腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「お勉強失礼します。少し宜しいですか?」
図書館にて俺が文系科目の指導をAクラスとBクラスの男女に教えていると声をかけられるので振り向けば有栖がクリアファイルを持っている。
「どうした?テスト作成について問題があったのか?」
「いえ。テスト作成は順調ですが、実際に解いてもらいたいのです。時間がある時に模擬テストを受けて頂けますか?」
なるほどな。俺達に解かせて難易度などに変更する必要があるから妥当だ。
「わかった。テストに制限時間を付けるならどれくらいだ?」
「20分、どんなに甘くしても30分ですね」
「良し……じゃあ石崎、伊吹、神室、ひよりはちょっと有栖の作った問題を解いてくれ」
「別に良いけど何でその4人?」
「成績が違う複数人にやらせた方がデータを取りやすいからな」
伊吹の問いにそう返す。馬鹿の石崎、平均レベルの伊吹、平均以上の神室、優秀なひよりにやらせて今後の作成に役立てて欲しいものだ。
「ではコピーしてから始めてください。椎名さんが抜けた穴は私が埋めます」
有栖はそう言ってひよりが座っていた椅子に座って早速指導を始めるので、俺は石崎と伊吹と神室、ひよりを離れた席に座らせてからコピー機に向かうと……
「あ、比企谷君。もうちょっと待っててくれるかな?」
そこにいたのは一之瀬で大量のコピーをしている。多分クラスメイトの為に対策プリントを作っているのだろう。
「別に構わない。そのプリントは俺達Bクラスからクラスポイントを簒奪する為の作戦アイテムか?」
「うん、まあそうだけど……その言い方はやめてくれないかな?」
一之瀬は苦笑しながらそう言ってくるが、ペーパーシャッフルで俺達Bクラスを倒しに行くんだろ?……って、遠回しに言っているのがわかったのだろう。
「冗談だ。何にせよお前らはやっぱりウチを狙うつもりか?」
「あはは……まあね。ウチのクラスは実質ビリだし、早いうちにBクラスに戻りたいから、ね?」
一之瀬は遠回しにDクラスは眼中にないって言っているが、当然だろう。
現在のクラスポイントは……
Aクラス 1103ポイント
Bクラス 844ポイント
Cクラス 659ポイント
Dクラス 0ポイント(実質マイナス100ポイント)
って感じだが、もしもBクラスとCクラスが直接対決をしてCクラスが勝てば、ウチから100ポイントだけCクラスに移る。
そうなるとウチが744ポイントで、Cクラスが759ポイントとなりウチはCクラスに落ちるので一之瀬からしたら負けたくないのだろう。
しかし……
(そんな焦る必要もないだろうに)
大半の生徒はクラスの昇降を気にし過ぎだろう。重要なのは最後にAクラスにいる事であり、1年生の内から上がったと喜んだり、下がったと落ち込む必要はないと思う。まあDクラスの連中は焦るを通り越して諦めているだろう。
「そうか。なら頑張ってクラスポイントを上げて、最終的にAクラスになって自分達以外の同学年約120人の希望をズタボロにして卒業してくれ」
「言い方!その言い方、悪い事をしてるみたいだからやめて!」
一之瀬が慌てながらツッコミを入れてくるが、これを第三者が聞いたらAクラスに悪い印象を持つだろうな。
「事実だろ?俺達は自分自身の欲望を叶える為に他クラス120人を蹴落とす為に学校に通ってるんだから」
「そうだけどさ!そこは160人の生徒が40の希望を賭けて戦ってるみたいな言い方にしてよ!」
ものは言いようだな、うん。同じ意味なのに、言い方でこんなに印象が変わるなんてな。
「まあそれは冗談として、わざわざ俺達に挑まなくてDクラスから徹底的に搾取すりゃ良いだろ。あんな金づるは滅多に見れないぞ」
4月から5月までは色々な生徒が原因で0ポイントになったが、5月以降には由比ヶ浜と須藤の2人の愚行で300ポイントくらい引かれて、今じゃマイナス100ポイントだからな。あの2人を適当に挑発すればポイント何回余裕だろう。
「うーん。同盟は解消したけど、だからって執拗に追い詰めるのはどうかなって……」
「優しいな。どうせなら無人島試験みたいに乱戦的な特別試験でDクラスに奇襲をして、全部Aクラスとウチの仕業にすれば良いのに」
「そんな火事場泥棒みたいな……」
火事場泥棒みたいというが、実際にルールを破らないなら火事場泥棒的な事をしても問題はない。寧ろ俺は龍園みたいな略奪派じゃなくて火事場泥棒派だ。
「別にお前のやり方を強要するつもりはない。ただお前はリーダーだ。リーダーって、このクラスをAクラスに行かせることを最優先にする責務がある。場合によって手段を選ばなかったり、自分の方針を曲げてでも勝ちに行ったり、場合によっては弱者を切り捨てないといけないから、火事場泥棒的なやり方も考慮した方が良いんじゃないのか?」
リーダーにとって重要なのは部下を勝ちまで導く事だ。その為に泥水を啜ってでもチャンスを得ようとする奴がリーダーとして高い資質を持っている。
「そうかもね。けど私は……」
そこまで話すと一之瀬は苦悶に満ちた表情を浮かべながら口籠る。
「あ!コピー終わったから行くね!待たせてゴメン!」
一之瀬は慌ててコピーを回収してからCクラスの生徒がいる場所に向かって早足で去って行く。多分弱者を切り捨てる云々について気にしてるのだろう。
そう思いながらも模擬テストをコピーして有栖の元に向かう。
「待たせた。配ったら始めろ。制限時間は25分で良いか?」
「それで構いませんよ。では頑張ってください」
俺が石崎達に配ると4人は解き始めるが、石崎は真っ先に憂鬱そうな表情に変わる。そして一通り問題を見た伊吹と神室も嫌そうな表情を浮かべながら始める。いつも通りの表情で問題を解き始めるひよりは流石の一言だな。
「ところで八幡君。一之瀬さんとは何を話したのですか?」
有栖にそう聞かれたので先程のやり取りを話すと、楽しそうな笑みを浮かべる。
「一之瀬さんは弱者を絶対に見捨てないでしょう。しかし退学者が出たらどんな表情を浮かべるのか楽しみです」
「まあ泣くんじゃね?」
「そうでしょう。そうなった時にどんな言葉を一之瀬さんに話すか龍園君とはよく相談しているのですよ」
……ま、まあ暴君と女帝が手を組むとそうなるわな。龍園が高笑いをしながら下品な煽りをして、有栖が楽しそうに微笑みながら上品な煽りをするのが容易に想像出来るわ。
「しかしその話題について龍園君と話すと毎回揉めるんですよ」
「?何でだよ?」
2人ともドSだから一之瀬を虐める際に足並みを揃えてもおかしくない筈だが……
「もし一之瀬さんが壊れたら、私は一之瀬さんを鞭を好む雌犬にしたいのですが、龍園君は一之瀬さんを肉奴隷にしたがっているのですよ」
「………」
そう来たか。どうやって一之瀬を壊すか揉めているのではなく、壊した後の処遇について揉めてるようだ。というか壊すのは決定事項だな……
可哀想とは思わなくはないが止めるつもりはない。というか止められるはずがない。龍園も有栖も天然高級サディストだから凡人の俺が止めるなんて絶対に無理だ。
「……まあ頑張れ」
俺はありきたりな言葉を口にしてから本来の目的である指導役に戻る。しかし一之瀬が有栖の雌犬……つまり俺の部屋でもSMプレイをやるつもりか?俺、SMプレイは趣味じゃないから勘弁して欲しいな……
そう思いながら指導を再開するのだった。そして20分ちょいしてから石崎達のテストを見てみれば、石崎が30点、伊吹が42点、神室が59点で、毎回テストで90点越えが当たり前のひよりでも82点だったので、かなりの難易度である事がわかった。やっぱり有栖に頼んで正解だったな。
そして1週間後……
「では小テストを始めるがその前に伝えておく。君達が攻撃対象にしたCクラスへの指名は被ってないので承認された。そしてこのBクラスに問題を出す事を希望したクラスはCクラスとDクラスだが、クジの結果でCクラスとなった」
坂上先生がそう告げ、Cクラスとの一騎打ちが決定されるのだった。
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