嘘と偽り。
ただの主観的な話なので、別に聞き流してくれればいいんだけど。
例えば寮の部屋。
暮らし始めてわずか3ヶ月ながら、すでにもう我が家のように思える。
そうなる工夫がされているからだ。
お気に入りの小物を置いて生活のしやすさを追求したり、あぁ、同居人はどうでもいい小物を置きすぎだから。
また注意しておかなきゃ。
それはそれとして一番の仕掛けがカーテン。
模様も何もない淡い緑色というのがこだわり、というか実家と同じなのである。
部屋に入れば否が応にも目にする、室内で一番面積の大きい部分を実家に似せたことで、いわば人工的に既視感を作り出しているだ。
簡素すぎるって言われたこともあるけれど、昔からそうなのだし。
それに、あちらも別に花柄大好き女の子って柄でもないので文句も特になかったし。
入居当時、同居人はろくに帰って来ない中、1人の寂しさもこれで随分紛れた。
こういうのが嘘と私は定義したい。
後天的、というか生じた時点から遡っては効果を発揮しないもの。
ついたその先が一変するもの。
それでは偽りはというと、例えば戦車道。
乙女のたしなみがどうとかは、納得はしてないけど諦めたからもういいわ。
今回はその手の有り難みの話ではなくて、実際の強さというか出場校数の話。
例えば野球は中継もやるわけだし国民的スポーツ、平たく言えば誰もが知っている。
言い換えればつまり、どの学校でも大体野球部はある。
だから甲子園だとか、国立もそうだけどその頂点と言えば注目もされる。
じゃあ花園、は、まだ有名な方だろうか。
では天竜ボート場は?
端艇部というものを知っているかしら。
我が県は関わる学校数で言えば全国有数の県なので私としては馴染みもあるのだが。
……こういうのも嘘の方ね。
格好いいことを言いたかったけど、本当は私も小さい頃は知らなかった。
たんてい部という名前からして、
きっとみんなメガネに蝶ネクタイでもして犯人捜しをするんだろうって、思い込んでいたのを姉に思いっきり馬鹿にされたから強制的に覚えたのだ。
揶揄するつもりはないけど、要するに競技人口の差だろうか。
野球部は県代表を50校くらいの中で争ったりするけれど、ボートはそこまで多くはない。
だから常連と呼ばれる学校があるとして、
競技が違うのだから、そのこと自体にはまったく順列など関係ないけれども、ベスト4を決めるのに6回戦も10回戦も争わなくてはならなかったり、まさにうちのように強豪校って言っても実際には4回戦目が優勝決定戦だったりする。
こういう信じる前提がちょっと違ってるなというのが偽りなんじゃないだろうか。
誤った先入観と言うべきか。
嘘は信じてから未来が変わる。偽りは信じた過去がすでに違っている。
強い者が結局勝つんだから、何も間違いはないんだけど。
当事者の盲目というか視野狭窄というか、いくら黒森峰が圧倒的強者と言ったって、これは花形競技ではないと悟ったのは実際に戦車に携わるようになってからだった。
戦車道のある学校なんて、それこそ数える程しかない。
こういう想像と乖離した部分もまた戦車熱が冷めた要因と言える。
ペリスコープの視界とハッチを開けて見える景色では雲泥だったということか。
黒森峰では当たり前に乗り回しているⅢ号戦車にしてみても、他校にこれだけの車両数を保有しているところはない。
ああ、どこぞのM4が山ほどあるところは別にして。
紅白戦をすれば身内の贔屓目を抜きにしても、各人の練度の高さに圧倒される。
かたや他校とやれば、そもそも弾がこっちに真っ直ぐ飛んで来ないことの方が多い。
理事長杯、公式戦第3戦目も結局そうで作戦の当たり外れ以前の出来だった。
そんな状況でうちは強いと言われても、他が弱すぎなのよとしか言えない。
戦車道の化けの皮というか、深みを知ればそれだけ落胆することも増えるものだ。
今、目の前にいる、この同居人もそうである。
初めは作戦立案能力の高さは、さすが家元の娘、未来の機甲科隊長と認めるところも大いにあったのだが、実際に行動を共にしてみると計画性には多少疑問符が付く。
わりと感情的なところがある子なのだ。接してみて初めて気付いたことだが。
なので彼女が並外れて優れているのは予定をこなすことではない。
判断と行動の早さ、戦況への適応能力こそが特筆すべき資質だと言える。
これはやばいかも、と思ってもいつの間にか勝っている。
逆を言えば、楽勝だなと思ってそのまま決着が付くことは多くはなかった。
結局強いんじゃないかと結果だけ見ればそうなのだけれども、そこがやはり、姉、との違いな気がする。
彼女の姉、西住隊長は淡々と勝つ。
その点を指摘したら、私の方がいろいろ考えてるからだと拗ねたので可愛かった。
そもそも姉の話を振ってくるのは彼女自身なのに。
挙げ句にはエリカさんはお姉ちゃんの話をすると興味深そうに聞くよねなんて言うから、じゃあ貴方の話をしなさいよと言ったらあたふたし始めるし。
何だかよく判らない子。
大体思い返せば、話をすること、いや会うこと自体が稀だった頃は、召使いがいるような良家のお嬢様だもの、緊張もしたし。
よっぽど浜田知明が表現している深い悲哀を語り合おうかと予習もしたけれど、最終的にはせっかく女の子として甲佐町に生まれたのに乙女小学校に通えなくて、大変悔しい思いをしたという非常にどうでもいい話をまくし立てられた。
やることなすこと、ちぐはぐで見た目もそう。
こんなのんきな顔をして、どうして戦車に乗るとあんなに逞しくなるのか。
ぬいぐるみ一つ選ぶのに売り場を何周もするような優柔不断さからは想像がつかない。
知れば知るほど不思議な子。
今も、一体どんな夢を見ているのだろうか。
なんて。
眺めている場合ではない。決勝戦を明日に控えて、今日も朝練があるのだ。
「みほ、みほ起きて」
寝起きの悪さはどうなのだろう。
昨日も作戦やら何やらを結局遅くまで練っているようだった。
そうした夜更かしが祟って、今があるのだろうか。
それとも小さい頃からこうなのだろうか。
元からだとしたら、お姉さんは随分苦労したんでしょうね。
揺すっても起きやしない。
無理矢理日光に当てようと、ひっくり返して仰向けにする。
淡い緑色のカーテンを開ければ棚引く雲は少なく、広がる青。
空にかざした手の平から、なおも漏れてくる輝きに目を細める。
今日も暑い1日の予感がした。
振り返り、視線を戻すと思わず吹き出してしまった。
陽光が射し込むまで、暗がりの中では気がつかなかったが酷い寝顔。
鬼の戦闘一家の次女がよだれを垂らして寝ているではないか。
熊の数を減らすように言っても聞く耳を持とうとしない姿勢が改まるように、写メの一つも撮って交渉材料にしようかと思ったけど、やめておこう。
これは私だけの特権なのだから。ばら撒いたら私がつまらない。
指で頬をつつき、耳元で囁く。
「おーい、起きなさいよ」
つつく度に眉の形が変わるのがおもしろい。
遊んでいると、よだれがいよいよ枕に到達しそうだったので指で拭ってあげた。
「ふぇっ!?」
突然跳ね起きた彼女と至近距離で目が合う。
「えっ? えっ? エリ……カさん?」
「やっと起きたわね、遅いわよ」
寝ぼけているのか何が起きたか判らず混乱してる風で、しきりに口元を確認している。
そこはまさに、先程までよだれが垂れていた場所だ。
だが彼女にも名誉というものがある。それは秘密にしておいてあげよう。
「ふふっ、かわいい顔して寝てたわよ、貴方」
「えええ?」
顔を真っ赤にして驚いて、それがまたおもしろい。
あの寝顔はさすがにないもの。
睡眠中だったとはいえ、当然思い当たるふしがあるのだろう。
なので彼女が恥じている理由を想像の外に求めることはせず、
それ以上の確認はしていない。
結論だけ言えば彼女はその日、1日中ポンコツだった。
遠くから声がする。
ずっと、誰かが私の名を呼んでいる。
そして頬に温かいものが当たる感触。
さっきからずっと止まらない。
そっか……私、自分の家に帰って来たんだ……ただいま、わんちゃん。
って、あれ? そんなはずない。
私はえっと、確か、寮生活をしているはずで……それに今日も朝から用事があったような。
そんな矢先に温かくて柔らかいものが唇に当たった。
「ふぇっ!?」
びっくりして起きたら目の前にエリカさんがいた。
えっ? えっ? 嘘。
そっと感触のあった場所に触れると、少しだけ湿り気があって、ますます混乱した。
これは何かの勘違いだよ、そんな訳がない。
でも慌てふためいてる私を見て、エリカさんは楽しそうだった。
それが何を意味してるのか判らないけど、もしかしてって思いが募る。
そんな訳ないよ。
だって突然すぎる。
これは何かの冗談で……。
違うよ!
冗談だとかじゃなくて、された事実を認める訳にはいかない。
そんなはずない。
ただ単純に起こしてくれただけなんだ。こんなすぐ傍にいる理由はそれだけ。
だからきっと「早くしろ!」とか「もたもたするな!」とか言うはず。
エリカさんが怒ってくれたら、私の勘違いで済む。
――だって、そんなの、そんなこと、一言も言われたことない。
だからきっとエリカさんは怒る。エリカさんはきっと。エリカさんは。
「ふふっ、かわいい顔して寝てたわよ、貴方」
えええええ?
それからもう、まともに話をすることもできなくなってしまった。
戦車道で用いる特殊カーボンでコーティングされた車両。
防弾性能は現代技術により完璧な施行がされてるが、冷暖房は製造当時の仕様に準じて几帳面というか余計なお節介により、作られている。
要するに空調なんてない。夏は暑く、冬寒い。
どんなに撃たれようとも平気と言われても、長時間過ごすには過酷な車内。
DAKがいかに屈強な兵士達だったか、またその苦労が忍ばれる。
車内は安全と言っても、それは対砲弾に限っての話だし。
角に頭をぶつけたり、砲弾で指を挟んだり、怪我の原因には事欠かない。
そのため夏期訓練中において重要になるのが、熱中症対策である。
……大袈裟に断りを入れなくたって、そんなのどこの運動部も一緒か。
今日は暑い。そのせいか普段ぼーっとしてる子がいつにも増して酷い。
話しかけても上の空かと思えば、奇声を上げてやたら過剰な反応をするし。
何だこれ? 熱でもあるのか?
「ちょっと、何なの今日は。具合が悪いならもう上がる?」
「うえっ!? ……ううん、大丈夫」
「決勝まで日がないんだから。こんなとこで無理して潰れないでよね、まったく」
「ははは……そうだよね。うん、気のせい気のせい」
はぁ。
よくわからん。そうは言っても実際に熱でもあったら困る。
「ねぇ? 奈緒。水余ってない?」
「残念だな……。さっきまで余ってたけど、今なくなったぜ……」
「もう無理……。お願いだから帰りましょ……エリカ……」
「ちょっと! 人数分以上飲まないでよ! ほんとにお前らは!」
はぁ、もうしょうがない。
「はい、みほ。これ」
「あっ、うん。え? これってもしかして……」
「水分は取っておきなさい。私の飲みかけで悪いけど」
「えええ!?」
さっきから何なのだ。
普段は一口ちょうだいとか言って人の食べ物を、気にもせず半分食うくせに。
「今さら何なの。いらないの? 大丈夫なの?」
「う、うん。……いらない、かな」
「あっそ」
それにしたって確かに今日は暑いわね。手の甲で汗を拭いながら、水分を補給する。
……。
視線を感じる。
「何よ? やっぱり欲しかったの?」
「あぅっ! ううん、違うの! えと、その、飲んでるなーって」
「はぁ? もう! 意味のわかんないこと言ってないで帰るわよ! 今日はこれ以上無理だわ。隊長代行殿が使い物にならないから撤収よ、撤収」
「ああっ! ご、ごめんなさい……」
1日こんな調子だった。
意味もなくずっと、気が付けばエリカさんばかりを見てた。
エリカさんは肌が白いから飾らなくても、赤い唇をしている。
色素が薄くて鉱石みたいな瞳。
短く切り揃えられた灰青の髪。
私と違ってお姉ちゃんだったら、まだいいのに。
やっぱり食べ物が違うのかしら、なんてエリカさんはからかうけど、
実際にはただ柔らかいだけで。太股も、二の腕も、ここもそうだし。
お腹だって別にへこんではいなかった。
エリカさんは元々運動神経が私なんかとは比べ物にならないくらいよくて、細身の体には、どこにも余分な物がついてない感じ。
背の高さと相まって、なおのこと細く見える。
特に私と違うのが指の長さ。
ずっとつないでくれて、私の手を包んでくれた指。
どうしてこんなに細いのに温かいんだろう。
そりゃあ代謝が違うからよ、なんて言ってたけど。
でも私はお姉ちゃんと手をつないでも、こんな熱さを感じたことはなかった。
ずるい。
なのに向こうは全然気にしてなさそうなのがずるい。
私のことなんかお構いなしに、気安く触れてくるからずるい。
「ほーら、ぼけっとしてないで。さっさと来なさい」
「あ……うん。あ、歩けるから、は、離して……」
エリカさんはずっと、怖くて泣いたあの日からずっと、私に付き添ってくれる。
悪目立ちしたくないからって常々隣にいるわけではないけど。
ずっと距離を保って、いざとなったら駆け付けられるようにって、だからそれは大体、ちょっと見渡せばいつも目が合う距離だった。
けれど一つだけ例外があって、お風呂には絶対に1人では行かせてくれなかった。
あのとき泣いた場所。
エリカさんの優しさに触れた場所。
もう幾度となく一緒に来て、見慣れたものになっていたはずなのに。
今日のエリカさんはいつもよりずっと綺麗だなって思った。
エリカさんは細いから、シャンプーしてるときの背中は腱や筋が浮かんでは沈んで運動してる人って感じがするけど、肩のラインなんかは丸くて普通に女の人だった。
あと前屈みになっても腰回りはすっきりしていて、座るとぽっこりと二段になる私はずっと恨めしく眺めてた。本当にずるい。
「ん? 何よ。うわっぷ!」
「ご、ごめん! そ、その、流してあげようかなって」
突然、目が合うから慌ててしまった。
「あんたねぇ! ……みほこそ座ってから全然進んでないじゃない」
「えっ? あっ……そうかな? えっと……ちょっと今日は、あの、日差しが強かったから! だから、その、ひりひりするかなって」
「何? 日焼け? かわいそ。どこが痛いのよ。首?」
「うぇえあ! だ、大丈夫だから!」
お風呂場だから当然なのだけど。裸で突然迫ってくるんだもの。
こんな調子で言う事なす事が全部裏目に出る1日だった。
明日は県理事長杯決勝で、相手はデータの少ない新しく戦車道を始めた学校なのに、こんなので大丈夫なのかな?
だから準備は改めて入念にしておきたかったのに、うるさい早く寝ろで一蹴されてしまう。
気にかけてくれているようで、やっぱりいつも通りの夜。
わざわざ布団を私のベッドの隣に運び込むのも当たり前になっている。
気後れと願望のせめぎ合いで無駄な抵抗も試みてみた。
ボコ達を私のベッド脇に置いてみたのだ。これならちょっとは躊躇するかも?
けれども結果は、邪魔よどかしなさい大体貴方は集めすぎ十体を超えたら古い順に実家に強制送還する
って怒られただけの、本当に余計な抵抗だった。
本当にずるい。
こうやって私への思いやりは伝わるけど、それはまるで餌付けみたいなもので、私は常に彼女から優しさを授かるだけであり、こちらの返礼なんかはいつも「自分でやれる」「いいから」「大丈夫」の言葉で片付けられて、頑なに受け取ってはくれなかった。
一方的に甘やかされるだけの存在。
それなのに私は、大事にされすぎて欲張りになったのだろうか。
たまには受け取って欲しかった。
悪いけどお願いって、言って欲しかった。
じゃないと、私はただのお荷物でしかない。
エリカさんはずるい。
それなのに、やっぱり断り切れなくて、
今日もまた手をつないで、眠りに落ちるまでの間、いろんな話をした。
今夜は主にそれぞれの姉の話だった。
適当で、だらしなくて振り回されて腹が立つって。
私もお姉ちゃんには不満もあるけど、ここまで文句が並べられるほど、最近では顔を合わすこともなくなった。
お母さんの作ったホットケーキがお姉ちゃんの方が大きかったとか。
苦労して、せっかく捕まえたオニヤンマを逃がされたとか。
恨み言もいつしか更新されることもなく、昔のままで止まってしまった。
私の家に比べたら逸見家は今も騒がしいみたい。
だから、もしかしたら、元々エリカさんって世話好きなのかも知れない。
そう考えたらドキドキが小さくなって、安心はするけども、どこか寂しかった。
エリカさんはいつも子供扱いするけど、この鼓動の理由がわからないほど私は幼くはない。
どきどきに名前を付けるのは簡単だ。それでも彼女の重荷にはなりたくない。
ただのルームメイトなら、そのままでいい。
だって、そんなの、エリカさんから一言も聞いたことなかったから。
そこで考えてみました。
エリカさんが、どれだけ私のことを見てるのか試してみようって。
我ながらいい考えだと思う。
ちょっとトイレって席を外して早速、実行してみる。
これで明日の試合は平常心で望めそう。
朝。
今日も暑い1日が始まる。
県戦車道連盟理事長杯、優勝決定戦。
栄光の黒森峰女学園の、いや、違う。
さすがに緊張してるのか、むずかる彼女を無理矢理寝かしつけて、今日は体長も万全。
相手は聞いたことのない学校だけど、私が、私達が負けるわけがない。
私とみほとの輝かしい歴史はこれから始まるのだ。
陽光を浴びて、眠れる思考を呼び覚ます。
さて、一方のルームメイトには大事な一戦という自覚があるのだろうか。
振り返ると今日は静かに寝息を立てている。
昨晩のような年頃の乙女にあるまじき惨劇も今日は起きていないみたい。
ん?
けれども、何かが違う。
何だろう、光沢というか質感というか。
あー……この子は……。枕が汚れるのが気にならないのか。
うちの姉の嫌いなところの一つが、こういうベタベタと周りを気にせず汚すところだった。
化粧くらい落として寝なさいよ。
そっと指で、口先に触れて確認する。ほのかに漂う果物のフレーバー。
「うひゃあ!!」
「うわっと」
「えっ! えっ? エ、リカさん……? ま、また……嘘……」
「何が嘘よ。それよりもあんたねぇ、グロス塗って寝るのなんかよしなさいよ」
「うえええええ!!」
「まぁ、でも何これ? イチゴ味? ふふ、まるで子供ね」
「ああ……もう……」
これだけのことをしておいて、なぜ彼女は平然といられるのだろう。
今日は大事な試合なのに。
どうやって平常心を取り戻せばいいのか。
恨めしく睨んだら、エリカさんは余計に楽しそうな笑顔を浮かべた。
ずるい。
エリカさんは本当にずるい。