腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「……って訳でトラブルに巻き込まれて一応被害者だから、生徒会のほうに行かないといけないから勉強会については遅れて参加する。詳しい話は金田に任せるからよろしくな」
「わかりました。任せてください」
放課後、帰りのHRが終わってから昼休みの件についてクラスメイトに説明をすると金田が頷く。
綾小路が須藤を一撃で戦闘不能にした後、元生徒会の橘先輩が通りかかったので事情を話したが、放課後に改めて生徒会に説明するように言われたのだ。
「ククッ、それにしても綾小路ってのは相当やるみたいだな。体育祭で面白い奴とは思っていたが、想像以上だな」
龍園は楽しそうに笑っている。そういや龍園は借り物競走で綾小路とぶつかった際にお題である賞味期限が近いものとして星之宮先生を連れて行き、綾小路は星之宮先生は賞味期限切れって言ったんだったな。アレはマジで笑えた。まあ星之宮先生にボロカスにされた真嶋先生には同情するが。
「しかしこれでDクラスは盗撮で3人退学ですし、逆転の目はないですよ!」
石崎は笑いながら龍園に言うが……
「いや。多分ならないと思う。少なくとも俺が理事長なら退学にはしない」
「それは未遂だから?私なら未遂でも退学にするけど。少なくとも須藤は綾小路の顔面を10回殴るって明らかにヤバいし退学でしょ?」
伊吹がそう言ってくるが……
「明らかにヤバいからこそだ。お前らに聞くが、連中が退学したとして、学外で問題を起こさないと思うか?」
その言葉に全員が黙るが、賭けても良い。奴等は絶対に問題を起こす。
「なるほど……つまり比企谷氏は「3人が退学処分を受けたら何をしでかすか分からなくて、高度育成高等学校にダメージが入る」のを不安に思っているのですね?」
金田がそう質問すると一部の連中はハッとした表情になるが、理解出来てない奴もいるので補足をしておくか。
「ああ。この学校は政府が力を入れている学校で、Sシステムについても秘密にしているが、今連中を学校から追い出せば情報が漏れる可能性が高い。更に盗撮事件で退学になったなんて広まったらこの学校や政府にもダメージが入るだろうし、アイツらの扱いは難しいんだよ」
俺達は入学する前にこの学校の真相を知らなかったが、それは卒業生や退学者に口止めをしたからだろう。破ったら政府からペナルティを与えるって脅しと共に。
政府からの罰となれば黙るのは当然だが、Dクラスの4馬鹿レベルなら後先考えずにバラす可能性がある。そうなればペナルティが与えられるが、情報が広まってしまうのを防げない。ネット社会だからな。
よってあんな奴等を解き放つのが危険過ぎるから退学処分を下し難い……ってのが俺の考えだ。
「で、綾小路に対する暴力についてだが綾小路が一方的にやられていたら退学じゃなくて少年院送りだったかもしれないが、最後に綾小路がデカい反撃をしたからなぁ……」
まさか一撃で肩甲骨を粉砕するとは予想外過ぎるわ。
「じゃあ綾小路の方はどうなる?」
「退学にはならないだろうが停学はあるかもな」
石崎の質問にそう返す。須藤の顔面パンチ10発はやり過ぎだが、綾小路はピンピンしていて午後も保健室に行かずに授業を受けたらしいからな。アイツの耐久力は異常過ぎるわ。
それを考えると過剰防衛と判断されるかもしれない。判決を下すのは難しい問題だ。
「何か納得がいかないんだけど。退学になってもおかしくないのに退学に出来ないなんて」
そう思う気持ちは仕方ないだろう。女子からしたら不快な事件なのに学校の特殊さ故に退学にならないなんて歯痒く思っても仕方ない。
そこまで考えているとドアからノック音が聞こえてくるので横を見ると佐藤が入ってくる。手にはクリアファイルがある。
「あ、比企谷君。ちょっとだけ時間を取れるかな?」
「何だ?昼休みの件についてか?」
「うん。あの時は本当にありがとう」
「その礼は何度もされたからもうしなくて良い」
須藤が暴れた際に佐藤と松下を庇ったが、須藤が綾小路に潰され、橘先輩から放課後に生徒会に来るように言われてから、佐藤と松下から何度も謝罪と礼を受けた。
その際に俺は2人から謝罪と礼を受け取ったが、佐藤の方は未だに罪悪感を持っているようで別れ際にも悶々とした表情を浮かべていて、今も引き摺っているようだ。
「で?礼を言うにも俺に用があるのか?」
「比企谷君……というかBクラスの女子に用があるの。夏休みにプールに行った女子にお願いがあるんだけど、盗撮カメラから私達の裸を守ってくれた綾小路君に対する罰がないよう署名を集めてるから協力してくれない?」
なるほどな。被害者たる女子からの署名が沢山集まれば生徒会や学校も無視出来ないだろう。
「良いんじゃない?いつ盗撮したか知らないけど、私もプールに行ったし」
「私も撮られてたかもしれないし協力するわ」
そんな声が聞こえてくるので俺は佐藤からプリントを受け取る。見ればDクラスの生徒とCクラスの女子の署名が20人ちょっとだけある。
「じゃあ夏休みにプールに行った女子は署名をしろ」
その言葉に13人の女子が一列に並んで署名を始める。1クラスについて12、3人あたりだろう。つまり1学年で約50人で3学年で約150人になるが、それだけあれば効力を発揮すると思う。
そして全員が署名すると佐藤は一礼して出ていく。
「話を戻すが俺とひよりは生徒会室の方に顔を出さないといけないから勉強会には遅れて参加する。部活未所属組はなるべく出るように。それと上級生から4人から教わるのは石崎、真鍋、山下、山脇の4人だが、必ず図書館のブースで教わるように。他所のクラス……特にCクラスに真似をされたら面倒だ」
重要なのはこちらのカードを如何にバレずに使えるかだ。他クラスには極力知られないようにしないといけない。
「以上で話は終わりだ……っと、まだあったな。今回は龍園お得意のいちゃもんとか執拗な絡みは一切使うな。真っ向勝負を心掛けろ」
最後にそう締めくくってからひよりと一緒に教室を出るとAクラスの教室から佐藤が出て行き、階段を上っていき少し遅れて有栖が杖をついてやってくる。
「お疲れ様です八幡君。怪我は大丈夫ですか?」
「問題ない。痛みは引いてる。それよか署名はしたのか?」
「もちろんです。盗撮から女子生徒を守ったのみならず、盗撮犯に裁きの一撃を下した綾小路君の力になるのはAクラスリーダーとして、女子として当然ですから、夏休みにプールに行った人には全員署名をさせました」
有栖は力強く頷くが、やはり女子からしたら綾小路の無罪を求めるよな。
「もし痛かったら言ってくださいね?ナース服でご奉仕しますから」
ひよりが艶のある表情でそんな風に言ってくるが、ナース服のひよりか……良いな、うん。
「私も八幡君が着て欲しいなら着ますよ?」
「有栖の場合、ナース服より胸元にひらがなで名前が書かれたスク水を着て欲し「お断りです!」痛えっ!悪かったから杖で叩くな」
冗談を言ったら真っ赤になった有栖が杖で脛を叩いてくる。ちょっとからかいすぎたな。
そう思っていると有栖がジト目で見てくるが……
「……ペーパーシャッフルで八幡君が数学か物理か化学で90点以上取れたら着てあげます」
恥ずかしそうにそう言ってくるがマジで?!こりゃちょっと本気で頑張ってみるか。よく考えたら下位の連中が頑張るのだから指揮官の俺が頑張らないでどうするって話だ。
「わかった。絶対に取る」
「八幡君。私は坂柳さんと違って点数なんか関係なく、八幡君が望む格好をしますし、八幡君がエッチな事をしたいなら付き合いますよ……」
ひよりが蠱惑的な表情で坂柳さんと違って、って部分を強調しながら言って勝ち誇った笑みを有さんに見せる。ひよりには何が似合うだろうか?可愛いから何でも似合うけどな。
「む〜!わかりました!八幡君はスクール水着姿の私を見たいなら見せますよ!」
有栖は真っ赤になってひよりを睨みながらそう叫ぶが……
「有栖……廊下でそんなことを叫ばないでくれ……」
廊下にいる連中が俺を変態を見る眼差しで見てきて、ヒソヒソ話をしてるし。明日から俺の二つ名はロリコンになりそうだ。
「〜〜〜〜〜っ!」
有栖も自爆した事に気付いたのか真っ赤になって俯くが、俺も恥ずかしくて死にそうだ。
俺達が恥ずかしがりながらも歩き、生徒会室に到着したのでノックをしてから入る。中には南雲先輩しかいない。
「「「失礼します」」」
「来たか。早速で悪いが何があったんだ?」
「それは構いませんが監視カメラを見れば1発では思いますが」
「まあな。けど当事者の心情についても聞きたくてな。昼休みに池と山内は青春が云々って救いようのない言い訳をしたからな」
何が青春だよ?小学生ならまだしも高校生じゃ通らない言い訳だからな。
そう思いながら俺達は事情を説明する。
「……って感じですね。やっぱりバカ3人については学校の特異性から退学は無理ですよね?」
「ああ。あそこまで馬鹿だと退学した後にこの学校にもダメージが来る可能性が高いって意見が教師からも言われてな。3人に対する罰はまだ決まってないが、こんな内容を学校は希望してる」
南雲先輩は1枚のプリントを俺達に渡してくるが、中々えげつない内容が書かれている。自由を完全に奪った内容だ。
「これ、アイツらに見せたら荒れませんか?」
あの3人どころか普通の生徒なら絶対に荒れるだろう。
「そのくらいしないと馬鹿は変わらないから、文句は言わせない」
「ちなみに生徒会長。由比ヶ浜さんにも同じ罰を与えられませんか?」
有栖からしたら由比ヶ浜にも同じ罰を与えたいようだ。まあ由比ヶ浜にも与えるべきではある。
「今までの愚行に対して罰を与えているから無理だ。ただ次に問題を起こしたらこの罰を与えるって話は出てる」
「っても、由比ヶ浜は罰を受けても変わらないと思いますがね」
奴は本物の馬鹿だからな。
「そこは否定出来ないな。何にせよ話は終わりだから帰って構わない……あ、それと坂柳に比企谷」
「何ですか?」
南雲先輩に呼び止められるが……
「お前らが来る1分くらい前にチャットが来たんだが、今後は廊下で堂々とスク水の話はしないでくれるとありがたい。生徒会長として風紀の乱れは、な?」
「「失礼します!」」
「失礼します」
俺と有栖は逃げるように、ひよりは丁寧に一礼してから「生徒矯正プログラム」とタイトルのレポート用紙を机に置いてから生徒会室を後にするのだった。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
-
はい。
-
いいえ