※この作品はR-18です。

両想いIF   作:夢枕 七変化

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バースデーイベント(side)

 イベントとか、そういったモノに振り回されるのはどうなんだと思わなくもねェ。だが……それがナミの誕生日となれば話は別だ。

 何か……ナミが喜びそうな物を。役立ちそうな物を用意してやりたい。

 俺からこの間やったのは、結局悦んだのは俺の方で、チョッパー達に叱られちまったしなァ。そんな事を考えていたら、歌声が聞えてきた。

 創作曲なのか、ナミ以外の誰にも歌えそうも無いような歌詞に小さく笑う。同時に、不安にもなる。

 ここにいるより、実家に残りたかったんじゃねェのかなと。俺は、ナミを追い詰めたりしてねェだろうかと。

 歌いながら水やりをするナミを見つめていたら、焦燥感に苛まれちまう。……俺の傍に居ろよ、俺の剣で守れる距離に居てくれよ、ナミ。

 歌い終えるのと同時に水もあげ終えたのか、その細い体を衝動的に抱き締める。それに無意識なのか甘えるように擦り寄るから、俺はその温もりを逃げられないように強く抱きしめちまう。

 

 「帰りたくなったか?」

 「何処に?」

 

 キョトンとした顔を向けられて、俺はその唇を衝動的に奪うように重ねていた。何処にも行かないでくれ。

 そんな凶暴とも言える俺の行動をナミは優しく受け止め、唇の隙間で優しく笑う。ゆっくりと紡がれた言葉が、耳朶を掠めるように届く。

 

 「……ばかね……」

 「ん?」

 「私の帰る場所は、ここだけよ」

 

 俺の腕の中を帰る場所だと言ってくれるのなら、俺が全力で守ろうと誓う。俺はナミを、愛してる。

 思わず強く抱き締めすぎたのか、ナミから苦しそうな声が聞こえたが……その顔は俺を気遣うようなものだ。だからこそ、俺は贈り物を決めたんだ。

 ……ナミお前、筋肉つけろ。そうだ、この間ダンベル1つ持ち上げらんなかったよな。

 このままじゃ駄目だ。ナミを鍛えさせねェと。

 俺には軽過ぎるダンベル等を磨いて、新品同様に戻してからナミに渡そうと決める。ロビン辺りに言えば、リボン位なら有るだろう。

 そうして暫くナミを抱き締めていたが、飯だと声が響けば離すしかなくて食事をしに向かう。その途中でロビンを見付けて声をかけた。

 

 「ロビン、ナミにプレゼントやりたいんだが、リボンとかあるか?」

 「あら、ラッピングして貰ってないの?少し待ってて、何かあるか見てくるわ」

 

 声をかければ楽しげに笑って部屋に帰って行く。それを見送れば後は飯だなと朝食に向かった。

 うん、今日も安定的に美味そうだ。ナミはコックと親しげに料理について話をしていて、本当にコックはこんな時楽しそうだ。

 飯は相変わらず美味いが、気分は悪ィ。ナミの視線は、中々俺を捕えねェ。

 少し困ったように笑ってるナミは、本気で大した事はしてないつもりなんだろうな。……本当に、気に食わねェ事も多いが、コックが仲間になってくれて良かったと思うのはこんな時だ。

 それ迄は飯作るのも何するのも、全てナミだったからな……。ふと思い出すのは、出逢ってから今までに起きた多くの事。

 その中でも、記憶を失っていたナミが見せた怯えた瞳がどうしても印象的だ。……結構唆られるものは、あったよな。

 

 「ゾロ……聞いてる?」

 「ん?あぁ、ロビンか。どうした?」

 「……リボンがあったから、あげるわ。どうしたの?」

 「ナミが、短時間だけだが記憶を失った事があったんだよなって思ってな」

 「……チョッパーが大変だったわね」

 

 帰ってからの騒動を思い出せば、溜息も落ちる。そんな俺達に視線を向けたナミは、楽しそうに笑う。

 ……そこは、少しくらい妬いとけよ。仲間とはいえ、異性だぞこら。

 無駄なのは分かってるが、何となく俺の独り善がりなんじゃねェかって思っちまう事が多い。ただ、流されて受け入れてくれてんじゃねぇかって……不安になるんだ。

 修行が足りねェからこんな事になる。修行するか。

 ロビンから受け取ったリボン片手に、俺は雑巾を持ってトレーニングルームへと向かう。ダンベル等の中でも殆ど重さなんて無いようなそれを磨いて、リボンで繋ぐように縛って行く。

 幾つか纏めたところで、纏めたら持てないかと少し考えたが、まァ……何とかなるだろ。そう思ってついでだからと自分が使う物も磨いていたら、ナミが顔を覗かせた。

 

 「少し休憩したら?って、あら……トレーニング用品磨いてたんだ」

 「おぅ……」

 「なら、刀貸して。研いでおくわ」

 「……研げるのか!?」

 「私も剣を使うのよ。本格的には無理だけど、それなりには出来るわよ」

 

 言われて見ればそうかと思い刀を差し出すと、あらなんて言って困ったような顔をする。……そっか、妖刀だもんな。

 

 「無理そうか?」

 「私に触られたくないって、言われなきゃ大丈夫だと思うわ。ゾロは、トレーニング用のそっち、続けてあげて。いつもお世話になってるんだから、たまにはちゃんとしてあげなきゃね」

 

 そう言って笑ったナミに、ならと思って任せちまう。考えてみれば、阿呆みたいに身の回りの物を大切にしてるナミなら、できて当然か。

 ……その割には、結構自我の強いご立派な剣でリンゴとか剥いてるけどな。そう思いつつナミが持って来てくれた物を見れば、軽食と飲み物でそれを口に入れて気付く。

 

 「これ、ナミが作ったのか」

 「なんで、分かったの?」

 「コックはサンドイッチ作る時、野郎共にはパンにカラシ塗ってんだよ。水分染み込ませねぇ為にってな」

 「あら……カラシの方が良かった?」

 

 言いながらナミは丁寧に刀を研いでいく。その姿に少し笑っちまう。

 視線も意識も全て刀に向けてんのに、会話だけはしてくれるんだな。俺はナミに、何を返せるだろう。

 それにしても、ナミの愛用してる武器達の凶暴性どうにかならねェだろうか。ナミ以外が触ろうもんなら、本気で暴れそうな程に気が強ェ。

 その癖ナミに触られてる間は、完全に猫被ってやがる。林檎や梨の皮剥きに使われても、気にしねェ位だもんな。

 そこで気付く、あの時ナミの肩を斬り裂いたのがその短剣じゃねェのかと。……辛かっただろうな、自分の愛する主人を自分が傷付けたのは。

 

 「ナミも、武器達、大切にしてやれよ」

 「そうね。いつもお世話になってるから、出来ることはやるつもりよ」

 

 笑うナミに、小さく息を吐き出して俺はまた、ダンベル磨きに意識を集中させた。夜になりナミを祝う為の宴が始まれば、ナミは完全に忘れていたらしく驚きを示すから皆で笑っちまう。

 無防備な顔で、それでも嬉しそうに笑ってくれる。それでも、戸惑い瞳を揺らすから難儀な奴だよと思い苦笑が漏れた。

 それぞれがナミに言葉と共に物を渡す中、俺もナミに用意した物を渡せば1瞬その場の空気が凍った。なんだ?

 

 「……ナミは少し鍛えるべきだと思うぞ。剣だってそれなり以上に使えんだから、後は筋力だ」

 「てめェみたいな筋肉マリモと、デリケートなナミさんを1緒にするんじゃねェよ!!馬鹿か!!」

 「あーう!流石の俺様も反応に困っちまうぜ、ゾロ、お前ェ……本気か?」

 

 コックとフランキーに言われて、なんだよと少し思う。その時場の空気を和ませる為か、ブルックが演奏を開始してナミが笑い出した。

 腹を抱えて笑うそれに、全員の視線が集まる。何がおかしかったんだ?

 

 「ゾロ、ありがとう。なんか、ゾロらしいわ。でも、これ持てない」

 「……非力にも程があんだろ。なら、どうするかな」

 「トレーニングルームに置いといて。私用の箱に入れておくから」

 「……お前、トレーニングルームに来るのか?」

 「星見るついでに、鍛えてみるわね」

 

 クスクスと笑うナミに、ルフィとチョッパーがナミってすげェなんて言って、ウソップが待ってろなんて言って箱を持って来た。丁度よさそうな箱にナミと書いて寄越したので、仕事が早いなと思う。

 

 「よし、早速今夜からだな」

 

 俺が言えば何故か皆が呆れたような顔をして、なのにナミは楽しそうに笑う。そうねなんて言いながら。

 

 「ナミ、誕生日おめでとう。生まれて来て良かったって思わせてやるから……すぐ行くぞ」

 

 Happy Birthday ナミ……男の言葉の意味を察知して赤く染った女は慌て出すが、掴まれた腕を振りほどくなんて選択肢は持たないだろう。大切な人の産まれた特別な日を、共に過ごせる幸福を男はこれから噛み締める。

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