リアス達と一緒に俺──兵藤一誠が辿り着いたのは最深部にある神殿だった。その内部に入っていくと、前方に巨大な装置らしきものが姿を現す。
壁に埋め込まれた巨大な円形の装置で、あちらこちらに宝玉が埋め込まれ、怪しげな紋様と文字で刻まれていた。
何だアレは? 見るからに作動して、何らかの役割があると思うが……。嫌な予感がするから、後でぶちのめす予定のディオドラに吐かせるか。
すると、俺は装置の中央を見て──。
「アーシアッ!」
磔にされているアーシアを見て叫んだ。見た感じ、外傷はない。衣類も破れた様子もなく、ケガなどはないようだ。
「やっと来たんだね」
装置の横から姿を現したのはディオドラ・アスタロトだった。あのいけ好かない笑みが俺の怒りを更に高めてくれる!
「……イッセーさん?」
俺の声を聞いたアーシアがこちらへ顔を向けた。
彼女の顔を見ると……目元が腫れあがっている。
泣いていたのが分かった。それも尋常じゃない量の涙を流したと思えるほど、目が赤くなっている。
「……ディオドラ。おまえ、アーシアに話したのか?」
先程、フリードから聞かされたこと。
あれは絶対にアーシアに聞かせてはならないものだ。
だが、ディオドラはニンマリと微笑む。
「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」
アーシアがすすり泣き始めている。
「でも、足りないと思うんだ。アーシアにはまだ希望がある。そうキミたちだ。特にそこの汚れた赤龍帝。キミがアーシアを救ってしまったせいで、僕の計画は台無しになってしまったよ。堕天使の男──ドーナシークが一度アーシアを殺した後、僕が登場してドーナシークを殺し、駒を与える予定だったんだ。転生したばかりの悪魔が乱入してもドーナシークには勝てないと思っていた。。そうしたら、キミは赤龍帝という。偶然にしては恐ろしすぎる出来事だね。おかげで計画は大分遅れてしまったけれど、やっと僕の手元に帰ってきた。これでアーシアを楽しめるよ」
「……そうか」
ああ……こいつは許せそうにないな。
「アーシアはまだ処女だよね? 僕は処女から調教するのが好きだから赤龍帝のお古は嫌だな」
コイツだけは──。
「あ、でも、赤龍帝や堕神から寝取るのもまた楽しいのかな?」
絶望に染めないと気が済まない──。
「キミの名前を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれ──」
「いい加減に黙れェェェッッ‼」
《Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!》
俺は禁手を発動する。
俺から放たれる殺気が神殿を揺らし、内部にひびが走る。
必要だったが、そんなの必要無く発動できた!
「リアス、皆、アレは俺が倒すから絶対に手を出さないでくれ」
「そうね、いまのあなたを止められそうにもないわ。だから──全力でやりなさい」
最高の一言を発してくれるリアス。勿論、そのつもりですよ。
「ドライグ、聞いたとおりだ。ここからは俺の好きにさせてもらう」
『ああ、構わん。あの小僧にドラゴンの恐ろしさを刻み込んでやれ』
俺の姿を見て、ディオドラは楽しげに高笑いしていた。
奴の全身がドス黒いオーラに包まれていく。
「アハハハ、凄い殺気だね!これが赤龍帝!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスからもらった『蛇』でね!キミなんて瞬殺───」
ドゴオオオオオオオオオオオンッ!!!
俺は、超スピードで懐に入り思いきり顔面に拳を打ち込んだ。
殴られたディオドラはぶっ飛んで壁に激突して倒れ、口から血を吐いている。
「おい、瞬殺がどうした?」
ディオドラは殴られた頬を手で押さえながら、先程のような余裕ある笑みは完全に消失していた。
「くっ!こんなことで! 僕は上級悪魔だ! 現魔王ベルゼブブの血筋だぞ!」
ディオドラは手を前に突き出し、魔力の玉を無数展開した。
「キミのような下劣で下品な転生悪魔ごときに気高き血が負ける筈がないんだッ!」
ディオドラの放つ無限に等しい魔力弾の雨が俺に向かってくる。
……まったく効かないな。俺は魔力弾の雨を意に介さず、ディオドラの前に立つ。俺が拳を構えると奴は幾重にも防御障壁を作りだす。
俺はそれを突き破り、奴の顔面に再び拳を打ち込む。
「……痛い。痛い。痛いよ!どうして!僕の魔力は当たったのに!オーフィスの力で絶大なまでに引き上げられた筈なのに!」
俺は泣き言を無視してディオドラの体を引き上げ、オーラを纏った拳を腹に叩き込む。
更に顔面にも叩き込み、次の一撃をくらわせようとした。
「こんな腐れドラゴンに僕がぁぁぁぁっ!」
ディオドラは左手を前に突き出し、分厚いオーラの壁を発現させた
俺の拳がその壁に当たり、勢いを殺されそうになる。
「アハハハハハハッ!ほら見た事か!僕の方が魔力は上なんだ!下劣な下級悪魔の赤龍帝が僕に敵う筈が無いんだよッ!」
「……ではもう少しパワーを上げてあげてやろうか?」
俺は膨大なオーラを放出し、拳の勢いを増していく。
すぐに壁にヒビが生じ、そのままバリンッと儚い音を立てて消失した。
「……で?なにか言ったか?」
「ひっ」
一瞬で顔色を変えたディオドラに、俺は真正面から叫びながら膨大な力を込めた拳を打ち込む!
「ウチのアーシアを泣かすんじゃねぇよッッ!龍星鉄鎚!」
グシャッ!
ディオドラの左手を叩き折り、その勢いのまま顔面に拳を打ち込んだ。
鋭く突き刺さった一撃にディオドラは柱まで吹き飛ばされ背中から激突。
床に落ち、地べたを這いずりながら叫んだ。
「ウソだ!やられる筈が無い!アガレスにも勝った!バアルにも勝つ予定だ!才能の無い大王家の跡取りなんかに負ける筈が無い!情愛が深いグレモリーなんか僕の相手になる筈が無い!僕はアスタロト家のディオドラなんだぞ!」
ディオドラが手を上へ突き上げると、俺の周囲に円錐状の魔力が幾重にも出現する。
切っ先を向け、ミサイルの様に俺に襲い掛かる。
それをすべて吹き飛ばし、ディオドラに詰め寄り、高速回転で遠心力を加えた蹴りを放つ。
鈍い音を響かせ、ディオドラの右足を完全に粉砕した
「ちくしょぉぉおおおおおおおっ!」
苦痛に顔を歪ませるディオドラはこちらへ手を向け魔力を集め始めた。
どうやら最大限に溜めた魔力の波動を撃ち出すつもりだろう。
『Over The Evolution!』
俺も手に極大なまでのドラゴンのオーラを集束させ、奴に向け撃ち出す。
「くらえ、エボリューションドラゴ・ショット!」
それと同時にディオドラの魔力弾も撃ち出され───お互いの一撃が宙でぶつかり──一瞬でディオドラの魔力を吹き飛ばし、奴のすぐ横を掠めた。
奴の横を通り過ぎたドラゴンのオーラは神殿の一部分を大きく抉り、壁を突き抜け、外にまで達していた。
それでも奴はもう一度魔力を練り込もうとするが──。
ドゴォォオオオオオンッ!
俺は勢いよく拳を床に叩きつけた。神殿そのものが大きく揺れる。
奴は床にできた巨大なクレーターを見て、目元をひくつかせていた。
ディオドラは──ガチガチと歯を鳴らし、震え上がっていた。わざと外した。
歩み寄り、もう一度奴を引き上げる。
俺は鎧のマスク部分を収納し、素の状態でにらみつける。全身から赤いオーラを激しく発しながら。
「二度と、アーシアに近づくな! 次に俺たちのもとに姿を現したら、そのときこそ、本当に消し飛ばしてやるよ!」
ディオドラの瞳は──怯えの色に染まっていた。
『相棒。そいつの心はもう終わった。――そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ』
……そうか、ドライグ。俺はディオドラを放した。奴はガチガチと震えるだけだ。
「イッセー、トドメを刺さないのか?」
ゼノヴィアが俺に近づきながら尋ねてきた。
「殺さない。死はこいつにはぬるすぎる。こいつにはこれからも生きて、より絶望してもらう。こんなやつでも肩書きは上級悪魔で一応は現魔王の血筋だ。殺したらサーゼクスさん達に迷惑をかけるかもしれない。最終的な判断はサーゼクスさん達に任せるさ」
「……わかったよ。イッセーがそう言うなら私は止める。──だが」
「ああ、そうだ」
俺とゼノヴィアは拳と剣、それぞれをディオドラに向けた。
「「もう、アーシアに言い寄るなッ!」」
俺たちの迫力ある声にディオドラは瞳を恐怖で潤ませながら何度もうなずいた。
俺たちはディオドラを解放すると、アーシアのほうへ足を向ける。
「アーシア!」
装置のあるところへ俺や皆も集合していった。
「イッセーさん!」
俺はアーシアの頭を優しく撫でる。
「遅くなったけど、助けにきたぞ、アーシア。ハハハ、約束したもんな。必ず守るって」
安堵したのか、アーシアはうれし泣きをしていた。よし。さっさとアーシアを救ったら、どこか安全な場所に逃げ込んで、アザゼル先生達が事を収めるまで待機だ。
アーシアを装置から外そうと、木場達が手探りに作業をしていた……が、少しすると顔色が変わる。
「……手足の枷が外れない」
何?俺もアーシアと装置を繋ぐ枷を取ろうとするが──。
アーシアの四肢についている枷を外そうとこの場にいる全員で取り払おうとするが、聖魔剣、聖剣で切ろうとしても、魔力をぶつけてもビクともしない!
なんだ、この枷!?特別製なのか!?
その時、ディオドラが言葉少なく呟く。
「……無駄だよ。その装置は機能上一度しか使えないが、逆に一度使わないと停止出来ないようになっているんだ。アーシアの能力が発動しない限り停止しない」
「どういう事だ?」
「その装置は神滅具所有者が作り出した固有結界の1つ。このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。『
木場が厳しい表情でディオドラに問いただす。
「発動条件と、この結界の能力は?」
「……発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は───枷に繋いだ者、つまりはアーシアの神器能力を増幅させて反転させること」
───っ!
つまり回復の能力を反転させる。
それはつまり───。
木場がさらに問いただす。
「効果範囲は?」
「……このフィールドと、観戦室にいる者たちだよ」
その答えに全員が驚愕した。
アーシアの回復の効力は凄まじい。
それが増幅されて反転させられたら……っ!
「……各勢力のトップ陣がすべて根こそぎやられるかもしれない……ッ!」
衝撃の事実に全員が青ざめた。
そんな事になれば人間界、天界、冥界は大変なことになるだろう。
「ソーナとの一戦でそんな作戦が思い付かれたのか!」
「……いや、随分前からその可能性が出ていたようだよ。ただ、シトリーの者がそれを実際に行った事で計画は現実味を帯びたそうだ……」
それを聞いたリアスが怒りで顔を歪める。
「堕天使の組織に潜り込んだままの裏切り者がソーナに『
グラシャラボラスの不審死、ソーナ会長との戦いも、ディオドラ、全部『
俺は装置を見る……これはあの技ならいけるか?ドライグ。
『そうだな……「
……分かった。と、そんなときアーシアが───。
「イッセーさん、私ごと─────」
「バカな事言うなッ!次にそんな事言ったら怒るからな!アーシアでも許さない!」
「で、でも、このままでは、先生やミカエル様が私の力で……。そんな事になるくらいなら、私は────」
「俺はッ!二度と、アーシアに悲しい思いをさせないと誓ったんだ!だから絶対にそんな事をさせやしない!俺が守る!ああ、守るさ!俺がアーシアを絶対に守ってやる!俺はアーシアを愛してるんだッッ‼」
アーシアの肩を抱きながら言う俺にアーシアも感極まって涙を溢れさせるが、非情にも装置が動き出す。
……急ぐか。俺はリアスに策があるので離れておくように言う。
「アーシア、先に謝っておく」
「え?」
俺が謝る事に首を可愛く傾げるアーシアだが……これは人命救助だ。
しかし再度言う。本当にゴメン!
「さあ、いくぜ!
『Over The Evolution!』
鎧の宝玉が赤く輝き、枷に触れている手に流れ込んでいく。
バギンッ!
バババッ!
アーシアの両手両足を捕らえていた枷は木っ端微塵に吹き飛び、同時にアーシアのシスター服も消し飛んだ。
「いやっ!」
全裸になったアーシアは瞬間的にその場で屈んだ。
そして、さっきまで動いていた装置が急に動きが止まった。
「あらあら大変」
朱乃がすぐに魔力でアーシアに服を着させていた。
「初めて見る技ね。その技って、身に付けているものだと、何でも破壊できるの?」
「枷は手首足首に密着状態だったし、それなら身に付けている物の一部としての要領としていけるんじゃないかと思ってね。というかこの技、かなり燃費が悪くてね。戦闘では普通にぶちのめした方が手っ取り早いんだよ」
何はともあれ、アーシアは無事救出だ! ついでに装置も機能しなくなったし一先ず任務完了だ!
「イッセーさん!」
「アーシア!」
朱乃によって新しいシスター服に身を包んだアーシアが鎧を解除した俺に抱きついてくる。アーシアが戻って来てくれて本当によかったよ。
「信じてました……。イッセーさんが来てくれるって」
「当然だろう。でも、ゴメンな。辛い事、聞いてしまったんだろう?」
アーシアは首を横に振り、笑顔で言う。
「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」
ゼノヴィアが目元を潤ませていた。
「アーシア! 良かった! 私はおまえがいなくなってしまったら……」
アーシアはゼノヴィアの涙を拭いながら微笑む。
「どこにも行きません。イッセーさんとゼノヴィアさんが私の事を守ってくれますから」
「うん! 私はおまえを守るぞ! 絶対にだ!」
抱き合う親友同士。美しい友情だな。
「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……」
「アーシア。そろそろ私の事を部長と呼ぶのは止めても良いのよ?私を姉と思ってくれて良いのだから」
「──っ。はい!リアスお姉さま!」
今度はリアスとアーシアが抱き合う。
ギャスパーは大泣きし、小猫が頭を撫でる
これでようやく終わり──なら良かったんだが。
「……出てきたらどうだ?残党さん」
俺の言葉にリアスたちが困惑したなか、そいつは現れた──。
次回、『霸龍発動』。お楽しみに。
追記、いろいろ間違えてました。お騒がせしました。