ゴールデンウィーク明け、逢は毎週水曜日の昼休みに開催されている映像研の集まりに参加するため、校内を足早に移動していた。
逢が集会が開催される空き教室に入ろうとすると、ちょうど教室を出ようとしてきた成美と鉢合わせした。
「ちょうど良かった。あんたもちょっと顔貸しな」
そう言って成美は教室を出ると、廊下の先にあるトイレに向かって歩いていった。
すかさず春香が教室から出てきて、暗い顔で成美の後ろをついていった。
逢は教室の中を覗いて純一がまだ来ていない事を確認すると、成美と春香の後を追ってトイレに移動した。
逢がトイレに入ると、成美は2人に向き直り用件を告げた。
「金曜の夜、予定明けときな」
訝しがる逢に成美は苛立ったように言葉を継いだ。
「バイトだよ、バイト。あたしの紹介するバイトを手伝うって約束だろ?」
春香は怯えるように了承したが、逢はバイトの内容が気になり詳細を尋ねた。
「この間、久々にモデルの仕事があったんだけど、その時のマネージャーが事務所の偉い人に話を繋いでくれるって話になってさ。で、向こうはお偉いさん2人連れてくるっていうから、こっちも2人連れてって合コンの形にしようってなった訳」
普通、合コンは恋人のいないフリーの人間が参加するものである。
自分に声がかかるのを疑問に思った逢は思わず呟いた。
「私、彼氏がいるんですけど……」
逢の呟きを聞きつけた成美は語調を強めた。
「彼氏がいてもいいんだよ。お偉いさんを接待するのが目的なんだから。うまくいけば、ちょい役だけど映画の仕事くれるって言われたんだから、絶対に成功させなきゃなんないのよ」
身も蓋もない成美の言葉に唖然とした逢だったが、成美の話は逢の想像を超えていた。
「だから、絶対に機嫌を損ねるようなことするんじゃないよ?足触らても尻触られても拒否しない。ホテルに誘われたらちゃんと枕すること。詳しいことは後でメールするから。ああ、橘にはちゃんと許可取っといてやるから安心しな」
成美は枕営業にまで言及すると、絶句する逢を置いて教室に戻っていった。
残された春香と逢が無言で教室に戻ると、ちょうど成美が純一に話しかけているところだった。
「そんな訳で女側の人数が足りなくてさ。橘には悪いんだけど、彼女貸してくんない?」
「僕がどうかじゃなくて、七咲の気持ちの方が重要です。七咲がいいって言うなら別にいいですけど……」
「実はさっき七咲にお願いして、あんたが許可すればって話になったんだよね」
「じゃあしょうがないですけど……。あんまり飲ませないでくださいよ?」
「分かってるって。お持ち帰りされないようにちゃんと見張っとくからさ」
成美は心にもない言葉で純一を丸め込み、こうして逢の合コン参加は決定されてしまった。
金曜日の夜、春香と逢は六本木にある高級レストランの入口の前で成美の到着を待っていた。
このレストランは完全個室制と店員の質の高さが評判の店で、芸能人や議員などわけありの人間がよく利用していた。
春香はオフショルダーの黒いワンピースタイプのパーティードレスを身に纏い、その上から白いレース地の薄手のカーディガンを着こみ、逢はノースリーブの白いシャツにひざ丈のグレーのコクーンスカートという出で立ちで、夜の寒さ対策として紺色のブルゾンを着ていた。
2人とも成美の命令で、なるべく肌が露出するお洒落を強いられていた。
場の雰囲気に気圧されて無言で成美を待っていた2人の前にタクシーが止まった。
タクシーのドアが開き、中から春物のコートの下にチューブトップ、ショートパンツといった格好の成美が降りてきた。
成美は2人の姿を確認すると、ヒールを鳴らしてレストランに入っていった。
2人は成美の後を追ってレストランに入り、成美に倣って上着をクロークに預けた。
成美は2人の恰好を一瞥すると逢のシャツに手を伸ばし、首元までしっかり締められていたボタンを2つ外して襟を開いてしまった。
「もうちょっと色気出しときな。ほら、これでいい」
逢はシャツを直そうとしたが、成美に睨まれ、胸元が開いた恥ずかしい状態のまま成美達と一緒に座席に向かった。
個室は真ん中に長方形のテーブルがあり、その左右と奥側に革製のソファーが3つ設置され、それぞれのソファーに1人ずつ男が座っていた。
向かって右側のソファーにはスーツ姿の若い男が座っており、成美の姿を認めると立ち上がって声をかけた。
「成美ちゃーん、待ってたよー。あっ、その2人が言ってた娘?」
「ごめんなさーい。お待たせしましたー。こっちが春香で、こっちが逢です。ほら2人とも挨拶して」
猫をかぶって接する成美に促されて逢と春香が挨拶すると、先程声をかけた若い男が立ち上がって男性陣の紹介を始めた。
「奥に座ってるのが山下社長。とにかく人脈が広くて、あちこちコネ持ってるすごい人」
奥の誕生席のソファにはYシャツにノーネクタイ、ジャケット姿の中年の男が座っていた。
横に流れるバーコード頭、ポッコリとしたお腹が目立つ、どこにでもいるしょぼくれた中年のおっさんだった。
「んで、こっちが常務の稲辺さん。交渉とかトラブル解決とか、とにかくすごいんだ」
左のソファにはアロハシャツを着た肌の浅黒い30代後半くらいの男が座っていた。
アロハシャツの上からでも分かるくらい分厚い筋肉を持つ強面の男だった。
「最後に、俺はマネージャーの松井達也。タツって呼んでちょーだい!」
「それじゃあ、どこに誰が座ればいいですか?」
普通の合コンだと最初は男女が向かい合って座る形式になるところだが、この合コンは明らかに男女がセットで座るようにセッティングされていた。
社長が春香を指名し、常務が成美を指名。指名されなかった逢はマネージャーの横に座った。
こうして合コンが開始された。
男性陣が女性陣に年齢や趣味、好きな芸能人などを質問しては女性陣が答えていく。
逢も春香も特に男性陣に興味がないためろくな質問も出てこず、会話は終始男性側のペースで進んでいった。
酒を飲み、料理を平らげ、途中、何度か席を入れ代わりながら合コンは続いた。
男性陣にある程度アルコールが回り始めると、席は徐々に悪ふざけの様相を呈してきた。
最初に悪戯を始めたのは常務だった。
隣に座っている春香の肩を左手で抱くと、そのまま手を胸元に差し入れ揉み始めた。
春香は成美に命令されていたとおり抵抗しなかった。
逢にも悪戯の手が伸びてきた。
隣に座っていた社長の手が逢のふとももの隙間に差し込まれ、逢のふとももの内側を撫ではじめた。
何食わぬ顔で食事や会話を続ける男性陣と成美の行動に逢と春香は無言で耐えていたが、悪戯はさらにエスカレートしていった。
常務は左手で春香の胸を揉みながら酒を口に含むとそのまま春香に口づけし、口移しで口内の酒を春香に飲ませていった。
春香はされがまま喉を鳴らして酒を飲み込み、体を弄られ続けた。
社長の手の動きもどんどん大胆になり、ついには逢の股間に手が伸ばしてきた。
社長の手がスカートの中に入ってきたのを感じた逢はふとももを閉じあわせて防ごうとしたが既に遅く、社長の指は逢のショーツに触れていた。
指がショーツ越しに逢の割れ目を執拗になぞり始めた。
逢はふとももで社長の腕を挟み続けて精一杯の抵抗を続けたが、社長は逢の抵抗をあざ笑うかのようにもう片方の手で逢の臀部を撫でまわした。
気が付けば春香はオフショルダーのワンピースをずり下げられ、乳房とその頂点にたたずむ乳頭まで露出させられていた。
春香は胸元を隠すこともせず、赤面したまま常務に胸を揉まれ続けていた。
逢は割れ目を撫でられつつ何度も社長のヤニ臭いキスを受けていた。
口移しで強い酒を飲まされてむせる逢を見て笑う男たち。
まさに酒池肉林の宴だった。
たまにウェイターが配膳のために個室に足を踏み入れたが、客の行為を丁重に無視して仕事をこなすと無言で退出していった。
逢と春香が体をまさぐる手に必死に耐えていると、成美が席を立って社長の後ろに回り込み肩を揉みつつ耳元で何か囁いた。
その後成美は常務の後ろに回り込むと、同じように肩を揉みつつ耳元で何か囁いた。
社長と常務はそんな成美の囁きに満足げにうなずくと、逢と春香の体をさらに過激に触り始めた。
常務は春香を膝の上に座らされると、背中のファスナーを下ろしドレスを春香のお腹までずり下げてしまった。
チューブトップのブラジャーも乳房の下までずり下げられ、上半身を裸にされた春香はそのまま胸を揉まれはじめた。
春香はたまに口を奪われたり耳を舐められたりもしていたが、それでも抵抗せずに常務のペッティングを受け続けた。
逢も春香に負けず劣らず大変な状態だった。
スカートの下に潜り込んでいた社長の指がおなかの肌に直接触れたかと思うとそのまま下に滑り、ショーツの中に潜り込んだ。
驚いた逢が両手で社長の腕を掴んだが、成美が首を横に振って逢に合図を送ると、逢は腕から力を抜いて社長のなすがままにされた。
逢の体から力が抜けると、太く短い男の指が逢の薄い陰毛をかき分けて陰裂を上下にさすり始めた。
社長の指が割れ目の上端に隠れている陰核をひっかくたびに逢は腰をゆすって指が当たるポイントをずらそうとしたが、密着された状態では指を避けることができなかった。
皮の上から何度も陰核を刺激され、逢の秘所は徐々に濡れはじめていた。
逢の秘所が潤んできたことを確認した社長は、指を逢の膣口に差し込むと、秘穴の天井をこするように刺激した。
へその裏に電流が走るような刺激が逢の背筋を駆け上って腰が軽く浮き上がったが、それでも逢は耐え続けた。
連続して与えられる痺れるような刺激に逢の密壺からは愛液が溢れ、ショーツのクロッチ部分に染みを作っていた。
逢の股間から出る恥ずかしい滴が社長の手の甲まで濡らし始めると、社長は逢の股間から手を離し、マネージャーを自分の席に呼びつけた。
おしぼりで手を拭いた社長がクレジットカードを渡して何事か言づけると、マネージャーは個室を出ていった。
秘所への攻めに耐えていた逢は深呼吸を繰り返し、体と心を落ち着けようとした。
マネージャーが戻ってきて革製のバインダーを開いて社長に差し出すと、社長はサインしてそのまま突き返した。
再びマネージャーが席を外し、しばらくして戻ってくると会の終了を宣言した。
「じゃー、名残惜しいですけど、ここらで1次会を終了しまーす」
その言葉に、春香を膝に乗せて楽しんでいた常務も手を止め春香を膝から下ろした。
「会計はすませてありますから、社長と常務はお先にどうぞ。お店にタクシー呼んでもらってますんで、そこで待っててください。成美ちゃんは2次会についてちょっとだけ”相談”ね?」
マネージャーの言葉に社長と常務は席を立ち、その後を成実とマネージャーがついていった。
しばらくして成美が戻ってくると、残っていた逢と春香を褒めた。
「あんたたちよくやったね。社長たちに気に入られたみたいだよ。この後の2次会にも誘われたから」
まだこんなことが続くのかと落胆する逢と春香だったが、成美の言う2次会は2人が想像していたものとは違っていた。
「2次会はこっから別々に分かれるから。逢、あんたは今晩社長に付き合いな。社長はあんたを気に入ったってよ。従順な女は飽きてるからって」
社長は立場上、媚を売ってくる女性には不自由していないため、素直に接待しない反抗気味の逢の態度が気に入ったらしかった。
また、素直に反応する逢の下半身も気に入ったらしく、夜の相手として逢を指名してきた。
「春香は常務ね。朝まで付き合うんだよ?ちゃんと接待できなかったら……。分かってるね?」
成美は言外に脅して2人にベッドまで共にするよう念を押すと、2人の返事を待たず、店を出る準備を急がせた。
その言葉に春香は急いでブラジャーとドレスを直して衣服を整え、逢も乱れたスカートを整えた。
衣服を整えた逢が席を立とうとすると、成美が逢に声をかけ携帯電話を差し出すように命令した。
訝しがる逢だったが、成美が手の平を突き付け無言で催促したので、逢はハンドバッグから携帯電話を取り出し成美の手に渡した。
成美は逢の携帯電話を操作すると、誰かに電話を掛け始めた。
呼び出し音が何度か繰り返され、唐突に途切れた。
「あー、あたし。姫野だけど。……そう、合コン終わったから連絡しとこうと思って。……今日はここで解散するから。……大丈夫大丈夫、1人だから。……じゃ、逢に代わるね」
そう言って成美は逢に通話状態のままの携帯電話を逢の耳に当てた。
携帯電話から純一の声が聞こえてきた。
『七咲?合コン終わったって?』
「……はい、先輩。今終わりました」
『姫野先輩がこのまま解散って言ってたけど、1人で大丈夫?』
横では成美が逢の言葉を注視していた。
余計なことをしゃべれば携帯電話を奪って話を遮るつもりであるのは明白だった。
「……はい、大丈夫です。タクシー呼んでくれたみたいです……」
『そっか、じゃあ気を付けてね』
「ありがとうございます、先輩……」
『あ、そういえば、明日なんだけど……』
そのまま恋人たちの会話に突入しようとしたが、成美が携帯電話を奪って会話を中断させた。
「あ、タクシー来たから。切るね」
そう言って通話を終了させると、携帯電話の電源を落として逢に叩き返した。
思わず睨み返した逢に成美は憎々しげに言葉を投げかけた。
「なに?その目?あんたが今晩帰んなくても怪しまれないようにアリバイ作ってやったんじゃん。彼氏にバレても良かった訳?」
純一のことを持ち出されると逢としては反論する術がない。
逢が一番恐れていることは、純一に知られて悲しませることだったからだ。
純一に知られないようにするには騙し通すしかない。
もし成美が逢の嘘に協力しなかったら……。
純一が不審に思うような行動を避けるには、成美の嘘に乗っかるしかなかった。
目を伏せて視線をそらした逢に成美は支配者としての矜持を満足させると、春香と逢を急いで退席させた。
「ほら、社長たちを待たせるんじゃないよ。さっさと行きな」
店の入り口で預けた上着を受け取って外に出ると、道路にタクシーが止まっていた。
後部座席に座って待っていた山下社長が逢を手招きしたので、逢は言われるまま社長の隣の席に乗り込んだ。
マネージャーがタクシーのドアを閉めて頭を下げると、タクシーは滑るように走り出した。
すでに行先は告げてあったらしい。
逢はタクシーに運ばれ、そのまま夜の街に飲み込まれていった。