突如、ロキに波動が襲いかかる。
俺が魔力の攻撃を撃ちだした。ゼノヴィアもデュランダルを振るったようだ。聖剣のオーラが立ち上っている。
「先手必勝だと思ったのだが」
ゼノヴィアは平然とそう言った。まあ、そうだな。しかし─────。
「どうやら効かないようだ。流石は北欧の神か」
ゼノヴィアの言葉通り、ロキは何事も無かったかのように浮いていた。……軽めの一撃だしな。ひとまず様子見と思ったが……これはな。とりあえず『女王』にプロモーションだ。
「聖剣か。良い威力だが、神を相手にするにはまだまだ。そよ風に等しい。しかしそうだな。ここには赤龍帝がいたんだった。先程の一撃、本気ではないな──では」
ロキの手に光り輝く粒子が集まっていく。圧倒的な力を圧縮された塊となる。
「これならどうかな!」
「ダブルドラゴ・ショット!」
放たれるロキの波動に対し、俺はカウンターとして高威力のドラゴ・ショットの二連撃を撃った。
ドッパァアアアアアアアアアンッ!!
凄まじい波動が宙で派手にぶつかった瞬間、勢いよく弾け飛んだ。
ロキは相変わらずの無傷……とは言い難いな。波動を放った手が火傷しているように煙が立ち上っている。ダメージを与えたようだな。
「……ふむ、どうやら我は赤龍帝をまだ甘く見ていたらしい。この我に傷を負わせるとは面白い限りだ。これは面白くなりそうだ。嬉しくなるぞ。取り敢えずこの場は笑っておこう。ふはははははっ!」
リアスや朱乃達も翼を広げて馬車から出てきた。紅いオーラを纏っているし、臨戦態勢だ。
「その紅いオーラに紅い髪。グレモリー家……だったか? 確か現魔王の血筋だったな。堕天使幹部が二人、天使が一匹、悪魔がたくさん、赤龍帝も付属。オーディン、ただの護衛にしては厳重だ」
「おぬしのような大馬鹿者が来たんじゃ。結果的に正解だったわい」
オーディンさまの一言にロキはうんうんとうなずき、不適な笑みをつくった。
「よろしい。ならば呼ぼう。出てこいッ!我が愛しき息子よッ!」
ロキがマントを広げて高らかに叫ぶと、宙に歪みが生じる。
その歪みから十メートルぐらいはありそうな灰色の狼が現れ、眷属全員が全身を強張らせた。
ぞくっ……。
狼に睨まれた瞬間、全身が震えた。狼にロキ以上の恐怖を感じる……。これは面倒な……。
『相棒、やつはこれまでの敵とは訳が違う。やつからいったん距離を置いた方が良い』
さて、どうしようかね……。
「フェンリル!まさか、こんなところに!」
「……確かにマズいわね」
木場やリアスは相手を把握し、警戒態勢になっていた。
「イッセー! そいつは最悪最大の魔物の一匹だ! 神を確実に殺せる牙を持っている! そいつに噛まれたら、いくら赤龍帝の鎧でも保たないぞ!」
……確かにヤバいか。
「そうそう。気をつけたまえ。こいつは我が開発した魔物のなかでトップクラスに最悪の部類だ。何せ、こいつの牙はどの神でも殺せるって代物なのでね。試したことはないが、他の神話体系の神仏でも有効だろう。上級悪魔でも伝説のドラゴンでも余裕で致命傷を与えられる」
すーっ。
ロキの指先がリアスに向けられる。
「本来、北欧の者以外に我がフェンリルの牙を使いたくはないのだが……。まあ、この子に北欧の者以外の血を覚えさせるのも良い経験となるかもしれない」
こいつまさか!
「────魔王の血筋。その血を舐めるのもフェンリルの糧となるだろう。やれ」
オオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオンッ!
闇の夜空で灰色の狼が透き通るほど見事な遠吠えをしてみせた。
その鳴き声は、この場にいる者たちの全身を震え上がらせ、さらに聞き惚れてしまうほどの美声だった。
一迅の風の瞬間、フェンリルが視界から消え──。
「触るんじゃねぇよっっっっ!!」
ドゴォォォンッ!!
俺は神速で襲いかかるフェンリルよりも疾くリアスの前に立ち、真正面からフェンリルの顔面を殴り飛ばしていた!
「大丈夫か、リアス? ケガは?」
「い、いえ、だいじょうぶよ。イッセーが助けてくれたから」
その言葉を聞いた俺は安堵して息を吐く。
フェンリルは殴られた衝撃でロキのところまで飛んでいくと、見事な着地を決める。まだまだ足りないか。
「ごふっ」
俺は口から多少血を吐き出す。
腹部を見れば、鎧に少しばかり穴が開いていた。
「イッセー!」
「イッセーさま!」
リアスと朱乃が悲鳴のような声をあげていた。
俺が拳を繰り出した瞬間にあの狼もそれに合わせてその大きな爪で俺の腹を抉ったんだ。
あのスピードに合わせるとか……。
痛みに少し体がよろめく。
体勢を崩しかけた俺を木場が支えてくれた。
「イッセーくん。しっかり。すぐにアーシアさんの力で回復させよう!!」
「イッセーさん!早く!」
馬車から回復役のアーシアが身を乗り出し、手元に回復のオーラを作って放とうとしていた。
「いや、そうはさせん。赤龍帝、フェンリルの動きに追い付くばかりかいくらかダメージを与えた。恐るべきことだ。今のうちに始末しておこう!」
ロキが再びフェンリルに指示を送る。
ヤバイ!
ここはエボリューションブーストで……!
「ロキィィィィッ!」
そこへアザゼル先生とバラキエルさんが光の槍と雷光をロキに向けて放った。
「フェンリルを使わずとも、貴様ら堕天使二人程度では我の相手は無理だ」
魔法陣が盾となって空中に広がっていく。
アザゼル先生とバラキエルさんの攻撃は容易に防がれてしまった。
「──ッ! 北欧の術かッ! 術に関しては俺らの神話体系よりも発展していたっけな! さすがは魔法、魔術に秀でた世界だ!」
アザゼル先生が憎々しげに吐き捨てた。
「だったら、同じ術式で!」
ブィィィィィィンッ!
ロスヴァイセがロキと同様の魔法陣を宙に何重にも展開して、縦横無尽の魔法攻撃らしきものを放出させた。
すごい出力だ。さすがオーディンさまの付き人か。
しかし──。
バババババババズンッ!
ロキは防御魔法陣で全身を包み、ロスヴァイセさんの攻撃を防いでしまった。
「では、次はこちらの手番だな」
ロキが手を横に薙ごうとしたなか視界に光が一閃流れて───。
『Half Dimension!』
グバババババンッ!
フェンリルを中心に空間が大きく歪み、フェンリルは動きを封じられた。
だが、すぐに牙で歪みを噛み切って解き放つ。
「兵藤一誠、無事か?」
「ヴァーリ?」
俺達の目の前に現れたのは白龍皇のヴァーリ。
その横から金色の雲に乗っている美猴も出てきた。
「───ッ!おっとっと、白龍皇か!」
ロキがヴァーリの登場に嬉々として笑んだ。
「初めまして、悪の神ロキ殿。俺は白龍皇ヴァーリ。貴殿を屠りに来た」
「二天龍が見られて満足した。───今日は一旦引き下がろう!」
そう言ってロキはフェンリルを自身のもとに引き上げさせ、空間に大きな歪みを作る。
「だが、この国の神々との会談の日!またお邪魔させてもらう!オーディン!次こそ我が子フェンリルが、主神の喉笛を噛み切ってみせよう!」
ロキとフェンリルがこの場から姿を消した。
──────────────────────
俺は今、馬車の中でアーシアの治療を受けている。
温かい緑色のオーラが俺を包み、腹部の痛みを消してくれていた。
「アーシア、ありがとう。もう何も問題ない」
俺は上体を起こしてアーシアにお礼を言う。
すると、アーシアは涙ぐんだ。
「イッセーさん! 良かった!」
ガバッとアーシアが抱きつき、キスをしてきた。はいはい、大丈夫だよ。
「……先輩、ご無事で良かったです」
小猫ちゃんも俺の体に手を当てて気の巡りを良くしてくれていた。
自然治癒能力を高めてくれていたんだ。
「ありがとう、小猫ちゃん」
俺は小猫ちゃんにキスをして頭を撫でる。
馬車は既に地上に降りていて、今は駒王学園近くにある公園だった。
夜間のため、人の気配はない。俺はリアスたちとやってきたヴァーリたち皆の集まっているところに向かう。
ヴァーリの後方には美猴、聖王剣の使い手アーサーがいる。
「オーディンの会談を成功させるにはロキを撃退しなければいけないんだろう?」
ヴァーリは全員を見渡し、遠慮無しに言う。
「このメンバーと赤龍帝だけではロキとフェンリルを凌ぎきることは難しいだろうな。しかも英雄派の活動のせいで冥界も天界もヴァルハラも大騒ぎだ。こちらにこれ以上人材を割くわけにもいかない」
まさか……。
「二天龍が手を組めば話は別だと?」
ヴァーリの考えを察した俺の言葉にリアス達は驚愕した。
そして言葉も出ないリアス達にヴァーリは言う。
「そうだ。今回の一戦、俺は兵藤一誠と共に戦っても良いと言っている」
翌日、兵藤家の地下1階の大広間にグレモリー眷属プラス黒歌とイリナ、アザゼル先生、バラキエルさん、シトリー眷属───そしてヴァーリチームと言う異様な面々が集まった。
リアスはヴァーリ達の同席に反対していたのだが、サーゼクスさまとアザゼル先生の意見を聞いて渋々承諾。
ロキを屠るとヴァーリは言っていたが、それが真意なのか? こいつらが俺たちに協力する理由はなんだ? まだわからないな。
オーディンさまとロスヴァイセさんは別室で本国と連絡を取り合っている。
ロキが日本に来たことはあちらでも大問題になっているそうだ。
早速俺たちはロキ対策について話し合いを始めた。
今回の件は魔王であるサーゼクスさまも知っていて、堕天使側にも天界にも情報は伝わっている。
オーディンさまの会談を成就させるために三大勢力が協力して守ることになった。
協力といっても、協力態勢の強いここにいるメンバーで力を合わせてなんとかしろという意味なんだけどな。
つまり、ロキを俺たちで退けろってことだ。
相手は神。だけど、一番厄介なのは奴が連れている神喰狼だ。
生みだしたロキをも凌ぐ能力を有した本物の怪物。封じられる前の二天龍に匹敵するほどの力を持っているらしく、アザゼル先生やタンニーンさんでも単独では勝てないそうだ。
二天龍の力を完全に引き出せていない俺やヴァーリで歯が立たない。『覇龍』を使用するか俺が全力を出せば勝てる可能性はあるが……。
加勢は期待できない。どの勢力からも、だ。英雄派から神器所有者を送り込んでくるテロはいまだに断続しており、各陣営を混乱させている。
各種拠点は警戒をマックスにしているため、戦力は割けない。
まずは犠牲が出ないように勝つ方法を探るそうだ。ロキやフェンリルには対抗策があると聞いているから作戦会議中。
「単刀直入に訊くぞヴァーリ。俺達と協力する理由は?」
ホワイトボードの前に立ったアザゼルが一番の疑問をヴァーリにぶつける。
ヴァーリは不敵に笑むと口を開く。
「ロキとフェンリルと戦ってみたいんだ。美猴たちも了承済みだ。この理由では不服か?」
結局戦闘大好き野郎め。
それを聞いてアザゼル先生は怪訝そうに眉根を寄せる。
「まあ、不服だな。だが、いまは戦力になる奴が欲しいのも確かだ。いまは英雄派のテロの影響で各勢力ともこちらに戦力を割けない状況だ。英雄派の行動とおまえの行動が繋がっているって見方もあるが……おまえの性格上、英雄派と行動を共にするわけないか」
「ああ、彼らとは基本的にお互い干渉しないことになっている。俺はそちらと組まなくてもロキとフェンリルと戦うつもりだ。──組まない場合は、そちらの邪魔になってでも戦闘に介入する」
つまり、組むなら共闘、組まないなら俺たちごとロキを攻撃する、と。
「サーゼクスも悩んでいる様子だったが、旧魔王の生き残りであるおまえからの申し出を無碍にできないと言っていてな。本当に甘い魔王だが、おまえを野放しにするよりは協力してもらったほうが懸命だと俺も感じている」
「納得できないことのほうが多いけれどね」
リアスがアザゼル先生の意見にそう言う。文句はあるようだけど、悪魔の王たる魔王が良しとするならば、リアスも強くは言えないのだろう。
ソーナも了承の様子だった。かなり不満のある表情だけどね。ソーナ、あとで不満の発散に付き合ってあげるから。え?たっぷりキスして?いいけど。
勝手に動かれるよりは監視下に入ってもらったほうが対応しやすいんだろうけど、ヴァーリが素直に言うことを聞くかどうかねぇ……。
リアスが応じるなら俺もそれに従うが、ヴァーリが変な行動をしたら、拘束ぐらいはさせてもらうか。
他の眷属は文句もあるみたいだが、渋々応じているみたいだった。
アザゼル先生はヴァーリをじっと見る。
「何か企んでいるだろうがな」
「さてね」
「怪しい行動を取れば、誰でもおまえを刺せることにしておけば問題ないだろうな」
「そんなことをするつもりは毛頭ないよ。ま、かかってくるならば、ただでは刺されないさ」
アザゼル先生の言葉にヴァーリは苦笑するだけだった。
「……まあ、ヴァーリに関してはいったん置いておく。さて、話はロキ対策のほうに移行する。ロキとフェンリルの対策をとある者に訊く予定だ」
「ロキとフェンリルの対策を訊く?」
アザゼル先生がリアスの言葉にうなずく。
「そう、あいつらに詳しいのがいてな。そいつにご教授してもらうのさ」
「誰ですか?」
俺が挙手して訊く。
「五大龍王の1匹、『
「まあ、順当だが、ミドガルズオルムは俺たちの声に応えるだろうか?」
ヴァーリの問いにアザゼル先生は応える。
「二天龍、龍王──ファーブニルの力、ヴリトラの力、タンニーンの力で
へぇ。そんなこともできるのか。
「もしかして、お、俺もですか……? 正直、怪物だらけで気が引けるんですけど……」
匙がおそるおそる意見を言っていた。ヴリトラの神器持っているからな。
「まあ、要素のひとつとして来てもらうだけだ。大方のことは俺たちや二天龍に任せろ。とりあえずタンニーンと連絡が付くまで待っていてくれ。俺はシャムハザと対策について、話してくる。おまえらはそれまで待機。バラキエル、付いてきてくれ」
「了解した」
アザゼル先生とバラキエルさんはそう言って大広間から出て行く。
残されたオカルト研究部と生徒会。黒歌たちに、そしてヴァーリたちの面々。
「赤龍帝!」
美猴が手を挙げる。
「なんだよ?」
「この下にある屋内プールに入っていいかい?」
軽い質問に俺は返す言葉に困る。
その後はリアスが『デレデレ姫』と言う呼び名に対して美猴を叩いて一悶着が起こったりする。
「こ、これが失われた最後のエクスカリバーなんですね! はー、すごーい」
「ええ。ヴァーリが独自の情報を得まして、私の家に伝わる伝承と照らし合わせて、見つけてきたのですよ。場所は秘密です」
声のする方へ顔を向ければ、イリナとアーサーがエクスカリバーについて話していた。
イリナって本当に誰とでも打ち解けるな。
横では木場とゼノヴィアが警戒しながらも二人の話を聞いていた。
剣士としてはやはり気になるんだろうな。
俺の視界にもう一組のやり取りが映った。
「白音♪今回は一緒にゃん♪」
「はぁ……」
小猫ちゃんと黒歌か。何気に共闘は初めてだからな。
「……黒歌、小猫ちゃんも。生きて終えたらご褒美あげるよ」
「にゃーん♪それ本当?じゃあたっぷりエッチなことするにゃん♪」
「……姉さまにばかりはさせません」
……あはは。
黒歌と小猫ちゃんとのプレイは描けた時に出します。
感想、評価是非よろしくお願いいたします。