腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
冬休みになった翌日、俺はケヤキモールを歩いている。特に目的はないがブラブラ歩いている。偶にはこうやってのんびり過ごすのは悪くない。何せ普段は他クラスの動向について考えないといけないからな。
ちなみに有栖とひよりは軽井沢と女子会をやっている。女子って集まって駄弁るのを好きだからなぁ。
そんな事を考えながら本屋に入りライトノベルコーナーに足を向ける。漫画は今月気になる作品が無かったからのでライトノベルに期待だ。
そして新刊が置かれているスペースに向かう。
「おっ。「実力が大切な学校にいらっしゃい」の新刊出てんじゃん」
この作品って生徒の中で上位30人に好きな大学や会社に入れる権利を与えられるって学校が舞台でウチの学校に似ている。まあこの学校はクラス単位であるのに対して、この作品は個人単位の競争だけど。
俺はこの作品も含めて数冊のラノベを買って、次にゲームセンターか靴屋に行こうか悩みながら歩いている時だった。映画館から綾小路から出てきて、向こうもこっちにやってくる。
「よう。映画を見たようだが楽しかったか?」
「拍子抜けしたな。途中でアクシデントがあって中止になった」
何だそりゃ?機械の故障か?何にせよ災難だったな。
「そりゃ残念だ……あ、折角会ったし、例の大人の店に行くか?」
「頼む。恵のスリーサイズは聞いたからな」
「よし、行くか」
言いながら俺は綾小路を連れて方向転換して歩き出す。
「しかしそんな店があるんだな。ケヤキモールにはしょっちゅう足を運んでる訳じゃないが、全く知らなかった」
「そりゃ基本的に学校の職員やケヤキモールの人しか利用しないし、一応高校だから堂々とした場所に18禁関連の物が売られている店なんか出せねえよ」
俺も龍園に教えて貰うまで知らなかったしな。
俺達は綾小路は暫く歩き、服屋とお菓子屋の間にある倉庫の入口みたいなドアを開ける。そこには通路があり、左右には複数の扉がある。
「ここは倉庫じゃないのか?」
「倉庫だぞ。10ある扉の内、8はケヤキモールの店の在庫置き場で1つは清掃員の事務所で、最後の1つが清掃道具置き場という大人の店だ」
清掃道具は清掃員の事務所の中にあるからな。
そして俺達は清掃道具置き場と書かれたドアを開けると少しの清掃道具が置いてある小部屋が見えるが、本命は更に奥にある扉だ。
俺は奥にあるドアを開けると小洒落た音楽が耳に入り、明るい光が目に入る。入って直ぐにグラビア雑誌やコスプレ衣装、アイドル系DVDがあり、奥には「18歳未満お断り」と書かれた暖簾があり、その奥には部屋がある。
綾小路はというとこんな場所に始めて来たようで興味深そうに辺りを見回している。
「とりあえず一通り見て良いか?」
「ああ。好きに回れ。ただ18歳未満お断りと書かれた暖簾の先に行きたい場合は暖簾の近くにいる店員に1000ポイント払え。レジの近くに店員のID番号がある」
18禁コーナーに入るには毎回1000ポイント払わないといけないが、払えば学生が入っても見て見ぬふりをしてくれる。
「わかった」
綾小路が頷いたので俺はそのまま真っ直ぐに暖簾の前に立ち、店員に1000ポイント送金して、頷いたのを確認してから即座に暖簾の先に行く。
そこには先程見えた雑誌やDVDより過激な表紙やパッケージが見え、大人の玩具や薬品などもある。
俺はそのまま媚薬ローションと精力剤などを持って再度全年齢対象のコーナーに戻り、チャイナドレスとチアガールのコスプレ衣装を持って店員に2万5千ポイントを払って買う。雑誌やDVDは買わない。パソコンで買って見たほうが安いし。
暫くすると綾小路がバニーガールの衣装とマイクロビキニを持ってきた。
「それを買うのか?」
「ああ。恵が着ているのを見てみたいと思ってな」
「良いじゃねぇか。ストレス発散は大切だぜ」
学校でも悪名高い五馬鹿だが、全員綾小路をメチャクチャ嫌っている。
盗撮トリオは綾小路が軽井沢に密告した事により盗撮がバレ、雪ノ下はペーパーシャッフルで綾小路に負けて矯正プログラムに参加する事になり、由比ヶ浜は何度も綾小路の殺意に漏らしているからな。
俺も五馬鹿に嫌われていると思うが、綾小路よりマシだろう。
「そうだな。最近恵に抱きしめられたり、頭を撫でられると不思議と身体が軽くなって心地よいんだが、こんな衣装を着て同じことをされなら更に気分が良くなりそうだ」
言いながらレジでコスプレ衣装を買って、どこにでもあるありふれた紙袋に入れられる。
「良くなるだろうな。何にせよお前には癒しが必要だろうし、今後は積極的にその心地良さを求めてみろ。人間、安らぎや心地良さがあって真価を発揮出来るのだから」
勉強にしろスポーツにしろ、常に努力を続けるのは精神的に無理だ。重要なのは要所要所で癒しを得てで心にゆとりを得る事だ。
これまでのやり取りを見る限り綾小路は心を鉄にすることで努力を続けているようだがそれは人間じゃなくて機械だ。過去に何があったのかは知らないが、折角この学校で感情について知ったのだ。
負の感情とはいえ感情を得れたのだから、正の感情を難易度は違えど得る事は可能だろう。
「この学校に来るまでは考えもしなかったが、そうするつもりだ」
「そうしろそうしろ。ちなみにお前らって何処まで進んでんだ?」
前に聞いた時は下着姿にはなって胸を揉ませてくれたらしいが、もしかして更に段階が進んだのか?
「いや。以前に話した時とは大差ない。ただクリスマスに俺の部屋に泊まる事は決まっていて、一緒に風呂に入っても良いと言ってたな」
随分と進む予定のようだ。しかし表向き平田と別れたばかりだからリスクがデカいのは確か。場合によってはフォローしてやるつもりだ。
「じゃあ1つアドバイスだ。一緒に風呂に入った際、湯船にも一緒に入ったらそっと後ろから優しく抱きしめてやれ。ひよりや有栖は背後から抱きしめられるのを好んでるし、軽井沢が相手でも効果がある可能性は高い」
「正面からじゃなくて背後からか?」
「ああ」
一緒に風呂に入ってくれる程の中なら抱きしめても関係に亀裂は入らないだろうしな。
そんな風に話しながら店を出て通路を歩き、出口からコッソリ出る。
「とりあえず持ち歩いている時にバレたら面倒だしコインロッカーに入れて、帰り際に取るぞ」
倉庫入口の近くには俺達みたいな客の為にコインロッカーを設置してくれているのでありがたく利用させて貰う。
俺達は荷物を入れ、そのままゲーセンで遊び、電気屋でゲームを買ったりした。
そんな風に遊んでいると腹が鳴る。時計を見れば12時を過ぎている。
「そろそろ飯にするか。綾小路は食いたいものはあるか?」
折角だし綾小路には美味い飯を食べる快楽も知ってもらった方がいいな。
「中華料理が食べたいな。昨日テレビを見てたら麻婆豆腐が美味そうだった」
「麻婆豆腐か……麻婆豆腐専門店は……ん?」
そこまで考えているとケヤキモールのレストラン街と真逆の方向にて、微かにだが暖簾が風で揺れているのが見えた。場所も普通なら気付きにくい場所で、初めて見るな。
「ちょっと待ってくれ。何か初めて見る店があったし、見に行かないか?」
あんな場所に店があるなんて、もしかしてエロい店みたいに特殊な店か?
疑問に思いながら綾小路とそっちに向かうと、その暖簾は飯屋、それも綾小路が希望した中華料理の店だった。
「何でレストラン街から離れた場所にあるんだ?」
こんな人があまり来ない場所に店を開いても集客率は悪いだろうし。
「だがこういうのは隠れた名店なんじゃないか?」
「かもな。行ってみるか?」
俺の問いに綾小路は頷く。まあ折角だし行くのも悪くないだろう。
そう思いながら俺達は『紅洲宴歳館・泰山 高度育成高等学校支店』に入るのだった。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
-
はい。
-
いいえ