ヴァーリがロキを睨むと同時に、鎧の各宝玉が七色に輝き始めた。
「我、目覚めるは───」
〈消し飛ぶよっ!〉
〈消し飛ぶねっ!〉
「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり───」
〈夢が終わるっ!〉
〈幻が始まるっ!〉
「無限を妬み、夢幻を想う───」
〈全部だっ!〉
〈そう、全てを捧げろっ!〉
「我、白き龍の覇道を極め───」
「「「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おう────ッ!」」」」」」」」」」
『Juggernaut Drive!!!!!!!!!!!!
親フェンリルの口に捕らえられたヴァーリから大出力の光が溢れ、フェンリルの体躯ごと呑み込んでいく
「美猴!俺とフェンリルを予定のポイントに転送しろッ!」
「はいよ、こういうのは黒歌の方が得意なんだがねぃ」
光を放つヴァーリは美猴にそう叫ぶと、美猴は手をヴァーリに向けて指を動かす。
すると、魔法の鎖グレイプニルがヴァーリの方に転移され、やがて巨大な光と化したヴァーリとフェンリルを魔力の帯らしきものが包み込み、夜の風景に溶け込むようにこの場から消えていった。
おそらく、何処か別の場所でフェンリルを倒すつもりなのだろう。しかし予定のポイントって……。
「朱乃!」
突然聞こえたリアスの叫び声!
振り向いてみると、子フェンリルの一匹が朱乃に噛み付こうとしていた!やらせるかッ!
俺は背中のジェットを最大級に噴かして子フェンリルに向かっていく!
「隙ありだな!」
「そうはさせん!」
「その通りです!」
ゴオオオンッ!
タンニーンさんの火炎とロスヴァイセさんの魔術がロキの魔術を打ち消す。
その間に俺は神速移動で距離を詰めるが、子フェンリルの牙は朱乃に襲い掛かる寸前だった。
「朱乃ォォォォォォォォォッ!」
子フェンリルの牙が朱乃に迫る……。
ザシュッ!
肉に牙が突き刺さる音。
子フェンリルの牙の餌食となったのは───朱乃を庇う形で背中から貫かれたバラキエルさんだった
「ごふっ!」
「父さまッ!」
バラキエルさんの口と傷口から大量の血がこぼれる。くそっ!
俺はすぐに子フェンリルを殴り飛ばし、離れさせる。
アーシアに回復のオーラを飛ばすよう指示を出し、アーシアから放たれた淡い光がバラキエルさんを包む。
いい加減限界だな。霸龍でいくか……そう俺が考えたとき。
「ん、なんだ?朱乃から何かを感じる……これは……女語翻訳を使うか」
俺は朱乃に女語翻訳を発動させる。すると───。
『私は姫島朱乃の胸の内の声ではありません。──私は愛欲の精霊です』
…………は?
『私はこの娘を介してあなたに話しかけているのです』
……ええええ……。
『私は全ての愛欲を司りし神──色愛神さまに仕える精霊です。あなたのとても強い女への渇望が私を呼び出したのです』
そんなバカな……。
「タンニーンさん!」
「なんだ!何か起きたのか!?」
「色愛神さまって、どこの神話体系の神さまかな!」
俺の問いかけに別の場所で戦っていたタンニーンさんは、開いた口がふさがらない様子だった。
……いや、この場にいる全員が間の抜けた表情で戦闘を中断させ、俺に視線を集中させた。
「…………リアス嬢ッ!あいつの頭に回復をかけてやってくれぇッ!」
「イッセー、しっかりして!幻聴よ!あぁ、なんてこと!フェンリルの毒牙が赤龍帝の精神にまで!!」
完全に混乱しているリアスとタンニーンさん。
違うんだって‼
『い、いや、皆聞いてくれ。確かに俺にも愛欲の精霊とやらの声が聞こえる……。俺の知らない世界の力を感じる。とても驚く結果だが、こいつは異世界の神を呼び寄せてしまったらしい』
ドライグが俺の弁明をする。それを聞いて皆信じてはくれたらしいが何ともいえない表情になる。
『よく聞きなさい、色龍帝よ』
……何ですか、ホントに……。
『この巫女を介して、色愛神さまの力をここに降臨させるのです』
なんかおかしなこと起こりそうだな……。
『愛を求める者に色愛神さまは慈悲深いご加護を与えます。きっと役に立つでしょう』
パァァァァァッッ!!
深紅龍帝の鎧の全宝玉が光り輝き、ミョルニルが極大の光を発し始めた。
『色龍帝よ。聞こえていますか?色龍帝よ』
例の愛欲の精霊がイッセーに語りかける。
『色愛神さまの加護をいまこそ、あなたへ──』
ゴオオオオオオオオンッ!!
『モテモテドラゴンよ。いいですか、色愛神さまからの力の付与は一度のみです』
ミョルニルから、相当な波動が伝わってくるのを感じられる。俺やヴァーリの力を遥かに超えるモノだ!
「覚えの無い神格の波動を感じるな。異世界の──色愛神?今回の赤龍帝は不思議がいっぱいだな!」
ロキはそう言うとマントを広げ、再び自身の影を拡大させる。そこから量産型ミドガルズオルムの一団が現れる……今度も五匹か。
そんなとき、俺の視界に黒が映り込んだ。
ブオオオオオオオオオオオオオンッ!
黒い炎らしきものが地面から巻き起こり、うねりとなって、ロキと子フェンリル二匹、量産型ミドガルズオルムを包み込んだ!
今度は何事だよ!?
「──ッ! この漆黒のオーラは!? 黒邪の龍王 プリズン・ドラゴンか!?」
ヴリトラ? 匙か! なんとなく匙のオーラの質に似ているな。でも、炎まで持っていなかったぞ、あいつ。
地面に現れた巨大な魔法陣。その中心から、黒い炎がドラゴンの形となって生みだされていく。
『兵藤一誠くん。聞えますか? 私はグリゴリの副総督シェムハザです』
──っ。
緊急用に耳につけていたイヤホンマイクから、聞き覚えの無い声が。ああ、先生の同僚の方だ。
「どうも。あのでかい黒いドラゴンを送ってくれたのはシェムハザさんですか?」
『ええ。アザゼルに匙くんのトレーニングが終わったら、こちらへ転送するように言われましたから』
「あれ、やっぱり匙ですか!?」
あらら、まるで炎のドラゴンじゃないか。真っ黒だよ。黒い炎がドラゴンを形作っている感じだ。あれがヴリトラなのか。
『ええ、アザゼルが少々計算ミスをしてしまったようでして。トレーニングを開始したのですが、このままの状態になってしまいまして。時間が来たので、この状態のまま送ってみることにしたのです。まあ、敵と味方の区別だけはついていうようですね』
結果オーライですか! うーん。堕天使って大胆だよな。
「何やったんですか?」
『彼にヴリトラの神器を全部くっつけました』
また、そんな無茶を……。
口元を引きつらせる俺へ服装得さんは続ける。
『ヴリトラは退治されて神器に封じ込まれるとき、何重にもその魂が分けられてしまった。そのため、ヴリトラの神器所有者は多いのです。だが、種別で分けると「黒い龍脈」、「邪龍の黒炎」、「漆黒の領域」、「龍の牢獄」、この4つです。これらの神器が多少の仕様の違いで各所有者に秘められていたのですよ。そして、我が組織グリゴリが回収し、保管していたそれらのヴリトラの神器を匙くんに埋め込みました。あなたとの接触でヴリトラの意識が出現していたのですべての神器が統合されるかもしれないとアザゼルは踏んだのです』
なるほど、それで先生は匙を連れて行ったのか。
『結果、神器は統合され、ヴリトラの意識は蘇りました。──が、蘇ったばかりで暴走してしまったようですね。しかし、匙くんの意識は残っているようなので、あなたがドライグを通じて語りかければ反応するはずです。あとはあなたにお任せします。できますか?』
「……ええ、なんとかやってみます。いざとなったら、力尽くで匙を止めます」
匙──ヴリトラの黒い炎がロキと子フェンリル二匹、量産型ミドガルズオルムを包み込み、その動きを封殺していた。炎が意思を持つかのように蠢き、蛇が巻き付いているように見えた・
「くっ! なんだ、この炎は!? 動けん! ……ぬぅ! 力が徐々に抜けていっている!? これはあの黒いドラゴンの力か!? 特異な炎を操る龍王がいたと聞いたことがあるが、まさか、これがッ!」
ロキも狼狽している様子だった。子フェンリルと量産型ミドガルズオルムが炎のなかで暴れるが脱出はできそうになかった。
『ヴリトラは直接的な攻撃よりも特異な能力を持っていました。パワーは龍王のなかでは弱いかもしれませんが、こと技の多彩さ、異質さは随一でしょう』
「……すごいな。あの、副総督。他にもヴリトラ神器があるなら、同じことをして量産できないんですか?」
『可能性はゼロに近いでしょう。もともと神器をあとから付加するのは危険な行為でして、下手をすると死に至ります。しかし、今回のケースはあなたと匙くんがお友達で、お互い通じ合えたからこそ、ヴリトラの意識は奇跡的に復活できたのです。同じ経緯で同じ現象が起こるかどうかは難しいところでしょうね。ちなみに新たな力を付加してもうちに眠る「悪魔の駒」は変動していません。基本ベースは「黒い龍脈」ですからね。彼自身の生身のステータスも特に変化しないでしょう』
匙限定か。ヴリトラパワー、また厄介な力を手に入れるとはね!
『それはともかく、あの力はいまの匙くんでは長続きしませんよ。敵が封殺されている間に早く倒してしまいなさい』
「了解!」
よし! だったら決着つけようか!
俺はミョルニルを手にして巨大なハンマーに変えた!
言われたとおり、羽のように軽い!
他の皆が子フェンリル、量産型ミドガルズオルムに多大なダメージを与えていくなか、俺は自分の神器を通して、匙の意識へ接触を試みる。
『匙、匙聞こえるか?』
『……………うぅ。ひょ、兵藤か……?俺、今どうなっている……?なんだか、とてつもなく熱くて体が燃え尽きてしまいそうなんだ……』
『意識をしっかり保て!せっかく格好良く登場したんだから、最後まで仕事をしてからぶっ倒れてくれ!』
『……どうすればいい?』
『周りに何か見えるか?』
『……黒い炎の中に、デカい狼やら細長くて大きいドラゴンが見える……』
「そいつらをそのまま繋ぎ止めていてくれ。そう念じればいいと思う。とにかく、強く思え!あと、人型の相手もいないか?』
『……いた。……なんだか、得体の知れない魔術か何かを感じる。それで黒い炎を消し去ろうとしている……』
『そいつは敵の親玉だ!消し去られるな!強く念じて、そいつを繋ぎ止めてくれ!後は俺が決着をつけるからよっ!』
ハンマーを握りしめた。
バチッ!バチッ!
今度こそ、雷が宿った!いくぞっ!
「く、来るな!来るなァァァァッ!」
ボオウンッ!
焦りを見せたロキが炎を打ち破って、空中高く浮かび上がる!
「くぅっ……!我にここまで恥をかかせるとは!覚えておくが良い!三度ここに訪れて混沌を──」
ビガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
特大の雷光がロキを包み込んだ!
俺が後ろを向くと、朱乃とバラキエルがお互いに手を握り、黒い翼を出していた!親子の雷光攻撃か!
匙がもう一度、ロキを呪いの炎で包みこむ!
『……やれ、兵藤っ!!』
ああ、任せろ!
「ハアアアアッッッ!俺式ミョルニルゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
巨大化したハンマーの頭がロキの全身へ完全に打ち込まれる!
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!!!』
『Transfer!!』
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
遥かに高めたパワーをミョルニルに送り込んだ!
刹那、ミョルニルから特大の雷が発生し、ロキを呑み込んでいった。
ロキの体が──大きく煙をあげた。その姿はすでに崩れていた。地面に墜落し、気を失ったようだ。二匹の子フェンリルとミドガルズオルムも倒された。……勝った、か。にしても色愛神ね……異世界の神、か。
もっとイッセーをチートに出来るよう考えていきます!