それからこれまでの投稿分も含めて本番描写がある話には黒星、軽くないキス等に留める場合は☆を付けます。
初契約成功の日からしばらくした頃。
俺はわりと順調に契約を取れていた。
二件目で恐ろしい存在感を放つミルたんと名乗る漢女に「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」と言われたときはテンパったが。少なくともアレ人間じゃないだろ。
とりあえず気に入られ契約は取れたが。
そんなある日のことだった。俺は家路についていると…
「はわう!」 ん?突然の声。
後方から聞こえると同時にボスンと路面に何かが転がる音がした。振り向くと、そこにはシスターが転がっていた…。
手を大きく広げ、顔面から路面へ突っ伏している。
なんとも間抜けな転び方だな……。
「……大丈夫かい?」
俺はシスターに近づき、起き上がれるように手を差し出す。
「あうぅ。なんで転んでしまうんでしょうか……ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」
声からして俺と同世代くらいか。手を引いて、起き上がらせる。 ふわっ。風でシスターのヴェールが飛んでいく。スッとヴェールのなかで束ねていたであろう金色の長髪がこぼれ、露になる。ストレートのブロンドが夕日に照らされてキラキラと光っている。
そしてシスターの素顔へ俺の視線が移動する。
……ふむ、このグリーンの双眸からはとても汚れなき心が感じられた。……どこか悲しい色も。
「あ、あの……?」
「あぁ、ごめん。……ほら、これ」
俺はヴェールを取ってきて少女に渡す。
「あっ、ありがとうございますぅ」
「いえいえ、旅行かい?」
彼女が肩にかけている旅行鞄に目を向ける。
この町でシスターを見かけたことはないが……。
「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日赴任することとなりまして……あなたもこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる彼女。この町の教会?あそこはたしか……。
「この町に来てから困っていたんです。その……私って、日本語うまくしゃべれないので……道に迷ったんですけど、道行く人皆さん言葉が通じなくて……」
ふむ、俺は元々大体の外国語は話せたし、悪魔になった特典のひとつに『言語』がある。全世界の人間と言葉による意思疎通が可能である。
「教会なら知ってるよ」
町外れの古びた教会のことだろう。でもあそこは今使われていないと思うが……。
「ほ、本当ですか!あ、ありがとうございますぅぅ!これも主のお導きのおかげですね!」
涙を浮かべながら、俺に微笑むシスター。本当にかわいらしい子だ。しかし、彼女の胸元で光るロザリオを見ると多少拒否反応が拭えない。悪魔だしね。
とりあえず放っておけないし彼女を引き連れて、一路教会へ。途中、互いに自己紹介した。
彼女の名はアーシア・アルジェントというそうだ。
教会へ向かう途中、公園の前を横切る。
その時、小さな怪我をして泣いている子供がいた。
俺の後ろをついてきていたシスターが子供の傍へ近寄り子供を慰め手のひらを子供がケガを負った膝へ当てると、その手のひらから淡い緑色の光が発せられ、子供の傷を治していく。あの力は……神器か。多種多様なことで。
子供の傷は塞がって、ケガのあとなど一切残っていない。
「はい、傷はなくなりましたよ。もう大丈夫」
シスターは子供の頭をひとなですると、俺のほうへ顔を向けてきた。
「すみません、つい」 彼女は舌を出して、小さく笑う。
その子供がありがとうと言っていたのを通訳すると、彼女はうれしそうに微笑んだ。
「その力……」
「はい、治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ。」微笑む彼女はその瞳にとても悲しい、寂しい暗さを秘めていた。俺は彼女を見捨てたくなかったのかもしれない。
「……俺にも、神から…いや、運命に与えられた物はある」
「えっ?」と返したアーシアに俺の神器を見せる。
『Boost!』
「これは俺の神器。理不尽な悪意から大切なものを守る力だ。……アーシア、俺で良ければ君の苦しさをぶつけてくれて構わない。アーシアにそんな悲しい眼をしてほしくない」
悪魔は欲を持って生きる者。俺は俺の意思のままに、それが俺だ。
「イッセーさん…………私は……」
その後、咽び泣きはじめてしまったアーシアから聞かされた過去は酷いという言葉では言い表せないものだった。聖女にまつりあげられた挙げ句、悪魔のケガを治療したことを原因に教会の司祭たちは彼女を異端視した。
誰も彼女の優しさを、寂しさを、苦しみを理解して寄り添おうとしなかった。……虫唾が走るな。
「…きっと私の祈りが足りなかったんです。ほら、私ってぬけているとこありますから」
彼女は尽くしてきた教会に見捨てられてなお、怒りに震えることもなく優しさにあふれていた。
「……アーシア、俺で良ければ友達になってほしい。いや、アーシアはもう友達だ」
俺がそう言うとアーシアは涙を流しながら…
「イッセーさん……はい!」
アーシアはうれしそうに微笑んだ。正直、彼女の立場はよくわからないから、この先会えるかどうかはわからないが。それでも後悔はない。
その後、数分進んだ先に古ぼけた教会が存在していた。
悪魔にとっては敵地であるからかどうにも神経が逆立つ……ん?この感じ……。
「あ、ここです!良かったぁ」
「じゃあ、俺はこれで」
「待ってください!お礼を…」
「急ぎの用事あるから、ゴメン」
「……でも、それでは」
「いつかまた会えたらいいな」
「イッセーさん……はい!必ずまたお会いしましょう!」
その後アーシアと別れたあと。
「さて、あの教会になぜあの堕天使の気配がするのかな」
以前遭遇した堕天使の気配がしたことを不審に思っていた。
その夜、部室で部長に教会に近づいたことを注意された後、朱乃さんがはぐれ悪魔という主を裏切り、または殺して主なしとなった悪魔の討伐依頼を持ってきた。
主側に余程問題がない限り、見つけしだい討伐するルールになっているそうだ。
そして俺たちははぐれ悪魔の潜む町外れの廃屋近くに来た。ふむ……普通に敵意と殺意が満ちているな。
「……血の臭い」 小猫ちゃんが呟き、袖で鼻を覆う。
「イッセー、今回は見学していなさい。下僕の特性について話をしておくわ」
そう言って部長や木場、朱乃さんから大昔の三大勢力の戦争で純粋な悪魔の多くが亡くなり少数精鋭の制度を取ることにした結果、『悪魔の駒』が生まれ、下僕を使って上級悪魔同士で行う実際の戦いとしたゲーム『レーティングゲーム』が悪魔の間で流行していることを聞く。このゲームの強さが悪魔の地位、爵位に影響するそうだ。因みに部長はまだ成熟した悪魔ではないから公式の大会には出場できないそうだ。
そんな話をしているとはぐれ悪魔が現れ、部長たちが戦いを始める。木場が『騎士』のスピードで翻弄し、小猫ちゃんが『戦車』の怪力でぶっ飛ばし、朱乃さんが『女王』の力で甚振る。というか、朱乃さん究極のSとか言われてるし、普通に恍惚として雷を浴びせてるし…。
終いに部長が滅びの魔力というものをぶつけて消し飛ばした。
「部長、朱乃さん。先程話をした教会にドーナシークという堕天使の気配がしたのですが」
俺がそう言うと部長と朱乃さんは驚く。
「それは本当?」
「はい、そんな教会に何故神器を宿すシスターが赴任するのか疑問なのですが」
「そう……朱乃」 「はい、部長」
「今さらですが、朱乃さんはどうして悪魔に?」
「あの後、リアスと親しくなり、特例として彼女の庇護下に入ったのです。父さまと母様は今でもラブラブですわ。本当にイッセー君のお陰ですわ……大好き(チュッ♡)」と頬にキスされる。
「朱乃、程々にしなさい」
「うふふ」
「やれやれ」
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