腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「今回の試験は学年別ではなく、学年全体で行う。先ずは試験に関する資料を配布する」
そう言って下がりに先生は20ページ近くある資料を配る。
「今回の試験は精神の成長をテーマとしている。普段関わらない人間との交流を通して、それらの対処や、人と円滑な関係を築けるかどうかを確認し、また学んでいくことが試験の目的の1つだ」
また部活をやってる生徒ならまだしも、帰宅部の生徒とかは上級生と関わりがないし、この試験を通して交流するのだろう。
坂上先生は精神の成長をテーマと言ったが、それ以外に上級生とのコネクションの設立、他クラスの情勢を知るチャンスでもある。今回は龍園が指揮をとるのだろうか?それとも俺に任せるのか?
そう思いながら坂上先生の話を聞く。
「まず目的地に着いたら男女別に別れて、それぞれ6つのグループを作って貰う」
そこはなずなから聞いているが男子と女子は1学年80人ずついるので、1年生においては13人から14人のグループが男女合わせて12出来るのか?グループの人数に制限はあるのか?
「そしてグループの人数には下限と上限があるので手元にある資料の5ページを見なさい」
坂上先生にそう言われて確認すると……
総数が60人以上70人未満なら、下限は8人で上限は13人
総数が70人以上80人未満なら、下限は9人で上限は14人
総数が80人以上なら、下限は10人で上限は15人
と書いてある。
つまり俺達1年の下限は10人で上限は15人ということになる。上級生は知らん。
「もうわかっていると思うが男女別でそれぞれ6つのグループを作る必要がある以上、他クラスと混合する必要がある。グループ内には最低2クラス以上の生徒が必要とするルールもある」
「坂上先生。クラスの数を増やしたらメリットとかあるのですか?」
気になった事を質問する。4クラス合同の場合、纏めるのが難しくなる欠点があるが、学校の性格的に考えてリターンも有る筈だ。
「ある……が、報酬に関する話は後に回す。今は試験中にやる事を話すが、今回のグループは林間学校だけのものだが、一緒に授業を受ける事は当然として、炊事や洗濯、入浴や就寝まで共に行動するなど内容は濃い」
その言葉に騒めきが生じる。今回は他クラスの生徒と苦楽を共にして背中を任せるような試験だし、グループ次第ではかなり厄介だろう。
「特別試験の結果は、最終日に行われる『総合テスト』によって決められる。資料7ページを開くように」
言われてページを捲る。そこには……
・道徳
・精神鍛錬
・規律
・主体性
と書かれているが、普段学校習うものとは違って100点満点を取るのが至難なものばかりだ。各項目に関して解説文はあるが余りアテにならない。
スケジュールによれば起きたら道場で座禅を組み、清掃をしてから朝食を取り午前の授業、昼食を食べてから授業を受けて、夕食前に座禅をする。で、夕食や風呂を済ませて就寝する感じだ。まるで少年院の生活だな。
しかもグループは凄く重要だ。風邪や事故で離脱したら他のメンバーが穴埋めしないといけないみたいだし。
「それとグループについてだが、1年生が6つのグループを作り終えたら、2年と3年と合流する。よって最終的に1年から3年を合わせた約30人から45人で構成された6つのグループが出来上がることになる。わかりやすく言うと同学年で作るのグループは小グループ、全学年で作るグループは大グループだ」
「坂上、試験の結果はどうやって決まるんだ?」
龍園が坂上にそう質問する。
「試験の結果は大グループのメンバー全員の試験結果の平均点で決まる」
それは厄介だ。1年生の中で良いグループを作れても、他学年の雑魚グループと組んだら上位入りは厳しいからな。
「次に試験の結果がもたらすもの、報酬とペナルティを発表する。次のページを見てみなさい」
坂上先生に言われてページを捲る。それによれば……
1位〜3位
1位…プライベートポイント1万、クラスポイント3
2位…プライベートポイント5000、クラスポイント1
3位…プライベートポイント3000、
以上を、大グループのメンバー全員に支給する。
4位〜6位
4位…プライベートポイント5000
5位…プライベートポイント1万、クラスポイント3
6位…プライベートポイント2万、クラスポイント5
以上を、大グループのメンバー全員から没収する。
って、書かれている。
「そして先程の比企谷君の質問だが、グループ内のクラス数や総人数によって報酬が増えるのでチェックしておくように」
言われて資料を確認すると、小グループを構成する生徒のクラス数が2クラスなら変化はないが、3クラスだと資料に載っている報酬の倍、4クラスだと3倍貰えて、小グループの人数でも倍率が変わり、10人を1倍としたら15人だと1.5倍となる。
つまり報酬を狙いに行けば纏まりが欠ける可能性があり、報酬が少ない代わりにリスクが下がるって2パターンがあるようだ。
「それと最下位になった大グループには退学というペナルティがある」
「はぁっ?!つまり40人近くが退学って事かよ?!」
石崎が大声で焦るが、そんな世紀末な学校があってたまるか。
「安心しなさい。退学となるかどうかの基準は学校が用意したボーダーラインを小グループの平均点が下回った場合に限る。つまり大グループで最下位を取っても、3つの小グループがボーダーラインを下回っていないなら退学者は出ないで済む」
要するに絶対に退学者が出る試験ではないのだ。それなら問題ない。
「またボーダーを下回った場合の退学者は小グループの責任者に退学して貰う。責任者については小グループ内で話し合って決めてもらう」
「んなの誰が好き好んでするかよ」
「当然メリットもある。責任者と同じクラスの生徒は報酬が2倍になる」
なるほどな。それは確かにメリットだ。
俺達の学年では最大15人の小グループを作れるが、もしもBクラス12人で他クラスから1人ずつ集めた15人グループを作り、責任者をBクラスの生徒にして1位を獲得出来たらクラスポイントは……
3(1位を取った際の報酬)
×
12(Bクラスの生徒数)
×
3(小グループに4クラスの生徒がいるボーナス)
×
1.5(小グループの人数ボーナス)
×
2(責任者のボーナス)
で、324ポイントも入る。まあこれは非現実にも程があるけどな。達成出来る確率は殆ど0だろう。
「責任者は小グループが出来てから話し合いで翌日の朝までに決めて貰う。決められなかったら全員退学になる。まあそんな間抜けなグループはないと思うが」
そりゃそうだ。全員退学なら立候補が居なくても最終的にじゃんけんでもするわ。
「つーかそのルールがあるなら由比ヶ浜達Dクラス屈指の馬鹿共は退学になるかもな」
石崎がそう言うが、有り得なくもない。俺がDクラスのリーダーなら馬鹿5人を省くように誘導する。そうすればAクラスからCクラスは拒否するのは明白だ。
で、アイツら以外でグループを組んで申請すれば5人は退学だ。5人が一気に退学すればDクラスのクラスポイントは尋常じゃないくらい下がるだろう。
しかしDクラスのクラスポイントは現状マイナスだし、Dクラスの真面目な連中も平和を求めてクラスポイントを犠牲にしてもおかしくない。
「その件については特別ルールがある。学校が作った矯正プログラムを受けている4人と何度も学校から罰を受けている由比ヶ浜さんの計5人をグループに入れた場合、そのグループは重いハンディキャップを背負う為、救済措置がある」
学校が救済措置を用意するって……学校も5人を厄病神扱いしてんのかよ。
「救済措置とは?」
「彼らが所属するグループは試験の際に試験官の査定が甘くなり、グループに所属するメンバーには特別ボーナスとして1人につき10万のプライベートポイントが与えられる。仮に男子グループで須藤君と池君と山内の3人と君達Bクラスの男子12人が組んで15人グループを作った場合、その12人は1人あたり30万プライベートポイント、合計360万ポイントが入手出来る」
坂上先生の言葉にバス内に騒めきが生まれる。確かにそれならメリットはデカいな。流石に3人を同じグループにするのは嫌だが、1人くらいなら悪くない。龍園も考える素振りを見せているし。
「まあ彼らを引き入れるのは君達の判断に任せる。それと責任者が退学することになった場合、小グループの中で「ボーダーを下回った要因」となった生徒がいた場合、学校が認めたらその生徒も1名だけ道連れで退学に出来る。ただし真面目にやっていても成績が振るわなかったなどの理由は学校が認めないと思うように」
その辺りはなずなから聞いているが、所詮は真面目にやれば良いだけだ。
「以上で説明を……っと、もう一つある。仮に退学者が出たら退学者の所属するクラスのクラスポイントは100引かれる。救済措置もあるが使う場合、更に300ポイントのクラスポイントが引かれ、2000万プライベートポイントを払う必要がある……まあまだ君達は2000万ポイントがないだろうから救済措置はないと思いたまえ」
救済措置って随分と重いな。全員ポイントをかき集めても1、200万くらい足りないだろう。まあ足りていても救済措置を使うつもりはないけど。ハッキリ言って割に合わなすぎるし。
「以上で説明を終わりにする。後は到着まで君達の好きにしたまえ」
坂上先生がそう締めくくるとクラスメイトは俺と龍園に目を向けてくる。これまでの試験では俺と龍園が軸になっていたから当然といえば当然だろう。
そんな中、龍園が前に出て坂上先生からマイクを貰う。
「全員聞け。今回の試験は総指揮は俺が執る。で、その下に比企谷とひよりをつける。今回は男女別々になる可能性が高い女子はひよりに相談しろ」
まあ女子陣営にも指揮者を置くのは正しいだろう。で、選ばれるなら頭がキレるひよりだ。
「わかりました。頑張ります」
ひよりは異論はないようで小さく頭を下げる。
「早速だが今回の方針を発表するが、今回は1位を獲りにいかない。正確に言えば獲れたらラッキー、無理には獲りに行かないだな」
龍園の言葉にクラスが騒めきが生まれるが、俺も龍園と同意見だ。
「え?獲りに行かないんですか?」
石崎があり得ないものを見る眼差しを龍園に向ける。
「確率が低過ぎる。仮に1位を獲る為のグループを作っても、それは他の3クラスも同じだ。1年生のみの争いなら勝ちに行くが、今回は上級生と組む際にイレギュラーが起こる可能性が高いからな」
「まあそうだな。2年の南雲先輩が学年全体を支配してるし、自分が所属しているグループ以外の2年のグループに手を抜かすかもしれないし」
龍園の答えにフォローすると全員は納得したように頷くと、今度は小宮が手を挙げる。
「じゃあ俺達はどうするんですか?」
「今回は可能な限りバラバラのグループに所属して、他クラスと接触して情報収集を徹底しろ。特に各クラスの粗を探したら今後の試験で役立つかもしれない」
「でも他クラスもウチのクラスを警戒してるから厳しくない?」
伊吹が正論を言うと龍園は甘いとばかりにニヤリと笑う。
「そうでもねぇよ。由比ヶ浜達の愚行に対する愚痴を皮切りに話せば、共感から警戒心を緩められる」
『あー、確かに』
クラス全体で同じ考えを抱くのだった。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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