庭に出るとタンニーンさんと同じサイズのドラゴンがタンニーンさん含めて十体ほどいる。
「約束通り来たぞ、兵藤一誠」
「ありがとう、タンニーンさん」
「お前たちが背に乗っている間、特殊な結界を背中に発生させる。それで空中でも髪や衣装やらが乱れないだろう。女はその辺大事だからな」
それはありがたい。
「ありがとう、タンニーン。会場まで頼むわ。シトリーの者もいるのだけれど、大丈夫かしら?」
リアスが聞くとタンニーンさんは大丈夫だと答えた。
かくして俺たちはドラゴンの背に乗り、冥界の大空へ飛びだした。俺はタンニーンのおっさんの頭部に乗っていた。特等席だ。角をつかみ空を見渡す。なかなか絶景だな。
『ドラゴンの上からこの風景を見るとは。なんとも言えん体験だ』
珍しくドライグが苦笑していた。元はドラゴンだからね、ドライグも。
「ハハハハ、それは面白い体験だろう、ドライグ。しかし、力のある強大なドラゴンで現役なのは俺を含めても三匹か。いや、俺は悪魔に転生しているから、元の姿で残っているのはオーフィスとティアマットぐらいだ。残りはやられて封印されたか、隠居したか。玉龍もミドガルズオルムも二度と表に出てこないだろう。そして、ドライグ、アルビオン、ファーブニル、ヴリトラは神器に封じられてしまった。──いつの時代も強いドラゴンは退治される。強いドラゴンは怖い存在だものな」
タンニーンさんは少しだけ寂しげな口調でそう言った。
「そういえば、タンニーンさんはどうして悪魔になったんですか?」
俺の問いかけにタンニーンさんは答えてくれた。
「大きな戦もできなくなったこの時代、レーティングゲームをすれば様々な連中と戦えると思ったことがひとつ。そして、理由にはもうひとつある」
「もうひとつ?」
「……ドラゴンアップルという果物は知っているか? 龍が食べる林檎のことだ」
「いや、初めて聞いたよ。というか、そのままの名前だ」
「とあるドラゴンの種族には、ドラゴンアップルでしか生存できないものもいる。ところが人間界に実っていたそれらは環境の激変により絶滅してしまったのだ。もう、その果実が実るのは冥界しかない。しかしな、ドラゴンは冥界では嫌われ者だ。悪魔にも堕天使にも忌み嫌われている。ただで果実を与えるわけもないだろう? ──だから、俺が悪魔となって、実の生っている地区を丸ごと領土にしたんだよ。上級悪魔以上になれば、魔王から冥界の一部を領土としてちょうだいできる。俺はそこに目をつけたんだ」
「では、食べ物に困っていたそのドラゴンの種族はタンニーンさんの領土に住んでいるのか?」
「ああ、おかげさまでそいつらは絶滅を免れた。それと俺の領土内でそのドラゴンアップルを人口的に実らせる研究もおこなっている。特別な果実だ、研究には時間がかかるだろう。それでもその種族に未来があるのであれば、続けていったほうがいい」
「……タンニーンさんは良いドラゴンだな」
「良いドラゴン? ガハハハハハハハッ! そんな風に言われたのは初めてだ! しかも赤龍帝からの賛辞とは痛み入る! しかしな、兵藤一誠。種族の存続させたいのはどの生き物も同じこと。人間も悪魔もドラゴンも同じなのだ。俺は同じドラゴンを救おうと思ったに過ぎない。それが力を持つドラゴンが力のないドラゴンにできることだ」
「……そうだな。俺は好きな女たちや仲間と平穏に過ごせればいいな。そのために強くなる」
「それは良いことではないか。励めよ、兵藤一誠」
その後、パーティ会場の近くに無事に到着し、タンニーンさんとその眷属の龍は大型悪魔用の待機スペースへ行くということで分かれた。
ちなみにそこから会場のあるホテルまでの移動中のリムジンのなかで部長もソーナ会長に宣戦布告されたそうだ。俺も匙から宣戦布告されたことを話し、眷属皆で真正面から受けて立つ決意を固めた。
「最上階にある大フロアがパーティ会場みたいね。イッセー、各御家の方に声をかけられたら、ちゃんとあいさつするのよ?」
「ああ、それはそうとリアス。今日のパーティは……若手悪魔のために魔王さまが用意されたのかな?」
「それは建前。どうせ私たちが会場入りしても大して盛り上がりもしないわよ。これは毎度恒例なの。どちらかというと、各御家の方々の交流会みたいなものね。私たち次期当主はおまけで、本当はお父さま方のお楽しみパーティみたいなものよ。どうせ、4次会5次会まで近くの施設で予約入れているでしょうし。私たちとは別行動で会場入りしているのがいい証拠。若手より猛者気に集まって、すでにお酒でできあがっているのではないかしら」
リアスは不機嫌そうな顔で愚痴を口にしていた。
エレベーターも到着し、会場の入り口が開かれると、そこはきらびやかな広間に、フロアいっぱいの大勢の悪魔に美味そうな食事の数々、天井には巨大なシャンデリアの空間だった。部長と会長の登場に誰もが注目し、感嘆の息を漏らしていた。リアスはこの手のパーティ……というよりもお父さんたちの行動にうんざりしているんだな。魔王主催とはいえ、社交界とはまた違った気軽なパーティのひとつらしいので、お父さんたちはハメを外せる数少ない催しとして大変楽しみにしているという。なるほど。
『おおっ!』
リアスの登場に誰もが注目し、感嘆の声を漏らしていた。
「リアス姫。ますますお美しくなられて……」
「サーゼクスさまもご自慢でしょうな」
と、リアスに皆見とれている。リアスは盛り上がりもしないって言っていたけど、十分盛り上がってるな。
「ヒィィ…人がいっぱい…」
おどおどしてるけど普通についてきているギャスパー。
さっそく修行の成果が出てるな。
以前ならダンボールに逃げ込んでいただろうに。
後で誉めてあげよう。
「ほら、イッセー、あなたもあいさつ回りするわよ」
「了解」
なんでも伝説のドラゴンが悪魔になったことは有名らしく、あいさつしたいって上級悪魔の方々が大勢いらっしゃったらしい。
そんなわけで俺はリアスに連れられてフロアをぐるりと一周することになった。
「ふう、疲れるね」
あいさつも終え、俺は解放されたわけだが……。
フロアの隅っこに用意された椅子に俺とアーシア、ギャスパーが座っていた。リアスと朱乃は遠くで女性悪魔さん方と談話してる。木場は──女性悪魔の皆さんに囲まれていた。
「イッセー、アーシア、ギャスパー、料理をゲットしてきたぞ、食え」
先ほど席を立ったゼノヴィアが大量の皿を器用に持ってやってきた。皿の上には豪華な料理の数々。
「ありがとう、ゼノヴィア」
「いや、何。これぐらい安いものだ。ほら、アーシアも飲み物ぐらい口をつけたほうがいいぞ」
「ありがとうございます、ゼノヴィアさん……、私、こういうの初めてで、緊張して喉がカラカラでした……」
アーシアはゼノヴィアからグラスに入ったジュースをもらうと、口をつけ始めた。俺はもらった料理に手をつける。……箸も完備なんだな。まあ、転生悪魔がこのなかに俺たち意外にもいるだろうし、各種つまむものは用意するか。
俺が料理に舌鼓を打っていると、人が近づいてきた。
ドレスを着た女の子だった。
「お、お久しぶりですわね、赤龍帝」
「レイヴェル・フェニックスか」
「そうですわ」
そう、リアスの元婚約相手、ライザー・フェニックスの妹。懐かしいな。数ヶ月ぶりか?
「元気そうだな。そういえばお兄さんは元気かな?」
ライザーのことを聞いたら、レイヴェルは盛大にため息をついた。
「……あなたに敗北してから塞ぎ込んでしまいましたわ。負けたこととリアス様をあなたに取られたことがショックだったようです」
リアスから引きこもってるって話は聞いてたけど、本当だったんだな。
「まぁ、才能に頼って調子に乗っていたところもありますから、良い勉強になったはずですわ」
手厳しいね。
兄貴もバッサリ切りますか。
「……容赦ないね。一応、兄貴の眷属なんだろう?」
「それなら問題ありませんわ。今はトレードを済ませて、お母様の眷属ということになってますの。お母様はゲームをしませんから実質フリーの眷属ですわ」
へぇ、今はライザーの眷属じゃないのか。
「と、ところで赤龍帝……」
「そんなに堅くならなくても良いよ。普通に名前で呼んでくれ。皆からは『イッセー』って呼ばれてるし」
「お、お名前で呼んでもよろしいのですか!?」
……なんで、そんなに嬉しそうにしてるんだ?
「コ、コホン。で、ではイッセー様と呼んで差し上げてよ」
「いやいや、『様』は付けなくて良いよ」
「いいえ! これは大事なことなのです!」
「……わかったよ、レイヴェル」
「はうっ!」
……何やら顔が真っ赤になった。
そこへ更に見知ったお姉さんが登場した。
「レイヴェル。旦那様のご友人がお呼びだ」
この人はライザーの『
「わ、分かりましたわ。では、イッセー様、これで失礼します!こ、今度お会いできたら、お茶でもいかがかしら? わ、わわ、私でよろしければ手製のケーキをご用意してあげてもよろしくてよ?」
レイヴェルはドレスの裾をひょいと上げ、一礼すると去っていった。
「あなたはフェニックス家のイザベラさんだよね?」
「ああ。あのときはいい一発をもらった。まだ覚えているよ。また強くなったそうじゃないか。キミが強くなればなるだけ私の話も自慢話になるからな」
「彼女……レイヴェルの付き添いですか?」
「まあ、そんなところだ。あの子はあの子で我が主ライザーさまと同じぐらいつかめないところがあるものだから……。レーティングゲームでの一戦以来、レイヴェルはキミの話ばかりをしているよ。ライザーさまとキミの戦いがとても印象的だったようだ。それでお茶の件だが……」
「ああ、全然構いませんよ。あと、ライザー・フェニックスがずっと立ち直れない状態が続くようであれば、立ち直る手助けをしましょう。俺にも責任があるから」
「本当か? それはありがたい。レイヴェルも喜ぶだろうし、私たちも助かる。さて、私はこれにて失礼する。良い宴を」
そのままイザベラさんは手を振って去っていた。
「……イッセー先輩って、悪魔の人と交友が多いんですね……」
ギャスパーが尊敬の眼差しでそう言う。
そんなに多いかな?
そのあとは魔王さまのあいさつが終わり、華やかなパーティが開催された。
リアスと朱乃は魔王さまのほうへあいさつに行き、初のパーティで疲れている俺たちはリアスたちが戻るまで料理を食べたり休んでいたりした。
と、そんななか、俺はふと感じた感覚の正体を確かめるため、アーシアとゼノヴィアと離れ、パーティ会場を出てエレベーターに乗り込む。すると、リアスも来た。
「どうしたの、イッセー?」
「……ちょっとね。妙なモノを感じたから確かめに行く」
「わかったわ、私も行く」
「了解。けど、よく俺がエレベーター乗り込むのわかったね?」
「当然よ。私はあなたを愛してるのよ?常にあなたのことを見て、あなたとエッチなことをしたいと思っているんだから」
……そうか。嬉しいことを言ってくれる。
これからも応援よろしくお願いいたします。