腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
いよいよ試験最終日を迎えた。今日は朝食作りも座禅もなく、普段よりも1時間多く眠れた。
そして起床してから朝食をとり、1年生の待機場所に向かうが……
(随分と気合いが入ってる奴もいるな)
人によっては気楽そうで、人によっては気合いの入った表情をしている。前者は退学にならない自信があるから、後者は退学になる事を危惧しているからだろう。
(もしくは綾小路みたいに単純にモチベーションが高いかだな)
隣に座る綾小路からは物凄い気迫を感じる。余程鬼龍院先輩と一緒に風呂に入りたいのだろうな。まああんな銀髪美女が相手なら気持ちはわからなくはないが。
(早く試験を済ませて帰りたいな)
明日は休みだし、帰ったら直ぐに風呂に入って朝まで恋人3人とセックスをする予定だ。ひより達とのセックスは俺の中で生活の一部となっているので蔑ろにするつもりはない。
そう思いながら教員が入ってくる。3年担任の小野寺先生だったか?
「これより試験を始める。1年生は座禅、筆記試験、駅伝、スピーチの順番で試験を行う」
その言葉に騒めきがあるが、十中八九駅伝の後にスピーチがあるからだろう。
「はぁ?!何で駅伝が最後じゃないんだし!ふざ「煩い」げふぉっ!」
「由比ヶ浜さん?!よくも「黙って」かはぁっ!」
由比ヶ浜が文句を言おうとしたら松下が腹パンして、それを見た雪ノ下がキレようとしたら小野寺が雪ノ下に腹パンをして黙らせる。手が早い……
「馬鹿が失礼しました」
「また騒いだら黙らせますので続きをお願いします」
松下と小野寺は一礼して話をするように促す。澱みが一切ないあたり合宿では相当ストレスが溜まったのだろう。特に松下……というかひよりのグループのやさぐれ感は半端ない。全員由比ヶ浜に対する怨念と無能の由比ヶ浜の穴を補う為か気合いに満ちた表情を浮かべている。
まるで死兵のようなオーラのひより達に自己中の龍園や綾小路もドン引きして、究極の自由人の高円寺も若干気圧されているし。
「……わかった。また試験は駅伝以外はバラバラで行動するので素早く動けるように。それと今回1年生1人1人の成績は公開する事になったが、発表は大グループの結果前に行う」
どうやら個人個人の成績がマジで発表されるようだ。座禅と道徳の筆記試験とスピーチは日頃やらず、大半の生徒が今回の合宿で勉強し始めた。
つまり否が応でも実力がハッキリわかるので弱者に言い訳を許さない感じで最高だ。
「以上だ。早速座禅の試験を始める。採点基準は道場へ入ってからの作法と動作、そして座禅中の乱れの有無だ。名前を呼ばれた生徒から順番に整列して引率の先生に従って座禅場に向かってもらう。先ずは男子グループ。Aクラス戸塚弥彦、Bクラス金田悟、Dクラス綾小路清隆、Dクラス三宅明人は男性教師に従って行くように。続いて女子グループだがAクラス神室真澄、Bクラス伊吹澪、Bクラス西野武子、Cクラス網倉麻子は女性教師に従ってくれ」
先生が紙を読み上げるが本当にバラバラでやるようだ。
「行ってくる」
綾小路は気合いの入った表情(ただし瞳には煩悩剥き出し)で教室から出ていく。
それからも一定時間ごとにどんどん出ていき、俺は男子最後のグループだった。
引率に従って道場に入ると、10人の教師がボードとペンを持っていて、更にはカメラまで数台ある。どんだけ採点に厳しいのだろう?
辟易しながらもこれまでやった作法を頭の中でイメージしながら所定の位置に移動して結跏趺坐を行う。結構痛いが、その際にひよりと有栖となずな先輩とセックスする場面を思えばそこまで辛くはない。後はそれを顔に出さないように注意する事だ。
痛みを感じながらエロを思い浮かべていると終了の合図となったで作法に従って立ち上がり道場を出る。
そして引率の指示に従って講堂に入り指定された席に座ってぼんやりしていると大量のプリントを持った坂上先生が入ってくる。
「これより筆記試験を始めるが、カンニングについては通常の試験同様に問答無用で退学になるので注意するように」
お決まりの注意をしてから坂上先生はプリントを配り、全員に行き渡ると始めるように言うので、プリントを捲って解き始める。
内容は林間学校で習ったことに加えて常識問題や時事問題もあるが、現代人ならサボっていても40点は取れるだろう。つか40点以下はカスだろう、マジで。
俺は習った事を頭の中で思い浮かべながら書き進めると、視界の先で由比ヶ浜が頭を抱えている姿を捉える。試験が始まってから3分で手詰まりか?だとしたら馬鹿すぎて笑えないわ。
そう思いながら俺は問題を澱みなく解き進めて答案用紙を裏にする。95点は確実だ。座禅も90点以上の自信があるし、持久走とスピーチ次第だ。
暫く待機していると終了のチャイムが鳴り答案用紙が回収され、直ぐに男女別々になって校庭に向かう。
男子の持久走は小グループ全員で18キロ走り、最低でも1人1.2キロ走るルールだ。
そして各グループの代表が走るオーダーを教師に告げて1番最初に入るメンバー以外は沢山あるバンに乗せられる。
そして1.2キロ地点、山道の険しい場所に着くと綾小路を始め、何人が降りる。
俺は第十走者でスタートから4.8キロ地点で同じグループの清水と降りる事になっているが、他のグループのメンバーの中には運動能力で名を馳せている奴はいないだろう。須藤や柴田、平田や石崎や橋本あたりは険しい箇所の担当だと思う。
(しかしこの場所はラッキーだな)
何故なら俺がいるチェックポイントは綾小路のゴール地点だからだ。最初に幸村が1.2キロ走り、次に綾小路が3.6キロ走り、この場所で清水に襷を渡し、帰り道では第九走者の渡辺が俺に襷を渡す。つまり綾小路がどのくらいの速さなのか明確にわかるのだ。
そう思っているとバンが到着したので降りると……
「うっわ!比企谷がいるのかよ!最悪だな!」
山内が喚きながら指差してくる。それはこっちのセリフだ。
「黙れ盗撮犯。お前の存在の方が最悪だからな」
「全くだな。高校生になってもやって良い事と悪い事もわからないとはな」
「橋本マジで可哀想。こんなゴミをグループに入れなくちゃいけないんだから」
「とっとと退学しろよ」
「というか死ねよ」
俺が反論すると他の男子が援護射撃をする。由比ヶ浜もそうだが、嫌われ過ぎだろう。
「っ!何だよっ!皆よってたかって虐めやがって!あんなの青春だろうが!」
コイツマジで言ってるよ!もうマジで関わりたくない。
他の皆も同じようでドン引きしながら喚き散らす山内から距離を取り、山道から人が来るのを待つ事にする。降りてから大分経過しているが、もう始まっているだろう。
そう思いつつ俺は給水場の近くでスタッフに許可を貰い水を飲みながら、山道を見ていると……
「誰か来た……綾小路だ!」
「速ぇ!ギャグ漫画のキャラかよ?!」
綾小路が物凄いスピードで山道を駆け上がってくる。その速さは俺の全力疾走より早く、体育祭で見た須藤の全力疾走と同じくらいだ。
しかし今回は持久走だ。須藤に近い速さで山道を3.6キロも駆け上るのは尋常じゃない。アイツはどんだけ鬼龍院先輩と風呂に入りたいんだ?
そしてそのまま第三走者の清水に襷を渡して、こっちやって来る。
「お疲れさん」
「問題ない」
綾小路は表情を変えずに言ってくるが化け物にも程があるわ。
「ちなみに幸村は何番目に来たんだ?」
「最下位だったが、1キロくらい走ったあたりで全員抜いたから他のメンバーは当分来ないぞ」
綾小路の言葉に周りのメンバーは全員絶句する。
「マジで凄いな」
「言ったはずだ。今日の俺は本気で挑むと。全ては楓花さんと風呂に入る為だ」
その一言が無ければカッコ良いんだがな……
内心呆れながら綾小路を見てため息を吐いてしまう。
それから7分くらい経過してから須藤が走ってくるのが見えたが、その時点で俺はアクシデントがない限り俺のグループは1位と確信するのだった。
「あ、スタッフの方に言いますが3.6キロ地点とこの4.8キロ地点の中間あたりで熊が出てきたので、気絶させましたが念の為に見といた方が良いですよ」
「はいぃっ!?」
おい待て。何があったんだ?
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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