう俺たちにスケジュールを申しつけてくれる。夏の終わりまで冥界で過ごすのか。空が紫色なんだよな。死者の魂がたどり着く場所でもあり、管理する領域もあるんだったな。
「そうね、イッセー。冥界で私とデートしましょう。デートをするだけの時間があればいいのだけれど……」
そうだね。
「あらあら、でしたら、私はイッセーさまとお部屋で過ごしますわ。リアスにもできないようなエッチなご奉仕でもしながら。イッセーさま、卑しい朱乃にお慈悲をください。イッセーさまに私の体をお好きなように……♡」
自分の胸の辺りを指でエッチになぞりながら朱乃が言う。……まあ、構わないけどさ。
「俺も冥界に行くぜ」
『っ!?』
声のした方を見ると、席の一角にアザゼル先生が座っていた。俺以外の全員が先生の突然の登場に大なり小なり面食らっていた。俺は入ってきたの気づいてたしね。
リアスや木場あたりも気づかなかった様子。
「ど、どこから入ってきたの?」
「うん?普通に玄関からだぜ?」
平然とアザゼルは答えた。
「……気配すら感じませんでした」
やはり、
「そりゃ修行不足だな。俺は普通に来ただけだ。イッセーは気づいてたようだぞ。それよりも冥界に帰るんだろう?なら、俺も行くぜ。俺はお前らの『先生』だからな」
そう、アザゼルは俺たちの『先生』役を引き受けた。豊富な
「冥界でのスケジュールは……リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。あと、例の新鋭若手悪魔たちの会合。それとあっちでお前らの修行だ。俺は主に修行に付き合うわけだがな。おまえらがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクスたちと会合か。ったく、面倒くさいもんだ」
嘆息する先生。これでも部下からの支持はすごい。
「ではアザゼル──先生はあちらまでは同行するのね?行きの予約をこちらでしておいていいのかしら?」
「ああ、よろしく頼む。悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。楽しみだぜ。いつものは堕天使側のルートだからな」
旅立ちの日。俺たちがまず向かったのは最寄りの駅だった。皆、服装は駒王学園の夏の制服姿。冥界入りするなら、これが一番の正装だとリアスに言われた。黒歌はいつもの和服を着崩した格好をしている。周囲の者の視線がそこまで邪ではないこととかは──必殺、ご都合主義っ!……ハッ!俺は一体何を……。まあ、色々術やら何やらで……。レイナーレたち堕天使三人組はお留守番。
リアスと朱乃は駅に設置されているエレベーターのほうへ向かう。リアスと朱乃が先に入ると言う。
「じゃあ、まずはイッセーとアーシアとゼノヴィア来てちょうだい。先に降りるわ」
降りる、か……そういうことか?
「ほら、目をパチクリしてないで入りなさい」
苦笑しながら手招きするリアスに俺たちは応じる。
「慣れてる祐斗たちはあとからアザゼルと一緒に来てちょうだいね」
「はい、部長」と木場がリアスに言うとエレベーターの扉は閉まる。大きな荷物持ちだから、結構、中は狭い。リアスがスカートのポッケからカードらしきものを取り出すと電子パネルに向ける。
ピッ、と何かの電子音。……カードに反応した。すると──。ガクン、と下へ降りる感覚が。
驚きを隠せないアーシア。ゼノヴィアは反応薄で首を傾けているだけ。リアスと朱乃は俺たちの様子を見てクスクスと小さく笑んでいた。
「この駅の地下にね、秘密の階層があるの」
「悪魔用の場所があるってことか」
「そうよ。悪魔専用のルートで普通の人間は一生たどり着けないわ。こんな風にこの町には悪魔専用の領域が結構隠れているのよ?」
下がること一分ほど。エレベーターが停止して扉が開き、「さあ、どうぞ」とリアスに促されて、一番最初に出た俺の視界に映ったのはとてつもなく広い人工的な空間、地下の大空洞といったところだった。駅のホームのような造りだな。線路もあるし。少し待って、エレベーターから出てきた木場や先生たちと合流する。
「全員そろったところで三番ホームまで歩くわよ」
リアスと朱乃先導のもと、俺たちは歩き出した。黒歌が俺と腕を絡めて歩く。おっぱいがむにゅむにゅと……。しかし、広い空間だな。天井も遥か上だし。
朱乃がいつの間にか俺の隣に来ていて──不意に手を握ってきた。お手々繋いで歩くのかい?俺はその手を握り返して、微笑む。
「──っ」
ただそれだけなのに、朱乃は顔を蕩けさせて喜んでくれる。これでいいのか?
「…………」 「……ぐすっ」
リアスとアーシアの視線が鋭い……。アーシアは涙目だ。そして通路を右に行ったり左に行ったりしたあと、再び開けた空間に出た。眼前には独特のフォルムの列車が。鋭角で悪魔を表す紋様もたくさん刻まれている。グレモリーの紋様にサーゼクスさまの紋様もある。これはつまり──。
「グレモリー家所有の列車よ」
リアスが堂々と答えてくれる。すごいな。その後、リアス先導のもと、俺たちは列車のなかへと足を踏み入れたのだった。
リィィィイイイイィィィン。
発車の汽笛が鳴らされ、列車は動き出す。
俺たちは列車の中央に座ることとなった。
リアスは一番前の車両で、眷属は中央からうしろの車両となるそうだ。細かいしきたりがあるな。黒歌は眷属ではないが同じ車両に乗っている。対面する席で俺とアーシアが一緒に座り、対面席に朱乃とゼノヴィアが座っていた。隣の席には小猫ちゃんと黒歌、木場とギャスパーが座っていた。さらに端っこではアザゼル先生が──すでにお眠りモードだった。
走りだして数分。列車は暗がりの道を進む。
「どれぐらいで着くんだ?」
俺は朱乃に訊く。
「一時間ほどで着きますわ。この列車は次元の壁を正式な方法で通過してたどり着けるようになってますから」
「魔方陣でジャンプしたりもできるんだよな?」
「通常はそれでもいいのですけれど、イッセーくんたち新眷属の悪魔は正式なルートで一度入国しないと違法入国として罰せられるのです。だからイッセーさまたちはちゃんと正式な入国手続きを済ませないといけませんわ」
「つまりこのままいけば大丈夫だと」
「ええ。けれど、主への性的接触で罰せられるかもしれませんわね」
「いや、それはねぇ……」
リアスとはセックスも済ませてイチャイチャしてるからな……いや、しかし……。
ふわっ。思考する俺の膝に朱乃が乗る。顔を近づけて、エロエロな視線を俺に向ける。朱乃は俺の手を取り、
「眷属同士のスキンシップは何ら問題ありませんわ。それに私はイッセーさまの牝ですもの。イッセーさまが望むならどんなご奉仕だってしますわ。こんな風に──」
自分の太ももに誘導してくる。うん、朱乃のおみ足はむにゅっと最高のやわらかみがあっていいね。さらに俺の手を──スカートの中に入れ、股を手に押しつける。
「ああんっ♡イッセーさま♡卑しい朱乃にお慈悲を……♡」
ふむ……俺は朱乃の股に触れた手を動かす。具体的には女陰を愛撫する。
「あんっ♡イッセーさま♡もっと、もっと激しくぅ~♡卑しい朱乃をしつけてぇ~♡」
そんなとき、ガシッ、と横からアーシアの手が伸びてきて、俺の手をつかんでくる。アーシアは口をかわいく「への字」に曲げながらも、涙目で訴えてきた。
「……朱乃さんばかりイッセーさんに構ってもらってずるいです」
「あらあら、アーシアちゃん。私はイッセーさまにご奉仕しているだけですわよ?」
あはは……ふと、向けた視線の先には、窓の方を見ている小猫ちゃん。どうにも、いつもの小猫ちゃんらしくない……。小猫ちゃんの前に座るギャスパーも話しかけづらそうだ。黒歌は小猫ちゃんを見て何やら考えている様子。と、そこへ──。
「よく言ったわ、アーシア。だいたい、主と下僕のスキンシップはごく自然なことよ。そもそも、私はイッセーの恋人よ?イッセーとエッチなことをするのは当然よ」
声のした方に視線を向ければ、紅いオーラを全身から放っているリアスが!というかどうしてここに?俺は朱乃のスカートのなかに入っている手を離そうとすると──朱乃は俺の手を口元に持っていく!
ぬちゅ。んちゅっ、ちゅっ。ちゅぅぅっ。
俺の中指と人差し指が水音を立てて、朱乃の口のなかへイン。温かくてぬるっとしてて、舌先で指を絡め取られる。さらに吸引。いろいろ吸い取られていくようだ。
朱乃は指を口から抜きだすと、唾液の糸をエロいくらい俺へ見せつける。
「私はイッセーさまの牝ですわ」
挑戦的な視線で朱乃はリアスへ微笑む。ええい!
「リアス、今度たっぷりイチャイチャしよう!だから怒らないでくれ。笑顔のリアスの方が好きだよ。愛してる!」
そう言うとリアスは怒りをしずめてくれた。
「も、もう。……私も愛してるわ、イッセー♡」
よし!と、そんなとき──。
「リアス姫。下僕とのコミュニケーションもよろしいですが、例の手続きはよろしいですかな?」
第三者がひょっこりと現れた。初老の男性で車掌姿をしている。いや、車掌さんか。
「ゴ、ゴメンなさい……」
「ホッホッホッ。あの小さな姫が男女の話とは。長生きはするものですな」
男性の楽しそうな笑いにリアスは顔を真っ赤にしていた。男性は改めて帽子を取ると、俺たちに頭を下げてくる。
「初めまして、姫の新たな眷属悪魔の皆さん。私はこのグレモリー専用列車の車掌をしているレイナルドと申します。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ初めまして。リアス・グレモリーさまの『
「アーシア・アルジェントです!『
「ゼノヴィアです。『
丁寧なあいさつに俺たちも立ち上がり、一礼して新人悪魔全員があいさつをした。朱乃もいつの間にか元の席に戻っていた。とても名残惜しそうだ。朱乃のエロ奉仕は凄まじい。時折乙女なところも見せてくれるし。まあ、結構Mだけど。あいさつを済ませると車掌さん──レイナルドさんは特殊な機器を取り出し、モニターらしきもので俺たちを捉える。
「それ、何ですか?」と俺がレイナルドさんに訊く。アーシアとゼノヴィアが反応に困っているしね。リアスと朱乃はこれがなにか知っている様子。
「これはあなた方を確認、照合する悪魔世界の機械です。この列車は正式に冥界へ入国する重要かつ厳重を要する移動手段です。もし、偽りがあった場合、大変なことになりますもので。いまのご時世、列車を占拠されたら大変なのです」
ふむ、なるほど。と、リアスが頬笑みながら告げる。
「あなたたちの登録は駒を与え、転生したとき冥界にデータとして記載されたわ。だからそれをその機械で照合させるのよ。問題ないわ。皆、本物だから」
そして「ピコーン」という軽快な音が鳴って、俺たちの照合はパスされた。黒歌の照合も問題なく済む。
「姫、これで照合と同時にニューフェイスの皆さんの入国手続きも済みました。あとは到着予定の駅までごゆるりとお休みできますぞ。寝台車両やお食事を取れるところもありますので目的地までご利用ください」
レイナルドさんはニッコリと微笑む。入国も済んだか。
「ありがとう、レイナルド。あとはアザゼルかしら?」
リアスが先生のほうに視線を向けるが先生はぐっすり眠りこけていた。
「……よくもまあ、ついこの間まで敵対していた種族の移動列車で眠れるものね」
リアスは呆れ顔だったけど、少し笑ってた。
「ホッホッホッ。堕天使の総督さまは平和ですな」
レイナルドさんも愉快そうに笑ってる。先生が寝ている間に照合も済み、全員無事入国手続きを済ませたのだった。
発車から四十分ほど過ぎた頃、トランプをしたり、イチャイチャしたりして時間を潰していた俺たちにアナウンスが聞こえてくる。
『もうすぐ次元の壁を突破します。もうすぐ次元の壁を突破します』とレイナルドさんの声が。
「外を見ていてごらんなさい」と、リアスは俺やアーシア、ゼノヴィアに言う。本来、上級悪魔で主たるリアスは前方の車両がいなきゃダメらしいが、独りでは寂しいというか、俺と一緒にいたいとのことで俺たちの車両で過ごしていた。俺はリアスに言われるまま、アーシアと一緒に窓の外を見ていた。すると──。
景色が暗がり一色から変わり、風景が出現する。おお、紫色の空!それに山、木もあった。隣のアーシアは「すごいすごいです!」と興奮気味だった。
「もう窓を開けてもいいわよ」
リアスの許しも出て俺は窓を上げた。ぬるりとした感触というか、独特のものを感じる風が入り込んでくる。でも外はちょうどいい気温だ。窓から顔を出し後方を見ると、黒い穴らしきものから列車が出てきたようだった。あれが次元の壁?というかトンネル?まあ、それはいい。席から冥界の風景を見る。山もあって、川もあり、木々も生い茂り、森も存在していた。独特の形の家もあったけど、悪魔が住んでいるのか?
「ここはすでにグレモリー領よ」とリアスが自慢気に口にする。
「では、いま走ってるこの線路も含めて全部リアスの家の土地か?」という俺の問いにリアスはうなずいた。なかなかだな。
「グレモリーの領土はどれぐらいなんだ?」と質問する。木場が席の上からひょっこり顔を出して答えてくる。
「確か、日本でいうところの本州ぐらいだったかな?」
……本州か。本当にすごいな。リアスの話では冥界は人間界──地球と同程度の面積があるけど、人間界ほど人口はなく、悪魔と堕天使、それ以外の種族を含めてもそれほど多くもないし、海もないから、さらに土地が広いそうだ。リアスは実際、『お姫さま』なわけだ。
「本州ぐらいといってもほとんど手つかずなのよ?ほぼ森林と山ばかりよ」
ちなみに、隣のアーシアは「????」状態でゼノヴィアにいたってはその辺を考えるのを止めたのか、木場と冥界の刀剣について話し始めたぐらいだよ。リアスは何かを思い出したのか、ポンと手を叩く。
「そうだわ。イッセー、アーシア、ゼノヴィア。あとであなたたちに領土の一部を与えるから、欲しいところを言ってちょうだいね」
「領土、もらえるのか?」
「あなたたちは次期当主の眷属悪魔ですもの。イッセーは……将来、結婚したら夫になるから当然として……とにかく!グレモリー眷属として領土に住むことが許されるわ。朱乃や祐斗、小猫、ギャスパーだって自分の敷地を領土内に持っているのよ」
リアスは結婚のあたりで顔を赤くしたあと、魔力で「ポン!」と宙に地図を出現させると俺たちに広げて見せてくれる。グレモリー領の地図らしいね。リアスはニッコリ微笑んで言った。
「赤いところはすでに手が入っている土地だからダメだけれど、それ以外のところはOKよ。さあ、好きな土地を指でさしてちょうだい。あなたたちにあげるわ」
父さん母さん。俺、今世でも土地を手にいれたよ……。
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