崩壊世界で押しCPと家族になった 作:夢@実験中
にもかかわらず最近FGORTA系小説で使われている形式の話を書いてみたくなってきた次第。されどこちらを書くのもやらねばならぬので、最低限一段落はつけるまでやろうと思い加速している。(加速してこの遅さ)
前半特殊な空間のためモノローグのバランスが違ったり、
後半また別の人物視点が入ったりするのでご了承ください。
(アレ?何だコレ。空が真っ暗だ……アレ?真っ暗なのは俺じゃねぇか?アレ?てか、前にもこんなことあんなこといっぱいあったけどこの経験がはじめてなのかどうかはいまいちはっきりとしませんね!)
よし、ネタをほざくことで少しメンタルが落ち着いた。
解説する価値もないクソ事象だが俺はネタを喋ることでシリアス感を薄め平静を取り戻そうとする。ある種のルーティーンみたいなものかもしれない。
それはさておき状況を確認するために周囲を見渡そうとしてみるも、辺り一面黒一色。自分の姿もロクに見えないというか地に足の付いた感覚も何かにぶら下がったり拘束されたり目隠しされている感覚もないので、ただ真っ暗な部屋にいる等の物理的な監禁の線ではなさそうだ。
次にこの状態になる直前までの記憶の確認だ。えーと……
ず~~~~~っとはくのん先輩といちゃいちゃしていた。 完
うむ、事実ではあるがその一文だけだとこの一週間の何時の事か全く特定できないからもっと絞ろう。確か先輩とお風呂えっちし終わって、その後互いの身体についた色々な体液を流しあいっこしつつも体を冷やさないように速めに浴槽に浸かろうとか話していた後に……
ああそうだ。突然先輩が真面目な表情になって俺に覆い被さってきて……あー……あれ多分庇われたんだな俺。顔にがっつりと生おっぱいを押し付けられたけどその感触を味わうことすらできないほどの事態だったというわけだ。基本的にありとあらゆる事象よりBBちゃんと先輩を優先する俺がそんな状態であることから突然っぷりを察してほしい。そして庇われて尚こんな状態になってる、けれどもはくのん先輩は今俺と一緒じゃないということから考えると思ったより状況深刻かもしれないな。
纏めてみた状況からまず連想されるのは神様転生ものの冒頭によくある展開だろうか。先輩がそれから庇おうとした何かによって突然DIEした俺が神的な何かにすまんのうされたりドリフターズしたりするアレだ。
もしそうなら一週間前なら大喜びできたかもしれないが、今生の内にBBちゃんと先輩たちに直接命も魂も捧げると直接宣言することができた後である今来られてももう遅いとしか言えない。
他に考えられるのは冒頭で俺がネタにした台詞の元ネタが使われた時にもあった、精神世界的な奴に閉じ込められているパターン。斬魄刀と対話したりする方の奴だな。
しかし、だ。一応考えてはみたがどちらの状況、あるいは他の状況だったとしても俺が能動的に状況の解決、ないし脱出に向けてできる行動はほぼ0である。何しろ当方精神性が大なり小なり狂ってるだけのただの一般オタク。逆にできることがあるなら教えて欲しい。次から参考にするから。
一方で、外界の状況も全くわからないが、絶対前進を止めないマン&ウーマンの先輩がふたりに先輩のためなら何でもできる系万能後輩のBBちゃんがついているのだから、何かしらの打開の為の行動はもう始まっているだろうし。仮に実際に事件のメインが向こう側だったとしても、現状の俺がいるのといないので戦力が変わるかといわれれば限りなくNOに近い。俺の数少ない長所の1つはいなくなっても戦力が下がらないことなのでそれを最大限に活かしていると言えるだろう。これは自虐ではない、ただの事実だ。
さて、ここまで状況をまとめてみて俺の無脳っぷりを露呈してきたが、その上で俺にできること、あるいはやっても損のないことを考えてみようと思う。何しろ動けないのですることがなく、暇だ。それに考えるだけはタダなのだし。
……よし、そうだな。ここで俺に接触してくる相手がいてもしも悪意を持っての接触だった場合はひたすらに話を引き伸ばしてやろう。敵は俺なんぞに意識を裂かねばならず、先輩たちの方への妨害が減り目的達成までの難易度が下がり、かつ俺はこの動けない状態でのができる。悪くないな。で、じゃあ敵が接触してくるか先輩達が助けに来てくれるまでは待ちの姿勢だから……もう二度寝からの三度寝のコンボ決めちゃうかな。変に起きたままでメンタル削られても損だし。
が、そんな風に緊急事態においても可能な限り全力でサボれればいいなという願望が感じられる計画が実行に移されることはなかった。なぜならば。
「…………なかなかに、良い」
Fate世界を知る者ならば誰もがよく知る金髪の少女騎士が成長し、大人びた女性になった顔、青を基調とした騎士の如き服装と、そこから溢れんばかりの肉感的で女性的な体つき。そしてその右手に白き聖槍を携えた、FGOで言うところのランサークラスで召喚されたアルトリア・ペンドラゴンに良く似た"それ"が、俺の上下左右どちらを見ているのかすら定かでない視界に、突然現れたからだ。
……さて。まず、俺はこのランサーを引いていない。そして彼女は原作では先輩ともBBちゃんとも特に絡みはない。となると、俺達の誰かの縁を辿ってきた線ではない……ということがわかる。
そうなるとまずは無難な応対をするのがベターなのかな。例えるなら前に会ったことがあるかどうかあやふやな取引先の相手に挨拶をするときのような……そんな感じの社会経験を積んでいればこういう時に悩まなくても良かったのではないかと思う社会不適合者の悲しさがあるが、とりあえず無難と思える挨拶だけでもしておこう。そのままにしておくのも怖いし。
『ようこそいらっしゃいました。生憎と現在身動きが取れませんのでロクなおもてなしもできませんが、どのようなご用件でしょうか?』
挨拶は大事だ。この世界の古事記にもそう書かれているかは知らないがやらないよりは礼儀正しいだろう。なんか口が動いてるのかわからないから相手が聞こえてるかも微妙だけどな!
「おや、これはご丁寧に。私はここ数日でBBさんからあなたの事を聞き、少し興味を持ったので見定めに来ました」
あ、良かった意志疎通できるみたいだ。しかし俺に興味?先輩やBBちゃんにならまだしも俺に興味を持たれるような特殊な事項はそうそうないぞ……?あるとすれば……それこそ先日の世界の壁もっとガバにしちゃった件が怪しい。もしその件で世界を混乱させた犯人として俺を退治したり断罪しに来たのであれば、それは妥当な動機だと俺自身も思う。先日のエテモン等、実際に被害は出ているみたいだし。
だがしかし、BBちゃんがわざわざその事を第三者に漏らす可能性が低いというのもあるが、BBちゃんから聞いたという発言がブラフである等の可能性もあるから……
「ああ、そのように難しく考えずとも良いですよ。あなたがこの世界にどのような影響を与えようが、割とどうでも良いですし、そもそもこの世界に穴を穿ったのも私ですから」
あ、なんか普通に考えが読まれている。顔に出ていたのかあるいは精神世界的なアレだから思考が筒抜けなだけかな?いや、それよりも、だ。
今彼女はこの世界に穴を穿った張本人だと名乗った。となると、BBちゃんが話に出していた世界を崩壊させるに至った元凶である女神というのが彼女なのだろう。
だとすると、なおさらそんな凄い存在の彼女がそれこそ塵芥に等しい存在である俺なんぞに徹夜明けテンションでのやらかしの件以外で何の興味があると言うのだろうか?
「意図せぬ仕様ですがお互いに便利なのでこのままあなたのモノローグとの会話を続けましょう。それで、疑問に答えるならば私の関心はただ唯一愛するマスターと、私の同胞となる愛を証明する者たちのみ。なのであなたが他の世界とも繋げた件も割とどうでもいいです。むしろより多くの同胞が愛する相手と会える分良いと言える」
えっ、マジっすか。こないだのエテモンとかが周辺被害出してるみたいに周りに迷惑を……それこそ女神様の大事なマスターに危害が加わったりするんじゃないかって……いや、そうか。もしそうなっても危害を加える前段階で全部対処できるほどの力があるんですね女神様。
「その通り、良く理解しているようですね。それに、万が一私の手に負えないような物が現れるとしても、それほどのものが来ようとしているならばあなたがやらずとも別の方法で渡ってきたでしょうし、それほどの存在が現れてこの世界にいられなくなったらなったでマスターを二人だけの世界に連れて行く良い説得材料になります。今のところマスターはまだこの世界に愛着があるようなので私から自発的にはしませんが」
なるほど……隙の無い論理的な回答だ。極めて納得できた。マスターの意思を尊重しようとする理性もあることも確認できて俺の女神様への警戒度が下がっていた。
さて、話を戻して俺の心配していた件が関係ないとなると……俺に接触したのは残りの『同胞』という概念に関わる事ということですかね?
「その通りです。私がこの世界に来て、その結果かどうかはわかりませんが私と同じような存在がこちらに来て思い思いの相手と相思相愛になり、世界が愛に包まれていく。これは私にとってとても喜ばしいことなのです。その点で言えば、BBさんは特に素晴らしい。私が踏み越えるよりも遥か昔から、彼女はその愛に己が全てを捧げて殉じていた。そんな彼女がこちらに来ても変わらずに愛する相手へと献身を続け、そしてその愛を成就させたこと。どれも素晴らしい成果です」
わかるマン
あまりに強い同意に思わず悪魔の力を身に付けてしまったが、俺にとってはそれほどに彼女の言う通り、BBちゃんの愛/恋は素晴らしいというのが行動、思考、渇望の根幹に関わっている。
彼女の在り方はどこまでも先輩への恋が愛が献身が根幹について回る。確かにこの辺はFate/EXTRA CCCという作品の根幹に関わるネタバレ事項であるが、そこを語らなければBBちゃんのパーソナリティを1厘も理解できているとは言えない。そもそも作中念入りにより隠していた裏ボスの正体の方はあっさりバラして作中BBちゃんだけが隠しているつもりでダダ漏れだったこちらの描写をおざなりにしまったせいでFGOのコラボだけで知った連中があらぬ風評被害を撒き散らしそれに運営も面白半分で乗っかりやがるから……コホン。
ともかく彼女の本性を理解してくれている相手が目の前にいるということが凄く嬉しい。己の大事な相手の為に、自分の創造主であの場においてはいわば世界そのものとすら言えるムーンセルにたったひとりで立ち向かうと決意し、心底おぞましい人間の悪性情報を取り込み、無茶に無茶を重ねて今までの自分を全て失ってでも、それこそ、一番大事にしていた先輩との思い出すらも失い、敵対することで先輩に嫌われてしまっても構わない、それでも先輩を救ってみせると決意し死の淵に至ってもなおやり遂げたあの姿に俺は感動した、憧れた、尊敬した!
「ええ、だからこそ、の興味です。それほどの深い愛を持つ彼女が、愛する存在の半身と別の人間が愛し合う事を許している……そしてそんな彼女の召喚の道筋になれるほどに彼女を愛しているはずの人間が、結ばれようと考え愛し合っているのは別の存在……これは少し見に行こうと思うのは不自然ではないでしょう?」
BBちゃんについて語れるという事に狂喜の笑みを浮かべながら愛を溢れさせていた俺に、目の前の女神様はその疑問を述べた。
ああ、なるほど、なるほど確かに。俺達の関係は端から見れば少しばかり歪なものを含んでいる。
俺はBBちゃんをこよなく愛しているが、彼女と結ばれる訳ではない。BBちゃんは先輩たちをこよなく愛しているが、キシナミ先輩とだけ結ばれはくのん先輩が俺と愛し合うのを許している。
相手の愛を独占し一人占めしたい、相手の全てが欲しい、他のものに渡してなるものか。恐らくは女神様もそういった感情を理解できるのだ。いや或いは、そういった感情を動力源にしてこちらの世界まで来てしまったのかもしれない。
そしてそれは彼女が同胞かもしれないと認識する俺達やBBちゃんも持っている感情だ。
だから俺に、BBちゃんに、何故そうしないのか、我慢して愛を開放できていないのではないか、と俺の様子を見に来たというわけだ。親切心というよりは単純な疑問として。
なるほど。思ったよりも早く他者から問われることになった、俺達の在り方への命題だ。俺達が俺達であり続ける限りずっと続くことになるかもしれない。だが、俺が返せる回答に工夫や大層な思想はない。何故なら俺は恋愛もまた初心者。対人関係と同じく手探りで愛し合う方法を探っている身。その上頭の回転は肝心なところが鈍く自分で考えるのが苦手な指示待ち世代だ。
だからこそ。俺は口を開いて喋らねばならない。
俺にできるのはいつも通り。先輩と向き合うのと同じように嘘偽りのない正直な気持ちを、BBちゃんと先輩たちへの疑いようのない俺の本心をぶちまける。どうせ思考が筒抜けなのもあるが、それだけでなく彼女が愛するものたちを歓迎する神であるというならば、本気で愛する感情こそが彼女に対する奉納物として相応しい!
『俺はBBちゃんを愛しています。BBちゃんの魅力にやられてエッチな気分になることもあります。だからといって俺のものにしようとするのは俺にとっての最善ではありません。前述の通り、俺は彼女の一途な先輩への献身に心の底から敬意を抱いたのです。彼女の恋を俺は美しいと感じました。彼女の恋の障害となる全てを、俺は憎みます。彼女の恋を侮辱した全てに、俺は常に腸が煮え繰り返るほど激怒しています』
BBちゃんは元の世界では本心が伝わった頃にはどうしようにも助からず死別することになる。エクステラ以降の作品ではあの事件をなかったことにすることで事件の被害が外に漏れて先輩に迷惑がかからないようにしている。同じくFGOでの客演でも同じく、自分の認識を変えて『先輩と出会わなかった』等という自己の完全否定にも等しいことを言いながら、更には先輩を消去しようとした仇であるムーンセルに鉄砲玉として使われるという屈辱に甘んじながら先輩のいない世界を守る為に戦ってくれる。(とか言いながら公式はその秘匿対象をカルデアで遊ばせているのだが)
あまつさえ、公式で救えなかったものを救うとかいう錦の旗を自慢気に掲げている二次創作の世界ですら殆どの場合先輩と恋愛関係になるのはパートナーサーヴァントの作品のばかりだし、正直なところFGOに客演してもちゃんと先輩と一緒にいられる絵や文章は増えてない。むしろ減った。
『今、そんなBBちゃんとキシナミ先輩がふたりで一緒に幸せになってくれている。そんな世界は本当に、本当に、ほんっとうに少ないんです。そんな奇跡が俺の目の前で起こっていて、しかもそれが成立する一助に俺みたいな役立たずが俺のままでなれたんですよ?しかもそれに加えて俺と一緒にBBちゃんを大事にしながら俺のことを好きだといってくれるはくのん先輩までいる。これほどの幸せを一時の感情でぶち壊すなんぞ勿体無いどころの話じゃないでしょう!!
俺にとっての至上の幸福はBBちゃんと先輩の幸福です。BBちゃんと先輩にとっての悲しみになるのであれば、それは俺自身であっても俺にとっての敵です。故に俺自身の欲望がBBちゃんと先輩の幸せに反するものであるならば、その俺自身の欲望ですら俺の求めるものではないっ!!』
吐いた。俺の感情を、俺の愛の在り方を全力奉納した。吐ききったとは言い難い何しろ俺の中の彼女たちへの感情はより混沌としている。その全てを今この一瞬で言語化し理路整然と並べるのは不可能だ。
もしこれで女神様が俺の愛を認めず、彼女の期待を裏切ったという判定が下るならば仕形ないが大人しく殺されるしかない。それ程彼我の戦力差は絶対的で、もし俺が神秘になど縁の無い世界の人間でなく、その神秘や魔力的な力を感じとることができていたならば、きっとその圧倒的な力の差を感じ取って萎縮してしまい今のようにペラペラと捲し立てることなんか出来てなかったはずなぐらいなのだから。
それでも、俺はこの愛を貫くしかない存在だ。曲げたらそれはもう
しかし、その決意と裏腹に、目の前の女神様の表情は穏やかなものだった。
「最初の言葉を訂正しましょう。やはりあなたは
「あなたの愛は私と似て非なるもの。しかしながら……やはりあなたは私の同胞であるという予想は間違っていませんでした。
健気で強く思い人を愛する、素晴らしい人を。思い人に会う為に躊躇いなく世界を乗り越える彼女を。己が全てを捧げて愛に殉する少女を。そんな人々を私は祝福します。
そして、そんな彼女の愛を素晴らしいものだと心から称賛し、自身でもまたそれだけ強く愛せるあなた。滅私の献身ではなく、相手の幸せを己の欲で求めるが故の我が儘であるとの自称。そんなあなた方の愛が成就することもまた私にとって大変望ましい」
……俺の語彙力では理解が難しいが、喜んでいるような文脈からして……多分許されたのではないだろうか。許される必要があるかは別として。まぁどうあれきちんと礼を尽くした返答をしよう。
『寛大な処置に感謝を、そして女神様に対して技量不足から完全な回答を返さなかったことを謝罪します。BBちゃんや先輩の愛に関しては俺は全てを知らない。だから答えられない。けれど、それが真剣で嘘偽りないことだけ知っている故に』
「なるほど、どうやら、あなたの方も下手に手を出さない方が良い結果になりそうですね。わかりました。あなたたちに関しては、私の方から意図的に手出しはしないでおきましょう。本当に、良き相手に廻り会えましたね」
先輩が素晴らしいのは勿論のこと、俺も人間の男ですからね、先輩のような美少女に迫られたら好感を抱きます。それ以前の段階としてBBちゃんを含めあらゆる美女に欲情してしまうのは本能であることは否定できません。なんでしたら今だって目の前にこんなに美しい女神様だっているのだし。女神様の旦那さんはさぞ幸せでしょう。
しかし、しかしです。あの素晴らしい先輩が俺を好いてくれるのです。BBちゃんの事を大事に思ってくれる、そんな先輩が俺の側にいてくれる、こんな幸せはありません。ならば、俺はそんな相手に相応しい存在になろう、そうでなければまず俺自身が俺を認めることができない、そう結論付けたばっかりなんで。
「その回答で良しとしましょう。それでは充分な成果も得られましたし、私はそろそろお暇することにします。精神に語りかけることで時短したとは言えマスターから離れている時間を少しでも短くしたいのは変わりませんし」
『ああそれはまた。お時間取らせてしまい申し訳ありません』
と、定型文的な挨拶を咄嗟に出してしまう俺。しかし語彙力の偏りが見られた直後、何故か良くわからない行動をしていた。
『こちら、よろしければお土産として。旦那さんと一緒にどうぞ』
「…………?これは?」
『光るそばです』
「光るそば」
『引っ越しした訳では無いですが……なんとなくご近所付き合い的な感じがして。神様相手ですし、お供え物にもなるかなって……』
いやだとしても何故よりにもよってとっさの思い付きで光るそばをチョイスしたんだ俺。そしてどこから出てきたんだこの光るそば。精神世界だからって念じた訳でも強い結びつきや思い入れがある物質でもないぞ?お世話になりますという気持ちは確かだが。
「ふふ、いえ、受けとりましょう。あなたの考えがどうあれ確かにお供え物ではあるでしょうし……ふふっ。ああそれから。ここからの出方がわからないかと思いますが、それに関してはどうやらお迎えが来ているようなのでそちらにお任せしますね」
女神様がそう言いながら明後日の方向に視線を向けたが、相変わらず俺の体は動かないのでその視線の先に何があるのかを見ることはできない。しかし、何が起きているのか……いや、誰が来ているのか。それが視認ではなく心で理解できていた。というのは誇張で、遠くから近づいてくる声が届いていたのだ。
「あ~な~たァ~ッ!!」
この一週間、ずっと傍にあった音。この精神の中の会話の間というほんの短い時間しか離れていないのに、声を聞くだけで心が温かく、落ち着き、安らいでいく。
ああ、どうやら、依存するほどべったりなのは彼女だけではなかったようだった。その事を改めて目の前で見て、女神様も笑みを浮かべる程だ。
本当ならば、こちらから手を広げて迎え入れる体勢にでもなりたかったが、相変わらず身体も動かないのでそのまま接近されるがままになり。
恐らく精神的なイメージ図なのだとは思うが
※
私の膝の上に乗せた彼の頭が身動ぎする。
お風呂で彼が突然意識を失ってから続いていたこの世の終わりかのような恐怖が和らいでいく。脈拍、呼吸を始めとしたバイタルサインは常に把握しているからそれを確認すれば死んでいないことはわかっていたし、健康管理の分野においてトップクラスに信頼できる知識を持つBBがすぐさま反応して適切な対応を教えてくれて、その通りに動いていたとは言え、それでも彼の昏睡は、世界の壁を越えて、あんなにも焦がれていた彼に一度でも直接触れて、繋がりあってしまったこの私はもう、彼と離れて生きることはできそうにないという事実を再認識させられてしまった。
「お、BB、目覚めたみたいだよ」
「バイタルサインも正常値を確認。おはようございますコーハイさん。あなたの精神に直接お話に来た女神様はもうお帰りになりましたよ?なんだか上機嫌でお土産交換までしちゃいました。いやぁ、主神クラスの神様相手に連続で口のノリだけで撤退させちゃうなんてコーハイさんは凄いですねー!あ、勿論1人でそんな相手に適当に交通事故を起こして終いにはお土産にジョークグッズを選んでしまうコーハイさんへの皮肉です♡」
「大変ご心配をお掛けしたのはそれはもう反省することしきりなのですが、それとは別にBBちゃんが今しまったものは何に使うつもりだったんですかね、俺の見間違いでなければバズーカのように見えたのでせうが」
「いえいえ~、これはその反応を見たくて構えておいた、コーハイさんが趣味で作ったバズーカっぽいハリボテの棍棒なので心配はいりませんよ?」
「それはそれでなんでそんなものを作ったのかという疑問がまた増えるよ!?」
「いや……現代パロディ作品の小道具なら作れそうかなって思って原作の記述の五分の一の予算で作ったジョークグッズのつもりだったんですよ……松っちゃん砲ポータブルタイプ(制作費8600円)」
少し感傷に浸った隙を突かれ、BBとキシナミに目覚めの挨拶を先に越されてしまった。そこは私が声をかけるのが遅れただけだし、彼からすれば私だけでなくふたりから声をかけられても物凄く喜ぶべきことだろうから嬉しいならいいんだけど……
なんというか、少しだけ。
「それで、あなた」
私の出した声がいつもより冷たい気がするのは気のせいではないはずだ。
「五停心観すら使って深層心理まで起こしに行って、その上膝枕で起きるのを待っててあげたのにも関わらず声をかけられるのに先を越されてしまった奥さんに何か言うことは?」
ああ、やってしまった。おそらくは嫉妬から、彼に詰め寄るような事を言ってしまった。これでは彼の嫌う面倒な女だと思われてしまうかもしれない。それで嫌われてしまったら等と考えただけでも背筋が寒くなる程の恐怖だ。
けれど、彼は一瞬も置かずに即答した。
「愛しています」
「私も♡」
「今なんだか物凄く場違いな程重いトーンで聞こえたんだけどはくのんはその反応でいいのか……?」
キシナミの尤もなツッコミが入るが、それだけ鬼気迫る真剣さが彼の言葉にはこもっていて、その言葉が嘘偽りでないということが私にも理解できて、つい反射的に私もと返してしまった。うぅ、私、こんなにチョロい女だったっけ……?
「あ、すいません。はくのん先輩の顔を見てつい本能的に本音が漏れました。大好きです。まず助けに来てくれてありがとう。そして膝枕、全てにおいて最高なのですがもっとして貰っててもいいですか?」
「うん、あなたがしてほしいならいくらでもしてあげる……と言いたいんだけど今はごめん、足が痺れてきた」
「はい起きま~す。先輩マジ大丈夫ですか?足の痺れってどうやって取れば……」
漫画みたいに直角に飛び起きて、私の足を心配してオロオロし出す彼。現実だというこの世界の出身であるはずの彼の方が、この世界では創作ということになる世界から来た私たちより漫画的表現を自然に使いこなしているのも彼の凄いところの一つだけど、どうして出来るのかは時々不思議に思う。SNSで相談した時は何人かに、「虎やブルマの時空に片足突っ込んでる」とか言われて危惧されていたので、少しは気を配っておこう。
何はともあれ、この場に家族よにんが無事に揃ったのを確認してか、BBがこほんと咳払いして注目を集める。
きっとこの後の作戦の話をするのだろう。
「はい、それではコーハイさんのいつもの脱線癖はともかく、今回の件はわたしの防壁をものともしない程の大きな力を持つ相手でしたのである意味仕方がありませんので不問です。けれどこれでセンパイ達も改めてわかって貰えましたよね?万能で便利なセンパイお助けAIのBBちゃんがいても、この世界で安全に身を守るには今のままではいけない、ということが」
「ああ、元々いつまでもここで籠城できる訳ではない。この一週間互いのパスの強化に努めてきたし、周辺の地理情報は充分に調べた。自分はいつでも行けるよ」
確かに、この一週間BBのお陰でなに不自由なく暮らせて、それも今までずっと会いたくて仕方のなかった彼とBBの両方と一緒に送る日常生活だ。(外は大変なことになってはいるけど)
私の中で状況に対して楽観的な思考になっていたことは認めざるを得ない。
私と戦った時のBBが大きな力を持つと言ってもそれはあくまでムーンセルと接続してその力を引き出していたことが大きい。そのバックアップも無いまま、限られたリソースで今日まで私達の準備を整える時間を稼ぐために彼女がどれほどの仕事をこなしてきたか、隣で手伝った今回はちゃんと知っている。BBは「こんなの月の裏側での仕事量の1%にもならないので余裕です♡」と言っていたが、この世界では、先の女神のように、下手をすればあの時のBBすら超えるかもしれないような相手がいくらでてきてもおかしくないのだ。絶対に安全と言えない以上、BBにいつまでも負担を集中させてはいられない。
だから、私も一つ、覚悟を決めて彼に告げる。
「あなた。今後戦力増強で呼び出すサーヴァントのことだけど、女の子を呼び出して仲良くなっても良いから」
彼は私の言葉の意味を飲み込むと目を見開くほどに驚いていた。
それはそうか。ある意味、浮気の公認をしたようなものとも言えなくないのだし。
「へ?あ、いやそれは連携とかの面でもありがたいですけど……何故に?」
「あなたの言う通り連携とかの便もあるけど、この世界観で呼べそうなのはマスターになる相手に余程強い執着が要りそうだし、それなら無理に押し込めるのは危険。それなら最初から許可を出して、私が把握できるようにした方がいい。私は、最初に言ったように私が
「で、でもですねぇ……」
準備しておいた建前となる理屈を並べる私に、理性とか色々の狭間でごねる彼。けれど、今後彼を守りきるためには私たちだけでは足りない。私がマスターとして召喚しても良いのだけど、それだと私と彼の立場が逆になるだけ。それなら、私はこっちの方がいい。
だからこそ、この交渉を確実に成功させるべく、私は彼に特効となる切り札を切る。
「最悪なのはキシナミがその子を落とすこと。
「よしわかりました全部俺が引き受けますともやってやりますともぉ!」
予想通り、彼はあっさりと承諾した。彼の心を利用するようで少し気が咎めるが必要なことだからと自分を納得させる。
大丈夫。彼の呼び掛けに応えてくれる相手が彼を守る目的に同意してくれると信じよう。そして、彼が悲しまないようにその相手と仲良くなれるように努力しよう。必要ならば、今度は意図的にでもその相手を懐柔できるように心がけよう。大丈夫、彼はきっと私を愛し続けてくれるから。
あなたがそうであるように、私はあなたと一緒にいるためなら、あなたを守るためならば。きっとなんだってするだろう。
だから、だからどうか。
こんな考えに染まるほどになってしまった私にその資格があるのかはわからないけれど。
例えこの世界でなくてもいい、どこか遠くの宇宙でも構わない。私たち家族が心安らかに過ごせる日々を、私は望みます。
と言うわけでコーハイ君やはくのん先輩の心理に更に踏み込んでいく大御所回でした。
女神様の描写とかでKEY様にここ違うとか言われたら直しますしダメだと言われたら消しますのでご了承ください。
女神様が出てる元ネタ様のURLはこちら↓
https://syosetu.org/novel/149568/
以外個人的な脳内設定。
女神様から見てコーハイ君は「自分と同じ力と立場だったら間違いなく自分と同じような行動を取る奴」という認識でありそれは正しい見識であり彼に力を与えない方が良い。
具体的には時空の壁を越えてムーンセルに対して先輩とBBちゃん解放しろとカチコミしだしたりしてたであろうので本当に危ない。
本作は最初の遭遇がアレだったせいかその前からかこの世の人間の方がおかしいパターンが多いです。
今回女神様は眠ったままの彼女のマスターから離れずにコーハイ君から話を聞く為聖槍の力を使って保健室同士の空間を繋ぎ、そこから更にコーハイ君の精神に話しかけた。物理的距離もさほど離れていなかったこともあり割と簡単にできたが、やはり他と接触するのに毎回繋げるのも面倒だと思ったのが後に他との接触用の分体を作るのに繋がったかもしれない。
BBちゃんからすると女神様は文字通りに触らぬ神に祟りなしと言ったところ。ビジネスライクに表面上のお付き合いだけで良いと思われるが、マスターが起きないとのことなので医療用の薬品を差し入れしたりしている。下手するとどこの世界より健康管理AIとしての性能発揮してるかもしれない。
はくのん先輩がコーハイ君に他の子と仲良くしていいと言う理由は今回語った他にも色々あるが、究極的には「自分に繋ぎ止めておくため」に帰結する。どんな方法を使ってもコーハイ君を手放す気はない模様。
今回登場の謎アイテム紹介
光るそば……出典:NTTdocomoのCM
仮面ライダー放送中に突如として流れた、仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマーが金粉を撒き散らしながらこの光るそばをPRするというCMで話題となった謎の食品。
詳細はCMを見ても今一ピンとこないが、歌詞の中で引っ越ししたら、と言われているので引越し蕎麦の一種であると考えられる。
松っちゃん砲ポータブルタイプ……出典:3年Z組銀八先生
銀魂の学パロスピンオフに登場した松平片栗虎が、現代学園ものの教師という設定に合わせて本編で使用する大砲の代わりに持ち出してきた武器。正体は本編での言及通りバズーカっぽいハリボテの棍棒であり、制作費は4万3千円と妙にリアルな額。
ハリボテとはいえそれなりの値段がかかった手持ちバズーカサイズの質量を持った鈍器であるため、一般的な家屋の壁や天井にぶつかれば穴が開くくらいの威力はある。
次回はリソースを稼ぎに初のお外描写。それが終わったら漸く序章の終了かなって。