~木場side~
「神滅具で創りしもの、神滅具の攻撃で散る、か。霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ」
聞き覚えの無い声のしたほうへ視線を送ると、見知らぬ男性が宙に浮いていた。
……なんだ、この体の芯から冷え込むようなオーラの質は……。
部長がその男に訊く。
「あなたはいったい何者?」
「お初にお目にかかる。忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。先ほどの偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりに無能で愚考が過ぎる」
───旧ベルゼブブ!
こんなときに! まさかアザゼル先生が仰っていた今回の首謀者がご登場とは……。
ディオドラは旧ベルゼブブの末裔──シャルバ・ベルゼブブに懇願するような顔となった。
「シャルバ! 助けておくれ! キミと一緒なら、赤龍帝を殺せる! 旧魔王と現魔王が力を合わせれば──」
バシュン!
シャルバの手から放出した光の一撃がディオドラの胸を容赦なく貫く──ことはなかった。イッセーくんがディオドラの手を引き、一撃を避けたのだ。
「赤龍帝!?何を……ガハァァッ!?」
イッセーくんはディオドラの腹部に打撃を与え、気絶させた。
「……おまえは生かして絶望させ続けると決めたんだ。勝手に死なれては困る。……今の力、天使、堕天使の光の力か」
「そうだ。しかしそこの愚か者は……。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、モノにできずじまい。たかが知れているというもの」
───光の力?
天使や堕天使に近い能力か?
僕の視界にシャルバの腕に取り付けられた見慣れない機械が映る。……あれが光を生み出す源か?
「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため。そこの愚か者も同様」
冷淡な声で言うシャルバ。瞳も憎悪に染まっている。よほど現魔王に恨みがあるのだろう。
「グラシャラボラス、アスタロト、そして私たちグレモリーを殺すというのね」
部長の問いかけにシャルバは目を細める。
「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私たち真なる血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などといわれるのが耐えられないのだよ」
シャルバは嘆息した。
「今回の作戦はこれで終了。私たちの負けだ。まさか、
「直接現魔王に決闘も申し込まずにその血族から殺すだなんて卑劣だわ!」
「それで良い。まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味が無い」
─とそんな時だった。
「リアス、皆も下がってろ。木場、小猫ちゃん。ディオドラを捕らえててくれ」
突然イッセーくんがそんなことを言う。
「イッセー?あなた何を──」
『リアス・グレモリー、今すぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去した方が良い』
ドライグの声。僕たちにも聞こえるように発声したようだ。
「どういう………」
『そこの悪魔よ。シャルバといったか?』
ドライグは部長の質問を無視して、今度はシャルバにその声を向けた。
『お前は選択を間違えた。──相棒の鬱憤をはらす糧になるために現れたのだからな。さきほどの者ではあまりにも貧弱だった。恨むなら、半端に力のある己を恨め』
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
神殿が大きく揺れ、イッセーくんが血の様に赤いオーラを発していく!
それは最大級に危険なオーラだった!
そしてイッセーくんの口から老若男女、複数入り交じった呪詛のごとき呪文が発せられる。
「我、目覚めるは────」
〈始まったよ!〉
〈始まったね!〉
「覇の理の全てを奪いし二天龍なり───」
〈夢が始まるっ!〉
〈幻が終わるっ!〉
「無限を嗤い、夢幻を憂う───」
〈世界が求めたのは───〉
〈世界が否定したのは───〉
「我、赤き龍の覇道を極め────」
〈いつだって、力だったっ!〉
〈いつだって、愛だったっ!〉
≪何度でもお前達は滅びを選択するのだなッ!≫
イッセーくんの鎧が鋭角なフォルムを増していき、巨大な翼まで生えてくる。
両手両足から爪が伸び、頭部を全て覆う兜をつけ、そこからは角がいくつも形作られていく。
───その姿はドラゴンそのものだった。
全身の宝玉から老若男女の叫び声が入り乱れて響く!
「「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう────ッ!」」」」」」」
『
イッセーくんの周囲───床、壁、柱、天井がイッセーの鎧が放つ、すさまじい赤いオーラによって破壊されていく!
『……さて、いこうか』
ビュッ!!
イッセーくんが空を切る音と共に羽ばたき、一瞬でシャルバの元に到達すると、肩を噛み千切った!速すぎる!肉眼では追いきれない!!
「ぬううううっ!おのれっ!」
シャルバは右腕で光の攻撃を放とうとするが、別の宝玉から赤い鱗に覆われた龍の手が出現し、シャルバの右腕を止める。
さらに別の宝玉から生まれた刃がシャルバの右腕をあっけなく切断した!
「ハァ、ハァ………ふざけるなっ!!」
激昂したシャルバが残った左手で光の一撃を放ち、抵抗を試みるが───イッセー君の翼が、青く光り輝いた!まるで白龍皇の翼のようだ!
『DividDividDividDividDividDividDividDivid!!!』
音声が鳴り響き、シャルバが放とうとしていた光の波動が半分───さらに半分と縮小していき、遂には完全に消え去った!
あれはイッセー君が奪った、ヴァーリの力!それすらもこれほどまでに──!
「ヴァーリの力か!おのれ!何処までもお前は私の前に立ち塞がると言うのだなッ!ヴァーリィィィィィィッ!」
次にシャルバが放ったのは魔力の波動だ!大きい!しかしイッセーくんはそれを翼の羽ばたきだけで霧散させる──っ!たったあれだけで!
赤龍帝の兜に生まれた口が大きく開き、口内の奥にレーザーの発射口みたいなものを覗かせている。一瞬の閃光!
ビィィィィィィッ!
赤いレーザーが一直線に伸びてシャルバの左腕を吹き飛ばす!
レーザーは神殿の床や壁、天井を一直線に抉り、そこから爆発が巻き起こる!
『ウオオオオオオオッッ‼』
咆哮を上げながら全身にオーラを発生させるイッセーくん!
オーラを漂わせるだけで周囲が大きく抉れ、巨大なクレーターとなる。
「ば、化け物め!こ、これが『
シャルバの顔が遂に恐怖に包まれた。瞳には怯えの色が強く、完全に一誠を恐怖の対象として捉えている。
僕達は───呆然とするしかなかった。
部長や他の皆、それに僕自身も、体の震えが止まらなかった。あまりにもすさまじすぎる……!
赤いオーラが発射口に集まり、恐ろしく強大なオーラがあの発射口に溜まっていっている……!横に広がった翼も恐ろしいまでの不気味な赤い光を辺り一面に放つ!
「くっ!私はこんな所で死ぬわけには!」
シャルバは残った足で転移魔方陣を描こうとするが───その足が動きを停める。
「……と、停めたのか!私の足を!」
鎧の眼が赤くきらめいていた。
ギャスパー君と同じ停止能力まで発動させたというのか!?
赤龍帝のスペックは一体何処まで隠されていると言うんだ!?
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!』
『Longinus Smasher!!!!!!!!』
神殿内に幾重にも鳴り響く、倍加の音声。
そしてチャージが完了した発射口から、赤いオーラが放たれる!!
不味い!この威力だと、僕達まで───!!!
僕たちは急いで退避し、シャルバは放射された赤い閃光になすすべなく飲まれていく!
「ば、バカな………!真なる魔王の血族であるこの私が!!ヴァーリにすらまだ一泡吹かせていないのだぞ!?ベルゼブブはルシファーよりも偉大なのだ!おのれ!赤い龍!白い龍───ッ!!!!!!!!」
僕は神殿を出たあと、咄嗟に聖魔剣で防壁を作り出し、眷属をそこへ避難させた……捕らえたディオドラも。
しばらくして僕は剣を解放し、全員で外の様子を確認する。
「…っ」
──神殿は完全に崩れ去っていた。
これが、赤龍帝の真の力なのか………。
───と、そんなときイッセーくんが鎧を解除し、もとの姿に戻っているのを確認した!
「あー、疲れた。スカッとはしたが、少し疲れるんだよな、これ」
……本当にイッセーくんはすごいや。そして僕たちはイッセーくんと合流した。
~一誠 side~
「イッセーさん!」
俺に抱きついてくるアーシア。ふむ、これで一件落着か。……ん?
「兵藤一誠。無事だったようだな」
……なんかヴァーリが来た。あと前に会った美猴とアーサーも。話を聞くと、何やら見たいものがあってここへ来たらしい。
「そろそろだ。空中を見ていろ」
空を見ていると───。
バチッ!バチッ!
空間に巨大な穴が開き、そこから巨大な何かが姿を現す。
……あれはすごいな。
「よく見ておけ、兵藤一誠。あれが俺が見たかったものだ」
空中をとてつもなく巨大な生物───真紅のドラゴンが雄大に泳いでいく。
「『赤い龍』と呼ばれるドラゴンは2種類いる。1つはキミに宿るウェールズの古のドラゴン───ウェルシュ・ドラゴン。赤龍帝だ。白龍皇もその伝承に出てくる同じ出自のもの。だが、もう1体だけ『赤い龍』がいる。それが『黙示録』に記されし、赤いドラゴンだ」
「『
「しかし、どうしてこんなところを飛んでいるんだ?」
「さあね。いろいろ説はあるが……。あれがオーフィスの目的であり、俺が倒したい目標だ」
ヴァーリの目標ね……。
そのとき、ヴァーリは真っ直ぐな瞳で言った。
「俺が特に戦いたい相手──『 D × D 《ドラゴン・オブ・ドラゴン》』と呼ばれし『真なる赤龍神帝』グレードレッド。──俺は『真なる白龍神皇』になりたいんだ。赤の最上位がいるのに、白だけ一歩手前止まりでは格好がつかないだろう? だから俺はそれになる。いつか、グレードレッドを倒してな」
「…………」
それがヴァーリの夢か。
テロ組織に身を置いているのもグレートレッドを倒すためだった、と。
「グレートレッド、久しい」
俺たちのすぐ近くに黒髪黒ワンピースの少女が立っていた。……少し疲れたせいか気づくのが遅れた。とんでもなく強いな。
「……誰だ?」
ヴァーリがその少女を確認して苦笑した。
「───オーフィス。ウロボロスだ。『禍の団』のトップでもある」
……こいつが、ね……しかしどうにも……。
オーフィスは指鉄砲の構えで撃ちだす格好をした。
「我は、いつか必ず静寂を手にする」
そのあと、アザゼルとタンニーンが降ってくる。
「アザゼル先生、タンニーンさん!」
「おー、イッセー。元に戻ったようだな」
タンニーンさんは空を飛ぶグレートレッドに視線を向ける
「懐かしい、グレートレッドか」
「タンニーンも戦った事あるのか?」
先生の問いにタンニーンさんは首を横に振る。
「いや、俺なぞ歯牙にもかけてくれなかったさ」
……まあ、確かにけた違いに強いな。
「久しぶりだな、アザゼル。クルゼレイ・アスモデウスは倒したのか?」
ヴァーリが先生に話しかける。
「ああ、旧アスモデウスはサーゼクスが片付けた。……まとめていた奴らが取られれば配下も逃げ出す。シャルバ・ベルゼブブの方もイッセーが『覇龍』で片付けたみたいだしな」
「お兄さまは?」
「結界が崩壊したからな。観戦ルームに戻ったよ」
アザゼル先生がオーフィスに言う
「オーフィス。各地で暴れ回った旧魔王派の連中は退却及び降伏した。───事実上、まとめていた末裔共を失った旧魔王派は壊滅状態だ」
「そう。それもまたひとつの結末」
オーフィスは特に驚く様子も無く言った
一つの派閥が消えたのに痛くも痒くも無いと言った様な感じだな。
「お前らの中であとヴァーリ以外に大きな勢力は人間の英雄や勇者の末裔、神器所有者で集まった『英雄派』だけか」
人間の英雄、か……。
「さーて、オーフィス。やるか?」
先生が光の槍をオーフィスに向けるが、オーフィスはきびすを返した。
「我は帰る」
どうやら戦う気は無いらしいな。さっさと帰っていった。去り際にタンニーンさんにこんなことを言う。
「タンニーン。竜王が再び集まりつつある。──楽しくなるぞ」
ヒュッ!
一瞬、空気が振動したと思ったら、オーフィスは消え去っていた。……さすがに速いね。
「俺たちも退散しよう」
ヴァーリもアーサーが作り出したであろう次元の裂け目に入る寸前だ。
「兵藤一誠。──また俺と戦ってくれるか?」
「……テロなどではなく普通に戦うなら、いずれな」
「そうか。わかった───いずれは」
「ああ、決着をつけよう」
俺は拳をヴァーリに向けて言い放った。
「木場祐斗くん、ゼノヴィアさん。私は聖王剣の所持者であり、アーサー・ペンドラゴンの末裔。アーサーと呼んでください。いつか、聖剣を巡る戦いをしましょう。では」
アーサーが自己紹介したあと、ヴァーリたちは次元の裂け目へと消えていった。
俺はアーシアの手を取り、笑顔で言った。
「……アーシア、帰ろう。俺たちの家へ」
「はい。お父さんとお母さんが待つ家に帰ります」
……やっぱりアーシアの笑顔はかわいいな。
~ヴァーリside~
「ヴァーリ、幹部連から連絡入った。シャルバの野郎、瀕死だけど生きてやがったぜぃ」
「そうか、美猴。何にせよシャルバは急ぎ過ぎた。徹底抗戦を唱え、現魔王派に追放された先人達も急ぎ過ぎた。───目先の怨恨だけで動くから滅ぶ」
「旧魔王派の奴ら、お前さんをトップに入れたいとさ。どうすんの?」
「今のポストで充分だと伝えてくれ。これ以上、前魔王の血族としての役職を増やしたくない」
「あーあ、旧魔王派、これでほぼ瓦解だわ。他の派閥が台頭してくんぜ、こりゃ」
「カテレア、クルゼレイ、シャルバ。───お前達は嫉妬深過ぎた。誇りある前魔王の血族として生きるのなら、その生き方も誇り高くするべきだった」
感想、評価是非よろしくお願いいたします。