夜景が綺麗で酒の種類が豊富なBARがあるらしいと言い出したのはフランキーだった。それに視線を向けて、ロビンと行けば良いだろうと言った俺にフランキーは呆れを隠さねェで言う。
「たまには小娘を酒場とかじゃなくて、オシャレな店にも連れてってやれよ。そして、そのまま泊まってこい」
「……後半が本音か。ったく、分かったよ。……貸しだからな」
そんな事を言った直後、ナミを誘った俺は現在2人で朝まで呑み明かすつもりで座っている。俺はロックやストレートで呑み、途中からは面倒だからとボトルで用意させてそれをラッパ飲みしてるが、ナミはカクテルを選んで楽しんでいるようだ。
メニューを見て、グラスを傾けて楽しそうにしている姿に、確かにたまにはこう言うのもいいかもなと思う。普段は俺と一緒になってラッパ呑みしたり、酒を回し呑みしたりしてるが、こういう姿を見ると場馴れしてるなと感心しちまう。
それにしても、カクテルってのは種類が多いんだなと、酒に何かを混ぜられるのが嫌な俺は、基本呑まねェから物珍しい気持ちでそれを眺める。何でも知ってて、その癖何も知らない無垢な女は、自らの抱えるその大きな矛盾を理解していない。
グラスに注いで呑むのは冷たい酒を呑みたくなった時で、他はボトルから直接呑む俺をナミは嫌な顔1つせずに楽しそうに見ている。その瞳にいつからだっただろうか、優しさだとか、思いやりだとかだけじゃねェモノが混ざったのは。
多分ナミが俺を好きだと認識するよりも、その瞳が変わった方が早かった。ナミは、自分の感情にすら鈍いからな。
まァ……あの壮絶な過去を思えば仕方ねェだろうがな。殺気や殺意等の直接的に命を脅かさない、他人からの感情に鈍感になるのはこの場合1種の防衛本能だ。
もしくは、他のところが進化し過ぎた対価だ。失明した人が味覚や嗅覚が発達するように、それらを鈍くして他の能力を上げた可能性は否めねェ。
「どうして、BARに?珍しいわね」
「ん?あァ……夜景が綺麗だって聞いたからな。ナミに、見せたかった」
「ありがとう」
ナミは嬉しそうに頬を染めて、俺を見る。……やっぱり呑み明かすのは辞めて、頃合見て部屋に連れ込むか。
酒代の事もあるから部屋まで金が回るかが心配ではあるが、如何せんナミが可愛過ぎる。貪りたい。
「私の書いた作品に〝白雪姫〟って言うのがあるのは知ってる?」
あァ……チョッパーが興奮しながら俺になんか言ってたな。童話だったから読んでねェが、内容はチョッパーから聞いてるので1応頷くと、ナミが嬉しそうに笑ったから今度読んでみるかと思わされた。
こういう時のナミの笑顔は少し幼くて、年齢よりも寧ろ幼く見える。何時もが大人過ぎるから、余計にその笑顔が貴重に思えちまう。
「それがどうかしたのか?」
俺の問い掛けに合わせるように、次の酒がナミの前に差し出される。それを手にしたナミは、明らかに俺なんかよりずっと大人びて見えて、それが少し遠く感じちまう。
「騙されて毒の林檎を食べさせられたお姫様は、王子様からの優しいキスで息を吹き返すんだけど……まぁ、実際には有り得ないわよね」
うっとりとした様子で話すナミに、こんな面もあったのかと思えば自然と笑みが浮かぶ。ただ、その瞳に憂いが無ければ良かったんだがな。
「好きな人からのキスで目覚めるとか、憧れるわ」
「キスで毎朝起こしてやろうか?」
ニヤリと笑う俺は獰猛な獣みたいになってるだろうに、ナミは嬉しそうに頬を染めるから調子が狂う。……こいつ、自分がどんな顔で俺を見てるかわかってねェんだろうな。
「……お願いしちゃおうかな」
朝から喰って良いって言ってるようなもんだぞと思えば、溜息の1つも出る。これでも、大切にしたいと思ってんだから、あんまり煽んなよ。
そんな俺にナミは笑ってから、風に当たってくると立ち上がるが、その体は揺れていて慌てて支えようと腕を伸ばした。だが、俺の腕をすり抜けるように倒れたその体は、床へと転がりその衝撃で頭を強打したのが分かる。
「ナミ!?」
慌てて抱き起こす俺に震える手を伸ばして、ナミが縋るように触れてくる。なんだ……?
本能が危険だと報せる。ナミが、無意味に甘えたり出来ねェ事は良く理解しているから余計に……。
「おい、ナミ!しっかりしろ!!」
「必ず……迎え、に、来て……」
何処にだよ!?巫山戯んな、その瞳を閉じるんじゃねェ!!
叫びたくなるのを抑えて、必死になって俺はただナミの名を呼ぶ。全身の毛が逆立っていそうな気がする程だ。
「ナミ!!」
「お、お客様、今医者を呼びました。部屋もご用意致しましたので、そちらでお休みください」
「あ?」
「あ、あの、店内での事故ですので、責任持って対応させて頂きます!」
「そうか、分かった」
案内された部屋の代金も、バタバタしていた為にまだ支払ってねェ酒代も含めて、払わなくていいと言う。……流石に怪しいだろ。
酒に何か仕込んであったなら、俺に効いてナミに効かねェ事があっても逆はねェ。だとしたら、なんだ?
いや待て、カクテルにする時に何か仕込まれたか?……だがそれなら、医者も部屋も用意しねェよな。
それに、ナミが気付かねェ筈もねェ。なんだってんだ?
「瘤の他はお体に異常はお見受け出来ませんが、何かありましたらお気軽にご連絡ください!あの、宿泊されてる間は料金等は気になさらなくて大丈夫ですので、本当にお気が「ナミに、何が起きてるんだ?」」
「そ、れは……」
「……何も無いにしちゃ、親切過ぎんだろ。悪意あっての何かじゃねェのは分かるから、さっさと吐いてくれねェか?」
俺は……コイツを守るって決めてんだよ。惚れた女の1人も守れねェで、何が大剣豪だ。
そして受けた説明はたまに突然倒れて記憶を失う人間が出て、その全員がカップルであり、記憶が戻る前に島を離れると思い出せなくなると言う話だった。……なら、ルフィにも連絡入れて、最悪ナミが治るまでこの島に滞在だな。
……まァ、そうじゃなくてもナミが居なけりゃ、船なんか動かせねェんだがな。医者と支配人が去った部屋で、眠り姫のように眠るその姿にそっと手を伸ばす。
「早く……起きろよ」
生意気な口調で、その癖俺を見て優しく笑うお前の素直になれないその姿を見せてくれ。ふとした瞬間に甘えて来る猫みたいなお前が、俺は何より愛しいんだ。
その時ナミの瞼が微かに痙攣して、何事もなく目覚める事を祈りながらその手を握る。けれど、ゆっくりと開かれた瞳に俺が映ると、その願いが叶わなかった事を悟っちまう。
初めて会った時でさえ、その瞳には優しさが見え隠れしていた。俺を〝ルフィの仲間〟だからとは言え、大切に想ってくれている事が伝わってきていたってのに……。
「嫌っ!……だ、れ、ですの?」
俺の手を振り払いベッドの端まで怯えを隠さずに逃げる、こんな女、俺は知らねェ。初めの頃、まだアーロンに支配されていた頃でさえ、ルフィの為にと敵に向かい、ウソップを背に庇い戦って居たってのに……こんな〝弱い女〟を俺は知らねェよ。
「ナミ……じゃ、ねェのか……?」
「……
「俺は、俺のナミしか、知らねェ。だから、戸惑ってる。お前は、誰だ?」
「私……は……」
俺の問い掛けに〝ナミ以外の誰だってのよ!?〟と返してくれるのを期待していた。だが、言葉を失い顔色を失うそれは、俺の姿を見ただけで怯える村人のそれでしかねェ。
……姿も、香りも、ナミのままだってのにな。どうしてだろうか、俺が〝守りたい〟女じゃねェし〝抱きたい〟女でもねェと思っちまうのは。
「どうしたら……」
「え?」
「ナミ、お前はどうしたら帰ってくるんだ?」
「私は、ここに……」
違ェと首を横にふれば、悲しそうにナミと似た奴がその瞳を細めた。その表情はナミと似ていて、余計に切なくなる。
「お前もナミかも知れねェが、少なくとも〝俺のナミ〟じゃねェ。……分かってんのにな、どうやって迎えに行けば良いのか、解らねェんだよ」
「……貴方は、私の、恋人でしたのね」
「そうだ。なんで、わかった?」
「幾度も〝俺のナミ〟と仰っていましたもの。分かりますわ。……それ程想われていた〝私〟が少し、羨ましく思えますわね」
寂しそうに揺らすその瞳が、何故か付き合い始めの俺をまだ信用しきれてなかった頃のナミと重なる。甘えていいのか分からずに、躊躇っていた頃のナミと……。
まさか、俺を想ってくれてるのか?記憶も無ェってのに……?
その動揺を隠す為に、俺は笑う。まァ……有り得ねェよなと、自嘲してるとも言えるんだろうが。
「今のナミも可愛いとは思うぜ?でもな、俺が愛してる女はもっと強くてよ。……強いから、脆いんだ。砕け散らねェように、守ってやるって、決めてんだよ」
「……幸せ者ですわね、その〝ナミ〟は」
「……そうでもねェぞ。俺はしつこいからな。絶対に手放してやれねェ」
ふと視線を向ければ、俺を見ているナミもどきの瞳に憧れのような色が見えて、ドクリと胸が高鳴る。その為か無意識で手を伸ばして、戸惑いをその瞳に映すナミもどきを抱き締めていた。
「あ、の……!」
「黙れ。声も、見た目も、香りもナミだからな……俺をわかってねェと知ってて、犯したくなる」
「そんな、勝手な……!」
「忠告は、したぞ……」
自分でも驚く程に低い声が出て、何も考える事が出来ないままナミの両手を1纏めにしてベッドに縫い付けると同時に、深いスリットから手を入れる。ビクリと揺れるその体は、突然押し倒した時のそれと変わらねェ。
小さく体を震わせるのは、俺が怒ってる時に押し倒した時以外ではなかなか見られねェ反応だが……俺を分からねェ今はその反応も正しいんだろう。そんな事を考えながら服を脱がせ、その体に食らいつけばナミは力じゃ絶対ェかなわねェと分かってる筈なのに抵抗して来る。
……いや、今は分かってねェのか。なのに、俺を傷付けるような抵抗は出来ないのかよ。
「や!おやめ……くださ……いぁっ!?」
「忠告はしただろ。それと……今更止まれねェ」
いつもと同じ香りがする。体の反応だって同じだ。
いつもなら、恥じらっていたとしても俺を熱の籠った瞳で見詰めてくれるのに、今はその瞳に怯えと哀しみを宿している。それでも、抱けば思い出すんじゃねェかと思うのは、反応が同じだからだ。
記憶としては覚えてなくても、体は覚えているなら思い出すかも知れねェ。それに……縋る思いでナミに己を入れようと服を脱ぎ捨てたら、ナミが俺を凝視して来た。
「……どうした?」
「あ、の……そ、れ、は……」
視線を辿れば滾ってるモノがあって……怯えを隠せもせずに震えるその様子に、なんか前にも見た顔だなと思う。……あァ、入らないって騒いだ時だ。
「それ、どっ……!?「ナミに入れるに決まってんだろ」」
「む、り!!嫌!そんな大きいモノが入る訳ありませんわ!!いやぁぁぁ!!」
「大丈夫だ。いつも入ってたんだから安心しろ」
「な、にも……!安心出来ませんわ!!」
ナミのその反応が余計に俺を滾らせるから、なんだかんだ言っても準備万端になってるナミにそれを宛てがい、ゆっくりと挿入する。その瞬間声の質が変わり、戸惑いと怯えと、抑えきれない快楽とでナミがその瞳を揺らす。
弱いところは知り尽くしているから、初めは優しくしてやろうとしていたが……抑えていた手を離して腰を掴んだ直後に、ナミが俺に腕を回した事で理性が切れた音を聞いた気がした。
どちらの呼吸音なのか、どちらが原因の淫靡な水音なのか、それさえも分からずに俺はナミを獣の方がまだ理性を持ってんじゃねェかって勢いで責め立てる。弱い所を擦り、ビクビクと痙攣してもう少しだとなると動きを緩めてもどかしさを与えてやれば、いつものナミと似たような表情を浮かべた。
「……記憶があっても無くても、俺にとってナミが愛しい事に違いはねェらしい」
俺の言葉に息を呑むナミに、王子じゃねェが我慢しろよと囁いて答えも聞かず、強引に唇を重ねれば辿々しい動きで返されるナミの反応。……帰って来い、俺のナミ。
「んっ……ぁ……ぞ、ろ……」
その瞬間唇を離して、ナミの顔を覗き込めば、熱の篭ったその瞳に情けねェ顔した俺が映っているのが見て取れた。……帰って来た、俺のナミ。
「ゾロ……突然、されたら
「迎えに行ってやったんだ、文句は受け付けねェよ。それに……まだ、ナミをイかせてねェだろ」
「もう!馬鹿!」
真っ赤になって悪態つくそれに、本物だと笑う。愛しさが溢れて、泣きそうになるのを耐えながら再びキスをすればその隙間で小さく待ってなんて、無理な事言いやがる。
「ゾロ……私ね、きっと……何度忘れても、何度でもゾロに恋をするわ。だからお願い、何度でも迎えに来てね」
「……断る」
「え?」
「次は迎えに行かずに、殺して追い掛けてやるよ。……こんな事が何度もなんて、耐えられねェ」
俺の返事にナミは悲しそうに眉を寄せて、情けねェ顔になって、それでも可愛いってどんな魔法だよと思わされている間にナミは俺に抱き着いてきた。その上で、耳元に唇を寄せたナミが、悲しませてごめんねと囁く。
悲しかったのかさえよくわからねェけど、俺はこのナミが欲しい。だから俺はそのままナミの体を強く抱き締めて、大人しく抱かれてろと命じるように願う。
珍しく素直に頷いたナミに、俺の欲望が尽きる迄付き合わせ、声が出なくなる迄鳴かせたがこれは不可抗力だろう。俺にはナミが、どうしたって可愛い上に、俺が俺として生きる為には必要不可欠な存在なんだと強く思いながら、全力で甘え倒していた。
動けなくなったナミを連れ帰ったら、ロビンに容赦無くクラッチされた他、チョッパーに鬼の形相で叱られたが……。ナミが可愛すぎたのが悪ィだろうがよ。