腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
座禅を済ませると朝食の時間だ。昨日昼食と夕飯を食べた食堂ではなく、外にある食事スペースに案内される……そう、綾小路と軽井沢が夜の営みをした炊事場だ。
思わず綾小路を見れば無表情ながら僅かに口元を緩ましている。ヤベェ、殴りたい。
「今日は学校側から提供するが、明日から晴れの場合は全てグループ内で作ってもらうことになるので、人数や分担方法は全体で話し合って決めるように」
真嶋先生が注意しながらプリントを出してくる。中には朝食の作り方が書かれているが……
「これだけかよ……」
隣に座る小宮が嫌そうに呟く。運動部に所属する小宮からしたら物足りないのだろう。
しかし文句を言うつもりはない。実際メニューを見てみると、一汁三菜を基本とした内容で、食べ盛りの高校生からしたら物足りない。実際普段俺が食べているひよりの朝食はこれに1、2品分多いし……待てよ。
「真嶋先生。「朝食のおかずを増やす権利」はプライベートポイントで買う事は出来ますか?」
俺はある事に気づき真嶋先生に質問する。俺の発言に大グループのメンバーは一斉に見てくる。南雲会長なんか興味深そうに見てるし。
「結論を言えば明日以降は可能だ。おかず一品の値段は1回の朝食につき、2000ポイントだ」
「高ぇ!」
そんな声が上がってくる。朝食は明日から最終日まで7回あるので残りの朝食におかずを1品追加した場合は14000ポイントとかなり高いが……
「じゃあ残りの朝食ごとに1品追加してください。14000ポイントは試験後に払えば良いですか?」
「即決?!良いのか?」
「いいんだよ。今回の試験や実習は普段とは違う環境でやるが、重要なのは普段と同じコンディションを維持する事だ。その為には普段と同じくらいの飯を取るのも重要だ」
学校も最低限行動に支障が出ないくらいの量の朝食を出しているが、普段より量が少ないと万全の状態になれるかわからない。
「なるほどな……俺も残りの朝食ごとに1品追加で」
「俺もお願いします!」
「俺も追加で!」
ここでAクラスの鬼頭も真嶋先生に要求して、上級生を含めて他のメンバーも追加の要求する。
結果的にウチのグループでは綾小路と幸村と池以外は追加の要求をした。ただしDクラスの本堂はポイントが少ないからと最終日を含めて3日分しか追加していない。
「お前らは追加しないのか?」
Cクラスの渡辺が綾小路達に質問すると……
「朝食分のポイントは合宿後に恵と楓花さんとのデートの資金にしたい」
「俺は普段からこのくらいの量だから追加したら普段通りじゃなくなる」
綾小路と幸村がそう返し、池は媚びるような眼差しを向けてくる。
「俺はプライベートポイントの使用が認められてないんだよ……な、なあ。助けると思って奢ってくれよ」
「断る」
「嫌に決まってんだろ」
「メリットがない」
「綾小路や比企谷がコンディションが良くないのは問題だが、お前は絶好調でも絶不調でも雑魚だろ」
「つか赤点常習犯の盗撮野郎が絶好調でも綾小路の1割以下だろ?」
「盗撮した自身が悪い」
「……知るか」
「死ね」
俺が断ると他のメンバーも一斉に拒否するが、最後の綾小路に至っては悪意全開の悪口だし。
「何だよっ!そこまで言わなくていいだろっ!人として恥ずかしくないのか?!」
「盗撮を青春と言うお前にだけは言われたくない」
「屑じゃねぇか」
池の叫びを綾小路が一蹴するが思わず同意してしまう。犯罪を青春って考える屑と他人に悪口を言う人、どっちの方が人として恥ずかしいなんて比べるまでもない。
「なんっ!何だよっ!お前らこそ二股かけて人として恥ずかしくないのかよ?!」
「全然。オレは複数の女子と恋仲になっても寧ろ誇りに思うな」
「お前と一緒にするな。確かに俺達の行動は倫理的には褒められたものじゃないが、犯罪的にアウトなお前に比べたら健全だ」
『誇りに思うな!健全でもない!』
綾小路と俺の言葉にグループのメンバーが一斉にツッコミを入れる。解せぬ。
「まあ誇り云々は兎も角、楓花と恋仲になる際はちゃんと恵から了承を得てからにする。当事者が了承すれば問題ない。少なくとも比企谷の言うように当事者が了承していない撮影をしたお前と一緒にするな。これ以上喚くな」
綾小路の声が少しずつ冷たくなっている。そろそろ殺意をぶつけそうだな。
「っ!ちくしょう……」
池は悔しそうにしながら黙り込む。
「なあ綾小路ってしょっちゅう殺意をばら撒いているのか?」
「殆ど毎日だな。由比ヶ浜は毎日喚くし」
「黙らせてくれるのはありがたいが、由比ヶ浜はいい加減に学習して欲しい。以前職員室の近くで茶柱先生がストレスで胃に穴が出来たって話も聞いたぞ」
幸村の言葉にAクラスからCクラスの男子全員が同情に満ちた眼差しを向ける。実際にDクラスの隣に位置する俺達の教室にも由比ヶ浜の喚き声が聞こえてくるが、Dクラスからはノイローゼの原因になりそうだな。
内心同情の気持ちに満ちながらも朝食を食べて食器を指定された場所に片付けようとすると南雲会長と3年の石倉先輩がこっちにやってくる。
「明日からの朝食の用意だが各学年が2回ずつ、1回ごとに交代にしたいが大丈夫か?」
「了解しましたじゃあ明日は俺達1年がやります」
南雲会長の確認に俺がそう返す。6日ある内の2日ずつなら平等なので文句はない。
「わかった。じゃあ次の日は2年、その次は3年……って感じで行く。南雲もそれで良いか?」
「了解っす」
2人は頷いて片付けの準備に入るので俺達も続く。
「大グループ全員の朝食となれば……何時に起きれば良いんだ?」
本堂が質問するが40人近くの飯を作るとなれば……
「念の為に2時間前……4時くらいだな」
「マジか……俺、起きれるかわからねぇよ」
「というか寒そうだな……」
「だよな。眠い中で作業とかミスしそうだし」
俺が4時くらいに起きるべきと言うとグループから不満が出てくるので、手を叩く。
「落ち着け。面倒に思う気持ちはわからんでもないでも愚痴ってもやるべき事は変わらない。重要なのはやるべき事を出来るようにする事だ」
試験の採点基準にも影響があるかもしれないし、何より朝食を作れずコンディションを発揮出来なかったり、上級生から敵意を向けられるのは避けるべきだ。
「そこで提案だ。風呂は8時から9時の時間で、消灯時間は10時だ。しかし朝食を作る時間は8時半に風呂を出て9時に就寝しないか?」
そうすれば睡眠時間は7時間と充分だからな。
「……賛成だ」
「良いんじゃね?どうせ遊ぶものなんかトランプとかぐらいで退屈だろうし」
「慣れない環境だし睡眠時間は重要だしな」
鬼頭が真っ先に頷き、それを皮切りに他の面々も賛成してくれる。これなら寒い以外の問題も解決出来るだろう。
そう思いながらも俺は片付けを済ませて、午前の実習が行われる場所に向かうのだった。
同時刻……
「……と、なると朝食を作る時間は4時頃からですね」
「え〜?!そんな早く起きたくない!あたしは寝るから!」
女子が朝食を食べる場所にて、ひよりがそう呟くと由比ヶ浜は毎度のように喚き、同じグループのみならず上級生の女子も顔に不快の感情を宿す。
そんな中、ひよりは嫌そうにしながら口を開く。
「構いません。以前に八幡君から「由比ヶ浜の作る飯は最悪で、あらゆるものを食べる雑食の豚も嘔吐する」と聞いていますので休んでください」
「はぁ?!何言ってるしヒッキーは?マジキモい!本当に「煩いから黙って」ぶっ!」
ひよりの言葉に由比ヶ浜はキレるが、そんな中松下に転ばされる。
「あのさ由比ヶ浜さん。起きたくない貴女をひよりさんは気遣ったのに、キレないでくれない?あと、普段から失禁してる由比ヶ浜さんの方がキモいし、由比ヶ浜さんの存在が吐き気を催すから起きないでくれる?」
松下の容赦ない罵倒が由比ヶ浜に放たれる。2学期に脱糞の被害を受けてから松下は由比ヶ浜に対して一切の容赦をしなくなった。
「行こ。午前の授業に間に合わなかったら減点かもしれないし」
松下は由比ヶ浜に蔑んだ眼差しを向けてから食器を片付けに向かい、他のメンバーもそれに続くが、上級生も含めて誰1人由比ヶ浜を気遣う言葉を口にしなかった。
「何で……何であたしがこんな目に遭わないといけないんだし……あたしは何も悪くないのに……」
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
-
はい。
-
いいえ