腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「しかし嫉妬か……怒りや不快の感情もそうだが負の感情というのは強さを感じるな」
脱衣所にて綾小路は身体を拭きながらそう呟く。綾小路は先程のジャグジーのやりとりを思い出したのだろう。
あの時綾小路は鬼龍院先輩に弄ばれて、軽井沢が嫉妬の余り隠す事なく綾小路に抱きついて鬼龍院先輩を睨んでいたが、軽井沢何でそんなに怒っているのか本気で理解出来てなかったので、俺は今嫉妬の存在を教えたのだ。
しかし嫉妬の気持ちが強いのは同感だ。さっきの俺も感じたからな。ひよりと有栖が俺に抱きついているなずなを見た際にはドス黒いオーラを出していたが、アレは間違いなく嫉妬の感情だろう。
「かもな。ちなみに鬼龍院先輩に弄ばれたいのは本当か?」
「ああ。銀髪の鬼龍院先輩に弄ばれながら金髪の恵を弄びたい。お前こそ朝比奈先輩……歳上の女子に弄ばれたいと思わないのか?」
「なずなは弄ぶより甘やかすのが上手そうだからな」
「で?あの豊満な胸に顔を埋め、頭を撫で撫でされたいのか?」
「……お前、大分エロくなってきたな」
昔は俺がエロい話を綾小路に教えていたが、今は綾小路も普通にエロトークを出来ているし。
「恵の為にも色々勉強したからな」
「……そうか。まあ甘やかされたい気持ちがない訳じゃない」
ひよりや有栖を甘やかすことはあっても甘やかされる事はそんなに多くないからな。
「なら朝比奈先輩も女の1人にしたらどうだ?2人も3人も変わらないだろ」
いや、躊躇いなく言うなよお前。普通に怖いわ。
綾小路の淡々とした物言いに若干……否、結構ビビりながらも服に着替えて脱衣所を出て、そのまま外に出て寒い空気を感じる。熱い場所から寒い場所に行くと寒く感じるが眠気覚ましには最適だ。
すると男子の綾小路が最初にやって来て、続いて鬼龍院先輩がやってくる。
「やはり男子は早いな」
「鬼龍院先輩も女子にしては早いんじゃないですか?」
実際ひよりや有栖と一緒に風呂から出ても、ひより達は俺が脱衣所から出て数分間は出ないからな。まあ女子は身だしなみを重視しているからだろうけど。
「ふふっ。可愛らしい後輩に会いたかったから急いだのかもしれないな、綾小路」
「そう言って貰えると嬉しいです。是非弄んでください」
お前はちょっと自重しろ馬鹿。つかまた軽井沢が怒るぞ?
「正直だな。しかし君の友人は怒ると思うが?」
「怒る恵も可愛いんで」
本当に恐れを知らないな。その開きっぷりには脱帽だ。
「やれやれ。仕方ない後輩だな」
鬼龍院先輩は笑いながら綾小路の顎を掌で持ち上げて、綾小路は無表情ながら口元を僅かだが緩めている。つか俺としては手持ち無沙汰で微妙な気分だな。
そう思っている時だった。
「おいおい。どういう状況だ?」
背後から声が聞こえてきたので振り向くと南雲先輩が数人の男女を連れて歩いている。よく見りゃ一之瀬も居て全員生徒会の人間だ。
「何だ生徒会の面々か。見てわかるだろう。後輩を弄んでいるところだ」
言いながら綾小路の顎をくすぐっているがこの状況でも2人とも続けてるのか?
「お前がそんな事をするとはな。強い後輩に興味を持ったのか?」
「まあそんな所だ。少なくとも桐山の指揮下にいるよりは楽しいな」
「ふざけるな。クラスに一切協力する気などない返事の癖に。可愛げのない女だ」
鬼龍院先輩の言葉に南雲先輩の背後にいる桐山副会長が怒りを宿した目を向ける。確か桐山先輩はAクラスリーダーだったが、南雲先輩に負けたんだったな。
しかし負けた事を鬼龍院先輩の所為にしているような眼差しはどうかと思うな。如何に鬼龍院先輩が有能だとしても個の力、集団戦の戦局を変えるほどじゃないだろう。昨年度は堀北先輩が会長だった事から南雲先輩が希望する個人戦を重視した特別試験は無かっただろうし。
そして桐山先輩のクラスと南雲先輩のクラスの総合力に大差はなかったのだろう。1年生のクラスでも有栖のクラスの総合力と元Bクラスだった一之瀬のクラスの総合力にそこまで差はないし。
にも関わらず、現在500ポイントの近く差があるのは生徒1人1人の能力が原因ではなく、リーダーの質において桐山先輩が南雲先輩を圧倒的に下回っていたのだろう。その癖、鬼龍院先輩1人を責めるのは筋違いだと思うな」
「おいおい比企谷。お前も中々大胆だな」
そこまで考えていると南雲先輩が話しかけてきたので振り向くと、楽しそうに笑う南雲先輩と真っ赤になって震えながら俺を睨む桐山先輩が目に入るが……
「綾小路。俺全部口にしてたか?」
「ああ。鬼龍院先輩が有能でも個の力って所から口に出ていたな」
「殆ど最初からじゃねぇか」
生徒会副会長に喧嘩を売っちまったよ。まあ南雲先輩じゃないからそこまで怖くないけど
「別に気にする必要はないだろう。事実、桐山が南雲より数段劣っているのは紛れもない事実だからな」
「鬼龍院先輩の言う通りだな。鬼龍院先輩が可愛げがないと思える時点で桐山先輩の底は知れる」
「ほう。綾小路は私を可愛いと思うか。嬉しいな。よしよし」
「あ、もう少しゆっくり撫でてください」
鬼龍院先輩と綾小路は煽りながら頭を撫でる撫でられるを繰り返しているが、桐山先輩は拳を震わせていて、南雲先輩以外の生徒会役員は絶句しているぞ。
「お待たせー……あれ?雅や帆波に生徒会メンバー?」
「中々面白い状況ですね」
「生徒会もスパリゾートに遊びに来たのでしょうか……」
「………」
と、ここで他の4人もスパから出てくる。同時に軽井沢は鬼龍院先輩に頭を撫で撫でされているのを見て不機嫌になる。
そして一之瀬は有栖を見てビクッと怯えるが、弱みについてバラされないか不安なのだろう。
「なずな?随分と妙な組み合わせだな。どんな事があってそのグループが出来たんだ?」
これには南雲先輩も意外そうに見てくる。
「んー。私は1人でスパに行ってたら、麻婆を食べた鬼龍院さんとはち……男2人がやってきて……えっと「由比ヶ浜さん被害者同盟の私達がスパ施設に遊びに来て、偶然会った4人と合流しました」まあそんな感じ」
朝比奈先輩の言葉に有栖が補足を入れる。まあ嫉妬云々は話したくないだろうからな。
「ほう。麻婆と言ったらあの麻婆だろうが、お前らは完食したのか?」
「美味しかったです」
「新しい世界を知れました」
「やるな。今年の1年から完食者は出ないと思ってた」
南雲先輩が質問して俺と綾小路が即答すると、一之瀬以外の生徒会役員は戦慄した眼差しで見てくるが、やはりトラウマになっているようだ。
「私も驚いたよ。で、話してるうちに意気投合して今からスイーツ食べに行くつもり?雅達も来る?」
「残念だが遅い昼食を食べたら直ぐに学校に戻らないといけないんだよ」
「生徒会ブラック過ぎませんか?」
思わずそう呟いてしまう。冬休み初日から仕事なんて面倒極まりない。
「まあな。生徒会役員数の定員制度を排除したのはそれも理由だ。お前や綾小路も入るか?」
「柄じゃないんで遠慮します」
「その時間を青春に費やしたいので遠慮します」
俺は生徒会って柄じゃないのでパスをしたが、綾小路も生徒会より青春(って名前のエロ)を重視しているのだろう。
「なら仕方ないな。俺達はもう行く……あ、それと綾小路。堀北鈴音との件について俺の耳には入っているが問題にする気はない。ただ須藤の件といい、今後も繰り返すと正当防衛が認められ難くなるからな」
堀北鈴音との件?何かやったのか?
「忠告聞きました。気をつけます」
綾小路が一礼すると南雲先輩が会釈をして役員を連れて歩き出すが、桐山先輩の憤怒の表情と一之瀬のビクビクした表情が印象的だった。
「では綾小路君。スイーツを食べながら何があったか聞かせてください。行きましょう」
有栖がそう言ったのを皮切りに俺達はカフェに向かうのだった。
カフェに着いてケーキとお茶が来てから、綾小路が口を開けるが、それによれば「堀北が綾小路に今後は本気を出してクラスに貢献しろと要請して却下したらコンパスで刺してきたので、須藤の時のように9回は無抵抗で刺され、10回目の刺しがきた瞬間にコンパスを破壊してから腹を殴って、そのまま噴水に投げ込んだ」との事だ。
それを聞いた俺は、正当防衛を成立させる為に何度も無抵抗で攻撃を受けた精神力にビビってしまった。当の本人は軽井沢と鬼龍院先輩に挟まれながらあーんされているけど。
まあ俺も直ぐに有栖とひよりとなずなにあーんしたりされたりしてそれどころじゃなくなったけどな。
結果的に解散するまでに火花が散るのが何回も見えてしまったのは言うまでもないだろう。
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