「お待たせしました」
メイド悪魔が深めの長皿のような形の器と紙を、銀盆に乗せて戻って来る。それは私の予想した通りだった。
(うぅ、やっぱり……そういう事よね……)
オシッコの時もそうだったから想像はしていたけど、
「あ、ありがとう…」
「いえ……。では準備なさい」
少年に器を渡して指示を出すメイド悪魔。すると、少年がうしろに回り込んで、神官服の裾を掴んだ。
(えっ……?はっ、そうだったわ。そうよね……
オシッコの時とは違い、服を捲りあげてお尻を露出しなければ、出たものが付着してしまう。今の今まで私はそれを想定していなかった。
(あ……みっ見られてしまうわ!私の……ふ、不浄の穴っ。うぅ、まだ誰にも見られた事なんかないのにぃ……)
まだ見ぬ未来の旦那様にだってそんなところ、見られたいとは思わない。だって、裸を見られるよりずっと恥ずかしいじゃないっ。しかも、そこから
「少し足を開いて、腰を突き出した方がよろしいかと」
「ぁぅ……は、はい……」
彼女の言う通りよね。幸いなことに足は拘束されていないし、きっと足を開いた方が出しやすい。それはその通りなんだけれど……。私は脚を肩幅くらいに開いて腰を反らし、恐る恐る……お尻を後ろに突き出す。
(でも、この格好って……)
まるで男を誘う淫らな娼婦みたい。顔は既にさっきまでの比ではないくらいに熱い。今ならオデコで紅茶でも沸かせるんじゃないかしら。
それでも衛生的にも尊厳的にも、我慢して漏らしてしまうよりかは……いいはず。無理矢理にでもそう納得するしかない。
「じ、準備出来ました。どうぞ……」
少年もかなり緊張しているようで、声を裏返らせながらそう言った。その緊張がこちらにまで伝播してきそう。
(私も恥ずかしいけれど、彼だってそうなのよね……深く考えずに、出来るだけ手早く済ませてしまえれば……)
「んぅ……っ」
すぼめていたお尻の力を抜くと、ゆっくりと出口を押し広げて、不浄の穴からアレが顔を出す。
みちみちっ…ぷすっ…プス……
全員が沈黙する静寂のなか、ごく小さな音さえも、やけに大きく響いて聞こえる。放出するときのあの感触が、やけに鋭敏に感じ取れる。
(ああ…………。遂に、遂に出てしまったわ。男の人が見ている目の前で、私……ウンチを出しちゃってるのね……っ!……お尻がスゴい拡がってるのがわかるわ……いっぱい……まだ出てる)
普段はすぼまっている狭き門を無理矢理押し拡げ、通り抜けていく感触。それは形容し難い解放感となって、ある種の快感を覚えた。段々とお腹が軽くなっていく。後ろで見ている彼は、こんな光景を見てどう思っているのかしら……?
(だ、だって仕方ないじゃない。何日も前からずっと我慢してたんだから……。人間、出るものは出るのよっ)
私は内心で
(貴方だって、わ、私のオシッコとか、こんなあられもない姿を見れるなんて、むしろ運がいいわ。そうよね?)
羞恥で湯立ってしまった頭の中で、意味の分からない事を考え始める私。
「うっ……くっ……!」
「……?なんだか焦っているような……?」
全てを出し終える時が近付いている。それが感覚でわかる。後ろで何か起きているような気がするけれど、首と腕を拘束する枷が邪魔で、振り向くことは出来ない。気掛かりではあるけれど、見ることは叶わないのだから、諦めて自分のすべき事をするしかない。
その時、思いもよらない事態に見舞われた。
ぷぅぅ~!ブボッ……ブビィ!ブリュリュ~!
ファンファーレの如く、お腹に溜まっていた空気が、文字通り音を立てて飛び出す。静粛な空気のなか、下品な音が大音量で響く。
「~~~~っ!!」
(い、いやぁぁ!どうしてこんなに響くのよぉ~!!)
もう泣きたいわっ。泣いていいわよね?本日一番の精神的ダメージ。涙無しでは語れないわ。……誰にも語る気なんてないけれどっ。
でも、それで終わりではなかった。
「くっ……うッぷ……ん、んんっ」
後ろから少年が苦しむ声が聞こえる。どうやら空砲を吸い込んでしまったらしく、その威力は察してあまりある。私に遠慮して必死に我慢しているようだけど、彼の反応は私の心を深く傷付けるには十分だった。
(そ、そんなにクサイの!?ああ、ごめんなさい、ごめんなさい……!)
少年に心の中で何度も謝罪しながら、私は涙をこぼした。恥ずかしいやら、ショックやら、訳の分からない感情で頭の中がぐちゃぐちゃになっている。
「お、おわり、ました……」
軽くなった体とは裏腹に、心は鉛のように重い。辛うじてメイド悪魔に聞こえるくらいの小さな声で、私は終了の報告をした。視線を外してくれていたメイド悪魔がこちらを見て、一瞬ぎょっとしたように動きが止まった。
「では、拭いておしまいです。デリケートな部分だから、くれぐれも優しくなさい」
「は、はい。頑張ります」
メイド悪魔の励ますような指示に、少年も健気に返事を返す。二人の雰囲気はまるで良き師と弟子のような美しい関係に思えるわね。こんな状況でなければ、だけれど……。
丁寧に優しく拭いてくれた少年に感謝を述べ、私はホッとひと息ついた。そして少年が盆に乗せたそれと共に去っていく。
「っ!!?」
私はそれを見て驚愕した。盆に乗せられた長い皿の上には、私の出したものがこれでもかというくらいにてんこ盛りになっていた。あと少し多かったらきっと雪崩のごとく崩れ、大惨事だったかもしれない。
(え……そんなに……私があれを……?)
我ながら自分で出した量に驚いてしまう程の大量の……。
少年はふぅっと息を吐き、難しい仕事を見事にやりきったかのような、満足感溢れる清々しい表情で歩き去っていく。メイド悪魔が去り際に私に告げた。
「次回までに、
「えっ、あ……っ」
パタン。
(い、いつもあんなにいっぱい出るものだと思われた……?)
色々と失ってしまった気がするわ。もう絶対にお嫁にいけない。既に一生分の恥を晒してしまった気分で、私は涙と共にウフフと乾いた笑いを溢したのだった。