※この作品はR-18です。

両想いIF   作:夢枕 七変化

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イースターイベント(side)

 昼寝をして居たら蜜柑の香りがして視線を向ける。だが、妙な霧が出ていて、その姿が良く見えない。

 そんな状態でも、ナミの様子がおかしいのには気付いたので慌てて駆け寄ると、目の前で崩れ落ちる身体。そっと抱き留めると蜜柑の香りが強く、体調が悪いのだと分かっちまう。

 なのに支えられる事に抵抗するから、甘えだとか、迷惑だとかそんな事考えてるんだろうと当たりを付けた。……どうしてナミは、賢いのに馬鹿なんだろうか。

 

 「この程度、甘えには入らねェよ」

 

 泣きそうな顔で俺を見るナミを抱き上げて、船内に運び込むがこの場合チョッパーの所が良いかと診察台に運ぶ。その様子にチョッパーが心配そうにして、ロビンがナミの負担を減らすべきだと言い出した事で、近くに見えている島へ泊める事が決まった。

 海上ではどうしたってナミが働く必要が出てくるからな。その時ナミが俺を見て困ったように笑ってから、思いついたように言った。

 

 「私、イースターのイベントやりたいの」

 「イースター?」

 

 聞き慣れない単語に首を傾げて問い掛けると、ナミは楽しそうに笑って頷いた。それは、本当に楽しそうな様子だ。

 

 「兎と卵のイベント。詳しくはWebで!」

 「〝うぇぶ〟ってなんだ?」

 「言い間違えたのよ。机に出版したくて書いたの置いてあるから、それを見てくれると助かるわ」

 

 俺の問い掛けに笑って誤魔化したナミの頭を撫でてやると、変な感触がある。……なんか、ふわふわして……?

 思わずナミの顔を見れば、ナミも思い当たる事は無いらしく動揺した様子だ。その時ナミの頭上から顔を出したのは、真っ白毛に覆われた耳。

 ……普通、髪の色と合わせるだろと思ったが、どうやらそんな常識はいらないらしい。だが、いや、疲れてるとか、寝ぼけてる可能性もある……よな。

 似合い過ぎるその耳に、劣情が刺激される。喉が、ゴクリと音を立てるのを自覚しつつ、脳内で煩悩退散と唱えてから言葉を口にする。

 

 「頭の上にあるものは……目の錯覚か?」

 

 俺の言葉に反応したのか、ナミはバタバタと駆け抜け……そして、鏡を見て悲鳴を上げた。どうやら、俺の目の錯覚や妄想ではなかったらしい。

 混乱して慌てる姿まで可愛いとか、俺をどうしたいんだ。今すぐ兎を好きに食い散らかせと言いたいのか。

 

 「似合うし、いいんじゃねェか?」

 「似合う似合わないの問題じゃないでしょ!?何なのこれ!?」

 「うさ耳と呼ばれるものだろうな」

 「そんなのは分かるわー!!」

 「あ、尻尾もあるな。感触とかどうなって……」

 「触るな変態!!チョッパー!ロビン!助けてー!!」

 

 半泣きでチョッパーに抱き着く俺の兎は、似合い過ぎてどう対応したらいいのか分からない程だ。本人は猫が正しい姿だと思うと言っていたが、兎で合ってるだろ、ナミの場合。

 駆けつけてきたロビンも黒い毛に覆われたうさ耳を生やしていては、何あるらしいと思うのは当然で、妙に冷静なロビンを筆頭に調べてみれば海域の問題らしいと分かる。体調を崩すかは、体質の関係らしく2分の1程度の割合とのと事だ。

 

 「結局、この後どうしたらいいんだ?」

 「海に発生した霧が落ち着けば、自然と元に戻るみたいよ。でも、獣人とかと勘違いされて捕まるリスクを考えたら、私達は船にいるべきかしらね」

 

 俺の問い掛けにロビンが答えれば、チョッパーは2人が心配だがら残ると言い出して、食材の買い出しはコックに、他の買い出しはフランキーやウソップへと託される事で決まった。ナミから頼まれた買出しのそれを見ながら出掛けたメンバーは、声を揃えて言う。

 

 「「「ゾロはナミが出掛けられねェんだから、大人しくしてろよ!!」」」

 

 因みに、ウソップ、ルフィ、フランキーの声だ。コックはナミさんに迷惑をおかけするんじゃねェぞと騒ぎ、ブルックは気分を和ませる為にも、宴の為にもと言って先程から何やら演奏している。

 俺としては刀を見に行きたかったし、酒も呑みに降りたかった。ついでに少し酒を買って帰り、ナミと呑むのも悪くねェと思っていたんだがな。

 だが確かに、戦闘員と呼べる人間が不在では危険かと甲板に転がった俺は、1眠りする事にした。敵が来ればその殺気で自然と目覚めるからと、迷う事無く眠りに落ちて行く。

 その後帰って来た面々の騒がしさで目を覚ますと、体調の回復したナミの指導でコックは料理を、ウソップとフランキーは卵にペイントを施し始めた。ルフィとチョッパーが、完成したそれを我先にと隠して回る姿は何とも楽しそうだ。

 ロビンは2人を見守りながら、隠された筈のそれを少しずつ移動させて分かりにくくしたり、探す時に覚えていても見つけられないように細工していく。ブルックはそれをやる間に演奏する曲を吟味していて、それはそれで楽しそうにしている。

 だがそうなると兎だけ何も関わって無いなと気付いた。卵を探して遊ぶなら、兎は捕まえて食えば良いのだろうか。

 そう考えていた俺は、翌日ブルックが明るい曲を演奏する中で始まったエッグハントの中で1人だけ、ラビットハントを行うと決める。だが、追いかけ回す俺にナミは困惑を隠さない。

 

 「ちょっと、ゾロ何して!?」

 「兎を捕まえれば良いんだろ?」

 

 ひょいひょいと避ける兎を追いかけ回しながら問い掛けに答えれば、卵を探すのよ!と怒る兎に、なら兎は何をするんだと聞けばそれは飾りの1つでしかないとか色々言われるが……。

 

 「捕まえた兎は捕まえた奴が食っていいんだろ」

 「何それ!?それって単なる兎狩りじゃない!!」

 「いいな、それ。俺様もそれをやるかな」

 「あら、私を捕まえられると言いたいの?世界政府にも出来ないのに?」

 

 俺とナミのそれにフランキーが便乗すれば、ロビンがそれに対して鼻で笑った。その結果始まった兎狩りは既にイースターとはかけ離れているのかも知れねェけど、いい運動と修行になるからと気にせず続行する。

 ぴょこぴょこと逃げ回る兎は、あまりにも似合いすぎるその姿で俺の理性を打ち砕こうとする。なのに、そんな事はしてないと責任逃れをするのだから、始末に悪い。

 

 「……フランキー、先に〝自分の兎〟を捕まえた方が女部屋。後からのは見張り兼ねて見張り台でどうだ」

 「いいな、乗った!!」

 「「絶対、捕まらないわ!!」」

 

 兎が2羽、野獣と化した男達から逃げ回る。卵を探し回る子供達と、兎を追い回す野獣が2匹。

 兎肉のパイや、卵を使った料理を並べて程よく休憩しながら遊べよと煙草の煙を吐き出すコックに、楽しそうに演奏しながらそれらを眺めるブルック。平和な船の1コマは、きっと大人組には眩し過ぎる位だろう。

 やっとの思いで兎を捕まえた時には、動き過ぎて疲れ果てた様子を見せていて……同時に強まった蜜柑の香りが俺を誘う。悪戯兎は、無意識で俺を誘惑して居る事に気付かない。

 柔らかなその肉を、喰いたいと思って何が可笑しい。俺の兎……今日は兎と卵を喰う日だろ?

 Happy Easter……。捕らえた兎を抱き上げて、女部屋の鍵を閉める。

 今日はもう、心ゆくまで貪ろう。そんな考えを持っていた狼に兎は小さく……優しくしてねと鳴く事で、僅かに残っていた理性の糸を切り落とした。

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