腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「以上で期末テストを終了する。結果は3日後に発表するので今日はもう帰って構わない」
Dクラスにて担任の茶柱がテスト用紙を持って教室から出て行くと弛緩した空気になる。2日連続のテストは誰しも疲れる。
同時にクラスメイト同士で話し合いが生まれる。
「ねぇ。テスト終わったしカフェ行こうよ」
「えー?折角終わったんだし、夜に奮発してレストランに行こうよ」
「ラーメン食おうぜ!」
「馬鹿が。ステーキだろ」
「ピザに決まってるだろ!」
「まさかテスト後に外食出来るなんてな。前回の中間後なんか、先輩に頼み込んで缶コーヒー奢ってもらって満足だったのに……」
「本当に比企谷さまさまよ!」
そんな声が教室から聞こえてくる。軽井沢、松下、佐藤の3人がバイトを見つけ出してポイントの確保方法を得た後、Dクラスの生徒はこれまでずっと貧困生活を送っていた事から、信じられない程の貪欲さで学校のあらゆる場所から働き口を見つけ出した。
櫛田はカフェのウェイトレス、篠原はカフェの厨房のアシスタント、王は文化部部室棟の廊下の清掃、小野寺は運動部部室棟の廊下の清掃、三宅は服や靴や本など学外から搬入される物資の仕分け作業、幸村は物資の仕分けに関する事務作業、外村は電気屋の倉庫にある在庫に関するデータ打ち込み作業、長谷部は運動部御用達のクリーニング屋の手伝い……など色々な場所に頼み込んだ。
結果としてDクラスの生徒の中で働き口を見つけた生徒は毎月15000〜30000ポイントくらい稼ぐ事が出来て、以前より絶望感は薄れて、軽井沢達にバイトの存在を示唆した八幡に感謝の気持ちを抱いている。
しかし例外は常に存在する。池や山内、雪ノ下は会話を聞きながら舌打ちをして、楽しそうに話している連中を睨む。
池と山内は盗撮問題によりプライベートポイント使用権利が剥奪された上、私物は卒業か退学まで没収されたので娯楽がない状態である為、他の連中の会話の内容が羨ましくて仕方ないのだ。
雪ノ下についてはプライベートポイント使用権利はあるが、毎回バイトの申請を却下されているからだ。如何に自分がどれだけ優秀かを語っても全く相手にされていない。更に雪ノ下が自分よりも下と思っている人間が次々と働き口を見つけている事が更に不満に思っている。
実際に口にして論破しようとしたが、そのタイミングで綾小路が殺意を纏いながら割って入った為に不発に終わったが、その燻りは残っている。
しかし3人は態度に表しているだけだ。問題は……
「さっきからゴチャゴチャ煩えんだよ!教室に用がないならさっさと失せろ!」
矯正プログラムを受けていて、部活も辞めさせられ、腕に後遺症が残っている須藤。そして……
「というか何でゆきのんが落ちて、他の人がバイト出来てんだし!絶対にズルしたんでしょ?!お詫びにあたしとゆきのんにポイントを渡してよ!」
毎回バイトを落とされた挙句、何度も綾小路と高円寺に失禁させられた由比ヶ浜が怒鳴る。
それに伴い、大半の生徒は嫌そうな表情になるが反論すると碌な事にならないのは学習しているので無視して帰る支度をする。
「じゃあ私達は何処に行く?」
「クレープを食べよ?」
「シュークリームに一票」
由比ヶ浜の近くの席の松下は由比ヶ浜の喚きを無視して軽井沢と佐藤に呼びかけると2人はリクエストをしながら松下に近寄る。
「無視すんなし!人が困ってるのに無視するなんて最低だと思わないの?!」
由比ヶ浜のギャーギャーと叫びに軽井沢達は耳を塞ぎながら、こんな馬鹿に中学時代に振り回された八幡に対して心からの尊敬を抱く。
本来なら無視するが余りの言いっぷりに軽井沢は反論する。
「人が困ってるのに無視するのは最低?クラスポイントをマイナスにした由比ヶ浜さんはそれ以下だからね?」
「ふざけんなし!アレは前の生徒会長が馬鹿だからであたしは悪くない!クラスで1番のお荷物は須藤君だから!」
「はぁ?!ふざけんじゃねぇよ!赤点取る馬鹿が1番お荷物だろうが!」
須藤が詰め寄り怒鳴る。
「煩い!盗撮犯が上から目線で物を言うな!」
「んだと!こらぁっ!」
「何さ!暴力を振るったり悪口を言ったら学校に言うからね!」
教室のど真ん中で両者の醜い争いが繰り広げられるが、クラスメイトの大半からしたら「どっちも変わんねーよ」である。実際、5月以降に明確にクラスポイントにダメージを与えたのはこの2人だ。
近くで騒がれた軽井沢達は耳を塞ぎながら退出しようとするが2人に気付かれる。
「逃げんなし!けいけい達はお詫びにポイント「ちっ……煩いな」ぴいっ……!」
「綾小路ぃっ……!」
喚く中、綾小路が舌打ちしながらそう呟くと教室に蔓延した苛立ちが消えて、恐怖と期待に変わる。
綾小路の呟きに、まだ殺意を出してないにも関わらず、由比ヶ浜は腰を抜かして須藤は歯軋りをする。
「良い加減にしろ由比ヶ浜。軽井沢達に文句を言ってるが完全に言いがかりだ。お前や雪ノ下がバイトに落ちたのは軽井沢達がズルしたのではなく、お前達が救いようのない無能だから、当然の結果だ。軽井沢達に八つ当たりするのはやめろ」
雪ノ下は筆記試験が良いが、自分よりも成績が低い生徒には見下した態度を取り、自分よりも成績が高い生徒には「カンニングの疑いがある」って口にするなど問題点が多いし、挙句にクラスのお荷物である由比ヶ浜を庇っているなど、明らかに問題児だ。
「待ってくれ綾小路君。暴力はもうやめてくれ。そんな事をしても何にもならないじゃないか」
綾小路が2人に詰め寄ろうとしたが平田が割って入る。そんな平田にクラスメイトは「そんな屑を庇う必要はないだろ……」とばかりにため息を吐き、平田の偽彼女の軽井沢は冷めた眼差しを向けている。
「何もならない?迷惑しかかけない無能が殴られたら、クラスメイトがスカッとするじゃないか」
不快などの負の感情しか持っていない綾小路からしたらクラスの五馬鹿を殴ることに一切の躊躇いはない。
「聞き捨てならないわね。大した成績じゃない貴方程度の人間に無能呼ばわりされるなんてこれほどの屈辱はないわ」
「そ、そうだし!友達が少ない癖に偉そうにすんかし!」
綾小路の言葉に雪ノ下が不快感を露わにして、由比ヶ浜は腰を抜かしながらブーメラン発言をするが、綾小路は全く気にしない。
「事実だ。それに大した成績じゃないと言ったが、今回の試験は全力でやったからお前より上だ。お前が幾ら全科目満点でも引き分けにしかならない」
今回綾小路は全ての試験問題を本気で解いた。退学を回避する為だけなら、由比ヶ浜が退学しないようにした50点分の簡単な問題を解くだけで良いのにだ。
これには2つの理由がある。既に須藤の肩を壊したり、由比ヶ浜を何回も失禁させて綾小路自身、クラスで目立つようになったから手を抜く必要はないと考えたからだ。
もう1つは雪ノ下のプライドをへし折る為だ。これまで多くのクラスメイトが雪ノ下に文句を言ったが、「私より成績が悪いのに口を出すな」と一蹴してきたので、圧倒的な成績を叩き出して雪ノ下の唯一の強みをへし折ろうと考えたからだ。
結果として綾小路は50点分の難しい問題を全て解き、全科目100点満点であると確信を抱いている。
綾小路の堂々とした宣言に雪ノ下は苛立ちの混じった眼差しで睨む。これまで由比ヶ浜を何度も失禁させた綾小路は雪ノ下からしたら不倶戴天の敵のようなものだ。
「言ってくれるわね。だったら賭けをしましょう。全科目の合計点で競って、私より低かったら私と由比ヶ浜さんに土下座をしてから退学しなさい」
「わかった。ただしオレが勝ったら、雪ノ下は須藤達が受けてる卒業まで矯正プロジェクトに自主参加しろ」
「良いわよ。証人はここにいる全員で、監視カメラもあるから言い訳を許さないわよ」
雪ノ下は自信満々な態度で周りを見回すが、この状況下で言った言葉を撤回出来ないのは明白だ。
「当然だ。負けたら潔く退学する。そっちも負けたら潔く受け入れろ」
そう言ってから綾小路は教室から出て行く。
「ふんっ。あんな無能が私に勝つ?傲慢極まりないわ」
「だよねー。ゆきのんに挑むなんて本当に馬鹿だよねー」
雪ノ下と由比ヶ浜も帰り支度を始めるが、クラスメイトの大半は沈黙している。雪ノ下は性格は悪いが筆記試験の成績は学年でも10本の指から外れた事がない実力者。
そんな相手に退学を賭けの道具に使った学年平均レベルの綾小路の行動に正気さを失ったと思う人もいる。
そう考えるのは当然であるがこの時、クラスメイトは知らなかった。
綾小路清隆は生物として全ての分野で雪ノ下雪乃を上回っているという事を。
「さて、以前比企谷からの受けたアドバイスを試すか。夜に恵を呼んで、胸を揉ませてもらうように頼まないとな……」
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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